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『採用面接100の法則』出版記念「面接官がいまさら聞けない採用面接の”ナゼ”を徹底解剖!」(全3記事)

面接官が「なぜ?」を繰り返すのは、候補者にとって「圧迫面接」 本当の「素」を引き出せない、採用面接のNG質問

日本能率協会マネジメントセンター主催の『採用面接100の法則』出版記念セミナーの模様を公開します。著者の曽和利光氏が、採用面接に関する参加者の「疑問」に答えました。本記事では、候補者の「素」を引き出すための場の作り方や質問などについて解説しました。

候補者の「素」を引き出すための、面接でのリラックス法

曽和利光氏(以下、曽和):よろしくお願いします。

ハヤセ(以下、ハヤセ):よろしくお願いいたします。すいません、先生、本日はお忙しい中ありがとうございました。

曽和:いいえ、とんでもございません。

ハヤセ:私もこの本(『人材の適切な見極めと獲得を成功させる採用面接100の法則』)の編集にあたっていて、「あ、こういう視点があったのか」とか、「ちょっとこれは知らなかった」ということも非常に多くありました。ただそれは編集者の感想なので、今日はそちらの話よりも、お集まりいただいたみなさんの現場に即した素朴な疑問などをどんどん解決していったほうが有意義な場になると思っています。

『人材の適切な見極めと獲得を成功させる採用面接100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)

さっそくですが、本日お申し込みの時点でいただいた質問について、おうかがいしていきたいなと思っております。

まず、面接は非常に緊張する場なんですが、面接を受けに来られた方にいかにリラックスをしていただくのかというところ。アイスブレーキングについてはこの本でも触れていましたが、そのあたりを詳しくおうかがいできますでしょうか。

曽和:わかりました。候補者の方にとって面接はすごく嫌な場で、緊張することに対しても過大視しているわけですよね。彼らからすると、緊張してると結局言いたいことも忘れてしまうし、素の状態が出せないので、自分の人となりもわかってもらえないんじゃないかと気にしてるわけです。

これは面接官側からすると、当然こちらも知りたいわけですからね。やっぱり(緊張していると、言いたいことが)わかりにくい。

昔は圧迫面接といって「これをやるとむしろ素が出るんだ」というような人もいました。でも今では、コンプラの観点からも、ある種のパワハラですからだめですし。そもそも、そういうふうにしても素が出ないので、結局わからないと思ってます。今ご質問いただいたようにリラックスの問題はすごく大事なことだと思います。

面接官が「ペース」を作る工夫をする

曽和:どうするべきかというと、1つはめちゃくちゃ簡単にできていいなと思うのは、まずゆっくり話すこと。今日は僕がばーっとしゃべっているので、お前が言うなって感じだと思うんですけど。

逆にあんまりゆっくり話しすぎると、おかしな雰囲気になって重い感じになる人もいます。声色というか声の質もあるかもしれません。例えば「本日はよろしくお願いします!」みたいな感じじゃなくて、「本日はお忙しい中、面接にお越しいただきまして、本当にありがとうございます」みたいな感じでゆっくり話すのもそうです。

あとはこの動き(身振り)ですよね。特に面接官の側がガチャガチャするんじゃなくて、手の動きとかも含めて、こうゆっくり(動かす)。僕はよく太極拳みたいにと言ったりします。そういう非言語の部分で、ゆっくり話すことによって気を落ち着かせてみる。とても簡単にできて、相手をリラックスさせる効果があるんじゃないかなと思います。

それから、ペーシングという言葉があります。ペースを合わせることなんですけど。人間って、相手に合わせて自分を作っていくところがあるみたいです。面接官は面接に慣れてると思うんです。まぁ慣れてる人が候補者よりも相対的には多いですよね。

だけど候補者は面接に慣れてない。どっちかっていうと、慣れてる人はバーっとしゃべっちゃうこともあると思うんですね。「今日もよろしくお願いします。本当ありがとうございました」みたいな感じで。

そこを抑えて(面接官が)ゆっくりやってあげると、相手はペースをこっちに合わせられるので、ゆっくりとしたペースで面接が進むようになります。そうすると、当たり前なんですけど、ゆっくり話すと相手も考えながら話せるので、面接官がわかるように工夫して情報を提供してくれるでしょうし。

相づちや頷き、顔色など、こちら(面接官)の反応でちょっとわかってなさそうだとか、首をかしげたなといったものまで(候補者が)注意を払いやすくなります。そこで、なんかちょっとわかってなさそうだと思ったら詳しくしゃべってくれたり。そんな余裕が生まれると思うんですよね。

ですから、本当にしょうもないことなんですけど、まず1つはゆっくり話すのが大事じゃないかと思います。

面接官が自己紹介をするメリット

曽和:アイスブレイクの話ではいろいろ書きましたが、もう1つは自己紹介だと思います。これ、「面接官は匿名でやれ」という会社もないことはないんですね。

あとで口コミサイトに「曽和ってやつが面接やって、こんな質問しやがった」と実名で書かれたりする場合もあるので。どこの部署でどうのというよりは「会社を代表して面接してますので、ちょっと今回私の自己紹介は控えさせていただきます」と、ガイドラインで書いている会社もあります。

一理あるというか、確かにそんな側面もあるかなと。実名を言うといろいろ問題もあると思うんですけど。基本的には、やっぱり得体の知れない人からいろいろ問われるのはすごく緊張を生むと思うんです。

ですから、基本的に「何の部署で日頃は何の仕事をしているとか、もともとこの会社にはこういうつもりで入って、キャリアはこんなで今こんな仕事をやってます」とか。簡単でいいんですけど、それぐらいはお話ししてあげると、「あ、目の前にいる人は管理職なんだ」とか、「けっこう若く見えたけどいろいろキャリアがある人なんだ」とか、その逆だったり。

そういう背景がわかると、人は相手の背景を考えながら話します。どのレベルでしゃべったらいいかなとか考えて話す。学生時代の話をするにしても、けっこう上の人だったら今時の学生生活がわからないかもしれないので、詳しくしゃべらなきゃいけないだろうなと思うでしょうし。

3年目ぐらいだったら、まぁ、彼らもそんなに言わなくてもわかるだろうから「最近の授業は、もう出ないと怒られるじゃないですか」などわかっていることを前提に話せる。そういう意味でもやりやすいと思うんですね。

面接官が正体を明かすことで、候補者はフェアに感じる

ですから、ゆっくり話すこと以外にもう1つ加えるとすると、自己紹介をたっぷりめにして、正体を明かすこと。得体の知れない人からいっぱい聞かれている状態から逃れるのはすごく大事だと思います。

ハヤセ:もう面接官が顔見知りになってしまうという。

曽和:そこまでできたら本当にいいですけどね。まぁ、これってキャラの問題や対人関係構築能力にも関係します。面接官自身の能力にもよるので、みんながみんなできるわけじゃないと思うんです。でもどんな人でも、今言ったような自分のキャリアや、今どんな仕事してるかとかぐらいは自己紹介として言えると思うんですよね。

緊張という観点から言うと、少なくともそれぐらいはお伝えしたほうが、僕はいいと思います。そもそも会社と個人の姿勢として、向こうはいろんなものをさらけ出して言ってるのに、こっち側は正体を隠しながらしゃべるって、なんかフェアじゃない感じがします。

本当にフェアじゃないかどうかは別としても、相手はそう思うことがけっこう多い。そういう意味からも、(自己紹介は)やったほうがいいと思います。

基本的に「聞いちゃいけないものは聞いちゃいけない」

ハヤセ:おそらく胸襟を開いてお互いに話すと非常に深い話ができて、コミュニケーションもとれると思うんです。ただ、そうした中で気の緩みではなくても、うっかり聞いてはいけないような質問をしてしまうんじゃないか。

コンプライアンスに抵触しかねない、あるいはちょっと差別的な内容になってしまうんじゃないか。そういった質問に入りそうになった時は、どのように考えればいいでしょうか。

曽和:これは難しい問題なんですけれど、基本的に聞いちゃいけないものは聞いちゃいけないと。もうこれしかないと思うんですね。例えば、公的には『採用と人権』という本が各都道府県の労働局から配られてるじゃないですか。中身はほとんど一緒だと思うんですけど。

そこに、例えばつい最近もバズってたんですけど、「愛読書って聞いちゃいけないの!?」「尊敬する人物って聞いちゃいけないの!?」とか。「えぇ!?」っていうものが、実際聞いちゃいけないことになってるわけですよね。

やっぱりそれだけ公的なものにピシッと書かれてる以上、こちらから聞くのはNGだと思うんですね。相手が言ってくるからを聞いちゃったっていうのはまだあり得るし、それは、言ってくるんですから仕方ないですよね。でも、こちらから聞くことに関してはやっぱりNGだとは思います。

具体的にどのように聞けばというよりも、質問自体をしてはいけないと思いますね。

候補者のライフヒストリーは「直近の経験」から聞く

曽和:ただ、差別とかは置いといても、ライフヒストリーは聞きたい。人となりがすごくわかりますよね。

私も最終面接をいろいろやってきましたけど、例えば幼少期はどんな感じで、小学校、中学校、高校、大学、どんな環境で生きてきたかを聞くと、やっぱり人となりがわかるんですよね。ただ、小さい頃の環境ってほとんど家庭環境なので、なかなかダイレクトには聞きづらい。

そこで、直接的に聞くとNGやアウトになってしまう家庭環境やライフヒストリー、生きてきた歴史みたいなものを聞こうと思った場合は、直近の経験を聞くようにします。例えば新卒だったらガクチカとか、中途だったら最近の仕事の内容やそこで発揮した能力をまず聞きます。

そこから、「その能力はいつできたんだ」とか、どういうふうにその能力や性格、ガクチカが形成されてきたのかという原因を聞いたり、なんでその時にそのようなことを考えてやったのかという理由を聞いたり。そのような考えに至るようになったきっかけを聞いたりとかですね。

これを一言で言うと、理由や原因、きっかけなどのどれかに当てはまるわけなんです。「なぜ?」と聞くと、だいたいライフヒストリーか理屈かのどっちかにいくんですね。

「いや、自分はこんな環境で生まれ育って」「こんな出来事があって」「こういう人に影響を受けたからこういう性格になった、能力になった、考え方になった」みたいな感じになってきて。結局、そこでライフヒストリーが聞けるわけです。

直接的に「あなたの小学校時代はどう?」「家庭環境がどう?」はNGでも、理由・原因・きっかけを「なぜ」という言葉で聞くことによって、結果として(ライフヒストリーが)出てくるのはあると思いますね。

「なぜ」を繰り返すと、圧迫面接になりかねない

曽和:ただ、ここで1つ気をつけなきゃいけないのが、「なぜ」って言葉はけっこうきつい。あのトヨタの生産方式で「5WHY」と言って、「なぜ」を5回繰り返すと、真の原因、真因に突き当たるというのがあるじゃないですか。

確かにあれと同じで、その人がやった最近の行動から、なぜなぜなぜなぜって聞いていくと、結局ライフヒストリーに突き当たると思うんです。でも「なぜ」を本当に5回聞かれたら、きっと圧迫面接だって思いますよね。

ハヤセ:はい(笑)。

曽和:「なぜ? それはなぜ? それはなぜ?」みたいな。「なぜ」っていう言葉が日本語においては否定の意味で使われてるケースがありますよね。例えば、ハヤセさんが上司に「こうしました」って言った時、「え、なぜ?」って言ったら、それは「え、だめだったのかな」って感じじゃないですか。

ハヤセ:確かに。

曽和:なぜっていう言葉には、そんな日常的な(マイナスの)イメージがある。だから、さっき理由・原因・きっかけと言ったように、なぜばっかりを繰り返すんじゃなくて、「なぜ?」「理由は?」「原因は?」「きっかけは?」と言葉を換えてなぜを聞いていくといいと思いますね。これがまず、1つめですかね。

ハヤセ:ありがとうございます。

面接で「弱み」を聞いても、本当の弱みは教えてくれない

曽和:もう1つあるんですけど。続きをやっちゃっても大丈夫ですか。

ハヤセ:えぇ、どんどんお願いします。

曽和:しゃべりすぎるとなんかずっとしゃべってるので、適当に止めていただければと思うんですけど。もう1個あって、ギリギリのNG質問に近い、普通にやると嫌な質問の中に、ネガティブな質問があると思います。

「弱みは何ですか」「諦めちゃったことってあるんですか」みたいな話とか。ポジティブなこともネガティブなことも全部含めて、全人格的にその人のことを知りたいので、ネガティブなことを聞くことがあります。面接官も、たぶんそうだと思うんですよ。完璧な人なんているわけないですから。

ですけど、僕、ネガティブなことを聞く質問って、聞いてもあんまり出てこない甲斐のない質問と思ってまして。例えば、先ほどの「弱みはなんですか」って聞いても、僕も今まで何回も聞いたことあるんですけど、結局「私の弱みは、つい抱え込んでがんばりすぎてしまうところです」みたいな答えで、強みの裏返しっていうんですか。

実際面接対策セミナーを見ると「そう言え」って言われて指導されているんです。結局本当のところの弱み、だめな部分は聞けないんですよね。

ネガティブなことを聞く2つの質問

曽和:私は、(ネガティブなことを聞く質問は)2つあるとよく言っています。1つは変化の質問と言っています。面接の場では、候補者はだいたい何か自分の経験の話をするわけですよね。

その時に、あなたはその経験を通じてどう変わったかを聞きます。学んだかを聞く方法もあるんですけど。僕の感覚で言うと変わるって、ある状態からある状態になるわけですよね。変わったかを聞くと、「私はもともとこうだったんですけど、Aだったんですけど」と回答する。実はこれがネガティブなことなんですね。

「Aっていうネガティブな状態だったんですけど、この経験を経てBになりました」となればBはポジティブでも、そこでAっていうネガティブがようやく出てくる。

例えば、「私はこの経験を通じて、実は人とのコミュニケーションってすごく苦手だったんだけれども、なんとかできるようになった」と話をしたとする。すると、あぁ、人ってそこまで変わらないし、もともと弱みだったものが学んだとはいえ、強みにがーんと変わることもない。

この人はもともと対人能力の部分にはあまり自信がなくて、若干相対的には弱い部分なんだなとようやくわかったりするわけです。ちょっと引っかけ問題みたいな質問でアレなんですけど、こういう変化の質問を出すと、意外にその前のネガティブな状態を教えてくれるのは1つテクニカルな問題ですけど、ありますね。

自分の主観ではなく「周囲からの認知」を聞く

曽和:もう1つのネガティブなことを聞く質問は、周囲からの認知と言っているものがあります。「あなたの強みはなんですか」と聞くと、何を言ったって正解じゃないですか。もう自分はどう思ってるかだけなので。嘘でもないし。ギャップがあったとしても、嘘じゃなくて、僕はそう思ってるんだからOKなわけですね。

人は嘘をつきたくないんですけど、「あなたの主観は?」って聞かれたら別になんとでも言えるわけですね。ところが、「あなたは周りからどう認知されてる?」という周囲からの認知となると違ってくる。

例えば「あなたは周りからどんな人だって言われることが多いですか」と聞く。実はどう言われてるかってファクトの質問ですよね。なので、意外と悪いことも出てくるんです。

「いや、ぜんぜん納得いってないんですけど、けっこう天然だって言われるんですよね~。天然ですかね、私」って感じで。「いやいや、天然天然!」みたいなそういう会話って面接じゃなくてもあると思うんですけど。

そういうふうに他者からの認知、周りからなんて認識されているかを聞くと、意外とネガティブなことも出てきたりすると思います。

だからちょっとまとめると、なかなか聞きづらい繊細な質問の中で、ライフヒストリーとか生育環境に関わるようなものは、原因や理由、きっかけなどの「なぜ」系の話を聞く。

ストレートに聞くと嫌がられるネガティブなことは、変化の質問や周囲からの認知を聞いていただくと、単純に聞けないようなことも聞けると思います。

ハヤセ:ありがとうございます。今のは、事前のお申し込み時にいただいた質問の中から、「NGギリギリのすごく繊細な質問について」に対する回答として総合的に答えていただきました。今参加されていて、この質問をされた方はいらっしゃいますか。

「いや、具体的にもっとこういう質問なんですけど」ってことがありましたら、コメントいただけますと……。

曽和:質問の意図が違う場合もありますもんね。

ハヤセ:そうですね。今、総論的に曽和先生にお話しいただきましたので。気になるようでしたら「具体的にこの質問はありなんですか」など、コメントしていただければと思います。

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