2024.12.24
ビジネスが急速に変化する現代は「OODAサイクル」と親和性が高い 流通卸売業界を取り巻く5つの課題と打開策
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田中洋氏(以下、田中):田中洋と申します。私は中央大学で社会人の人たちにマーケティング、あるいはブランド戦略を教えてきた人間です。
『ブランド戦略論』(2017年刊)という本がありまして、4,000円もする高い本で恐縮ですが、ブランドについて30年くらい研究してきたその集大成になる本です。幸いにして、この本はいろんな賞をいただき、多くの方に読んでいただきました。特に実務家の方に読んでいただき、実際のブランド戦略に役立てられればよいなと感じています。
今日は、どうやったら企業の考え方をうまく社内・社外に伝えられるかについて、お話をしたいと思います。
ここでいう「企業の想い」とは、自社がこれまで成し遂げてきたことや、どういう考え方で社会に向き合っているか。何を提供し、何ができる企業かということです。
企業はいろんなメッセージを社会に伝えたいと思っています。こういった想いを伝達することで、その会社が社会に受け入れられて、顧客あるいはステークホルダーの方々に歓迎されたり、従業員の方々も喜んで働いていただける企業を目指していると思うんですね。
2022年3月に、ソニーと本田技研工業(ホンダ)が電気自動車開発に向けて提携を発表したニュースがありました。日経クロステックというニュースサイトには、「こうなればいいな、と思っていたことが実現した」と書いてありました。
なぜ「ソニーとホンダが提携したらいいな」と思われたのか。ソニーは終戦翌年の1946年に創業しました。当時、井深大さんと盛田昭夫さんが東京通信工業と呼ばれる会社を創業したわけです。その後、ウォークマンをはじめとする、時代を画するようなさまざまな製品をたくさん生みました。
一方、ホンダは1948年に本田宗一郎さんが静岡県浜松市に創業した会社です。これまで車、二輪、あるいはロボットに渡って、さまざまなブランドを生み出しています。
ソニーとホンダは、日本の戦後を代表する、当時のスタートアップ企業だったわけですね。「こうなればいいな」という言葉のように、ソニーとホンダと聞くと、人々の頭の中にいろんなストーリーが浮かんでくる。
その中には会社の歴史や経営者の人柄、商品やサービスを経験した・使った・持っていたという思い出もあります。カルチャーや社風もありますし、企業全体が醸し出す一種の「社会的な存在感」を思い出すのもストーリーだと思うんです。
さらには、ミッションやバリュー、あるいはパーパスと言われる企業のアイデンティティですね。こういったものを束ねて、ここではストーリーと言っています。こういったストーリーを持つ会社、ストーリーがよく社会に伝わっている会社のメッセージこそが、消費者や株主に浸透するのではないかと思うわけです。
先ほどソニーと本田技研工業を取り上げましたが、その他の現代企業がどういうストーリーを持っているのかを見ていきたいと思います。
最初は、ウォルト・ディズニー・カンパニーという会社です。みなさんもよくご存じのとおり、ウォルト・ディズニーが創業しました。ウォルト・ディズニーはもともとcartoonist(カートゥーニスト)といいますか、アニメーターであったわけです。
1928年にミッキーマウスを誕生させて、1955年にはカリフォルニアにディズニーランドを作りました。ウォルト・ディズニーは1966年に亡くなりましたが、その5年後にウォルト・ディズニー・ワールドがフロリダにオープンしたわけです。
ディズニーには事業家として画期的な点がいくつもあります。ディズニーは大きなビジネス構想を持っていたんですね。それは、「ディズニーレシピ」として知られています。レシピは普通は料理のことを指すんですが、ここでは料理ではなく、ディズニーのビジネスの世界がどうあるべきか、ウォルト・ディズニー自身が構想して絵に描いているその絵柄のことを指します。
それによると、ディズニーの世界は中心にテーマパークであるディズニーランドがあります。その周りを出版事業や映画事業、あるいはその他の音楽事業やテレビなど、さまざまな事業体が取り囲んでいる。ディズニーランドあるいは映画から始まって、それが音楽や本、テレビとかに展開されていく。
こういったものをウォルト・ディズニーは考えています。その中心にあるのは、やはりディズニーランドです。ウォルト・ディズニーは「私はディズニーランドが人々に幸福を与える場所、大人も子供も、共に生命の驚異や冒険を体験し、楽しい思い出を作ってもらえる場所であって欲しいと願っています」と言っています。
そういったものを物語の中心に置いて、「我々にさまざまな夢の遺産を残してくれた人」と言えると思います。
次に、スターバックスです。スターバックスは1971年にアメリカのワシントン州シアトルで創業されました。我々がよく知っているハワード・シュルツさんという人は、実はあとになってからスターバックス社に入社するんですね。だから、スターバックスの創業者はハワード・シュルツさんとはまったく別の方でした。
シュルツさんはもともとニューヨークでキッチンの用具を売っているやり手の営業マンでしたが、ある日シアトルから連絡があって、(スターバックスが)キッチン用品を買いたいというので、シュルツさんはワシントン州まで出掛けていきました。
そこでスターバックスがアメリカ人においしいコーヒーを飲ませようと、いろいろがんばっている会社だと知って、驚いたんですね。実はそれまでアメリカにはおいしいコーヒーを飲む習慣があまりなく、味気のないコーヒーを飲んでいました。ハワード・シュルツさんは1982年に入社されて、スターバックスを1回退社しています。
その後、再びスターバックスに戻ってきて、1987年にスターバックスという商標を買い取り、現在のようなスターバックスのかたちを作っていきました。やはり、シュルツさんも構想というか、ストーリーがいろいろあります。
スターバックスは「人々の心を豊かで活力あるものにするために、ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」をミッションにしているように、コーヒーを媒介に人々を結びつけて心を豊かにしていくというストーリーを、いつも根底に持っています。
我々がスターバックスに対して絶えない魅力を感じるのは、こういったストーリーが原点にあるからではないかと思います。
それからAppleですが、言うまでもなくiPhoneというスマートフォンがあります。2007年に発売されて、それ以来世界を変えたマシンであることは言うまでもありません。
スティーブ・ジョブズはどんなことを考えていたか。2007年まではiPodがありましたが、それに対してiPhoneを出して、いわば当時のiPodに電話をつなげたというのが1つあります。
それから、タッチ操作です。画面を触るだけで操作できるという操作性。それから、ここには書いていませんが、アプリを導入して第三者にアプリを用いたいろんなビジネスができるようにしました。
通信もできるし、音楽ももちろん聞けるし、電話もできる。さまざまな機能を果たせる、スーパーなマシンをスティーブ・ジョブズは考えたわけです。Apple社はそれまでもMacintosh(マッキントッシュ)などをやってきたわけですが、iPhoneによって世界を変えることを成し遂げた。
その中心にはスティーブ・ジョブズがいて、多くの人がジョブズを非常に尊敬していた。ジョブズという人が、Apple社の中心のストーリーを成していると考えてよいかと思います。
それがあってこそ、我々はiPhoneを愛用し、Apple社の製品を喜んで使っていると言えるのではないかと思います。
どうやったら企業の想いを社内・社外に伝えられるか。端的に言うと、良いストーリーを持つことが大事になります。ただ、ストーリーと言っても、その中にはいろいろなやり方があります。
会社のヒストリー、経営者の人柄・パーソナリティ、商品・サービスの経験等々。さまざまなストーリーを展開することで、事業をうまく展開できる会社になっていくことを考えています。
私の話はとりあえずここまでにさせてください。どうもご清聴ありがとうございました。
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