2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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坂東孝浩氏(以下、坂東):今日は岩元貴久さんと、それから武井浩三さん(タケちゃん)と3人で話を進めていくんですけれども、タケちゃんのほうから「岩元さんはこんな人だよ」っていうことを紹介してもらってもいいですか?
武井浩三氏(以下、武井):はい。他己紹介。
坂東:他己紹介。
岩元貴久氏(以下、岩元):いいこと言ってね(笑)。
武井:あはは(笑)。もちろん。こんばんは、武井浩三です。こんばんはと言っていますけれども、実はタカさんはテキサス在住で、今、朝の7時ということです。アメリカは30年近く住まれている。
岩元:そうですね。
武井:僕がタカさんを知ったのは、実はダイヤモンドメディアを起業する前です。僕がアメリカに留学をしていたのが2003年で、日本に帰ったら起業したいなと思って。ビジネスのことを勉強しようといろんなメルマガとかを読んでいたんですけど、そのメルマガを書かれていたのが岩元貴久さんでした。「インターネット虎の巻」でしたっけ?
岩元:はい。
武井:(笑)。俺、たぶん全部読みましたよ。
岩元:(笑)。ありがとうございます。
武井:それぐらい大ファンです。岩元さんはもともとコンサルタントだった方で……。
岩元:アーンスト・アンド・ヤングですね。
武井:外資系のコンサルを経て独立をしているんですけれども、マーケティングの専門家でもあって、マーケティングを教えたり、日本でメール配信システムのASPの会社の経営もされています。アメリカでも会社をやられ、プロとしてコーチングをされていたりと本当にいろんなことをやっている方です。
ご自身でも本を何冊も書かれていますし、本のジャンルもおもしろく、マーケティングの専門的な本もあれば、ものすごくスピリチュアルな、「私たちは幸せになるために生まれてきていて」といった世界の話もできる方です。
また、海外で素晴らしい活動をしている方々の本を訳して日本に紹介する翻訳家としての側面もあり、2007年に『奇跡の経営』という本を翻訳して日本に紹介しています。『奇跡の経営』のオリジナルの著者は、ブラジルのセムコ社のリカルド・セムラーですよね。みんなが知っている前提で言ってしまいましたけど。
坂東:(笑)。
武井:セムコ社は製造業の会社で、1990年ぐらいから2代目経営者のリカルド・セムラーが、モンテッソーリとかシュタイナーみたいなオルタナティブ教育の影響をけっこう受けて、「やりたいことをみんながやっていいじゃないか」「休みたい時に休んで何がいけないんだ。自分の仕事を自分で管理すればいいだけの話で、大人を子ども扱いしたくない」と(主張し始めた)。
パタゴニアが「毎日が日曜日」というコンセプトの本を書いていますけど、まさにああいうことを1990年からやっていた。しかも当時3,000人規模ぐらいの会社で。これが『奇跡の経営』として日本に入ってきて、僕はこれを読みました。ちょうどこの本が出た年に、僕は最初に起業した会社を倒産させているんですよね。やり直した月に日本でこの本が出て、ダイヤモンドメディアを始めた……。
坂東:おお、その月に。
武井:確か設立した月ぐらいだったかな。僕の中に「いい会社を作りたい」という漠然としたものはあったんですけど、それってどうやって作ったらいいのかとか、何をもって「いい」のかがよくわからなかった。まだ手探りの部分があった時にこの本を読んで、「うわ、これじゃん」と思ったんですよね(笑)。
「これだ。こういうのをやりたいし、こういう世界で生きていたい」と思ったのが、僕が自律分散型経営を始めたきっかけです。だから『奇跡の経営』は本当に僕のバイブルです。30冊以上買いました。
坂東:へえ。
武井:もう好き過ぎて、「こういう会社を僕はダイヤモンドメディアでやりたいんだ」って、会う人、会う人に配って(笑)。
岩元:ありがとうございます(笑)。
武井:まだダイヤモンドメディアが4人とかの時です。だから岩元貴久さんは、僕にとっては勝手に人生のメンターなので。
(一同笑)
坂東:会ったことはないんだけど。
武井:影響されてしまっている。当時は直接会ったことはなかったけど、僕に人生の転機をくれた方ですね。
坂東:すごい影響だね。
武井:大好きですよ。そんな岩元貴久さんです。めっちゃ長く紹介しちゃった(笑)。
岩元:(笑)。
坂東:そんな岩元さんに、まず『奇跡の経営』について、少しおうかがいしたいんですけれども。今から15年以上前に出されたと。今でも、まだ「超びっくり」みたいな人が多い中で、きっと15年前はもっと衝撃だったんじゃないですか。なぜ当時、セムコ社に興味を持ったのかというところからお聞きしたいんですけど。
岩元:私はマーケティングとかを教える一方で、自己啓発的なことも教えていたんですよね。その当時は自分の会社をもっともっとより良くしたいと思って、本屋に入り浸っていました。ある時いつものように書店に行くと、なんか本が白く光っている感じがしたんですね。
武井:光っていたんですか?
岩元:(笑)。たくさんある本の中でですよ。行ってみると、タイトルが『The Seven-Day Weekend』と。「1週間ウィークエンドなんだ」みたいなことが書いてあるわけです。当時の自分はアメリカにいながら日本の会社を経営していて、「好きなところに暮らして、自分が得意な市場でビジネスをする」というコンセプトでやっていました。
坂東:もう実践されていたんですね。
岩元:そう、実践していたんです。だから、カレンダーにコントロールされる人生ではぜんぜんなかったんですね。自分のやりたいようにやって、僕のことを管理する人もいない。朝起きたら自分が行きたいところに行ってそこで仕事をする。いわゆるインターネットを使って日本の会社をリモート経営していましたから。
坂東:その当時から!
岩元:そういうことをやっている「自分」という存在がいたわけですよ。でも、社員はどうかと言うと、まだ朝決まったところ(会社)に行って、決まった時間で仕事をするというスタイルだったんですよね。
この本を読んだ時に、「なんと、経営者だけではなくて、社員も同じことをやっているのか」という。彼の講演を聞いた人たちから「あなたはどこの惑星から来たんですか?」みたいな質問をされたというのが序章に書かれていて。「お? なんじゃこれは」と。読み進めていくうちに「え、マジで? 本当に?」って。その「本当に?」は疑いのじゃなくて喜びの「本当に?」なんです。
「本当にやってくれているの? そんなことができるの?」という驚きで、どんどんページをめくっていました。アメリカの書店って必ずカフェが併設されていて、カフェでただで読めるんですよ。それで気に入ったら買えるという、そういう環境です。実は僕はその本をカフェで1冊読んじゃったんですよ。
武井:(笑)。
岩元:もちろんその後買いましたよ(笑)。
岩元:「これはすごいな」と、自分の魂がすごく喜んでいるんですよ。やっぱりすごくおいしいラーメンがあったら人に伝えたいじゃないですか。
武井、坂東:(笑)。
岩元:それと同じ感覚で、「これは絶対に日本の人たちに伝えたい」という気持ちになって、懇意にしている出版社にすぐ電話をして、「この本は絶対に日本にすごく必要とされる本だから、絶対出したい」と言ってね。そうしたら「岩元さんがそんなに言うなら、本当にいい本なんでしょうね。わかりました」と言って、通してくれたんですよ。
それが最初のきっかけです。実はあまり外で言えないんですけれども、翻訳には、普通は下訳というものがあります。そのまま自分が翻訳するわけではなくて、英語を知っている人がばっと書いて下訳を出すんですよ。その下訳が出版社の営業会議に出た時に、「なんじゃこりゃ。読みにくいしぜんぜんつまらない。売れないよ」となったんですよ。
それで、「岩元さんがいいって言うから出すことに決めたんですけど、会議の中でいろいろと批判があって……」と言ってきたんです。下訳を見せてもらったら、すごく読みにくくて。本質をわかって訳していないから、字面だけの訳になっていたんですね。温かみとか、すごさがぜんぜん伝わらなくて、読んでもわくわくしないんですよ。
なので「僕がゼロからやる」と言って訳して出したら、「いや、これはおもしろいですね。すごいです」と。彼らもやりたい気持ちになって、「絶対に出します」となりました。
坂東:まず下訳を出し直しみたいな感じだったんですね。
岩元:そう。僕が下訳を翻訳し直しました。
坂東:岩元さんご自身がすでに本と同じ価値観を採り入れているから、やりやすかったんですね。
武井:そうか。
岩元:言葉ももっと柔らかく、口語的な感じにしました。
武井:だからあの本は読みやすいし、優しいんですよ。文章自体が愛にあふれているんですよね。
坂東:確かに。
岩元:「本当にいいよ」と思って翻訳しているから。
坂東:それも奇跡よね。
岩元:そうですよ。本当に奇跡でした。
武井:やってくれました。もう泣きそうだもん(笑)。
坂東:(笑)。
岩元:でもね、おもしろいことに、出版して本を出すじゃないですか。当時は本にこういう紙を入れて、「感想文を送ってください」と書いていたんですね。
坂東:はがきが入っていますね。
岩元:本当にたくさんの感想文をいただいたんです。男性からも女性経営者からもたくさんいただいたんですけど、おもしろい特徴に気付いてしまって。「素晴らしい。こんな経営ができるんですね。こんな会社で働いてみたい」または「こんな会社を作ってみたい。僕も経営スタイルをこう変えたい」と書いてあるんですよ。でも男性からの感想文には必ず最後のほうに「でもなかなか……」とか、「しかし現実は……」と書いてあるわけですよ。
坂東:(笑)。
岩元:でも、女性の感想文の最後は「やります!」だったんです。
坂東:何なんだろうな、その違い。
岩元:これを見た時に、僕は「あ、もう女性の時代なんだ」と、すごく感じましたね。やはり女性は感性がすごく豊かで、自分の気持ちを出したいという思いや表現力があるんでしょうね。男性は「決まり」という秩序に対してすごく従順なところがありますけど、女性はもっとネットワーク的な、分散型になっているところがあるじゃないですか。そこがマッチするのかもしれないですよね。
坂東:なるほど。この本は他の国にも広まっているんですか?
岩元:そうですね。その前に『Maverick』という本が出ていて、それは日本では『セムラーイズム』かな。
坂東:『セムラーイズム』で、出ていますね。
岩元:それがすごく売れたんですよね。それがこの『The Seven-Day Weekend』という進化型になっていくんだけれども。じゃあ『The Seven-Day Weekend』がすごく売れたかと言うと、そうでもなかったみたいです。『Maverick』のほうがすごく売れたと聞いています。
坂東:そうですか。『セムラーイズム』は日本では絶版です。
岩元:そうですよね。
坂東:だから中古で買おうと思うと高いですね。私も、文庫本ですけど4,000~5,000円で買った気がする。
岩元:「時代的にちょっと早かったのかな」という気もしないではないですけど(笑)。
岩元:ただ、今は時代がどんどん変わって、人々の価値観もすごく多様化している。「自分らしく生きたい」という思いを持つ人もたくさんいるじゃないですか。
坂東:そうですね。
岩元:パンデミックにはネガティブなイメージがありますけど、一方であれがあったから、人々が自分の居たいところで仕事ができるスタイルを経営者側もだんだん認めるようになってきている面がある。天の計らいではないけれども(笑)、だんだんそっちの方向になりつつあるなとすごく感じていますね。
「手放す経営」というかたちで武井さんや坂東さんがやっていることも、「やっぱりそういう方向性かな」とすごく感謝しているところです。
坂東:なるほどですね。
武井:1個質問ですけど、『The Seven-Day Weekend』を『奇跡の経営』という日本語タイトルにした理由やインスピレーションをお聞きしたいです。
岩元:あれを読んでみんなが「こういうことは無理だよな」と思ったと思うんですよ。「うわ、いいな。すごいな。こうしたいな。こういうところで働きたいな」とか思うけど、さっきのように「でも」とか「現実には」となる。
そういう、「無理じゃないか」という思いに対して、「奇跡は起こるんだ。これはあなたにとって今は奇跡かもしれないけれども、現実になっている姿があるんだよ」ということを伝えたくて。当時、長嶋(茂雄)さんも「メークミラクル」みたいなことを言ってましたしね(笑)。「奇跡を作る、やろう」という気持ちやチャレンジ精神を持ってほしいなという思いがあって『奇跡の経営』というタイトルにしました。
坂東:なるほど。『セムラーイズム』より『奇跡の経営』が日本で売れたのは、絶対にこのネーミングがあると思うんですよ。しかもこの「一週間毎日が週末発想のススメ」という副題で「え?」となりますものね。
武井:あとタイミングとか、いろんな流れもあったと思うんですよ。ちょうど同じ頃にゲイリー・ハメルの『経営の未来』という本が出ていて。『経営の未来』は、まさにパタゴニアやセムコみたいな経営をする世界中の会社をまとめて、こういう方向が経営の未来なのではないかと紹介する本です。けっこうあの時は、他にもそういう本がぽこぽこ出ていた気がするんですよね。
岩元:ありましたね。日本でもなんか「いい会社を作ろう」という感じの本もありましたし。
坂東:『日本でいちばん大切にしたい会社』。
武井:そう、大切にしたい会社シリーズ。坂本光司先生がそれを書かれたタイミングだったり。あと、僕がよくお世話になっている天外伺朗さんが『非常識経営の夜明け』という本を出されたり。それもまさに、管理しないで好き勝手にやらせたほうがなんだかんだうまくいくという話でした。僕は立て続けにそれらを読んで「どう考えたってこっちじゃん」と思ったんです。
岩元:(笑)。
武井:じゃあそれをやろうよ、と。俺、亥年なので、目標が見えたら一直線になってしまうので、それを純度100パーセントでやりたいと思って始めたのが、ダイヤモンドメディアだったんですよね。
坂東:なるほどね。
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