2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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斉藤知明氏(以下、斉藤):僕は今日のお話を聞きながら「Unipos」はどう役立つのかな? と、考えていたんです。どんなサービスかというのだけ簡単にご説明すると、これが一番わかりやすいかな。
会社の中にオープンなタイムラインがあります。そういうWebページがあります。その中で、この人の行動がいいなと思ったらメッセージとポイントを送り合うことができます。「曽和さん、今日の講演、こういうところがよかったです。ありがとうございました!」というメッセージを、例えば同じ組織だったら送ることができます。
それを見た他の人、例えば参加者のみなさんがパチパチと拍手をすると、いいねされているのが曽和さんにも僕にも届く仕掛けになっております。
そこに少額のポイントが付いていて、実際のピアボーナスが給与として少額で300円とか400円とか、それぐらいの程度ですけれども、給与として換算されていく仕組みになっています。
これが実際のスマホの画面ですが、良い行動がタイムラインで流れるようになっています。送れるポイント、貰ったポイントがあって、こんなかたちで「本日は新しい施策の相談にのっていただきありがとうございます。不安もなくなり目指す先も明確になりこれからが楽しみです」というようなメッセージを送られています。これは部下から上司へのパターンですね。
「先日開始された広告経由で商談が決まり、受注につながりそうです。これはセールスからマーケのみんなにという感じですね。このようなメッセージが送られていたり、オープンの場所で展開されていくような仕組みになっています。
これは日本人にとって必要なサービスなのかもなと僕が思っているのは、「自己効力感を高める方法」にけっこう則しています。今日のスライドを見ていて思いました。みんなわざわざ口で言わないんですよ(笑)。
曽和利光氏(以下、曽和):そうですよね。映画でもアメリカの映画はすぐ夫婦で「愛してるよ」と出てくるんですね。
斉藤:そうそう(笑)。
曽和:だけど日本人はそんなことは言わないと思うんです。
斉藤:「当たり前」と言うじゃないですか。とある先生とお話をした時に、「感謝の反対は当たり前だ」と表現されていたんです。すごくおもしろいなと思ったのは、「あなたがこれをやるのは当たり前でしょ。できて当たり前でしょ」と思っているから、感謝を言わないんですよね。
斉藤:感謝を言われないと、本人からすると「当たり前と思われているんだ。別にこれをやっても大した意味はないんだ。自分の存在意義は何だろう?」とどんどん自己効力感が失われていくという話をその時にされていて、「これはすごくもったいないことをしているな」と思ったんです。
いろいろなタイミングで、いろいろなところでこの自己効力感を高めるチャンスがあるのに、それを誰も言わない、口にしない、文字にしない。1on1という場があったとしても週に1回。四半期に1度の面談だったら3ヶ月に1回となってしまう。
だからこそ、もっとリアルタイムにお互いがいいねと思ったことや、この行動はすばらしいと思ったことを表現し合う、感謝し合う、称賛し合う文化を築くことによって、どんどん自発的に自己効力感を高め合うような組織作りを僕らが支援していくことができるのではないかなと思っています。
やっぱり人事は難しいという話に曽和さんとの中でなったと思うんですけれども、この「自己効力感を高める」ことも含め、守破離の守のところで行動レベルのマネジメントをインプットしていかなくてはならない。もう本当に人事の方はいっぱいやることがあると思うので、こういうところはプロダクトやテクノロジーの力を使って、効力を高め合うような文化作りを我々はご支援していきたいと思っています。
導入いただいた企業さんからよくいただく声でいうと、「共同の基礎作りができたことで心理的安全性が高まって、どんどん自立的な行動が増えていったよ」というものです。
実際にカクイチさんという製造メーカーの企業さんですと、「Unipos」で感謝体質の文化ができあがったことによって工場で勝手な工夫がどんどん増えていって、新しい自立マシーンみたいなものが工場に行ったらできていた、と社長が喜んでおられたんです。これは僕らが寄与できた風土作りの一環なのかなと思っています。
導入企業数もありがたいお話で増えてきております。今日は本当にシンプルに、これくらいにさせていただきます。ありがとうございます。
斉藤:ではQ&Aのコーナーに移っていきたいと思います。いろいろご質問をいただいております。曽和さん、1つずつお願いします。上からまずいきましょう。
「組織の分断には横の壁であるサイロ化と、縦の階層のスラブ化と言われているものがありますが、各々の組織面での問題特性とそれらの乗り越え方をご教授いただければ幸いです」。けっこうマクロな質問になっています(笑)。
曽和:もともと分業をしていくということに関していうと、横の壁は壁があっても機能するように作るのがまずはベースだと思うんですよね。横で壁を作っているにもかかわらずぐちゃぐちゃしなきゃいけないと言うんだったら、分けなくてもいいという話なので。
今回のテーマは特にそうなんですけど、ポイントはどちらかというと縦の階層のほうが大事です。権限移譲するにしても、ルールを決めるときに先ほど言ったように行動、結果、計画、文化のどれで管理するのかというこの4つがあるわけなんです。
自社のステージや成熟度合を見て、縦の階層を作って権限移譲をする際にどのルールでやっていくのかを見極めることが一番だと思います。
横の壁というのは今の仕事をガッツリやっていくというよりは、新しいものを生み出していくとか、新規結合を生み出す時にすごく必要なことになってくると思います。なので、ちょっと高度な問題ですけどね。今はそれくらいしか言えないんですけれども。
斉藤:そうですね(笑)。ちょっと広いテーマだなと思いました。横の壁はかなり分業しづらい世の中になってきていますよね。
弊社だとインサイドセールスとセールスのチームがありますが、たとえチームを分けたとしても、商談を受注につなげるという流れがあったとしたら、商談とはどれくらいのクオリティのものを言うんだろう? 会えればいいのか、それともここまで温度感が高いものじゃないといけないのか? というコミュニケーションは横の壁の中でも必要になると思うんです。
例えば「○○はコミュニケーションしないといけないポイントだ」「ここはコミュニケーションしなくていいポイントだ」と割り切れる状況を作ってあげられるといいのかもしれないですね。すみません。エヌイチ(N=1)のケースでしかお話しできないのですが。
斉藤:次の方向にいきますね。ステップ2のところだったと思うのですが、「『ジョブ型の準備ができていない』と曽和さんは表現されましたが、もう少し詳しくうかがいたいです。また、メンバーシップのままだと難しいのでしょうか? ジョブ型の準備を管理職への成長・成熟がないままに次のゾーンに進んだ結果なような気がしています」。
曽和:すみません。これはちょっと誤解を招いたかもしれないです。準備ができてないというのは、「何かやらないといけない」という感じに聞こえたかもしれないんですけど、まったくそんなことはないです(笑)。ぜんぜんそこを目指さなくてもいいと思います。
ただ、ジョブ型とまではいかなくてもステップ2的なことをやろうと思ったら、一つひとつの行動レベルまでブレイクダウンして「〇〇をやるんですよ」と明確化していくことがどこかのタイミングで必要になります。だから、どちらかというと僕の場合はジョブ型は目指すべきものというよりは通過点という感じがしていているんです。「ジョブ型的なもの」というんでしょうか。
例えば1人の人の人材育成という観点から見ても、まずは行動をきちんと規定してあげて、それがきちんとできるようになったらあとは自由に創意工夫してやっていくというような流れがあるじゃないですか。これは1人の人でもそうなんですけど、組織全体としても同じだと思うんです。
だからジョブ型は目指すべき最後の砦ではなくて、ステップ2くらいの問題だと思っています。なので、メンバーシップのままで機能できている会社がジョブ型に移行させるのは必ずしも必要ではないというか、むしろ対抗的なところもあるんじゃないかなと思います。
斉藤:それも先ほどおっしゃっていましたが、みんなが成熟している企業だったらいきなりステップ5も成功するかもしれないと曽和さんが表現されていましたよね。
曽和:ぜんぜん問題ないと思います。
斉藤:行動を自分から既定できるのであれば、行動を規定する必要はないよねということかなと思いました。ありがとうございます。
斉藤:これは今日の本質的な問いかもしれないですね。クエスチョンの続きになりますけれども、匿名の方よりいただいた質問です。
「半期・四半期の評価はフィードバックの観点からするとNGだと思います」。つまりリアルタイムじゃないからということですかね? 先ほどの4つの観点だったところの、ここですね。
「Timelyというところに反しているように感じます。ノーレーティングの流れの中で1on1や日々のフィードバックが大事と言われていますが、問題点があるとしたら何でしょうか?」。
曽和:これはマネージャーのマネジメント能力がめちゃくちゃ高くないと難しいということだと思いますけどね(笑)。ノーレーティングは究極の権限移譲ですよね。会社全体として「A」「B」「C」「D」というようなレーティングを決めないので。めちゃくちゃシンプルに言うと、ノーレーティングは報酬原資を渡して「はい、もう考えず分けて」という感じじゃないですか(笑)。
となってくると普通に目標管理するよりも、より評価行動をマネージャーが自発的にやっていかないといけないので、そこが難しいというだけだと思うんですよね。スーパーマネージャーばかりだったらノーレーティングでぜんぜんかまわないと思うんですけど、現実ではそんなにそういう会社はないわけですよね(笑)。
斉藤:難しいですね。それこそマッキンゼーの退職者の口コミとかあるじゃないですか。そういう転職サイトにあるような口コミを見てもやっぱり優秀な会社、業績を残している会社ほど評価よりも納得性がすごく高い傾向がありますよね。
マネージャーの力によって高いのかは定かではないかもしれないんですけれど、その評価の納得性がシステム上高いという中で、ノーレーティングはある意味で納得性を高めるための手段の1つとして「画一化できないから対話に任せよう」という手法だと思うんです。
なので、そもそも画一化ができるところだとノーレーティングじゃないほうが納得性を高めるために機能するだろうし、画一化ができないところだと本当にマネージャーの力量によるから優秀なマネージャーがいないと成り立たないよねという解釈ですかね。
曽和:そうですね。
斉藤:ありがとうございます。これが難しいなと思った質問の1つですね。
斉藤:続いての質問になります。
「マニュアル化など言語化による形式知化はすごく大事だと、聞いていて理解はできるけれども、どうしても言葉によって認識の制約と誤解の発生が起こることはあると思います。このマネジメントを形式知化させる、または行動を形式知化させる時の要諦は何がありますか?」。
曽和:先ほど組織観、人材観、マネジメント観と言ったと思うのですが、経営層やマネージャーの方々へ、「日々のマネジメント場面において判断の背景になっている価値観と、あなたのマネジメント観は何ですか?」と聞いた時に出てくるものと、社会的な望ましさを意識しながら答えているものが違ったりするんです。
そこが問題だと思うんですよ。よく「人間は自分のことをちゃんと理解ができていない」と言いますよね。本来知るべきものは「その人のマネジメントにおける本当の判断基準とは何なのか?」で、あなたのマネジメント基準は何ですか? と意識的に聞いて表面的に出てきたものではないと思っています。そこを掘り出すやり方ですね。
その掘り出し方はすごく難しいんですけど、僕は意見を聞くのではなくて、例えばパーソナリティのテストみたいなことをやってみて、こういうパーソナリティの人が多いと。そうなったら、マネジメント観とか人材観は本来こういうふうになるべきだよねと、パーソナリティから類推して彼らの持っているマネジメント観を明らかにしていくのを一方でやっていく。
でももちろん一挙に聞いたらいいと思うんですよ。あなたのマネジメント観は何ですかと。結果がすべてなのか、やったことを評価したいのか、などいろいろあると思うんですけども、その両方から調べて出てくるギャップを棚に上げて議論をすることが大事だと思います。
なので、意見を聞いて整理するだけだとかなり危険です。出てきたきれいごとがまとめられるだけだと、日々のマネジメントではぜんぜん判断基準として求められない。無意識で持っている判断基準が結局は使われるんだったら、社員からするときれいに作られたMVVを見て「言ってることとやってることが違うじゃん」ということになるわけです。
ですから、めちゃくちゃ平たい言葉で言うと、「本音を探り出す」ということなのですが、なかなか難しいですよね。1つのやり方としては、僕はパーソナリティから類推するのが実はいいのではないかなと思います。
あなたはこの会社をどうしていきたいですか? と聞いたら正確なものが出てくるとは限らないと考えていくのがベースだと思うんです。みんな良いことは言いますからね(笑)。
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