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チームビルディングx働きがい│今いる仲間でうまくいく 宇宙兄弟から学ぶチームの話(全3記事)

ただの集団を「チーム」に変えるために、乗り越えたい“3つの壁” 今いる仲間でうまくいく、理想的なチームの作り方

昨今、働き方改革の浸透によって、残業時間削減や働く場所の自由化など、労働環境の整備が強く求められています。働きやすさに加え、仕事への誇りや充実感といった「働きがい」も重要課題の一つとなっています。Unipos 働きがいサミットでは、チームワークの土台となる「心理的安全性」と、やる気の源泉となる「エンパワーメント」の2つの視点から、一人ひとりが働きがいを感じる組織づくりの方法を学びます。本セッションでは「今いる仲間でうまくいく宇宙兄弟から学ぶチームの話」をテーマに行われた、組織開発ファシリテーター長尾彰氏の講演の模様をお届けします。

「今いる仲間でうまくいく 宇宙兄弟から学ぶチームの話」

司会者:本講演では長尾彰さんをお招きし、チームビルディング×働きがいをテーマに、「今いる仲間でうまくいく 宇宙兄弟から学ぶチームの話」についてお話しいただきます。それでは長尾さん、よろしくお願い致します。

長尾彰氏(以下、長尾):よろしくお願いします。ただいまご紹介いただきました、長尾彰です。「今いる仲間でうまくいく 宇宙兄弟から学ぶチームの話」ということで、主にこの本に書いてある内容が中心になりますが、プラスアルファのお話もさせていただこうかなと思っています。

書いてあるとおりなんですが、簡単に自己紹介をさせてください。実家で父が長尾工務店の屋号で大工をやっておりまして、僕が家業を継がなかったものですから、せめて音だけ継ごうと思いまして、「考」という字をあてて「ナガオ考務店」という屋号にしました。

(Unipos働きがいサミットの)基調講演では、中村憲剛さんと仲山進也さんがお話をされておりました。モデレーターの仲山進也さんとは、かれこれ15年以上相方としてチームビルディングのプログラムを一緒にやらせていただいています。

なので、今日は相方が中村憲剛さんとお話されているところを「すごいな。羨ましいな」という目で見ておりました。

仲山さんの会社の仲山考材は、「こう」は考えるという字で、「材」は材料の「材」なんですが、仲山さんのご実家も鋼の材で仲山鋼材なんですね。

僕が会社を作る時に、仲山さんにお断りをして「僕も考えるシリーズもらっていい?」ということで、「考」という字をあてさせてもらいました。そんなこともありまして、基調講演の話とこれからする僕の話は、一部重なるお話もありますし、あるいは補うような内容になるかもしれませんが、ぜひ聞いていただきたいと思います。

「グループ」が「チーム」になるまでの4つのステージ

長尾:仕事は組織開発ファシリテーターということで、ファシリテーションは「支援」「促進する」という意味で個人と組織の成長のお手伝いをしています。

コンサルタントのように、正解を相手にお渡しして価値を提供するのではなく、「何をしていいかわからない」「どこから手を付けたらいいかわからない」という人たちに呼ばれて、「じゃあ何から始める?」と一緒に悩んだり、考えたり動いたりという、そんな仕事をしています。

今日、お話したいことは大きく3つです。1番目は「グループがチームに成長・発達する」。2番目は「リーダーにはそれぞれのスタイルがある」。3番目は「チームづくりにはコツ・ポイントがある」というお話をさせてもらいたいなと思います。

冒頭、基調講演でもこのスライドが使われていましたが、このグループがチームに成長・発達するという話は、『宇宙兄弟』という漫画をテーマにしてチームの話を、ということで書きました。そこでも、この成長ステージのモデルに触れています。

第2部から参加されている方も多いかと思いますので、ざっとおさらいです。このフレームワークはブルース・タックマンという社会学者が、1960年代の後半に唱えた説です。

人間が子どもで生まれて、徐々に青年になって、そして中年や壮年になって成長していくのと同じように、集団や組織も成長・発達していくという考え方があります。これを一部加筆修正しているものです。

卵から蝶々に変態するように、組織にも「変態期」がある

長尾:第1ステージが「フォーミング」という時期。お互いのことをよく知らない、遠慮をしていて、空気を読む。心理的安全性もまだまだ低くて、言いたいことも十分に言い合えないような関係性なのがフォーミングの特長です。

コミュニケーションの量が増えて相互理解が進み、お互いのことをだんだんと知り合うことができて、それぞれの得意や不得意、強みや弱み、価値観なども含めてお互いのことがわかってくると、徐々に本音が言えるようになってくる。

「これはしたいとかしたくない」とか、「こうしたほうがいいんじゃないか」「これはやっても無駄なんじゃないか」とか、そんなふうに言いたいことが徐々に言い合えて、試行錯誤が始まるのが第2ステージの「ストーミング」。ストームですから、嵐が来るわけですよね。ごちゃごちゃ、ワチャワチャするような時期です。

試行錯誤ですから、もちろん失敗も続いたりします。「うまくいかないね」「どうしようか」「じゃあこうしてみない?」「こういうルール作ろうか」「こういう役割作ろうか」「こんな目標作ろうか」と言って、自分たちでルールや役割、目標を作り出す時期がやってきます。これが第3ステージの「ノーミング」という時期。

ノーミングの「ノーム」というのは、規範やルールということですね。自分たちで自分たちのルールを作り始める時期がやってきます。

ストーミングからノーミングに変わる時に、グループがチームに変わっていきます。ノーミングの時期に自分たちのルール、役割、目標を達成することができたりすると、「トランスフォーミング」という第4ステージがやってきます。

タックマンは第4ステージのことを「パフォーミング」と呼んでいました。僕のほうでは少し内容を変えさせてもらって、第1ステージとはまったく姿を変える、トランスする「変態期」と書いてあります。

蝶々をイメージしてみてください。卵で産まれて芋虫になって、さなぎになって、成虫になってと、蝶々も4つのステージで変態をしていきます。第1ステージのフォーミングの時期とはまったく姿を変えているという意味で、第4ステージをトランスフォーミングと呼んでいます。

「グループ」と「チーム」の違い

長尾:実はタックマンさんは、「第5ステージもあるよ」「第5ステージは解散の時期があるんだ」という話をされていました。英語だとAdjourning(アジャーリング)という表現をするんだそうです。

第5ステージでは解散をする。自分たちの役割やルールに基づいて目標を達成することができると、そのチームは解散していくんだよというお話をされていました。

この成長ステージのモデルは、原理原則として必ずこうなるよというものではなくて、「こういう物の見方をすると、グループがチームに変わりやすくなるんじゃない?」「こういう見方をすると、手立てが見えてくるかもね」というフレームワーク、考え方、物の見方だと認識していただければと思います。

ところで、みなさんにもちょっと考えてみてほしいんですが、「グループ」と「チーム」にはどんな言葉の違いがあると思いますか? もちろん字が違いますから、意味も違うはずです。グループ、チーム、それぞれの言葉の印象、あるいはイメージすることはどんなことがありますか?

グループがチームに成長・発達するわけですから、違いがあるわけですよね。これは一人ひとりの考え方、受け取り方、それからイメージする内容はもちろん違っていて構わないですが、僕はグループとチームにこんな違いがあるのではと、わりとシンプルに考えています。

与えられたもので機能する集団がグループかなと考えています。先ほど役割、ルール、目標という話をしました。役割も誰かに与えられて、あるいは目標も与えられて、もちろんルールも与えられて機能するのがグループな状態。

自分たちで役割やルールを作り出すのが「チーム」

長尾:「グループワーク」と「チームワーク」と言ったりしますが、グループワークというと班別作業のようなイメージがありませんか? 「何時までにこの道具を使って、これをこんなふうにしてね」というふうに、与えられて機能するもの。

チームは与えられたものではなくて、自分たちで作り出したもので機能するものかなと思っています。誰かに与えられた役割、ルール、目標じゃなくて、自分たちで作り出した役割やルールや目標によって、集団が機能する状態のことをチームと呼ぶのかなと考えてます。

なので、グループからチームに変わる。第1ステージ、第2ステージは誰かに与えられたもので、例えば会社で言うのであれば、売上目標だったり各種制度、それから役職層ですよね。

役職者なんかも、「私、社長やりたいです」と言っても、なかなか会社ではそうはいかないですよね。どちらかというと、与えられた役割の中で機能していく状態と考えると、会社全体ではもしかしたらグループな状態かもしれませんね。

一方でチームを考える時には、例えば就業規則に基づいて会社を運営するだとか、売上の目標も上から降りてくるものではなくて、自分たちで作り出していく。

「うちの会社の理念はこういうことだから」「今期の会社全体としての目標はこれなので、うちの部の目標は今期はこれでいきましょう」と、そこにいる人たちの同意や合意に基づいて意思決定ができる状態のことを、チームと呼ぶんじゃないのかなと考えています。

集団が「チーム」になるために必要なこと

長尾:次に、グループがチームに成長・発達するという内容です。このスライドは基調講演でも仲山さんが示されていたので、先ほどもサッカーに当てはめてお話をされていました。この第2部では、ぜひご自身の職場に当てはめて考えていただければなと思います。

じゃあ、どんなふうにグループがチームに発達していくのか。その時人々はどんな様子なんだろうということで、すごく簡略化している表にしています。ご覧になれるでしょうか。字が小さかったらごめんなさい。

先ほどのチームの成長ステージの話です。グループがこんなふうに段階を経て、チームに成長・発達していきます。一番上に「チームの成長ステージ」と書いてあります。チームに成長するためには集団にはこんなことが必要だよというのが、上から2行目のところですね。

第1ステージのフォーミングな人たちには、心理的安全性が必要です。何を言っても大丈夫で、ミスしたりチャレンジをして失敗したりしても責められない、怒られない、怒鳴られない、ディスられない。これがそこにいるメンバーの中で約束されているような状態が、心理的安全性ですよね。まずはそんな心理的安全性が必要です。

(心理的安全性があると)「私はこれがしたい」「私はこれをしたくない」「この会社をこんなふうにしたいんだ」「この事業はこんなふうに進めていきたいんだ」と、お互いに言いたいことが言い合えていきます。

「混沌期」に必要なのは、明確なビジョンと目的

長尾:お互いの考えている目的、ビジョンがそれぞれワーッと場に出てくるような状態になるのが、第2ステージのストーミング。混沌期の状態です。「こんなことしたい」「あんなことしたい」と、みんな好き勝手なことを言います。でも、なかなか整理がつかない。その時にガイドになるのが、組織としての明確な目的・ビジョンです。

「そもそもうちの会社って、このために社会に存在しているよね。だからどうするかを考えよう」というガイドのようなものを、ここでは「明確な目的・ビジョン」という言葉で表現をしています。第2ステージには、明確な目的・ビジョンが必要になります。

次に、「じゃあ、こんなふうにやってみようか」「他社の事例を真似て、うちもこういうのを取り入れてみようか」「ぜんぜんうまくいかなかった。それはそうだよな。よその会社とうちの会社は違うもんな。よそがやっていることをそのままうちで真似たってうまくいかないよな」「じゃあ、どうする?」「こんなふうにやってみようか」「じゃあこういうルール作りましょうか」と、試行錯誤が始まります。

自由度が増したフェーズで必要なのは「規律」と「秩序」

長尾:徐々に自分たちで自分たちの役割やルール、それから目標を作り始めるノーミングの時期がやってきたら、第3ステージで必要なのは「規律と秩序」です。

チームになると「与えられたもの」から自由になるわけなので、「会社はこう言っているけど、俺たちはこういうことをやりたいからやっていこうぜ」と、自分たちのことを自分たちで決め始めます。もし、勝手気ままにそのチームが決めたことだけをやってしまうと浮いちゃいますよね。

その時に必要なのが、「じゃあ、これはしちゃいけないことだよね。こういうことを大事にして仕事していこうね」という、規律と秩序が必要になるのが第3ステージのノーミングの時期です。

「あれ、規律と秩序って第1ステージで大事になるんじゃないの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。ここで言う規律と秩序というのは、与えられた規律や与えられた秩序ではなくて、自分たちで作り出した規律と秩序のことを指しています。

ポイントは、与えられたものではなく、自分たちで作り出した規律と秩序に従って、組織が動いていくことが大事。これが第3ステージで必要なことです。

圧倒的な成果を出しても「当たり前」と感じてしまう

長尾:第4ステージのトランスフォーミングが、みなさんがイメージするような理想のチームの状態です。「こういうチームになれたら最高だよな」という、みなさんがイメージされているチームで必要なことは祝福と伝承です。これまた「あれ?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

トランスフォーミングになると、圧倒的な成果を出したとしても、それが自分たちにとっては当たり前のことに感じているんです。

周りからするとすごいことやり遂げているわけなんですが、「なんでみんなこんなこともできないの」「これぐらいのことできて当たり前でしょ」「昨対150パーセント増って、別にうちでは特別なことじゃないよ」と、本人たちにとってはそれが当たり前になっています。

だからこそ、きちんと「うちらはすごいことをやり遂げたんだよね」という祝福、確認をする。うまくいかなかったことについての反省や振り返りはお仕事で頻繁にあるかもしれませんが、なぜそれがうまく行ったのか、マイナスな振り返りではなくてプラスの振り返りが伝承です。

「自分たちの強みがどこにあって、こういうことをしたからうちのチームは成果が出せたんだよね」ということを振り返った上で、他の組織や集団の人たちに「こんなことをしたからうちはうまくいったんだよ」ということを、ちゃんと語り継がなきゃいけないという意味合いでの伝承です。

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