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グロービスの膨大なデータが語る、期待を超え続けるマネジャーの3要素【これからのマネジャーの教科書 - 田久保 善彦】(全1記事)

期待を超えるマネージャーは“都合の良い解釈”をして成長する いくつになっても自己変革し続けるための「3つの力」

「セミナーに参加したかったけど、時間が合わなくて行けなかった……」。株式会社イノベーションの調査によると、ビジネスパーソンの2.5人に1人はそんな経験をしているそうです。同社が運営する動画サービス「bizplay」は、オンライン配信を通して、いつでもどこでもセミナーに参加できる環境を提供しています。そんなbizplayのオンライン動画に、学校法人グロービス経営大学院の田久保善彦氏が登場。「上と下と板挟みになってる」というネガティブなイメージを抱かれがちなミドルマネージャーの中で、生き生きと働きながら成果を出している人の特徴を解説しました。 ■動画コンテンツはこちら(※動画の閲覧には会員登録が必要です)

「ミドルマネジャー」にネガティブな印象を持つ人は多い

田久保善彦氏:グロービス経営大学院で責任者をしております、田久保と申します。今日はよろしくお願いいたします。大学を出て、三菱総合研究所でしばらく働いたあと、今はグロービスで研究科長というポジションにいるんですが、11年間多くの社会人学生のみなさんと時間を過ごしています。

今回ご紹介する本も、学生のみなさんと研究をして、それを書籍化したものです。『これからのマネジャーの教科書』というタイトルの本になりますが、そんなお話をしていきたい思っています。

なぜ「マネジャーの教科書」という名前の本を作ったのかという話なんですが、グロービスには本当に多くのビジネスパーソンの方が学びに来られてるんですね。

大企業・中小企業問わず、ミドルマネジャーの方は非常に多いわけですが、ミドルマネジャーと聞くと、少しネガティブな印象を持たれる方は世の中には多いかもしれませんが、どうでしょうか。

「上と下に板挟みになってる」「やりたいことはやれない」「苦労が多い」「残業が多いかもしれない」という話がある中で、それでも生き生きと働いて、成果をたくさんあげてるマネジャーもいるよねと。

じゃあ、ちょっとネガティブに捉えられがちなマネジャーと、生き生きとみんなの期待に応え続けてるマネジャーは何が違うんだろう? ということを明らかにして、世の中に問うていたら、本当に多くの人に価値のあるものが作れるんじゃないかと。そんなことを思いながら研究し、本を作りました。

「ミドルマネジャー」の定義

「ミドルマネジャー」とはどういう定義をしたかというと、上下左右に挟まれている人。これが典型的なミドルマネジャーの実態であり、私どもの研究の1つの定義なんです。

なので、トップは本当に自分のやりたいことができるかもしれない。もちろんトップの上にも、株主とかいろんな方がいらっしゃるわけですが、典型的には上司と部下。もしくは、隣の部の自分と同レベルの人。

それからステークホルダーと言いますが、お客さま、それから外注先さんに四方八方ぐるぐる取り囲まれて、やや身動きが取れないような状況になってる人たちを、ミドルマネジャーと名づけてみました。

この本を書く上で、期待を越え続けている、何十人ものミドルマネジャーにインタビューをしました。そして、どういう行動パターン・思考パターンをして、期待を超え続けてるのかを明らかにした結果、3つの要素にまとめることができたんですね。

1つはスキル面です。やはりビジネスパーソンとして実績を上げるためには、どう考えても一定のスキルが必要である。それからもう1つが、この本の中では「思いの力」という言葉で言っていますが、意図です。

「どういうつもりでこの仕事をするのか」「この仕事を通じて何を成し遂げたいのか」といったような、ものすごく強いウェイがあるというのが、2つ目の発見でした。

デキるマネージャーは「都合のいい解釈」をする

そして3つ目が、先ほどから申し上げているようにステークホルダーがたくさんいますから、上司や周りからの期待とのギャップが存在し続けてしまうと、どうしてもうまくいかなくなっちゃったり、評価が下がってしまってポジション的に自分のやりたいことに手が届かなくなってしまったりと、いろんなことが起きるわけです。

そうすると、このがんばってる(ミドルマネジャーの)みなさんは、ギャップを埋める力を持っているということが、ものすごく顕著にわかったんですね。

なので、「ウェイ」と「スキル」と「ギャップを埋める力」ということで、特徴的なものを3つ見出しました。

必ずしも、ずっと(期待を)超え続けてきたわけではないんですよね。当たり前ですが、長い間ビジネスパーソンをやっていれば紆余曲折あります。上司にだめ出しをされること、お客さまにだめ出しをされることもあると思うんですが、この人たちはだめになった時にいろいろちゃんと考えて、自問自答するんです。

最終的に共通して見られたのが、最後は非常にポジティブに「都合が良い解釈」をし始めるんですね。

「この失敗って、結局こういうことなんだな」というかたちで、都合の良い解釈をして次につなげていくことが、1つの大きな特徴だなと見出しました。

自問自答して、自分に求められている「役割」を見つける

例えば、ある大きなエンジニアリング会社に勤めている文系の人だったんですが、いきなり研究所のマネジメントのポジションにポーンと放り込まれたんですね。

(周りにいるのは)研究所のメンバーですから、名だたる大学の修士や博士を持っている。ある意味マニアックな言葉をしゃべる人たちに紛れてしまって、自分は文系だから、技術のことはそこまでよくわからない。

最初は、この人たちと対等に議論をするためにいろいろ専門書を読みあさったりしたらしいんですが、そんなにわか勉強でどうにかなる話ではない。「自分はどうしたらいいんだろう」「何を期待されてるんだろう」とすごく悩んで、体調を崩すぐらいにまでになってしまったらしいんです。

ただ、ある日営業に行く時に(取引先から)「エンジニアの人たちも連れてきてほしい」という話になった。ただ、エンジニアの方々は専門用語をずっとしゃべるので、お客さまとうまく会話が成立しない。

それを見ていて、「あ、なるほど。自分はこのブリッジ役をやればいいんだ」と。それが、自分が会社から期待されていることであり、自分の能力を正しく発揮できる道なんだと都合よく解釈をし直して、そこから立ち位置を完全に変えて活躍し始めました。

その結果が認められて、その方はさらなるステップアップというところで、いいポジションに就かせてもらったという逸話がありました。

なので、「会話ができない」「自分はここでは活躍できない」と一瞬落ちるんですが、「それは一体何だろう?」ということをちゃんと自問自答して、最終的には都合の良い解釈をして持ち上げていく。こんなかたちの人もいましたね。

期待を超えるミドルマネージャーは学びに貪欲

(期待を超えるミドルマネジャーは)「学びをやめない」というところが1つの大きな特徴かなと思います。例えばなんですが、会社に勤めていれば、時には本意ではない異動もあったりしますよね。これをうまくやるためには、どうしたらいいんだろう? ということで、先ほど申し上げたような「ウェイ」と「スキル」を磨き始めるんですね。

自分の心の向き合い方を整え始めて、そして「それに必要なものは何だろう?」と、今度はスキルを身につけ始める。スキルを身につけ始める一環として、例えばグロービスにMBAを取りに来る人ってけっこう多いんです。

自分自身が「やりたい」と思っていることもあるんだけども、結局自分がその会社に所属している以上は、会社の「やりたい」とすり合わせる。

迎合することと微妙に違うのは、ただ上司に言われたことを「はい」って受け止めて、ひたすらイエスマンになって邁進するのではなくて、そこに自分の意図を織り込んでいくというのが、期待を超えたマネジャーがやっていることの1つの大きな特徴なんですよね。

そこに自分の意思が反映されるからこそやる気にもなるし、能力開発にもつながるし、学びをやめない。そうすると、周りからも生き生きしてるように見えてくるので、メンバーや周りの人たちもついてくる。そんな状況になってくるというのが、本当に多くの方に見られた特徴だったかなと思います。

本当にみなさん、学習をやめない。新しいことにものすごく鈍欲で、それを次に生かしていくことが、活躍し続ける原動力になっている。そんなイメージで捉えていただけるといいのかなと思います。

人間は「自分のやっていること」に意味をつけたい生き物

すべての人間は「自分のやっていること」に意味をつけたい生き物だと思うんです。「何のためにこの仕事をしているのか」とか、究極を言えば「何のために生きてるのか」ということの意味づけができないと、不安になったり、不安定になったりすると思うんですね。

なので、まず1つ目はご自身の仕事を1回振り返ってみた時に、「誰の役に立ってるんだろう」「何のためにこの仕事をしてるんだろう」「なんでこの会社で働いてるんだろう」ということを、ちゃんと自分の中で振り返って腹に落としていく。

このプロセスは1回やればいいということではなくて、年齢とかポジションによって変わっていくものだと思うので、そういうことをやっていただくのはすごく大事だなと思います。

じゃあ、ご自身が「いい」と思ってやっていることの影響力を広げていくために、自分はどういう能力開発をしていくべきなんだろう? ということを、次に考えてみていただきたいです。

よく言う話ですが、寿命が長くなってキャリアも長くなっていることは事実だと思うんですよね。そうすると、昔は大学を卒業して、そこで勉強してきたことを引きずって、ある意味経験を積んでビジネスを終えていくパターンが多かったと思うんです。

10年前、20年前に大学を卒業した方の学んだことと、今の世の中はがらっと変わっていることが多いです。いつになっても、何年かにいっぺんは腰を据えて勉強することができれば、5年10年スパンで考えれば、今は0でも意外といろんなことができるようになるはずなので。そういう意味で、能力開発をしていく。

「自分は何のために生きているのか」を今一度考える

この2つをやる中で、ある一定規模の会社で働いているならば必ず周囲とのギャップは起きます。若い頃は猪突猛進で爆走していくやり方の方もいらっしゃったかもしれませんが、徐々に年を重ねるにつれ、もしくはポジションが上がるにつれ、少しやり方を柔軟にしていく。

そのへんは本にも書きましたが、ギャップを埋めるいろんな方法を身につけていくことも試みていただけるといいのではないかなと、そんなふうに思います。

今日は、この『これからのマネジャーの教科書』という本についてお話をさせていただきました。私が本当に一番大事だと思うことは、やはり「ウェイ」の部分ですね。

結局、自分の人生で何を成し遂げたいのか、誰に貢献したいのか、どう世の中に貢献したいのか。そこがクリアにさえなれば、自動的に身につけなければいけないスキルが明らかになって、そしてそのスキルを身につけようと意欲も高まると思います。

そして本当にやりたいことがあるならば、多少の上司との軋轢とか、周りとの軋轢も乗り越える努力を始めると思います。なので、今一度「自分は何のために生きてるのか」「何を成し遂げたいのか」を考えてみていただければと思います。ご清聴ありがとうございました。

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