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変革は地方から~富山発スタートアップ会談~(全4記事)

起業の原動力になったのは、リストラで辞めていく部下の姿 気鋭の経営者たちが語る、ビジネスを始めた“きっかけ”と展望

富山県成長戦略カンファレンス「しあわせる。富山」で行われた、「変革は地方から~富山発スタートアップ会談~」のセッションの模様をお届けします。新潟県妙高市の“異色の半導体ベンチャー”コネクテックジャパンや、北海道発・地域活性型ベーカリー「小麦の奴隷」など、さまざまな地域の起業家が登壇し、デジタル技術も活用しながら活躍する起業論をお送りします。

気鋭の経営者たちが語る、これからの展望

廣岡伸那氏(以下、廣岡):だいぶ時間が迫ってきました。最後になんですが、今後のみなさんの展望というか、どういったものを目指してるかをお聞きしたいなと思うんですが、橋本さんいかがでしょうか。

橋本玄樹氏(以下、橋本):店舗出店で言えば折り返し地点に来たので、ちゃんと130店舗まで目指すことと、次は海外展開ですね。ヨーロッパ、アジア圏の話も出ているので、そういったところに日本のパンの価値を伝えられたらなという感じです。

廣岡:すばらしい。拍手をお願いします。

(会場拍手)

廣岡:では、平田さんお願いします。

平田勝則氏(以下、平田):僕のところは創業13年でやっと2期連続黒字が見えてきたところなんですが、なんとか2023年ぐらいにはIPOを目指したい。個人が金持ちになるためじゃなくて、やりたいことをより自前でできるために、IPOを目指して取り組んでいます。

ベン・ホロウィッツさんが書かれた、『HARD THINGS』という本では、起業成功の要諦は、パッション・フィロソフィー・ボランティアスピリッツの共通の価値観をもった仲間が重要とあります。全国の多くの仲間をもっと増やしたい。その力で、半導体という成長産業の中で共に生き抜いていけたらと思ってます。

『下町ロケット』撮影地にもなった、異色の半導体ベンチャー

平田:異業種関係なく、ご興味のある方は我が社をご視察いただきますと、帝国重工の作業着を着て、阿部(寛)さんが封を切った『下町ロケット』の本物のバルブを持って記念撮影ができるという特典がございますので。

廣岡:おぉ~。すばらしいですね。

平田:北陸新幹線で富山から1時間かからない、上越妙高駅です。駅から車で10分ぐらいの場所ですので、ぜひご来社いただいてご交流いただければと思います。よろしくお願いします。

廣岡:ありがとうございます。

(会場拍手)

藤野英人氏(以下、藤野):「IPOする」って言った時に、お寺の鐘がゴーンってなったから、絶対にできるって感じがしますよね。

平田:これは吉兆なのか……。

藤野:絶対吉兆ですよ。

平田:『のど自慢』的に言うと、鐘1個でアウト……。

(会場笑)

藤野:『のど自慢』じゃないから(笑)。

平田:以上です。

廣岡:ありがとうございます。拍手をお願いします。

「ブランド」ではなく「ものづくり」で世界と戦う

廣岡:(佐藤さんは)いかがでしょうか。

佐藤正樹氏(以下、佐藤):ニットのものづくりという観点で、今までは洋服だけだったんですが、実はトヨタ自動車とか、あとは家具屋のカリモクさんとか、そういうところとも話が出ています。

立体的に物を作ることができるニットを、コンピューターで世界最新のかたちでやってるんですが、今後はそういったもので世界と戦う。今まではブランドで世界と戦ってたんですが、ものづくりとして世界と戦っていく。

また自分のブランドにおいても、今までの小売りからさらに1歩進んだネットを使ったビジネスにまだまだ進化していくという意味で、地方の小さい糸を作る工場をベースに、可能なことにいろいろ挑戦していきたいなと思います。

廣岡:ありがとうございます。拍手をお願いします。では少し、僕の抱負を。あんまりしゃべってないんですが、僕は富山で起業していて、二十数名の会社だったんですけれども、ほとんど新卒で成り立っている会社です。

9割が県外から採用している会社なんですが、化粧品会社という枠を超えて、地域のソリューションに入っていけるような会社を目指していきたいなと思います。

それと、地域や富山から起業する若い子たちが、先輩が10年かかったものを自分も10年かけてやるんじゃなくて、先輩が10年かかったから後輩は5年でできるような環境を恩送りできるようにしたい。ちょっとまだ尖ってはないんですが、釘としてポーンと尖れるようにしていきたいと思っています。ありがとうございます。

(会場拍手)

“尖っているプロジェクト”が地域を動かす

廣岡:では、藤野さんいかがでしょうか。

藤野:今、富山県の成長戦略会議に関われてすごくうれしいです。「しあわせる。富山」では、「幸せ人口1,000万~ウェルビーイング先進地域、富山~」と言ってるじゃないですか。これ、すごいと思うんですよね。

だって富山県の総人口は104万人ですよね。その10倍ですよ。実はこれがすごく大事です。「しあわせる。富山」「1,000万人」と言っていたから、「なんかおもしろそうだ」と言って(今日の登壇者は)来てくれたんですよね。「富山県ちょっと頭おかしいんじゃないか?」みたいなね。

「幸せ人口1000万人」という言葉には、正直富山県の95パーセントぐらいの人は良くも悪くもぽかんとしてると思うんですね。

いろんな感情的な動きがあって、1パーセントぐらいの人が「これはおもしろいぞ」と思ってると思うんです。たぶん今日来てくれた人は、わざわざ日曜日に私たちの話に来てくれた人だから、そういう人たちだと思うんですね。

今はいろんな人がいるから、90パーセントの人を変えられる政策なんて絶対にないと思います。でも、1パーセントの人が動くかもしれないスローガンはあると思います。そして、尖ってるスローガンほどそうだと思うんです。

今回けっこう尖ってるプロジェクトなのは、富山県の100万人の中の1万人が「めちゃめちゃおもしろい」と思ったら、富山が変わると思うんです。たぶん、みなさんがこの1万人のメンバーの1人だと思うんですね。

だから、みなさんと一緒に「富山県変わるよ」というところを動かしていけたらいいなと。10年後ぐらいに「この数年をきっかけに、富山県ってめちゃめちゃイケてるすげー楽しい場所になった」というふうになったらいいなと思います。

もちろん自分の会社の仕事もがんばるけれども、同じように富山県がそういうふうになったら楽しいなと思うので、ぜひみなさん協力してください。

廣岡:ありがとうございます。

(会場拍手)

起業に年齢は関係なく「心が燃えたぎったら」スタートする

廣岡:では、いったんフリーで話す部分はここで終了とさせていただきます。質疑をいただいてますので、すべては答えられないんですが、お時間の許す限りご質問に答えていきたいなと思います。

(多く挙げられた)テーマは「挑戦」と「年齢」の関係性について。答えのない、「それ関係あるんですか?」みたいな質問が来てたんですが、各々の持論をぜひお聞かせいただきたいなと思うんですがいかがでしょうか。

平田:45歳で起業して13年。ぶっちゃけ58歳になったんですけど、サラリーマン時代まっ白髪だったのが、好き放題やってたら髪の毛が黒に戻ってきました。

(会場笑)

平田:私はまったく染めてません。年齢うんぬん言ってるところがナンセンスというか、「地方だ」「都会だ」という論争と同じです。自分の心が燃えたぎったらスタートする。(他の登壇者が起業の理由について)「ノリで」と言われているのは本当にわかるんですが、いろんな事件・事故とかでパッションが湧く瞬間ってあるわけです。

原動力になったのは、リストラで辞めていく社員の姿

平田:僕の場合は、大リストラで自分自身で7,000人以上の人を切って。砺波にも魚津にも工場を作っていたんですが、閉鎖する時の責任者は実は私だったんです。この地域も、本当にご迷惑おかけしたところです。その時の、辞めたくないのに辞めていく社員たちの姿が僕のハートに完全に火をつけて。

廣岡:原動力なんですね。

平田:「新たな雇用を絶対に生み出してやる」っていう、狂ったような(気持ちが原動力になって)大手町でずっと3年どさ回りできた。だから、年齢も性別も学歴も関係ない。「関係ない」と思い込まなきゃやってられるかっていう話(笑)。

廣岡:思い込みっていうのは、けっこういいテーマですよね。言い聞かせる。

橋本:マスクを外す・外さないとけっこう似てるなと思うんです。そういう人ってマスクをつけるんですよね。右見て左見て生きている人たちだから、関係ないですよね。

平田:「人生人任せ」みたいな。人に「行け」と言われたら行くんかいっちゅう話じゃないですか。自分の人生、生まれる時も1人なら死ぬ時もひとり。人生の自身の決断が重要だと考えます。だから今この会場に来ているだけで、たぶん他の人よりパッションある方々だと思うので。

(一同笑)

平田:それと勇気をだして、ちょっとのもう1歩。

廣岡:スモールステップ。何か1歩ね、今日から24時間以内に変わってくると(良いです)ね。

平田:ご質問をくれた方には本当に恐縮なんですが、関西弁で言ったら「もう行かんかい!」っていう話です。

廣岡:ご質問いただいた方ご自身のこともそうですけど、みなさんが聞きたいところを言っていただいてるかなと思うので、すばらしい質問だなと思う。

使命感でやるのか、自分が好きだからやるのか

佐藤:年齢の件と起業の件なんですが、私自身がうちの会社に入った時には製造業だけだったんです。今は会社が8つぐらいあるんですが、ここ数年で倒産した会社をいくつも買い取っていて。

廣岡:買い取ってるんですね。

佐藤:ぜんぜん再生になってないんですが、それを再生させようと思って。すごく特殊な技術を持ってるとか、日本の最後の染色工場とか、レースの工場とか、みんな誰も買わないんですよね。だけど私がなんで買うかといったら、大好きだからなんです。

ここで作ってるものをめちゃめちゃすごいと思うし、周りのお金儲けをする人にとっては興味ないけど、私にとってはめちゃめちゃ興味があるっていう、ちょっとオタクちっくなところがあって。

(従業員が)70人ぐらいしかいなかったのが、この10年ぐらいで450人ぐらいになっているんです。家業も全部継いでるけど、今増えた部分って新しく私が始めた事業なんですね。

ただ、引き継ぎながらも新しくやれるのは、「やらなくちゃいけないから」でやっているのか、それとも「好きでやるのか」っていう、ただそれだけの差かなという気がするんです。

起業に年齢は関係なく、大事なのは夢や意欲があるか

佐藤:27歳で家業を継いで30年目になるんですけれども、このところやりたいことがいっぱいあって。地元のフルーツが特産なのでジンを作りたい。春のフルーツのジンと、秋のジンを作ろうと思っていて。

ジンもやりたいし、ホテルもしなくちゃ、地元の羊牧場を作りたいとか。これをやろうと思ったらあと50年ぐらいかかるから、うちの息子には110歳までは生きる予定で「定年は100歳だから、お前が80歳まで社長でいるかもしんないけどごめんな」って。

やりたいことがあると、どの年齢でもいくらでも起業できると思うし、やりたいことがなくなって早く引退して「あとはゆっくり過ごしたい」となったら、もう絶対に新しいことはできないですよね。野心があったり、夢があったり、意欲があるかどうか。ただそれだけじゃないかと思いますね。

廣岡:意欲ですね。ありがとうございます。

(会場拍手)

廣岡:日本の人口って平均年齢が50歳ぐらいですから、もしかすると48歳で起業したら「お、若いね」って言われる可能性もありますよね。そういう時代がもうここまで来てるということですので。若いとか年いってるとか関係なく、志や思いがあったら行動派でやっちゃえと。「やっちゃえ日本」ですね。

平田:20代、30代から(夢や野心を)持っていても、探せばチャンスは世の中にいくらでもあるので、チャンスに出会うまで粘るかどうかだけじゃないですかね。

廣岡:一度の人生ですからね。

既存のビジネスと戦わずに、新しい分野にトライする

廣岡:あと、打ち合わせで藤野さんからあった話なんですが、「1・長老が邪魔しないもの。2・介護系。3・コンビニ」の話なんですが、ここらへんとなぞらえて、最後締めの言葉をいただければと思います。お願いします。

藤野:チャンスはめちゃくちゃどこにでもあります。これから2040年のことを考えればいいんですよ。この20年間で伸びる、絶対に必要になるものって、要は誰もやってないことじゃないですか。誰もやってないことは邪魔されないことなんですよ。

「長老」っていうのは、今ある既存の業種の上の中に成り立ってるので、新しいことをしたら邪魔されないんです。

廣岡:戦わないんですね。

藤野:絶対に戦わない。まずは新しいことにどんどん挑戦することが大事です。「新しいこと思いつかない」といったって、古い産業に新しい流通を加えるとか、新しい付加価値をするとか、DXを加えるだけで付加価値になるわけですよ。

長老はDXがわからないじゃないですか。そしたら「その部分は私がやらせていただきます」「DXとか、そんな難しいところは全部僕がやりますので」「長老がやらなくてもいいようなことは、全部僕がやります」と言って、おいしいところを全部取ればいいわけなんですよ。

「あれが邪魔する」「これが何する」「何か言われるかもしれない」ということではなくて、未来に向かって、得意なこと、必要なこと、欠けているものをやっていけば、結果的に邪魔もされないし、伸びやかに成長する分野があります。

工夫さえすれば、既存の仕事でも“尖る”ことができる

平田:口を挟んであれなんですが、うちの社名の「コネクテックジャパン」は、経済学(ヨーゼフ・)シュンペーターの『イノベーションの定義』から取ってるんです。

シュンペーターが言うてるイノベーションは、ニュートンの法則のような発明が突然パーンとくるんじゃなくって、今あるものと今あるものをどう結びつけて未来のお役に立つかという、「新結合」の意味なんですね。今おっしゃっていた話は、まさにそこなんですよ。

もうブルーオーシャンがないなんてことはあり得なくて、今ある地域の力やサービスを真剣に考える。考えるのはタダですし、無限に時間が使えるわけで、そういう地頭を作るのは重要です。

藤野:小麦の奴隷だって、ただのパン屋さんに見えるけど絶対にただのパン屋じゃなくて。クソうまいカレーパンを誰でも作れるっていう。

廣岡:もう「クソ」がついちゃいましたね。

(一同笑)

平田:うまいにクソついたらあかん思いますけどね。カレーパンだけに。

廣岡:掛け算しましたね(笑)。カレーパンですもんね。

橋本:その掛け算で言えば、みんなはカレーパンの中身にこだわるんですけど、外見をSNSでバズらせるという戦略をやったので、本当に掛け算ですよね。

藤野:自作してね。

廣岡:サクサクしてる。既存の仕事の中で尖りにいってるということは、共通してるかなと思いました。

藤野:工夫次第でいくらでもやりようがあるってことなんですよ。

廣岡:工夫次第。新しいことって、行けば行くほど難しくなって仕事にならないこともあると思います。日本の社会問題や既存事業含めて、抜けたパズルのピースで勝負するってことですよね。

ここでお時間がここで来てしまいました。あとはお酒を飲みながらやり直したいぐらいなんですけども。

(一同笑)

廣岡:こちらで第1部は終了とさせていただきたいと思います。みなさま、大きな拍手をお願いします。

一同:どうもありがとうございました。

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