2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
斉藤徹✕八子知礼トークイベント 「愛のある組織変革」は実現可能か? 〜「人間性」と「デジタル化」を両立する組織トランスフォーメーション〜(全6記事)
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八子知礼氏(以下、八子):みなさん、こんばんは。斉藤さん、ご無沙汰しております。
斉藤徹氏(以下、斉藤):そうなんです、かなり久しぶりですよね。リアルで会うのはどのくらいぶりですか?
八子:10年……そんなことないですかね。8年? 相当久しぶりですよね。かれこれお付き合いは15年近くになりますけどね。
斉藤:『ソーシャルシフト』の頃ですよね。
八子:その時よりももうちょっと前ですけど。
斉藤:もっと前ですかね。「in the looop」の前……ですよね?
八子:(笑)。今日は旧知の斉藤さんと対談していきます。斉藤さんの『だかぼく(だから僕たちは、組織を変えていける)』はみなさんがご存知のとおり、超売れに売れておりまして。
『だから僕たちは、組織を変えていける ーやる気に満ちた「やさしいチーム」のつくりかた』(クロスメディア・パブリッシング(インプレス) )
斉藤:そこそこです(笑)。
八子:いえいえ、超売れに売れてますよ。今日はオープニングのトークでお話をしたように、旧知の斉藤さんの懐をお借りしながら、売れに売れている斉藤さんの本と、私のなんだかよくわからないタイトルがついている『DX CX SX』という本のミックスで話を進めます。
『DX CX SX ―― 挑戦するすべての企業に爆発的な成長をもたらす経営の思考法 ―― 』(クロスメディア・パブリッシング(インプレス) )
すごく良いイベントタイトルがついていますけど。
斉藤:ちょっと先走っている気がしますね……(笑)。
八子:「愛のある組織変革は実現可能か」という、非常にラディカルな、攻めているタイトルがついていますけれども。それでは冒頭、私のほうからキックしていきます。
八子:『DX CX SX』という本の中に書かせていただいた内容でもありますが、まず、デジタルトランスフォーメーションの中で、私たちが頻繁に遭遇する「魔のデッドロック」という状態を解説します。
その中でも一番陥りがちな、特にヒューマンの話を紐解きながら、斉藤さんにバトンタッチをします。斉藤さんからもお話をいただき、後半は2人で、今日のウェビナーのテーマにもなっている、「愛」……AIじゃないですよ、「愛」ですね。ここを掘り下げて討議をしていきたいと思います。
それではまず、私のほうから。INDUSTRIAL-X代表の八子と申します。大学は広島大学を出ていまして、もともと5年ほど松下電工というメーカーに勤めていました。ものづくりが得意な歌って踊れるコンサルタントとして、20年ほどやってまいりました。
(会場笑)
3年ほど前に会社を作りまして、そちらの代表と、いくつかの会社のアドバイザー・顧問をやらせていただきながら、広島県や高知県でカツオを食べています。
(会場笑)
広島大学では特任教授も拝命しています。そして、この本が『DX CX SX』という本になります。ぜひ、もしお手に取っておられない方がいらっしゃれば、Amazonでクリックしていただければ、明日みなさんのご自宅に届きます。
斉藤:僕、今日読んだんですけど、すごく良い本でした。
八子:ありがとうございます。
斉藤:体系立てて書いてあって、しかも具体と抽象のバランスがとても良い。DXってだいたい抽象的な話が多くなりますよね。スポン、スポンと具体的な話が入ってきて、本当に勉強になりました。ありがとうございます。
八子:とんでもないです、じゃあこれで終わりにさせていただいて。
(会場笑)
今からスタートですからね(笑)。
八子:会社は、日本の人口がどんどん減っていく中においては、やはり労働生産性を上げていかなければなりません……20パーセント以上もの人口が減ってしまうので、国力を維持するためには労働生産性を上げるのはもう、国民の義務であると我々は考えています。
そのためにはなんらかのかたちで、組織やビジネスモデルを未来型に変えていく必要があります。そこでデジタル化が必須ではないか、と私たちは考えているのです。
ただ、デジタル化を進めていく上ではさまざまな課題があります。いわゆるITの導入が必要であったり、新しい事業の姿とは何ぞやということを探らなければなりません。また、そのソリューションの調達をいかに効率よくやるのかというところを私たちはご支援させていただいています。
特に力点を置いているのは人材の育成や、将来その会社がどのようになりたいのかを、きちんと見据えたご支援をさせていただくということです。ぜひともお見知りおきいただければと思います。
私たちの定義で「デジタルトランスフォーメーション」というと、左側に既存事業、右側に新規事業を置き、上をデジタル、下をアナログと置いた場合に、多くの企業は当然ながらアナログな環境を持っていて、既存事業から始まりますから、これは一番下に位置します。私たちはここのIT化・効率化を「DX1.0」と呼んでいます。いわゆるデジタイゼーションで、手段としてのITを導入していくことと捉えています。
また、上にまいりますと「DX1.5」がありまして、全社的にIT化やデジタル化、最適化を進めていく、いわゆるIoT化ですね。見える化して、ボトルネックを探りながら最適化を図っていく方法が、左上の既存事業でデジタル化をしていく取り組みとなります。
最終的には右上の「DX2.0」となり、デジタルトランスフォーメーションで、ビジネスモデルを変革していくところを目指して事業を進めていく。
八子:この2年ほどの間、コロナ禍がみなさまの生活・ビジネスを脅かしてきたわけですけれども……その予測が不可能で、常に脅威にさらされるような環境から、予測・シミュレーションしながら経営を確実なものにしていく姿に生まれ変わることが重要ではないかと考えています。
特にデジタルな手段はあくまでも手段であって、組織や企業が未来に生き残っていくためにどのような姿になりたいか、どのような社会課題を解決したいかという「思い」が重要である、と私たちは捉えています。
こういったデジタルトランスフォーメーションを推進していく中で、DX推進や組織変革のあるあるを少し並べてみました。みなさんいかがでしょう、こういうことはありませんか?
例えばデジタル化を推進していくと、人の気持ちに十分な配慮が行き届かず、「仕事がなくなってしまう」という恐怖感を持たれる現場の方々にたびたび遭遇することがあります。ただ、日本はITの活用・導入が遅れていたので「そもそもデジタル化って何?」と、IT音痴と言っても過言ではないほどの、デジタル化からはほど遠い、リテラシーが十分ではない方々もたくさんいらっしゃるのが事実なんですね。これが「デジタル」と「ヒューマン」の問題です。
八子:また実際には古い設備がたくさんはびこっているのも日本の特徴ではないでしょうか。これはなにも古いことが悪いのではありません。非常にモノを大切にし、もう減価償却が終わったとしても、きちんと利益を出すという観点から大切に使っている、と解釈をすることもできます。しかし設備が古いと、新しいことに取り組むうえではボトルネックになるかもしれません。
またこういったDX、もしくは組織の変革とひとことで言っても、「そもそも何のためにやってるんだっけ?」となる場合がある。手段が目的化することは、往々にしてどの企業でも見られることではないでしょうか。
そういったところでよく変革が道半ばで止まってしまう理由として、物理的な設備が古すぎて、インフラを刷新しなければならないということがあります。例えばネットワークがそもそもないので、工場の可視化が進まないというのはよくある話なんですね。
この物理的な、「フィジカル」な課題解決のためにトライをすると、今度は人、つまり「ヒューマン」の要素がボトルネックになることが多いんです。「古い設備を入れ替えましょう」という話になった時には、「それは山本さんがものすごく得意な機械なので入れ替えないでくれ」とか「自動化してしまった時には、私たち/僕たちはどうするのか」と。「人の気持ち」が、非常に不安になってしまうわけですよね。
八子:一方でこの、「ヒューマン」の不安を解消するところに対して、今度はまた「デジタル」がさまざまなかたちで制約条件になります。例えば先ほど申し上げたような「デジタルで目指す姿がよくわからないんです」という人からは、「私たちよりもデジタルのほうが大事なのか」というような話もよく聞かれます。またITリテラシーが十分でなかったりするので、せっかく導入した「デジタル」を活用するところまで至らないこともあります。
私たちはこの三つ巴の状態を「魔のデッドロック」と呼んでいます。これはなにかひとつを解決すれば済むものではなく、3つ同時に並行して解決していかないとなかなか前に進まない。これが私たちが実際に組織変革をデジタルを通じてやっていこうとした際に、よく遭遇する場面なんです。
この「魔のデッドロック」をもう少し紐解いてみたいと思います。例えばデジタルはインプットを入れると、ちゃんとアウトプットが出ますよね。ゼロイチで規定されていますからね。次にフィジカルは、正しいリソースを入れると正しい成果が出ます。素材を入れる、配線を入れる、もしくは時間を投入して切削加工すればモノは確実にできていく。
ですが、ヒューマンだけが、おそらく正しいと思えるようなインプット……例えばリーダーが部下やチームメンバーに教育を施し、時間を提供し、「目指すゴールはこうなんだよ」と目標設定しても、なかなかパフォーマンスが上がらないという経験をされたことはないでしょうか。ご自身だけではなくて、周りのメンバーもそうかもしれません。もしくは組織全体がそうかもしれません。
八子:ですので、デジタルの場合は1・0=インプット・アウトプットが明確に決まっており、そしてフィジカルの場合にもインプット→プロセス→アウトプットが規定されていて、それに対してエラー・ロスがどのように発生しているのかさえきちんと把握ができれば、アウトプットは出るはずです。ところが、ヒューマンだけはストレートにアウトプットが出ないのは、なぜなんでしょうね。
「曖昧模糊としているから」「極めてエモーショナルな生き物だから」……そんなふうに言うことができるかもしれません。この「人」の部分にフォーカスして、もう少し掘り下げてみたいと思います。
みなさん自身の胸に手を当てて考えてください。私も胸に手を当てていますが、もしかして「新しいことはしたくない」とどこかで考えていたりしませんか? 常に新しいことをするということは、非常に不安で、ヒリヒリして、ワクワクして、チャレンジングである一方、もしかすると失敗するかもしれない……と思っていることはありませんかね。どうでしょう。
あるいは「自分の知識を出したくない」、知識だけではなくて「本気を出したくない」というのもそうかもしれませんね。私は中学生の時に『山月記』を読んで、その主人公がいつか小説家になれると思って文章を書いても、いつまで経っても小説家にはなれず、最終的にはその臆病さから虎になってしまうという話を読んで、とても怖い思いをした記憶があります。
でも改めて大人になってから考えてみると、自分の知識を出してしまうとすっからかんになるようで怖い、ということはありませんか。
八子:または「いいじゃん、自分だけで」「うちの組織がうまくいっていればいいじゃん」「ほかの人たちの面倒を見るほどの余裕なんてないよ」「ノウハウも知識も出したくないし、まあいいじゃない」と独りよがりになってしまうことはありませんかね。どうでしょう? お茶の間のみなさまも、いかがでしょうか?
(会場笑)
このような視点でヒューマンの部分を少し深堀りしてみると、また違ったものが見えてくるような気がしますね。誰かを相手にした時に思っている感情が、実は自分の内面にもあったり、自分の組織、あるいは組織の外にもいろいろあるのかもしれません。
ぜひこういうところに関して、斉藤さんがどのようにお考えなのか、バトンタッチして聞いていきたいと思います。斉藤さん、いかがでしょうか。
斉藤:すごい時間ピッタリですね……。
(会場笑)
八子:そこじゃないです(笑)。
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