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「90分腹落ちセミナー」課長職以上の女性リーダーが育つ組織の要件(全5記事)

「みんなと同じ」では勝てない時代、カギを握るのは人事の役割 日本組織に足りない“3つの力”と、アンラーニングの重要性

株式会社NOKIOOが開催する「90分腹落ちセミナー」の模様をお届けします。今回のテーマは「課長職以上の女性リーダーが育つ組織の要件」。ゲストにみずほ銀行初の女性執行役員を務めた経歴を持つ有馬充美氏を招き、沢渡あまね氏と小田木朝子氏の3名が、女性管理職比率向上の先に、多くの企業が直面する「部長級の女性管理職を増やす」という課題を取り上げ、資質のある人材が組織でパフォーマンスを発揮するためのポイントを徹底解説。本記事では、多様な上級管理職が増える組織づくりに向けた人事の役割について語っています。

これまで、マネジメントの「当たり前」を疑う機会がなかった

小田木朝子氏(以下、小田木):(多様な上級管理職が増える組織づくりに向けた人事の役割について)じゃあ、沢渡さん。

沢渡あまね氏(以下、沢渡):有馬さんのスパイスに、僕は本当に共感しまくってヒリヒリしています。今、アンラーニング、学習棄却が求められていますが、最もアンラーニングが必要なのは「意思決定層」と「人事部門」だと思うんです。この前提でお話をさせてください。私からの3つは、またここにきて韻を踏みます。

有馬充美氏(以下、有馬):(笑)。

小田木:また韻を踏んでくるわけですね。

沢渡:1つ目が「変化創出」、2つ目が「能力創出」、3つ目が「機会創出」。この3つの創出を人事が仕掛けていってほしい、人事にプロデュースしてほしいと思っています。

1つ目の「変化創出」。例えば外の人と交わる機会とか、マネジメントの当たり前を疑う機会といった「変化に触れる機会」って、これまでまったくなかったんですよね。だから、人事が率先して変化を社内に作っていってほしい。

2つ目が「能力創出」。すでに有馬さんと小田木さんと私で「日本の組織にはこんな能力が必要だよね」という話をしてきました。ここで私がまとめます。「対話力・ディスカッション力・言語力」。五・七・五にしてみた(笑)。

小田木:(笑)。

沢渡:対話力・ディスカッション力・言語力、この3つが圧倒的に足りていない。これをそれぞれの層に対してやっていく必要があるのかなと思います。

人事は、組織の景色を変えるための「ファシリーダー」

沢渡:そして最後が「機会創出」。今までと異なる人たちが意思決定に参画する機会を作っていく。例えば、プロジェクト型のジョブを立ち上げて、若手や女性といった、これまでと違う人がリーダーをやってみることでもいいと思います。

とにかく、意思決定に参画する機会を組織の中に作っていくこと。そうしないと、「誰が本来活躍できるのか」「誰にエンパワーしていったら組織が良くなるのか」といった発見や成功体験が生まれないと思うんですね。

私はある大企業、上場企業の人事の顧問をしています。この企業も、「変化創出・能力創出・機会創出」の3つで、今ものすごく汗をかいている。それで組織文化も変わってきているんですね。

私が運営している組織変革Labにも、毎回部長・課長が来てワイワイとディスカッションをしたりして、かなり景色が変わってきています。やっぱり、この3つの創出をしてほしいです。

最後のまとめコメントとしては、「人事が組織の景色を変える『ファシリーダー』であってほしい」。前回もお話ししましたね。「ファシリテーター+リーダー=ファシリーダー」であってほしいという、このような期待を最後にかけたいと思います。

小田木:ありがとうございます。

沢渡:質の高い意思決定をするには、トレーニングや経験が必要です。日本の組織には、「自分たちで問いを立てて」「自分たちでディスカッションして」「自分たちで答えを出す」経験が、圧倒的に足りていないんです。

20年、30年経験を積んだイエスマンだけが、その権限を与えられている状態だからね。ここは正しく壊していかないとダメ。さらにスパイスを効かせちゃいました(笑)。

有馬:人事の方へのヒントというより、人事の方にガンガン課題を投げたみたいな感じになっちゃいましたね(笑)。

「みんなと同じ」では勝てない時代

沢渡:その課題をクリアした経験のある人事の担当者は、異動や転職で職種が変わったとしても、その経験が評価されると思うのですよ。人事を経験した自分自身のブランド価値が高まる、みたいな。

有馬:もちろんそうです。

沢渡:間違いない。チャレンジした経験は宝です。

小田木:そういう意味では、今が天井ではなくて、これからますますポテンシャルが高くなると。そして、このテーマが1ミリでも変われば、組織へのインパクトは大きいんだと思いました。

有馬:そうですね。だからこそ今、「人的資本、人的資本」と言われているんですよね。

小田木:これだけ大きなテーマなので、個の力だけでなんとかなるものじゃないと思うんですよね。だから、外に出てこういうテーマに向き合う。人と関わる者同士のコミュニティでつながって、越境して刺激し合う、支援し合う。組織の中だけで孤軍奮闘しないことがいかに大事か、実感しました。

沢渡:おっしゃるとおり。人事は自分1人でやらない。先週、SmartHRさんの「人的資本経営」がテーマのイベントでの、LIXILグループの元副社長の八木洋介さんの対談レポート記事を見まして。「みんな同じでは勝てない時代」という1行に、私はすごく共感したんですよね。本当に、時代の本質を言い当てていらっしゃるなと思って。

みんな同じであることが良しとされていた組織文化や制度を、どう変えていくか。そのトリガーを引けるのは、人事部門のみなさんなんですよ。もちろん経営との対話、合意形成も必要ですが、「みんなと同じでは勝てない時代」の人事のあり方、また一緒に越境してディスカッションしていきたいと思いました。

ポイントは「対話の機会に踏み出すこと」

小田木:ありがとうございます。みなさんも、本当にありがとうございました。ここまでのプロセスも、まさに対話だったと思うんですよね。問題意識を発信したり、共有したり、沢渡さんと有馬さんとで見てきた景色や経験が違う中で、共通点や相違点を織り交ぜながら話をしてきました。

こういう機会が組織の中でもっともっと増えていくことや、こういう対話を通じたトレーニングがあったらいいなと思いました。もちろん正解もないし、ゴール設定も難しいけれど、「対話の機会に踏み出すこと」そのものがすごくヒントになりそうだと感じました。

沢渡:スパイシーでしたね。

有馬:スパイシーでした(笑)。

小田木:でも、適度なスパイスはやっぱり美味しいなって(笑)。

(一同笑)

そして辛すぎない・痛すぎないスパイスで、心地いい刺激をいただいたなと感じました。

沢渡:そうですね。ダムの放流で少しやわらげますので(笑)。

小田木:クールダウンして(笑)。残りわずかになりましたので、最後に沢渡さん、有馬さんに今日のこの場の感想と、ご参加くださったみなさんへのエールを一言ずついただきましょう。

感想・つぶやき・エールの準備をいただきながら、私は今日お越しくださったみなさんに、次につながる情報提供を含め、アナウンスタイムに入らせていただきます。

人事担当者に向けた2つのお知らせ

小田木:あらためて、今日はご参加いただきましてありがとうございます。沢渡さん、有馬さん、非常におもしろく白熱した場を作っていただき、ありがとうございます。今回ご参加の企業さまに、我々から提供できる情報を2つご案内させていただきます。

まず1つ目は、「いやぁ、人事としてのエールを受け取っちゃったな」という方へ。能力開発・トレーニングの話も出ましたが、「多様性を活かすスキルをどのように定義していくのか」、そして「どうやって社内に提案していくのか」。このプロセスに進む方に、我々は人材育成プランの支援、事例紹介をさせていただきたいと思います。

次に2つ目です。次回は10月の開催となります。10月といえば、実りの秋、収穫の秋ですよね。なので、ちょっとスペシャルな企画をご用意しています。

おなじみ「90分腹落ちセミナー」ですが、10月は3人のゲストの方に、3回に分けてお越しいただくという、スペシャルなお祭り企画に仕立てました。要は10月は「腹落ちセミナー3回やるよ」っていう、大収穫祭企画です(笑)。

沢渡:欲張りぃ(笑)。

小田木:欲張りすぎちゃって、どうしようかなと思うんですが(笑)。10月スペシャル企画の第1弾、ゲストは島田由香さんにお越しいただいて、テーマは「組織と個をデザインする新時代の人事の歩き方」。まさに今日のテーマとつながりますよね。ぜひ来てね、というご案内でした。

最後に、私たちの「90分腹落ちセミナー」は、ご参加いただくみなさんの声によって支えられ、次の企画を考え、毎回の運営を改善させていただいております。ぜひ、お声を聞かせていただきたく、アンケートへのご協力お願いいたします。

沢渡:みなさんの声が私たちのモチベーションです。

小田木:そうそう(笑)。ガソリンです。

「越境」と「対話」で未来志向の合意形成をしていく

小田木:では沢渡さん、有馬さん、最後のコメント・エール、ご準備できましたでしょうか。

沢渡:じゃあ私からいきましょうか。みなさんと一緒に、今日は本当に良い合意形成ができたなと思っています。小田木さんと有馬さんと私は“焼き鳥の具”みたいなもので、そこにみなさんがタレとか塩をかけてくださって、本当に美味しい味ができたと思うんですね。

小田木:すごいイメージですね(笑)。ねぎまのタレを想像しました。

沢渡:越境と対話で未来志向の合意形成をしていく。これをどんどん続けていきたいなと思います。これが組織を変える、世の中を変える大きな原動力になると、私は確信しています。越境しましょう。ありがとうございました。

小田木:ありがとうございます。沢渡さん、なぜか私がエールを受け取りました(笑)。では有馬さん、お願いします。

有馬:今日は本当に貴重な機会をありがとうございました。30年間の自分の経験を思い出すと、「当時の悩みが未だに悩みである」ということが残念でもあって。だから共感もいっぱいしましたけど、まだみんな同じようなことで悩んでいるんだというところですね。

「保守本流」にぶつかるよりも「有効な傍流」を作る

有馬:「こういうことをやればいい」という処方箋みたいなものは、大まかにもう見えてきたと思うんですよね。問題は、やるかどうか。「自分1人だけじゃ」「自分の力なんて」ということではなく、みんなが一歩ずつ踏み出すことによって世の中は変わると思う。

私も微力ながら、一歩でも二歩でも前に行こうと思います。でも、同じようなことで悩んでいる人が、まだこんなにいるんですよね。そして処方箋はだいたい見えている。だから、もう「やるしかない」という感じです(笑)。

保守本流の人を変えるのはなかなか難しいです。だから保守本流に直接ぶつかるよりは、有効な傍流を作っていく。それで、気がついたら保守本流が傍流になっていて、傍流が保守本流になっているという、そういう戦略が一番いいと思うんですね。

沢渡:アウェイが世の中を変える、みたいな。

有馬:そうそう。やっぱり世の中、「こんなやり方を楽しくやっていたら、みんなが集まってきた。やっぱりこっちのやり方のほうが正しいんだ」という感じでメインになっていくと信じております。保守本流と正面からぶつかって、みなさんお疲れだと思いますが。

小田木:お疲れ(笑)。

沢渡:わかる(笑)。

有馬:あきらめずにこっそりと案をあたためながら、いかにメインストリームを勝ち取っていくか。こういうことを戦略的にやっていくためにも、つながりもとても大事だと思います。「ぜひ一緒にやっていきたい」と、私も新たなガソリンをいただきました。どうもありがとうございました。

小田木:ありがとうございます。「処方箋は見えているよ」という、この一言にすごく勇気づけられますよね。「楽しいほうへ」と、有馬さんらしいお言葉もいただきました。

共感者を増やし「2人目の仲間」を見つけることが大事

小田木:みなさんもコメントをいただきありがとうございます。一つひとつ丁寧に目を通させていただきます。沢渡さん、有馬さん、これをぜひ拾いたいなというものがあれば、1つずつどうぞ。

沢渡:じゃあ私から。「課題への共感者、探してみます」っていうコメントがすごくいいなと思いました。共感者を増やしていくこと、2人目の仲間を見つけること、すごく大事だと思うんですよね。2人が「うん」と思っていたら、そこから小さな世論が作れるので。

そのために発信したり、あるいは越境して、違う立場の人が言うことに「うん、うん」と頷く。そうすれば「あ、そうか」と共感も生まれていきますから。ぜひ社内で、まずは半径5メートル以内から、ロールプレイングゲームを楽しむ感覚で共感者を見つけてください。

小田木:ありがとうございます。「2人目の共感者を作ろう」という具体的なメッセージをいただきました。有馬さん、チャット見れますか?

有馬:視聴者コメントで「組織が多様性を活かすための訓練についてのイメージ」っていうご質問がありますね。今、私がやっているプログラムとも関係しているのですが、意思決定に多様性を活かすには、例えば、より多くの人の視点を取得するための能力が必要なんですね。

私のプログラムでは、これをさらに細分化していき、その中で自分が鍛えたいスキルを選んで、日常で実践できる具体的なアクションにまで落とし込んでいきます。

例えば、岸田(文雄)総理のよく言うところの「聞く力」だったり、信頼関係を作るだったり。いろんな視点をまず取り入れて、それを意思決定に活かすための「ディシジョン・メイキングプロセス」をデザインするにもいろんなスキルが必要となりますが。

このように必要なスキルを定義して、それをどんどん細分化していきながらその小さなスキル1個1個をOJTで訓練していきましょう、というプログラムを提供させていただいています。

「自分に足りないところ」を意識して“筋トレ”する

有馬:筋トレのように、「健康になりたい」「早く走りたい」という大きな目標のために、今日どの筋肉を意識して鍛えるかって感じです。組織が多様性を活かすための訓練ということで、一応メソッドがあるんですね。もしご関心があれば、私が主宰する「一瞬一生の会」で、そういったノウハウをご紹介しています。

場合によっては企業から(代表者を)派遣していただいて、その方を核にして企業の中へと広めていく活動も行っています。詳しくはホームページなどをご案内させていただきますね。

小田木:ありがとうございます。有馬さんの「一瞬一生の会」についてはVoicyの対談でもご紹介いただいてます。ぜひそちらからも情報を得ていただければと思います。「聞く力」とか、沢渡さんがさっきおっしゃっていた「対話する力」「言葉にして伝える力」も、本当に基本的なスキルですよね。

有馬:あと、「自分に足りないところを認める力」とかね。謙虚っていうと、性格というか生まれつきのような感じもするかもしれませんが、意識して訓練することによって、筋トレみたいに筋肉ができてくるんですよ。これが、私が学びについて広めたいことですね。

小田木:まさにOSですね。盛り上がった今回も16時半になりました。みなさん、ご参加ありがとうございました。そして沢渡さん、有馬さんありがとうございます。

沢渡:ありがとうございました。10月も来てね(笑)。

小田木:「もうちょっとスパイスを効かせてほしかった」とか「もうちょっと聞きたかった」というお声もあると思いますので、今日の90分腹落ちセミナーの後の楽屋裏トークは今回もやります(笑)。

来週の月曜日に楽屋裏トークを配信させていただきますので、余韻を楽しみたいという方は、こちらもお聞きいただければと思います。チャンネルをフォローしていただければ聞くことができます。ぜひよろしくお願いします。では今日も90分、濃密な時間を一緒に過ごさせていただきました。最後までありがとうございました。

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