2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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曽和利光氏(以下、曽和):それでは僭越ですが、私から話題のシェアをさせていただきます。
今回は「100人の壁」「300人の壁」といった人数にまつわるお話をしていきます。本来、そこまで人数にこだわるものではないと思いますが、多くの人がそこに壁を感じるから、こういう言葉がでてきていると思うんですね。その裏には、一体どんなメカニズムがあるのか。これについて、ちょっと一緒に考えていきたいと思います。
私もこれまでにいろいろな規模の組織を経験してきました。私自身の会社は1人で始めて今20人ぐらいなので、なんなら100人の壁にまで達していないんですけども。ライフネット生命の時は開業1年後に入社して、50人ぐらいから100人ぐらいの規模でしたね。まさに100人の壁あたりのところをやっていました。
オープンハウスは、もうちょっと多くて500人ぐらいでした。1人当たりのマネージャーが見ている人数が多かったので、ぎりぎり500人という感じで、これは300人の壁だったのかなと思います。
けっこう、その都度いろんな壁にぶち当たりましたね。1人で始めたり、50人、500人、数千人のリクルートまで経験しているので、当時からそれぞれの規模感についてなんとなくの肌感覚はあります。
今のお客さまもスタートアップ、普通のベンチャー、メガベンチャー、大企業など、本当にいろんな規模感でやっています。今日はそのあたりを通じて、私が感じていることをお伝えしたいと思っております。
まず「組織が成長するとどうなるのか」ということですね。これ、めちゃくちゃシンプルな話なんです。人間にはいわゆる「認知限界」というものがあります。例えば、電話番号を覚えるにしても「080の、〇〇〇〇の、〇〇〇〇」みたいに区切って、チャンクというのか、かたまりで覚えますよね。それ以上長くすると一気には覚えられないからです。
こういう単純な認知と同じように、組織のマネジメントにおいても人数が一定以上増えると、どんなスーパーマネージャーでもメンバー一人ひとりの状況を把握できなくなるんですね。こうしたことは、当然みなさんも実感されていると思います。
これは古くからいろんな人が指摘してきているので、「最も効果的なチーム人数とはいったい何人であるか」について、さまざまな研究がございます。「マネジメント・スパン・オブ・コントロール」といって、「統制できる範囲はどのくらいであるか」という研究もあります。
研究結果としては、いろいろなんですね。厳密に「何人までが一番いいです」ということではなくて、正直言うと俗理論っぽくて。ざっくりと、ふわっとした結果が、各所の研究で出ています。
例えば「マジックナンバー=6±1」とかですね。「7±1」と言っている人もいますので、だいたいこのあたりかなと。ここ(スライド)に書いてあるのは、いろんな研究の結果をバーッと全部混ぜたものです。
「メンバーが10人以内のチームのほうが成功しやすく、仕事と家庭のクオリティが高く、軋轢が少なく、コミュニケーションが緊密で、団結力があり、組織的に行動する」。「家庭の」っていうのもおもしろいですよね。「軋轢が少なく」というのは、さっき言ったように「ギスギスしない」ということです。その上で、「方向をちゃんと合わせて行動する」ということが各種研究結果で出ているので、どうしても10人以内になるんだと思います。
モンゴル帝国の軍団も、確か10人で1部隊です。また、史実に基づいているのかわかりませんが『キングダム』も10人ずつですよね。百人将とかもいますけども。そういうことも、実践的な試行錯誤からなされてきたんだと思います。
それから、ジェフ・ベゾスさんの「2枚のピザ理論」も有名です。5~8人ぐらいの「2枚のピザを囲んでワイワイできるぐらいのチームが限界だろう」という話ですよね。
いろんな人の実践や研究から、「6~7人ぐらい」が1人のマネージャーがマネジメントできる適切な人数だと言われています。
ただ「相互依存性が強い」チームは、もっと小さいチームである必要があります。助け合いながらチームワークでいろんなことをやっていき、しかも何か新しいものを作っていく組織であるほど、その必要がありますね。
逆に「相互依存性が弱い」、実行型でオペレーショナルな組織なら、もうちょっと大人数でも大丈夫です。一人ひとりがチームに関わっていなくても、自分の持ち場をきちんと守ってさえいればいい場合ですね。ある程度チェーンオペレーションがしっかりしていて、そういうマニュアルがきちっとしているところで、例えばコールセンターなどもこれに含まれます。
このように適切な人数は、組織によってある程度変わってくると思いますが、10人以下で、だいたい7~8人ぐらいなのかなと思います。
今日も「100人の壁・300人の壁」というテーマですが、俗にいう「1-3の法則」というものは、1人、3人、10人、30人、100人、300人など「1と3に関わる数字のあたりでそれぞれ壁があるんじゃないか」という説ですね。1人が3人になると「組織ができる」と言われていますし、10人になれば「1人がマネジメントできる人数の限界を超える」わけですよね。
6人を理論値とすると、そのかたまりが6個で36人。それがさらに6個できると216人になります。そして、100人あたり、300人あたりで何か壁を感じると。このあたりが質的な変化を感じていく人数なのかなと思っております。
つまり認識の限界を超えると、組織を分けなくてはいけなくなると。これが、いろんな壁の問題点だと思っています。中間管理職というものができるのも、こういう理由だと思うんですね。
例えば、(スライド左の図では)1人で7人を見ているわけです。でも、もし6人がスパン・オブ・コントロールの限界だと考えれば、1人が7人全員を見ることはできないと。だから、右の図のように4人と3人に分けて、中間管理職を置いて1段増やしていく。このように階層を作っていく必要が出てくるということですね。
そして、さっきの216人みたいな数字になっていくと、6人の束が6個の束を、また6個作る感じですね。さらにもう1段増やして、2段階にすることが必要になってきます。つまり100人の壁とはおそらく、経営層とメンバーの間に1段階の中間管理職ができる状態。それが2段階できるのが300人の壁で。めちゃくちゃざっくり言えば、そういうことだと思います。
階層を作るということは、当然ながら権限委譲が出てきます。自分では見られないので、管理職を作って権限委譲をしていくわけですよね。でも、「よきにはからえ」「任せたよ」と、何でもかんでも自由に任せることが権限委譲ではありません。
「本来自分がやらなきゃいけないものを誰かに任せて、自分がやってほしいことを、自分が見ていなくてもやってくれるようにする」。これが権限委譲だとすると、そこには当然「ルール化」が必要となります。
直接見られなければ任せるしかないんだけど、任された人は勝手にやっていいわけではない。だから「権限の範囲」「実行の方向性」「どういう時に報告するのか」など、さまざまなルール化が必要になるわけです。
この「ルール化」はどのようにしたらいいのか。実は「行動」「結果」「計画」「文化」の4つのマネジメント手法に基づいたルールの方向性があるんですね。
この「行動」「結果」「計画」「文化」というのは、経営者の好き・嫌いで自由に選べるわけじゃありません。これには、適切な、理想の順番があるんですね。それがこの(スライドの表)です。
これは今日のキースライドかもしれません。『人事と採用のセオリー』という本でも詳しくご紹介しています。
これは(ラリー・E・)グライナーさんという、けっこう昔の方の1980年代ぐらいの論文です。「組織が拡大していくにあたって、マネジメント手法はどのように変化していくのが理想か」ということを書いています。すごくおもしろい理論なんですが、ぜんぜん広まっていないので、今回取り上げさせていただきました。
もちろん、理想通りにいく会社はないと思いますが、考え方の1つのフレームとしておもしろいので、ちょっとご紹介しますね。
まずはStep1として認知限界を超えない、すごく小さい組織の場合ですね。私も1人で始めて、そこからじわじわ仲間が増えていきました。そういうい会社では、まず「背中でマネジメント」するんですね。「俺の背中を見てついてこい」みたいな(笑)。
ここ(スライド)に「創業者のリーダーシップ」とかいろんなキーワードを書いていますが、すべてがインフォーマルで「何かあったらリアルタイムで聞いてこい。それに対して指導するから」というものです。小さい会社なので、市場や顧客と直接接点があります。何なら経営層も顧客に対峙しているので、そういった普通のルールを作っていく必要はありません。
そして、先ほど言ったように認知限界を超えていくと、Step2以降にしていく必要があります。グライナーさんによると「Step2では『行動でマネジメント』をするのがいい」ということです。
つまり、「1~10までこういう行動を取ってほしい」と、ある種のマニュアル化をするんですね。やってほしいことを、きちんと行動レベルにまで落とし込んで「じゃあこれをちゃんとやってね」とお願いすると。
管理職の方々は「行動リスト」みたいなものを用いて、「ちゃんとこれができているかどうか」を確認します。これがStep2ですね。これによって現場の最前線の方々は、一応規定通りに「経営者がやってほしいこと」をやってくれるようになります。
ところが、成長企業では当然、環境の変化が激しい中でやっている。だから、最初に決めた行動リストが陳腐化する可能性は大いにあるわけです。その場合、最前線の人にいろいろ考えてほしいですよね。「行動でマネジメント」の下で「こういうふうにやれ」と言われていたとしても、「こっちのほうがいい」とかちょっと改善したり、別のやり方を試してみたりしてほしいわけですよね。
ところが、行動でのマネジメントをあまりにも強くやっていると、「自分の頭で考えなくなる」ということが起こったりします。ここ(スライド)には「自立の危機」と書いていますが、それをなんとかしなきゃいけない問題が出てくるんですね。
そうしたら何をすべきかというのが、Step3ですね。このあたりから「自由と自己責任」という言葉が出てきます。MBOでもKPIでもOKRでも何でもいいんですが、「結果」や「目標」という方向性を与えた上で「やり方は自分たちで考えてくれ。自由にやってくれ」と言うんですね。
「結果がすべて」で、あとは自由なので自己責任なんですね。「うまくいったらこれだけ。うまくいかなかったらこれだけ」とインセンティブシステムも作ります。このように、「結果のマネジメント」を行っていくステップが次に出てきます。
ところが、ベンチャー企業さんとか急成長企業では、Step2を飛ばしてStep1からStep3にいってしまうところがすごく多いんですね。理由の1つとしては、たぶん経営者の方々はStep3が好きなんですよね。逆にStep2が嫌い。1から10まで行動を指摘されて、「これをやってくれ」みたいなことを言われたら自分だって嫌だからだと思います。
「自分が嫌なことは、相手も嫌だろう」と思うのが人間ですよね。だから「お前らも自由のほうがいいだろ? 俺はもう面倒みきれないから、結果だけ与えるので後はやってごらん」みたいに、いきなりStep3に持っていく人が多いんですね。
ところが、Step2を除いてStep3に持ち込んだ瞬間、みんなの足が止まります。これは、私がコンサルティングをさせていただいている会社さんでよく起こっていますね。「自由とか自己責任とか言われても、何を考えていいかわかりません」みたいな。
「自由にやりなさい」というのは1つの脅迫なんです。誰でも彼でも自由がうれしいわけじゃない。「何か指示してください」みたいな人って、残念ながらいっぱいいる。だから、それでは機能しないということが起こります。
だからこそ、「やっぱりStep2をちゃんとやらなきゃ」ということで、「行動のマネジメント」が大切なんですね。「実際にどういう行動を取ってもらわなきゃいけないのか」ということをちゃんと示して、型ができたらようやくStep3に行って自由にさせる。こうすれば、自律的に動くことができます。
ちょっとややこしいですけど、「1→3→2→3」みたいな動きを取るところが多いですね。このあたりは、たぶん100人の壁あたりでよくあることだと思います。
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