2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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井上和幸氏(以下、井上):みなさんこんばんは、経営者JP代表の井上です。本日は伊庭さんをお迎えして、「できるマネジャーは、『これ』しかやらない!」をお届けしてまいります。伊庭さん、今日はよろしくお願いします。
伊庭正康氏(以下、伊庭):よろしくお願いします。
井上:本日のアジェンダは事前にご覧いただいている通りですが、それだけに囚われず、昨今の状況を話しながらライブ感のある本音トークにしていきたいと思っています。みなさんもご質問やご意見があれば、その都度チャットにどんどん書き込んでください。そちらも拾いながらお話を進めていきます。では伊庭さん、よろしくお願いします。
伊庭:お願いします。
井上:ご存知の方も多いと思いますが、伊庭さんはリクルートグループご出身で、在籍中に高い営業成績を残された方です。今はその経験を活かして、「営業の教育」「リーダー教育」などでご活躍されています。
今日は著書である『できるリーダーは、「これ」しかやらない!』を柱に進めていきます。こちらの書籍は16万部のベストセラーで、さらに売れ続けていらっしゃいますね。
伊庭:本当に、出版社さまさまでございます。
井上:関連本や図解本も出ています。つい先だって『聞き方・話し方編』も出版され、僕もさっそく拝読しました。
伊庭:ありがとうございます。
井上:ちなみに、今回の新刊を書くにあたってはどういう経緯があったんですか?
伊庭:前作の『できるリーダーは、「これ」しかやらない』が良かったということで、PHP(研究所)さんからシリーズ化を提案いただき、私以外の方も(「〇〇〇は、『これ』しかやらない」というタイトルの本を)書かれて、それが「これ」しかやらないシリーズになりまして。
井上:伊庭さんの本がその発端だったんですね。
伊庭:そうなんですよ。
井上:当社パートナーの大塚寿さん(エマメイ・代表)も出されていますよね。(※『50歳からは、「これ」しかやらない 1万人に聞いてわかった「会社人生」の上手な終わらせ方』『できる人は、「これ」しか言わない 1万人の話を聞いてわかった「一瞬で心をつかむ」伝え方』)
また、前々回はこのシリーズで松本利明さんに出ていただいているんですよ。(※『できる30代は、「これ」しかやらない 会社に使われて終わらないシン・働き方の教科書』)
伊庭さんが発端で、定番シリーズになったんですね。
伊庭:最近の出版業界は「シリーズ化させること」が勝ち筋だそうです。
井上:そうなんですね(笑)。
伊庭:もともとはこの本をシリーズ化するかどうかは別として、「研修でやっていることの各論が多い」とPHPさんがおっしゃって。それで各論を書くことになって、気がつけば「これしかやらない」シリーズに含まれていました。これが現状です。
井上:なるほど(笑)。
伊庭:もともとはシリーズじゃなかったんですね。「これがシリーズなんだ」というのは、著者である私も驚きでした(笑)。
井上:出版社は、マネジメントの方に向けた「聞き方・話し方」というテーマも組み込んだわけですね。
伊庭:そういうことですね。
井上:今日はこの2冊の内容も含めて、いろいろなお話をおうかがいしていきたいと思います。相手役は私、経営者JPの井上が務めさせていただきます。
今日は、世代や業種もさまざまで、幅広い業態の経営者・マネジメントの方々にご参加いただいています。みなさん、お立場上いろいろお悩みのことがあると思います。最近ですと、やはりコロナの影響なども含めて大変なこともあると思いますが、今日は解決策へのヒントとなる情報を、伊庭さんからお聞きできると思います。
伊庭さんも今、いろんな企業に接していらっしゃるし、僕もいろんなマネジメントの方と日々お会いしています。そこで冒頭のアジェンダとして、「(マネジャー・リーダーの悩み)ベスト5」について話をしてみようと思います。
これに関して去年のデータがあったので拾ってみました。ラーニングエージェンシーさんが1,000人ぐらいの管理職の方に行った調査結果です。
伊庭さん、ざっと見ていただいて、今もだいたい同じような感じですかね。
伊庭:1番多い悩みは「部下の育成」ですね。まさにそうですね。5番目に入っている「部下とのコミュニケーション」に関しても、研修で質問が多いですね。
井上:「具体的にどうすればいいか」というお悩みですよね。
伊庭:はい。特にリモートワークが増えてきたので、「部下が何を考えているのかわかりにくくなった」という相談が多いです。
井上:物理的に一緒にいるとなんとなく感じられたものが、オンラインでは察知しにくいということですかね。
伊庭:そうですね。私の実感としては、「育成」の中に「コミュニケーション」も含まれる気がします。「育成」と「コミュニケーション」が2大質問要素なのは確かですね。
井上:6番目までぐらいは、基本的に部下やチーム、そしてそれに当たる自分事でのお悩みです。「会社の業績や将来」についてということも当然あるわけですけど、それより管理職の方は、まずは「部下」とか「コミュニケーション」に関して非常にお悩みだという結果になっていますよね。
伊庭:まさにそう感じます。
井上:この『できるリーダーは、「これ」しかやらない』を書かれた時に、伊庭さんとしては、どういうことをそもそもの柱に立てられたんですか?
伊庭:私の本業は研修事業で、研修トレーナーとしてさまざまな企業に行っていますが、多くの企業さまが悩んでいるのは、「部下に対して指示・確認のコミュニケーションが多い」ということでした。
部下の方は、仕事に対して「言われたからやります」という状態で、企業さまとしてはそれではちょっと頼りないと感じているんですね。もっと仕事を楽しんでほしい。もっと自分から「こうしたい」と言ってほしい。でも、上司はその思いを引き出すことができない。それがお悩みだということでした。
伊庭:上位下達だけでは主体性を引き出すことはできないんです。だから、「それをなんとかするための研修」をずっとやっているんですね。その流れの中で、「部下の主体性を引き出すためのコミュニケーションには、どういうものがあるんだろう」ということが、この本を書くきっかけになっています。
井上:ありがとうございます。僕もそういう話に関わることがよくあるんですね。今のマネジャーは「プレイングマネジャー化している」と。さらにプレイング部長、プレイング役員という感じにまでなっていて。
ハンズオンでやる大切さもあるので、今のマネジャーは自分の仕事も含めて忙しい。その上、先ほど伊庭さんがおっしゃった部下の育成やコミュニケーションが加わる。マネジャーが自分で全部対応するのには限界があるんですよね。そこをどうしたらいいのか。
本を拝読して、僕が感じた伊庭さんのメッセージは「部下のみんなにちゃんと自立してもらって、その上でいきいきと働いてもらうために、上司として何ができるのか」ということです。これは当たっていますか?
伊庭:まさにそのとおりです。データを見ると、今課長職の方などは9割以上の方がプレイングマネジャーなんだそうです。
井上:そうですね。
伊庭:「自分の仕事をやりつつマネジメントをすること」は、やっぱりそう簡単ではないです。一方で、任せることができている方はうまく回っているんです。むしろ、非常にうまく回っている。ということは、「忙しい」と言っているうちは、まだ自分の仕事をやってしまっているんじゃないかと。任せるにあたっては、2つのレベルがあると思っていまして。
1つは、「自分のプレイング業務で、引き継げるものがあれば引き継ぐ」。これをしないとやっぱり苦しいというのが1つ。
もう1つは、「本来課長がやる仕事を、次世代のリーダーの方に引き渡す」。つまり、職場の運営にも一部関わってもらうことによって、「育成」と「自分の時間がない」の両方を解消できる。そういう方がうまくいっているんです。私の本にはそれをうまくやる方法が書いてあったり、研修でもやっています。
井上:そのお話を、全部はさすがにいただけないですが、柱に沿ってエッセンをお聞きしていきたいと思います。
井上:では本編に入ります。部下の方に自走していただくために、マネジャー・リーダーは「これだけやるといいよ」というお話ですが、ズバリ、伊庭さんに結論からお聞きします。何だけやればいいんでしょうか?
伊庭:かしこまりました。「方針はトップダウン、やり方はボトムアップ」。これだと思います。
井上:方針はトップダウン、やり方はボトムアップ。なるほど。
伊庭:うまくいっている組織では、「これはやってほしい」「この方針でやってほしい」ということを明確にしています。部下が「いや、それはちょっと」と言ったとしても、正しいことだったら「いや、この方向で力を貸してほしいんだわ」と言いながらうまく巻き込んでいきます。
巻き込んでいく中で「具体的な方法は考えてもらっていい?」「提案してよ」「一緒に考えていこうよ」という流れがある。つまり、うまくいっているところは「方針がトップダウン、やり方がボトムアップ」なんですね。うまくいっていないところは「方針はトップダウン、方法もトップダウン」。もうやる気がなくなりますよね。
井上:なるほどね。
伊庭:もう1個、最近増えているのはこれです。不幸が待っているんですけども「やり方もボトムアップ、方針もボトムアップ」。
井上:なるほど(笑)。
伊庭:これは優しいようでいて、実は責任の所在があいまいになる。だから部下の評判はすこぶる悪いんです。「みんなどうする?」「あ、そうなんだ。Aなんだね。Bなんだね。Cか。ちょっと多数決を取ろうか。Aがいいと思う人」という。
井上:そこから?
伊庭:極端な例ではそうなんです。これは責任の所在も不明確ですし、リーダーの責任を果たしていないので、やっぱり不満が出やすいです。
伊庭:私は仕事柄いろいろインプットをしなくてはいけないのですが、何かのメディアで(スタジオ)ジブリの鈴木(敏夫)さんのコミュニケーションの取り方を見たんです。その時に「これだ」と思ったのが、鈴木さんは若手の意見をやたらと聞かれるんですね。
「あなたはどう思いますか?」と聞いて、相手が答えると「いや、ちょっとそれは時代を考えると合わないので、やめたほうがいいと思います」と言って。また「あなたは?」と聞き「その観点もあるけど、私はこうだと思うので、こうだと思います」と。そしていろんな人に聞いて「Aだと思います」「Bだと思います」「Cだと思います」とそれぞれ違う意見が出てきたと。
そして、「そっか。みんな意見を言ってくれてありがとうね。確かにそれも一理ある。でもね僕、Aでもなく、Bでもなく、Cでもなく、Dがやりたいの」っておっしゃったんですよ。
井上:なるほど。
伊庭:みんなが納得しています。なぜかというと、話すプロセスがあったからなんですね。「そうか。みんなはそうなんだけど、実は自分はDがやりたい」の時に、強引に決めているわけではない。意見を聞いた上で「やっぱりこれなんだ」と言っているので、納得感があるんです。そして、この方法で決めた方針には誰も逆らわないですね。
井上:なるほど。
伊庭:もしかしたら逆らう方もいるのかもしれませんが、映像上は逆らっていませんでした(笑)。
井上:「みんなの意見も聞いた上で」、トップとして、ボスとしては「これを」ということですね。
伊庭:まさにそうです。票の多さというポピュリズムに流されるより、やるべきことをきちんと話し合った上で「自分の意思を持って、やっていきましょう」ということです。「この方法が良い」ということが、最近よく言われているんですね。
井上:そういうことですね。経営者JPが創業以来、非常にお世話になってきた方なんですが、1980年代当時、日本人初のジョンソン・エンド・ジョンソンの社長になられた新将命さんという方がいます。その後コンサルタントとして活躍をされて、『伝説の外資トップが説く リーダーの教科書』『経営の教科書―社長が押さえておくべき30の基礎科目』などベストセラーの本も非常に多く書かれていますが、その新さんがまさに同じことをおっしゃっていましたね。
彼は「衆議独裁」という言い方をしていました。「みんなで議論を尽くし、最後はトップが独裁で決める」と。独裁という言葉はちょっとあれですけど、要するにトップが決めるんだと。みんなの意見を集めて「決めるのはトップである」と。本当にその通りだと思いますね。
伊庭:そのこと、次の本に書きます。「新さんが言っていたと聞きました」って(笑)。
井上:ぜひぜひ(笑)。
メンバーの「納得」と「主体性」を引き出すコミュニケーション術 一人ひとりが積極的に動く組織に共通する「巻き込み方」
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