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経営者力診断スペシャルトークライブ 社員のやる気を、こうして取り戻せ!(全5記事)

企業間の競争は、一個人のアイデアでは太刀打ちできない 想定以上を生み出す、「知のコラボレーション」の築き方

経営者やリーダー向けに、「経営」「マネジメント」をテーマとした各種セミナーを開催する経営者JPのイベントに、ベストセラー『こうして社員は、やる気を失っていく』の著者で、株式会社モチベーションジャパン代表の松岡保昌氏が登壇。経営者JPの代表・井上和幸氏と共に、コロナ以降、企業に求められる仕組みや制度の見直しや、自律型人材に愛される組織を作るポイントなどを語りました。

「知のコラボレーション」を生むために必要なもの

井上和幸氏(以下、井上)「組織が疲弊していく会社」の15の問題点のところで、他に触れておくべきところはありますか?

松岡保昌氏(以下、松岡):あとはこの「ピリピリしている」「マイナス要因の犯人探し」とか、心理的安全性を作れていない組織は、やっぱりすごく弱いんですね。心理的安全性が必要なのは、今日聞いていただいている方はほとんどご存知で、Googleさんの実例であったと思うんですけど。

さらにそれに言葉を足すとすると、本当の企業間の競争は、一個人で一生懸命考えているアイデアのレベルだと、太刀打ちできない。このことを認識されていない人がけっこう多い。

井上:なるほど。

松岡:だから「アイデアや知恵のコラボレーション」なんですね。まったく違う見方をする人が話をすることによって、大きく変わるんですよ。私は、これからの会社に必要なのは「対話力」だと思っています。対話力によって、最初に想定していた以上のものが生まれるということが本当にあるんですよ。

そのためには、相手が言ったことの意味を考えて、どう理解したかを相手に伝える。相手も「なるほど。そう受け取ったんだ。それは私が言いたかったことなんだ」「いや、ここの部分はちょっと違うんだ」と応じる。こうした中から違うものが生まれてくるんですね。

メンバーの多様なバックグラウンドを活かす

松岡:さっきの「上司の10個の問題点」にもつながる話ですが、こういう対話ができる上司を育てなきゃいけないし、対話ができる企業文化を作っていかなきゃいけない。だから先端の会社が、真ん中にコーヒーやホワイトボードを置いて、自然に「知の共有」が生まれる物理的な空間を作るのもよくわかる。

それが生まれるためには、前提となる心理的安全性が必要なんです。でも、単に心理的安全性があればいいというわけではなく、本当の意味でそれを活用するには「知のコラボレーションが生まれている」ことが不可欠なんですね。

井上:なるほど。

松岡:そういう企業文化を作らなきゃいけない。キーワードは「対話」です。1on1など、かたちはなんでもいいんだけど、対話ができる会社であることが必要です。ブレインストーミングが当たり前にできる会社が強い。

井上:それはそうですね。最初のお話にあった「現場で起きていることが上がって来る」ということも、そこに含まれますよね。また、そこからいろんな気づきも得られるし、何かの変化も察知できる。

会社組織のメンバーはみんな、いろんなバックグラウンドを持っているから、かけ算で何か新しいものが出てくる。それは1人の中だけで出てくるものではなくて、それぞれのメンバーがいろんなかたちで関わって、対話するところから出てくると。そのための状況を作るのが心理的安全性なんですよね。

松岡:そうそう。

井上:非常にわかりやすいですね。ありがとうございます。対話自体は端々でやっている方も多いとは思いますが、そこまで活用できているかというとそうでもなくて。これは取り組み甲斐のあるテーマだと思います。

1on1で「対話」が成立しないワケ

松岡:けっこう1on1自体がマンネリ化しちゃっている会社の事例とか、よく聞きますよね。

井上:ありますよね。

松岡:本当の対話になっていないんですよ。

井上:そうなんです! 僕もある会社のマネジメントの方から相談されて、某メディアの連載記事にも書いたことがあるんですが、実は1on1の弊害もけっこう起きているんですよね。だから今、松岡さんのお話と完全に符合しました。結局、形式的に1on1をやっているんですよね。

僕が相談を受けた会社では、マネジャーが1on1でメンバーに「何かアイデアない?」と聞くと。これをマネジャーが上に持っていくんだけど、上はその意見を取り入れないそうなんです。そうするとメンバーは「意見を言ったのに実現されないじゃん。なんだ、その1on1」となって、逆に退職者が出たりしているという話でした。

松岡:社内の全員が「なぜそう思うの?」ということを、当たり前に言える文化を作らないといけないんです。

井上:当然、メンバーの意見を全部反映する必要はないんですよね。「それはいいね」ということはもちろん取り入れるべきですが、今日話に出てきたように、スコープの違いなどから「現場のメンバーはそう思っているけど、俯瞰してみると、実はそうじゃないほうがいい」ということもよくある。

松岡:そうです。

井上:やっぱり、そういうことをフィードバックしていないのが問題だと思うんですよね。

松岡:「見ている視座が違う」ということも、対話によって伝えてあげなきゃいけない。

井上:そうですよね。

コロナ以降、企業に求められる仕組みや制度の見直し

井上:今日はここまで解決策にあたるお話を色々といただいていますが、あえて追加で「じゃあどうすればいいの?」ということでお話いただくことはありますか?

松岡:この本を出した1つの意図は「コロナによって、企業に求められる変化適応の必要性が強くなった」ということです。もう1つは、コロナをきっかけに「変わりつつあった人と企業の関係が、一気に変わった」ということなんですね。今日聞いていただいている経営者の方、幹部の方、社員の方は、その認識を持って自社の仕組みや制度を見直していただいたほうがいいと思います。

ここでは、表を共有させていただきます。この「ライフ・キャリア・レインボー」とは、キャリアの世界では有名な考え方なんですね。「多重役割葛藤」というものが、コロナによって生まれました。

今日も、ご自宅で聞いてくださっている方も多いと思います。今までは会社で仕事をしていましたので、子どもは目の前にいないですよね。気になったとしてもリアリティはない。でも、家で仕事をするということは、目の前のお子さんが「ママ、遊んでくれないの?」「パパ、遊んでくれないの?」と来るんですよね。このように、人は同時にいろんな役割を持っています。

まだ親が健在であれば、みなさん自身も「子ども」なんです。その役割は、50~60歳になってもある。また、スライドには「学生」と書いていますが、「学ぶ人」ということですね。いくつになっても、学ぶ力はすごく重要です。経営者に必要な能力にも挙げられていましたよね。

このレインボーの中には「家庭人」もありますし、「職業人」もその1つです。自立するためにお金を稼がなきゃいけないので、「職業人」のウエイトは高い。でも、人はその他にもいろんな役割を持っていて、その上で働いてくれているんだと。まさに「コト」のマネジメントだけじゃなくて、「ヒト」のマネジメントなんです。「そういう状況の中で働いてくれているんだ」ということをちゃんと考えなきゃいけない。

なぜジョブ型にしないといけないのか?

松岡:もう1つは「キャリア自律」という意識が芽生えました。正直、70歳まで働く時代です。

政府も本音を言えば、「70歳から年金をもらってほしい」と思っているわけですよね。

井上:そうですよね(笑)。

松岡:だって財源ないもん。そうすると、やっぱりキャリアというものは自分のものなんです。若い頃は、いろんな仕事をする中で「自分の適性」「やりたいこと」「自分の可能性」を知るフェーズです。

20代後半~30代になると、その中で「自分はこれがおもしろいと思うんだ」「自分はやっぱりこういう考えの会社で働きたいんだ」「こういう仲間と一緒に仕事をしたい」など自分の価値観がすごく芽生えてくる。その価値観を個人が認識することが大事だし、みなさん認識し始めたんです。

そして、今までは会社の命令で何でもしていたけど、そうじゃなくて個人が自律することが求められてくる。個人も、世の中がどう変化するのか自分で考えながら、やりたいことに近づく準備を自分でするべきなんですね。

そしてこういうことに気づき始めた人が、すごく増えてきています。だから、なぜジョブ型にしないといけないのかというと、1つはそうしないとDX関連だとか特定の職種だけ給与が高くて、通常の給与テーブルに合わないという事情があると。もう1つは、やっぱり「自分がやりたいことをやりたい」「自分のためになることをやりたい」と、「人と企業の関係」の価値観が変化したからなんですね。

「自分のために」と言いましたが、さっき話した通り「社内規範」「社外規範」と自分の思いが共鳴していたら、それは会社のためにもなるんですよ。本気で働いてくれるからね。そういう個人が自律した存在であること。そういう人たちと向き合っている前提で、いろんな施策を作るべきなんです。

変化する「人と企業の関係」がコロナでより加速される中、今後多くの人が活躍し、「ここで働きたい」と思われるような会社になるために、この視点をぜひ持っていただきたい。

井上:おっしゃる通りですね。

松岡:この変化の兆しを知らないと、打つ手を間違えます。

自律型人材に愛される組織を作るポイント

井上:お話を聞いていてあらためて思ったことがあります。コロナ前もなんだかんだ「世の中が変わってきた」と言われていたし、実際そういうところはあったとはいえ、やっぱり物理的に丸抱え状態で働いていましたよね。

松岡:そうです。そうです。

井上:家庭や他の役割、プライベートな役割から、ある一定時間切り離して会社のオフィスという場所で、丸抱えで働いていたと。良い悪いは置いといて。

それがコロナになって、物理的な場所も、役割もミックスして働くようになりました。世の中全体が、時間軸も含め1つだけに縛られるという感じではなくなったと。最近の「副業」もそうですが、わりとそのへんがリリースされている。その中での、「人と企業の関係性」になっていますよね。コロナで一気にそこが加速したんですよね。おもしろいなぁ。

松岡:だから、こういう自律した人に、やりがいを感じてもらったり、「この会社にいるべきだ」と思ってもらうには、そうとう社外規範・社内規範を伝えなきゃいけないんです。

組織だから、個人のやりたいことを100パーセントやるのは無理かもしれない。でも、例えば3つ仕事があって「誰にやってもらおうか」という時に、日頃メンバーのやりたいことをちゃんと把握しておけば、適切に割り振ってあげられる可能性は高くなるはずなんですね。頻度もそうですよね。会社全体がそういう仕組みを作れないと、簡単に人は働く場所を変える時代ですから。

井上:そうですよね。「首根っこ捕まえて抱えておく」なんて、当然できないわけだし。だから、プロジェクト型化しているんですよね。その時々のテーマやチームの役割に賛同しつつ参画してくる。

そして、プロジェクトが終わった後は……。実際は会社法や雇用上の問題から、日本はまだそうならないんですが、あり方としては1つのテーマをある時期みんなでやって、終わったら解散する。そして「次はどういうチームでやろうか」みたいな方向感ではありますよね。

松岡:まさにそれがすごく大事です。もう1つだけ付け加える言葉があるとすると、その仕事が終わった時に、必ず「承認欲求」が満たされる仕組みもすごく重要です。

井上:そういうことですね。

松岡:「マズローの自己実現欲求」まである人って、正直そんなに多くないんですよ。経営者とか社会起業家と言われるような、ごく一部の人です。でも、多くの人は承認欲求までは必ず求める。逆に言うと、それだけですごく喜んでくれるんです。

やっぱり自分の居場所があって、自分がやったことが社内だけではなく顧客含めきちんと承認されると、すごくうれしいと。人間は社会とのつながりを求める生き物ですからね。だから承認欲求がきちんと満たされる仕組みがすごく重要になってきます。

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