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経営者力診断スペシャルトークライブ 社員のやる気を、こうして取り戻せ!(全5記事)

下は「上司任せ」、上は部下では「無理」と思う“負のスパイラル” マネージャーもメンバーも陥る、「学習性無力感」の断ち切り方

経営者やリーダー向けに、「経営」「マネジメント」をテーマとした各種セミナーを開催する経営者JPのイベントに、ベストセラー『こうして社員は、やる気を失っていく』の著者で、株式会社モチベーションジャパン代表の松岡保昌氏が登壇。経営者JPの代表・井上和幸氏と共に、メンバーのやる気喪失の原因が上司にあると気づかせる方法や、メンバーが育たない理由などを語りました。

メンバーのやる気喪失の原因が上司にあると気づかせる方法

井上和幸氏(以下、井上):ちょっと変な質問かもしれないですけど。おっしゃってくださっているように、多かれ少なかれ上司がメンバーのやる気を削いでしまっている会社はあると思うんです。自分たちごととしては、気づいていないこともあるよねと。気づくためにやれることはあるんですか。マネジメントの方々自体が、こういうことをやってしまっていることに、気づかせる方法はありますか?

松岡保昌氏(以下、松岡):いくつかありますね。他人がどう思っているかを、聞く機会を与えることはけっこう大事です。私がよくやるのは、例えばその管理職をメンバーがどう思っているのか、「いいところ」と「ここ変えてくれよ」というところを、実際にふせんに書かせてKJ法的アプローチでそれを大きい声でまとめさせる。私がファシリテーターをやりながら、その上司には声だけ聞こえる別の場所で、それを静かに聞いておいてもらうんです。

井上:(笑)。なるほど。その時、メンバーのみなさんには、その上司が聞いていることは伝えるんですか?

松岡:薄っすらと気づくという感じですね。「みなさん、大きい声で、この神の声を届けましょう」とか言って。

井上:「大きい声で」とはそういうことを含んでいるわけですね(笑)。

松岡:聞こえないから。

井上:なるほど。

松岡:「はい、ちゃんと書いたか読むー!」みたいなのをやると、「聞いているのかな、もしかしたら」というのは薄っすら伝わる。

井上:なるほど。

松岡:だから心理的安全性を先に作って、上司にも受け入れる態勢を作らせてから、この研修をやるんですけど。

井上:そこは大事ですね。

松岡:そうです。それをせずにやると「あいつがあんなことを言った」とかね。

井上:今度は違うモヤモヤが発生しそうな感じですよね。

松岡:モヤモヤが出てきて、逆にそういう状態だと、メンバーも本当のことを書かないです。ヨイショヨイショの歯が浮くようなことしか書かないので、それでは意味がないのでね。メンバーが本当はどう思っているか。

ジョハリの窓(自己分析の際に使用する心理学モデル)の感じで、自分が認知している自分と、他の人が自分自身をどう思っているか。逆に他の人は自分の意図を知らないけど、自分の意図はこうなんだと伝える。お互いがきちんと対話をする機会はすごく重要で、そのきっかけにしているんです。

井上:それはいいですね。

メンバーの本心を上司に伝える研修での最大のポイント

松岡:そして聞いたのをメモしてもらいながら、自らの反省とか、逆に「ここは誤解されているな。こういう思いだったんだよ」というのを考えてきてもらって、私がおもむろに「じゃあ、ここで上司を呼んできましょう」とやる。

井上:(笑)。なるほど。

松岡:「神の声が届いたかどうかを確認しましょう」と言って、おもむろに手を引いてガチャンと入って来てもらうみたいな演出をして、席についてもらうんですね。

井上:なるほど。

松岡:そこからどう思ったかという、反省というか気づき。逆にうれしいこともあるんです。いいことを言ってもらうと、聞いていた上司はみんなよろこびますよ。その両面を聞いてどうだったか、ここからが大事で。「どう思ったか」から、そこでもう1回メンバーが何を期待しているのか、何が嫌なのか、どうしてほしいのかを、きちんと対話させることがすごく重要です。

井上:そうですよね。まず前提としてしっかり問題点をテーブルの上に出すことと、出して終わらずに、ちゃんと「どうしていこうか」というところまで、しっかり話すことですよね。

松岡:その時に、私がメンバーに必ず問いかけるのは、「今言えて、なぜ私がいないと言えなかったの?」。ここが最大のポイントです。

井上:なるほどなるほど。

松岡:つまり、日常でそれを言える環境を作ってあげるのが、私の役割。1回それをやって「直します」レベルではダメです。

井上:そういうことですね。

松岡:「課長、部長、その癖出てますよ」と、笑いながら明るく指摘できる関係をどう作っていくかが、すごく重要なんです。

井上:確かにこれはいいですね。

松岡:それが1つのやり方です。

松岡氏の著書を使ってできる研修

松岡:最近この本を出してからやっている、もう1つのやり方は、管理職にこれ(本)を読ませて、「うちの会社にあるものはピンクのふせん。自分の部署で起こっていることは黄色のふせん。両方のやつは黄色とピンクのふせんを付けてきて、それを元に「何が起きているの?」「なぜ起きているの?」を、マネジャーの間で徹底的に話し合ってもらう研修をしているんです。

井上:なるほど。

松岡:これがむちゃむちゃおもしろいです。ある会社とかは全部にふせんが付きます(笑)。

井上:(笑)。素直でいいですね。

松岡:そう。でもそれが起こる背景があるから。そこで自分たちの行動を振り返るだけでも、けっこう変わります。

井上:確かにそうですよね。項目にもよるし、個別の方にもよりますけれども、多くの方々は気づいていないだけで、別に悪意があってやっているわけではないことですしね。

松岡:そうです。

井上:忙しかったり、少し考え方の掛け違いがあったりということでしょうからね。

松岡:本に書いてある「コントロールできる部分を与えない」は、逆に過保護で。「できないかもしれないから」と思って、例えば、外部委託業者さんをどこにするのか、全部上司が決めてあげるとか、「ちゃんと根回ししておいたか」とか、よかれと思ってやるケースもすごくあるんです。

井上:確かにそれはありますね。部下たちから「ありがとう」と言ってもらえるかなと思って。

松岡:そう。本人がね。

井上:あるんじゃないですかね。

松岡:部下も表面では喜ぶんですよ。しかし、本音では、「この仕事、俺じゃなくてもいいじゃないか」とみんな思うんですよ。

井上:確かにそうですね。先ほどの話でも、役割に応じて視界が違うところは、たぶん今日参加の方々もすごく思っているところがあるんじゃないかなと思いますし。

僕も自分ごとで考えても、なかなかそういうところの擦り合わせは、パーフェクトとはいかない気がするんです。極力そこの差を埋めることに、尽きるような気はしているんですけどね。

メンバーが育たない理由

松岡:よく立場が人を変えると言いますが、そういうことが確かにあるのは、視野とか視座が変わるんですね。いきなりメンバー全員が課長になれるわけではないし、課長が部長になれるわけでもないので、これは説明が不十分な上の人の責任なんだけれども。自分はなぜそう判断したのか、丁寧に説明する義務があると思うんですよ。そこをやらない人が多い。

だから逆に言うと人が育たない。なぜそう思うのか、何と何の情報からどう判断したのか。どういう推測をするからこっちを選んだのか。上になれば、自部署だけではなくて全社最適とか、社長だったらこう考えるだろうなとか、いろんなことを考えて意思決定するじゃないですか。その背景をきちんと共有することが、すごく重要なので。

井上:そうですね。1つみなさんにもしていただける取り組みとして、今のような背景説明や共有に、しっかりと時間を使ってコミュニケーションできているかということと。

お膳立てというか状況をちゃんと共有して、改善に足を踏み込んでいくのは、ぜひ松岡さんのところに頼んでいただくのがいい気がします。さっきのふせん出しから登場が効果的な気がしますね。

松岡:おっしゃるとおり。この前、ある会社の人と話していておもしろかったのが、「うちではメンバーがこの本を買って、この本にふせんを貼って上司にプレゼントするのが流行っています」というのも。

井上:(笑)。その会社は、なかなかいい会社のような気がしますね。

松岡:それが言えるということは、明るいいい社風ですよ。

井上:ねえ。

松岡:本当に陰湿だとできないですから。

井上:たぶんできないですよ(笑)。現場で回っていて、何かの折に上司が気づくみたいなのがあったら、逆に衝撃ですよね(笑)。

下は「上司任せ」、上は部下では「無理」と思う“負のスパイラル”

松岡:このへんで多くの会社で起こっていることがあるので、1回それを共有させていただいてもいいですか?

井上:はい、ぜひ。

松岡:「職場に蔓延する『学習性無力感』」と書いているんですけど、学習性無力感は、「努力しても無駄だと諦め、無気力になり、その状況から脱しようと努力しなくなる状態」。

努力することもやめてしまう状態ですが、最近多いのは、上司もメンバーも「学習性無力感」に陥っているケースですよ。

井上:ああ、なるほど。

松岡:上司が企画を依頼しますよね。さっき言ったとおり視座とか視野、そして実力も違うんだけれども、上司も100パーセント悪いわけではないんですよ。自分も目標を持っているし、なんとか達成しないといけない。

この「コト」のマネジメントに集中している。管理職というのは「コト」のマネジメントと、「ヒト」のマネジメントの両方が必要なんだけれども、どうしても「コト」のマネジメントの圧力があるので、そっち側だけになって依頼する。

そうすると、メンバーが企画して上司へ提案してもいいものが出ない。極端に言うと、メンバーは最初は「上司の期待を超えたい」とがんばる。だけど、上司が全否定したり、上司が「こうしよう」と自分でアイデアを出すことが続くと、だんだん「もう超えられないんだ」「どうせ上司がアイデアを出してしまうんだから、もうそれまで待とう」となってしまう。これが一般的な「学習性無力感」。

これも問題で変えないといけないんですけど、最近もう1つ起こっているのは、上司のほうも「メンバーに頼んでもどうせ良いものは挙がらないよね。無理だよね」と思ってしまっている。そしてメンバーも「どうせ上司が考えるよね」と思っている。この負のスパイラルが生まれている会社がけっこうあります。これは本当に変えないといけない。

井上:そうですよね。

「学習性無力感」の断ち切り方

松岡:聞いていただいている会社のみなさんは、全部署とは言わないけれども、自社の中でそういうことが起こっている職場はないかを探してください。そこは本当に断ち切らないと、もう冒頭に言ったメンバーの「主体性」とか「当事者意識」はまったくなくなりますから。

上司が自分たちに……まだ複数形(自分たち)だったらいいんだけど、「自分に期待してくれていない」のが暗に伝わると、聞いていただいているみなさんもそうだと思いますけれども、やる気がなくなりますからね。これはもう人事とか経営者が介入してでも、上司から改造しないといけない。

やっぱり「自分のイメージしたパーフェクトの仕事ではなくても、あなたの仕事のここはいいよ」「ここはちょっと期待値じゃないな」「なぜそれをそのまま採用できないかと言うとこうだよ」を、多少面倒でも伝え続けてください。「あなたはきっとできる。それを期待している」と、伝え続けられる上司でないとダメだから。この双方の「学習性無力感」が起きていないかどうかは十分チェックしてください。

井上:なるほどですね。

松岡:これ、けっこう最近来てておもしろいです。

井上:悪い意味でのお互いさまになっちゃっている感じですね。

松岡:そうそう。

井上:ありがとうございます。

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