2024.12.24
ビジネスが急速に変化する現代は「OODAサイクル」と親和性が高い 流通卸売業界を取り巻く5つの課題と打開策
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大嶋寧子氏(以下、大嶋):今まで申し上げたことは、「抱え込まない」とか「自分が楽する方法を考える」「情報を集める」、それから「周囲と協働する」といった内容になりますが、こうしたことの価値はデータからも見えてきています。
例えばこちらは、介護が始まる前に両立に関する知識をどれくらい持っていたかというデータです。両立に関わる知識はさまざまあると思うんですけども、勤務先の支援制度をちゃんと知っていたか、介護保険制度について知っていたか、専門家の手を借りることがすごく大事だと知っていたか、家族のかかりつけのお医者さんや交友関係を知っていたか。
それらについて「どのくらい知っていましたか?」と聞くと、半数の方が「1つも知らなかった」と答えています。「1つだけ知っていた」という方が35パーセント。複数個知っていた方が16パーセントという状況でした。多くの方はほとんど何も知らないまま、あるいは少ししか知らない状態で介護に突入しているということになります。
ではこの知識(保有の状況)で介護を開始して、「『ある程度このやり方で安定して介護を継続できそうだ』『仕事も継続できそうだ』と思うまでの期間はどれくらいでしたか?」という質問の回答を比べると、顕著な差が出ました。
介護が始まる前に、両立に関する知識を保有されていない方は、介護をしながら働くための体制作りに目途がつくまでの期間が、長くかかってしまうことが非常に多い。一方で、複数の知識を得ていた方は、半年未満である程度安定した体制を作ることができたという回答が6割を占めています。
ビジネスケアラーの方にお話を聞くと、やはり安定するまでの時期に非常に苦労をされていたり、「すごくつらい思いをした」とおっしゃることが多いんですけども、そうした期間について、介護が始まる前にどれくらい知識を持っているかが関わってくることがわかっています。
この介護の体制に目途がつくまでの期間別に、介護発生から半年時点の仕事の不安や離職の不安がどのような状況だったかというと、やはり介護の体制づくりに目途がつくまでの期間が長ければ長いほど、初期の不安であったり離職や転職を考えざるを得ないという不安が大きくなるといった傾向も見られました。
その他に、ビジネスケアラーの方がお話しされた「抱え込んではいけない」といった内容がありましたが、「介護について気軽に話せるつながりがありますか?」ということも聞いています。これは職場の中でのつながりの場合も、職場の外のつながりの場合もあります。
こちらについて、実はどのくらいの人が持っているかを見ていきますと、4割の人が「誰も介護について話せる人がいない」とおっしゃっています。
つながりのある・なしで、仕事をうまくやっていけそうな感覚があるかを見ると、介護について気軽に話せるつながりがある人は、やはり「自分の仕事をうまくやっていけそうな感覚がある」と回答する割合が高いといった状況が見られています。
それ以外にも、介護をされているビジネスケアラーの方々が、仕事に関する創意工夫をさまざまにされているということもお伝えしておりますが、特に仕事のやり方や人間関係、仕事の意味、自分にとっての仕事の価値を、見直したり新しく作り直したりといったことをどのくらいやっているかを数値化しています。
そのレベルを「低い」「中程度」「高い」で数値化した上で、その人たちが自分の仕事をうまくやっていけそうな感覚があるか。どのくらいの人がそういう感覚を持っているのかということを見ていきます。
すると、周囲との協働関係の見直し、特に人間関係の見直しをやっていくにつれて、自分の仕事に「この仕事、やっていけそうだ」という安心感を持って働ける。そういった数値が高まるといったことも見えてきております。
本日のまとめになりますが、介護の経験は、ビジネスケアラーにとってもちろん負担ではあるんですけども、職業人、仕事人としての成長の機会でもあります。同時に、親が弱まっていくことを見守るつらさ、あるいは思うように働けないしんどさは、仕事やキャリアの不安、それから仕事を続けることへの疑問などを引き起こしてしまうことも事実です。
ですが、ビジネスケアラーの方々の仕事への思いや、新しい視野をちゃんと生かして、安心して働くことに関わる要因はいくつもあるだろうと思っています。本日ご紹介したのはその一部になりますけども、やはり事前に両立に関わる知識をどれくらい多方面から得ていくのかということは、非常に重要なポイントかなと思っています。
それ以外にも、仕事やストレスを抱え込む体制をなるべく早く見直すことも重要ですし、仕事や同僚との協働関係を見直していく。自分のこれまでの仕事のやり方を続けることが非常に難しくなる中で、どうやって抱え込んでいたものを渡していくか。あるいは頼るだけではなくて、お互いさまの関係を作っていくか。そういった工夫が非常に重要になる。
そういったことがインタビューあるいはアンケート調査から見えてきたポイントなのかなと考えております。それでは、私のほうからの発表、報告はいったん終了させていただきます。
佐々木裕子氏(以下、佐々木):大嶋さん、本当にありがとうございました。なかなか実態が見えにくいビジネスケアラーのリアルについて、本当にディープなインタビューもされて、今日は世の中では言われていないファクトを沢山お持ちいただいてありがとうございます。少し希望が見えた感じもしました。
では、私のほうからいくつか質問させていただきたいんですけれども、みなさんからもたぶんあると思います。Q&Aやチャットにそのまま書き込んでいただいてもけっこうです。ぜひご質問いただければと思います。
ではまず、大嶋さんにぜひうかがいたいなと思うのは、介護の経験がビジネスパーソンとしての成長にもつながっている、ということについてです。職場でビジネスケアラーの方に対して、上司や周りの方が良かれと思って、お仕事の負担を軽くしようとすること、ありますよね。
今のポジションじゃなくて、少し責任の軽い立場でお仕事をされたらいいんじゃないかとか、場合によっては「休んでいいよ」とおっしゃる方もけっこういらっしゃるんじゃないかと思うんですけども、これはあまり良くないということなんでしょうか?
大嶋:本日のデータの中ではご紹介していないんですけど、やはり介護が始まった当初の不安としては、「自分の仕事を取り上げられてしまうことが不安だった」とおっしゃる方が非常に多いんですね。
なので、やはり上司の方が心配されて、良かれと思って「仕事を軽くしようか」みたいなことを言ってしまう場合というのはけっこうあると思うんです。それに対して「そうじゃないんです。自分が必要なのは、自分の仕事を全うすることです」と思っても、今までのやり方ではできないという遠慮もあって、なかなか本音で話しづらいこともあります。
大嶋:でも介護に関しては、これから多くの人が経験することであり、じゃあどうしたらいいかということをちゃんと話していく必要があると思うんですね。ただ、介護を巡る状況は千差万別で、かつ、上司の方が介護を経験されていない場合に、その状況を深く理解することが難しいといった、介護特有の話しづらさみたいなものがやはりあります。
自分はどうしてほしいのか。もちろん仕事を一時的に軽くしたい場合もあると思うんですけど、そうでない場合は、「自分は自分の仕事の責任をきちんと遂行したい、全うしたいんです。そのためのやり方をどうしたらいいか、一緒に話し合いたいんです」という姿勢で上司と対話を重ねることがすごく大事かなと思っています。
佐々木:なるほど。じゃあ、自分から「キャリアを維持したい」ということを、しっかりお伝えするというのが大事だということなんですね。
大嶋:そうですね。インタビューをしていると「何度も話すことで、やっとわかってもらった」みたいなケースもありますので、一回伝わらなかったことで諦めてしまうのではなくて、何度も話し続ける。
「また状況が変わったら、その時は頼らせていただきます」みたいなコミュニケーションもあると思うんですね。実際に介護ってどんどんフェーズも変わっていきますので。だからその意味で、フェーズが変わっていく前提で、「今の時点では私にとって必要な配慮はこれです」ということを遠慮せずに話していくことが大事かなと思います。
佐々木:ありがとうございます。
佐々木:あと、一方でケアをする方々ってやはりすごくストレスも感じていらっしゃると思いますし、私も「自分自身も実際にケアをするとなるといろいろ考えるな」と思うわけなんですけども。
それを周りの人たちに話すのは、なかなかの心理的なハードルもあると思います。そこについては、どういうふうにハードルを乗り越えて、誰に話し始めるのがいいのか。このあたりはどうお考えになっておられますか?
大嶋:すごく難しい問題で、やはりわかっていない人に中途半端に返事をされると、逆にすごく疲れてしまうみたいなことがあると思うんですね。なので、例えば職場の中にそういうコミュニティがあったり、あるいは職場の中で経験されている方がもしいらっしゃったら、その方と話し始めるといいと思うんですけども。
そういった方がすぐには見つからない場合は、こういうビジネスケアラー会議の場で、ちょっと経験者の話を聞いてみるとか。あるいは、専門家の方にまず話し始めてみるとか、いろんなところに当たってみることがすごく大事かなと思っています。
佐々木:なるほど。ありがとうございます。ケアする方々は当然ご家族のことを良かれと思って近くにいたいとか、やはり一生懸命介護をしたいと思うものだと思うんですけれども。
自分のキャリアを全うしたいと上司に言うとか、やりがいを感じたいというところとの駆け引きもあったり悩ましかったり罪悪感を感じたりするものだと思います。そういう中で、どうバランスを取っておられるのか。何かインタビューの中で聞かれたことはありますか?
大嶋:先ほども少し触れましたが、お話を聞いた方々の中には「自分は会社に配慮をしてもらっているのに、自分のやりたいことを伝えるのは申し訳ない気がした。だから、自分にとって何をしてほしいか言えなかった」という方がいらっしゃったんですね。でもそうすると、会社からはその人が本当に何を望んでいるのか、ただでさえ見えにくい状況が伝わらなくて、結局すごく溝が深くなってしまいます。
これからの日本って、介護だけではなくて育児も介護も病気も、それから他にやらなきゃいけない個人としての社会活動も含めて、さまざまなものを抱えながら、でも会社にも貢献していくということがもっともっと当たり前になっていくと思うんですね。
なので、そこは特に、日本で働く人ってすごく会社に配慮しますし、遠慮もするので言いづらいかもしれないですけども、でもやはり伝えていくことで、会社とのコミュニケーションが成立する。だから私自身は遠慮をしないで、「私が考えていることはこうです」ときちんと伝えることが大事だと思います。
また、インタビューをしていても、「インタビューを受けて話すことで、自分の考えが整理されたり、他の人にこの経験を伝えなきゃいけないということがわかったんです」とおっしゃる方もいました。話すことで自分の中の新しい視点みたいなものが出てくることもあると思いますので、ぜひできるだけ会社の中で話せる方とお話されたほうがいいと思っています。
佐々木:ありがとうございます。
佐々木:あと、実はご質問を頂いています。
「介護の先にあり得る死別を経験した人に対するグリーフケア。これも当然、とても大事な要素だと思うんですけれども、ここは職場の関係を越えたものだとお考えでしょうか? つまり、それも職場の中での対応を考えるのか、それともそれは専門的なサービスに任せるべきか」というご質問ですけれども。もちろんこれは正解がないものだと思いますけれども、いかがでしょうか。
大嶋:そうですね、今回の調査からは出てきてないので、個人的な見解になりますけども、個人が安心して働けるための環境を作るために、誰かがもし何か不調を抱えていることであったり、ひどく心を痛めていることがあれば、それに対して配慮していくことが、一緒に働いていく組織としてはすごく大事だと思うんですね。
介護のグリーフケアだけではなくて、例えば自分や家族が病気と仕事を両立している場合もそうですし、そういったところで精神面のケアという意味での重要性は、介護に関わらずあると私自身は思っています。
佐々木:なるほど。ありがとうございます。ぜひ今の大嶋さんのいくつかのデータを踏まえて、実際に介護をずっと経験しておられるパネラーのみなさんと一緒に、実際にどうなのかということも含めてディスカッションをしていきたいと思います。まずはデータ調査の結果を頂きまして、本当にありがとうございました。
大嶋:はい、みなさんどうもありがとうございました。
佐々木:はい、引き続きよろしくお願いいたします。
大嶋:はい、よろしくお願いいたします。
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