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500ケースから導き出した 新規事業の成功確度を上げる方法(全5記事)

必要なチームは『ドラゴンボール』型より『ONE PIECE』型 今のビジネスで「仲間による得意の発揮」が求められるワケ

ビジネスパーソンの情報収集・分析における課題を解決する最先端のプラットフォーム「SPEEDA」主催のセミナーに、『異能の掛け算 新規事業のサイエンス』を出版したSun Asteriskの井上一鷹氏が登壇。「新規事業の成功確度を上げる方法」をテーマに、ビジネス・テック・クリエイティブのチームメンバーの見極め方やテックやクリエイティブの友だちを増やすことの重要性などを語りました。

必要なチームは『ドラゴンボール』型より『ONE PIECE』型

井上一鷹氏(以下、井上):最後に、僕が一貫してお伝えしたかったことをまとめてお話しします。異能の掛け算をするBTC(ビジネス・テック・クリエイティブ)のチームと、似て非なるチームの違いは、やっぱりBとTとCがお互いの得意な分野をちゃんと理解し合って、目的・レイヤーは合わせるけど手段は分かれているということです。

僕はJINSで集中を測る事業をやっていましたが、得意なことに特化して動くのは幸せなことで、夢中になって集中できます。でも、そういう1人の天才ではなく、今はお互いを活かし合うチームがすごく求められていると思います。

それに対して単独の機能に特化した、ビジネスの人だけで集まったチームとか、あるいは1人の天才がすべてをやるみたいな、(スライドの)右の世界はいわゆる『ドラゴンボール』で、何が来ても孫悟空がやってくれるみたいな世界。

最近は『ONE PIECE』か『アベンジャーズ』かわからないですけど、違う機能の人たちがお互いに補完し合ってやらないと、今の時代の複雑性に対して向き合えるわけがないんです。

なので、(スライドの)左のチームであろうとすることを前提に置くと、新しいものを作りやすいし、自分自身が楽しく仕事できると思います。そんなことを感じていただく、もしくはそういうことをやるために「今日から何をしよう」と思って聞いてもらえたら、すごくうれしいと思ってお話をしました。

志賀康平氏(以下、志賀):ありがとうございます。

BTCのチームメンバーの見極め方

志賀:たくさん質問が来ているので、いろいろとお聞きしたいと思います。

BTCの観点のところで、ご自身はBだけどC的なミクロのn1に話を聞きにいくほうが得意という方から、適正なチームの作り方や見極め方についてのご質問が来ています。

井上:僕もクリエイティブぽいことを考えたい時があるんですよね。僕の中にもクリエイティブ脳があって、そこは状況に応じて動くんですけど。

だけどそれよりも「この人は絶対僕よりクリエイティブですごい」と思う人と仕事をしたほうが楽しいんです。分け合ったほうがおもしろいと思っています。でも、うちの会社の中にもBTCを横断している人もいるので、どれが正しいかは何とも言えない気がします。

志賀:「自分よりこの人に任せたほうが良いものが作れる」というのは、すごく大事なポイントかなと思います。どうやったら「この人に任せたら自分より良いかもしれない」と思えるのでしょうか。

井上:どうでしょうね……。あんまり体系化できる話でもないんですけど、新規事業を繰り返して、BTCの解像度が上がってくると、「この人は今クリエイティブのことを言っているな」とわかるようになってくるんですよね。アウトプットのレベルを何個か見ているので「この人のクリエイティブのレベル、マジで高いな」とわかりやすくはなってきます。

志賀:このあたりが頭の中に入っていて、自分が何者でどういう人を求めているかが前提として考えられると、「この人と組んだら良さそうだ」と見えてくるんですね。

井上:そうですね。

志賀:ありがとうございます。

テックやクリエイティブの友だちを増やすことの重要性

志賀:先ほどBTCの全員がRAWデータに触れたほうがいいとおっしゃっていて、まさにそうだなと私も思いました。ここの部分で、メンバーを集める時に、自分が何をやりたいかがある程度かたちになってから集めようと思うと、順番的には「こういうのができそうだから、同じ思いを持った人を集める」になりがちかなと思ってしまって。

ちょっと最後に解像度がなくなってしまったんですけど、このあたりはどのタイミングで人を集め始めるといいんでしょうか。

井上:さっきの質問にも近いんですけど、ビジネスの人間であれば、まず新規事業をやる前の時点で、「おもしろいな」と思えて建設的に新規事業に向き合ってくれる、テックの人かクリエイティブの人の友だちを増やしておくこと。そして、「このタイプの新規事業だったらこの人に聞いたほうがおもしろいな」という引き出しを作っておくこと。

自分でなんとなく「このアイデアいけるな」と思ったら、その人たちをいったんサクッと呼んで、パッと話してみて「5分でいったん答えを出して」と言う。5分で、感覚的に思う大事な論点を聞いて、「じゃあ最初はビジネスとクリエイティブだけで動いていいな」とかを判断してチームを作っていく。

最初の時点で、信頼できるBTC全員で大事なイシューを見る。この30分をやるかやらないかは本当に大事だと思いますね。

志賀:考え出しと仲間を作るタイミングが同時と言うか、いつでも相談できる人たちが周りにいることが理想の状態という感じですかね。

井上:そう思いますね。僕が所属してるSun Asteriskはそのためにあると思っています。頼むというよりは、サクッと「今の事業を聞いてみてどう思う?」みたいなことを言うために存在している気もするので。そういう仲間に1回聞いてみる感じですね。

意義の言語化はあとからできる

志賀:違う質問が来ています、アーサー・D・リトルという戦略コンサルティングの会社からJINSに転職されて新規事業をされる時に、「顧客価値を信じられるかどうかが結局、新規事業をやる時に大事だ」というお話が冒頭であったと思います。

アイディエーションの部分で困っていらっしゃる方も多いかなと思いますが、JINSの時の新規事業が「いける、やりたい」と思われたのはどういう時だったのでしょうか。

井上:JINS MEMEに関しては、技術のアイデアは僕が入る前からあったんですよね。いろんな捉え方があると思うんですけど、僕はハードウェアの新規事業が好きなんです。触ることができるから。あんまり理由になってないんですけど(笑)。そういうものをやってみたいなと思った時に、メガネにはけっこう深みがありそうだなと思ってやりました。

そのあと途中から思ったのが、このアイデアをくれたのが、ニンテンドーDSの『脳トレ』の先生で、東北大の川島隆太先生でした。彼が最初に発案した理由が、認知症の研究のためだったんですよ。認知症の研究医として目の動きと姿勢がわかれば、認知症の早期診断ができるという仮説を持っていた。

僕は母方の祖父母が認知症で苦しんでいたりしたので、そうするとライフワークにしやすくなるじゃないですか。これは、たまたま出会ったものですけど、ちゃんと言語化していくと自分にとってその新規事業の意味を絶対に読み解ける時がくる。そこまで突っ走ってしまうと絶対にWillを伴ってくるので、あんまり苦しくないかなと思います。あんまり質問に答えていないかもしれないですけど(笑)。

志賀:直感的に「やりたい」とやり始めて、あとから言語化するとそうだったなと。

井上:そうです、そうです。大事なのは言語化することだと思っていて、例えば親とか、新規事業とまったく関係がない人に、なぜ今自分がこんなことやっているのかをむりやり話してみると「あれ? 意外と自分がやっていることって社会的意義があるな」とか「おもしろいことをやろうとしてるんだな」と思えるはずです。

僕は正直、最初に始める人は、テーマは意外と何でもいい気がしています。だけどそれを自分ごと化できるストーリーを自分で見つけないといけないかなとは思いますね。

志賀:ありがとうございます。前職で新規事業を経験したので、すごく私に響いてくるなと(笑)。視聴者の人たちもすごく「同感です」とか「響きました」と言っていただいてる方も多かったので、本当に今日はいろんな良い話がお聞きできたなと思っています。ありがとうございました。

井上:ありがとうございました。

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