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パーパス起点の1on1で叶える、成長を止めない組織づくり(全5記事)

パーパスは浸透させるだけでなく、メンバーが「どう思っているか?」も測る 会社と個人の「接点」を見出す、1on1の4つの切り口

近年注目を集める「パーパス経営」ですが、企業がどんなに社会的意義のあるパーパスを掲げていても、実際に働くメンバーが共感できなければ実現には至りません。そこで今回のUniposウェビナーでは、「パーパス起点の1on1」を通じて組織を成長させていく方法について、『シリコンバレー式 最強の育て方 ―人材マネジメントの新しい常識 1on1ミーティング―』の著者で、株式会社サーバントコーチ代表取締役の世古詞一氏が解説しました。本記事では、パーパスを理解するための「1on1」の4つの切り口について語られました。

そもそもの1on1の目的を意識する

世古詞一氏(以下、世古):今日は(パーパス起点で行う1on1の)切り口をいくつかだけお伝えします。まず、「1on1の目的を意識していきましょう」というところです。

「そもそも1on1の目的って何?」というのを5つ挙げています。従来の面談が、目標設定、評価査定だったのに対して、(1on1の目的は)信頼関係を作っていくこと、知らないことを知っていくとか、新たな成果を生み出して成長を促していくこと。あとは、モヤモヤや不安を解消していくこと。モチベーションの向上。あとは、働きがいの向上。今、充実感を持てているのかとかですね。

ここで組織のことを説明しながら、個人とつなげていきます。今日は時間がないのですが、この目的は非常に重要なので、1on1をやっていく目的はぜひ社員メンバー、マネジャー双方とも、理解いただきながら進めていただきたいと思います。

目的を起点に置いた時に、(例えば)パーパスにさらに注力してみるとか、今日は働きがいに着目して1on1をしてみるとか。充実感を持てているとか、「今、10点満点で言うと充実感は何点くらい?」って話をしながら、その人の働きがいにフォーカスを当てていくとか。

会社・チームの方向性を伝えつつ、「どう思う?」というように、その人がどう思っているかということを引き出していきます。継続的成果を生んでいくために、「このサービスは2年後、どういった展開が考えられそうかな?」「今の、我々のパーパスとか理念とかを加味した時に、2年後、どんな展開が考えられそう?」とか。

「現状の方針でパーパスに即していると思う?」とか、「疑問に思うことはあるかな?」と問いかけていきます。そして部下は思っていることを話していく。これを「部下から会社への働きかけ」と言っています。

「どう浸透させるか」だけでなく「メンバーがどう思っているのか」も測る

世古:パーパスって言うと「どうやって浸透させるか」という、上から下への流れと思いがちなんですけれども。それだけじゃなくて、「メンバーがどう思っているのか」を定期的にモニタリングしていく機能として、1on1は機能するんじゃないかと思います。

会社がやっていることが、本当に言っていることと合っているのか? 違っているのか? 社員にモニタリングしてもらうことで、会社を一緒に作っていくことができるのではないか。そういう場ってなかなかないんです。会議の場だと皆の目が気になって言いづらかったり、テキストだと堅いものになってしまう。なので、これはぜひ確認してほしいです。

時間も押しちゃって申し訳ないんですけど。(2つ目が)「パーパスの具体化をしていこう」ということで、パーパスの理解の解像度を上げていきましょう。

例えば、さっきのソニーさんの例がありましたけど、「これってどういうことだと思う?」とか、その会社が言っているパーパス自体を「これってどういうことなんだろう?」と考えていく。

会社の過去とか現在、将来を想像しながら、文章全体、単語ごと、具体的ストーリーを語り合っていくと、「うちの会社で言うと、こういうクリエイティビティって、こういう部門でこういうことをやっていますよね」とか「こういうことができているんじゃないですか」「昔って、うちって、こういうことをやっていましたよね」と。

「そういう流れってありますよね」とか、その声もちょっと肴にしながら、過去の会社、今の会社、未来の会社についてディスカッションしていただく。昔は飲みに行って話していた話だと思うんですけど、今はなかなかないので、1on1でやっていくといいんじゃないかと思います。

パーパスの「逆」を考えて、やるべきことを明確にする

世古:あとこれは1つの切り口なんですけど、対比で考えてみること。

例えば「クリエイティビティじゃないとしたら、逆は何だ?」と考えてみます。ここには生産性とか、模倣とか書いていますけど、「こっちじゃなくて、うちはこっちだよね」という方向性や、やるべきこととやらないべきことなどが、対比することで明確になってくるんじゃないかと思います。

逆を考えてみることで、やるべきことの明確化をしていく。それについてどう思うかを聞いてみる。

やはり「どう感じるか」なんです。すべてはここにつながると思っていて、メンバーの方がどう思うか、どう感じるかについて深掘りをして、その人が思っていることを引き出してほしいです。

あと、部下自身のWhyについて考える。今までは会社側のWhyについての理解度を深めていましたが、この(組織のWhyと個人のWhyの)接点を見出す必要があるわけですよね。

メンバー自身のWhyのストーリーをどう語ってもらうのか。「なんでこの会社に入ったのか?」「大切にしているものは何か?」「どんな場面で共感できるのか?」といったことをやっていくといいんじゃないかと思います。

これは上司自身についても同じです。

ソニーさんのポータルサイトに、おそらく採用向けのページだと思うんですけど、「とある日の1on1」というのがあって。社員の方とチューターの方の1on1の記事があるんです。その中の1つで、「なんでうちの会社に入ったんですか?」とかいう問いの話を5年目の方がされているんですね。

これは上司・部下じゃないんですけど、組織の中で「ななめの1on1」のようなものがあっても全然良いと思うんですよね。そして「物を作りをやりたくて入ったんです」とか「この部門でこういう経験してきたんです」っていう話をされている中で、最後に「ああ、すばらしいな」と思ったのがここでした。

今後のキャリアの話で、選択肢がいろいろあって悩ましい中ででも「1つ分かかっているのは、クリエイティブでありたいという想いは軸にしていきたいんです」という話をされているんです。

まさに、やはり自分の経験と会社の方向性や言っていることが、話をしながら接点となってシンクロしていく。そういう部分を見つけていく。これが1つの軸なんだろうなと思って見ていました。

上司・部下の関係じゃなかったとしても、自分のストーリーを語りながら、会社との接点を生み出していくのはありなんじゃないかなと思います。

用事がないと始まらないコミュニケーションが多い中での1on1の「場」

世古:いくつか切り口について話してきました。ただ今日の話を急に出しても、相手もすぐに話すことが出てこなかったりするので、率直に「次回の1on1で、ちょっとパーパスについて考えてみない?」って切り出してやってみるといいんじゃないかと思います。

ふだんは「ちょっといい?」から始まる、用事がないと始まらないコミュニケーションが多いんです。けれども、1on1は定期的に開催されるので、ずっと「場」だけが用意されているものです。この場がすごく貴重なんですよ。この場において何を話すかは自由なので、「次回は、じゃあ、こういうことをやってみない?」って提案もできます。

1on1という場自体を、組織の1つの仕組みとして置いておくことで、本当にいろんなかたちで使えます。今後「パーパス」は非常に重要になってきますので、1on1という場が、パーパスを理解するという意味では非常に重要なんじゃないかなということで、お伝えさせていただきました。いったん、私の話はここで終わりたいと思います。

斉藤知明氏(以下、斉藤):世古さん、ありがとうございました。ではここからディスカッションに入っていければと思います。

9つの「すり合わせるための軸」はマネージャーにとって武器になる

斉藤:今までのお話を聞いていて、この(9ボックスの)スライドを見た時に、ちょっと苦しくなったんですよ。「この系の相談が来た時、心が重くなるやつだな」って(笑)。

おそらくみなさんも触れられたことがあるんじゃないかなと思います。マネージャーとしてまたは人事として、組織の中でこういう話は本当にあるあるで出てきます。1年2年経ったら、みんなが一度は直面するような状況なのかなと思いました。

今日のお話を聞いていて、パーパスとか1on1とか、9ボックスもそうですけど、「いい武器なんだな」と思いました。1つは、これについて悩んでいる人たちから話しかけられた時に「じゃあどうしようかな」と。「ポジショントークになりすぎてもダメだし、自分を強いることもできないし、どうやったらいいんだろう」って、未熟な僕は悩んだりするんです。

でもその中で1つ、「9ボックス」というすり合わせるための軸だったり、「こういう問いかけがいいんじゃない?」と書いてくださっていた4つの問いのパターンだったりが、1つの武器になり得るんだなという解釈をしました。世古さん、そういう捉え方っていいと思いますか?

世古:そうですね。誰にとっての武器かというと、マネージャーにとっての武器なんですね。

斉藤:そうです。マネージャー、もしくは経営者だったりするのかな。

世古:(だから1on1は)チャンスですよね。メンバー側としてもチャンスだし、マネージャーとしてもいろんな話が聞けるチャンスになると思うんです。会社側から、上司側から「伝える場」はいろいろあるんですけど、メンバーの話を「聞ける場」はなかなかないんですよね。

あったとしても、会議の席とかみんながいる中なので、本音で思っていることはなかなか言えない。さっきの脳の構造でいう、新皮質で考えたようなロジカルに組み立てた話ですね。「周りからどう思われるのか」とかいう話になっちゃうので、そういう意味では本人の思いが聞けるチャンスじゃないかなと思いますね。

パーパスは組織と個人の「接点」であり、共感は結果

斉藤:パーパス自体も、問いかけの1つのポイントなんでしょうね。例えばソニーさんの場合、クリエイティビティに共感して入社してくれている人だからこそ、そこを1つのキーワードとして真ん中に置くだけで、そこに立ち返ることができる。

「なんで自分は3つ重なった状態を信じて、期待してソニーに入ったんだっけ?」と立ち返ることができる。「そう言えば『クリエイティビティとテクノロジーの力で世界を変えたいんだ』というところに共感したなあ」とか。なんなら「AIとか好きだったな」「ロボットアニメとか好きだったな」ぐらいの、本当に簡単なものでもいいかもしれないです

そこから1つ軸に戻して、「今の仕事にも確かにつながっているんだな」と考えて、立ち直るきっかけになる。そういう捉え方ができると、パーパス起点の(意味がありますよね)。

僕が最初の問いかけの時に「パーパスを浸透させるために」とか「共感させるために」みたいな言い方をしようとしたんですけど、なぜか言い淀んでしまったんです。「その言い方は間違っているな」という気はしていて。

パーパスは浸透させるものでもなければ、共感させるものでもない。1つの立ち返るポイントというか、考える軸にはなるけれども、押し付けるものではない。そういう類いのものとして捉えると付き合いやすいなと感じました。

世古:そうですね。あくまで(個人と組織の)接点なんですよね。共感って結局、接点なんです。接点があるとより理解が進むわけです。1on1の場で接点がつながると、理解が進んで、それが正確で深い理解になっていくと、より共感が生まれるわけですよね。正確な深い理解をしていくためには、まず接点を作っていかなきゃいけない。そのためにはお互いの話をしないといけないわけです。

メンバー側がどう思っているのかとか、どうしてこう思っているのかというところと、会社側はどう思っているのかというところの双方を知らないと接点は作れないので、深い理解にいかない。結果として共感にならないわけです。共感は結果なんです。

だからまずは知る機会で深掘りして。お互いどう思っているのか。上司も会社も社員もどう思っているのか知る。そういう対話をしていくことに尽きると思うんですよね。

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