2024.10.10
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“同僚(ピア)”からのフィードバックは自己認知が促進されると言われ、360度フィードバックなどの施策を取り入れる企業も増えています。一方で、「そもそも何を言えばいいのかわからない」「ネガティブな指摘がしづらい」「的を得ていないフィードバックをもらっても…」と、上司部下ではない関係性だからこそ生じる難しさがあります。今回はフィードバックを重視したフラットな組織作りを行う株式会社ゆめみの栄前田勝太郎氏に、なぜ組織として「フィードバック」に重点を置いたのか、実際に出てきた課題点やその乗り越え方など、リアルなお話をおうかがいしました。
ーー今回は「ピア(同僚)・フィードバック」についてお話をおうかがいしたいと思います。ゆめみ代表の片岡俊行さんのTwitterで、ゆめみは「フィードバック」を重視しているとおっしゃっているのを拝見しました。なぜフィードバックを重視するようになったのか、その経緯を教えていただけますか?
栄前田勝太郎氏(以下、栄前田):まず前提として、ゆめみは「ホラクラシー」という組織です。いわゆる上司・部下が存在しない組織であることが、ピア・フィードバックがされる一番の理由だと思うんですね。基本フラットに、全員同僚というかたちでコミュニケーションを取っています。
(多くの企業では)「1on1」が積極的に採り入れられていると思うんです。実は私が入社する前のゆめみにも、1on1があったらしいんですよ。
ーー2020年以前ということですね。
栄前田:ホラクラシーというアジャイル組織になる前は、評価制度があったんですよ。上司・部下、要は評価するとされる側が存在した時に1on1を行っていたので、1on1は評価のためのものというイメージが少なからずあったと思います。現在は制度としての1on1はありません。
逆に1on1がないことによって、気付きを与える機会がどうしても少なくなる傾向があったので、フィードバックというシステムを入れることによって、他者視点での気付きを与え合う「機会点」を作った。これがシステムの成り立ちだと理解しています。
ーー「フィードバック」は評価ではなく、気付きを与える育成の機会だと。
栄前田:制度化される前のフィードバックは、評価ではないけれども、「ダメ出し」のようなところがあったと思うんです。そこを上書きするような意味合いで、今のゆめみで仕組み化されたものは、「機会点を与える、成長のためにフィードバックをする」という認知になっていると思っています。
ーーいつもどのようなかたちでフィードバックが行われているんですか? どんなタイミングで、どんなツールを使って、誰から誰にフィードバックがされているんでしょうか。
栄前田:ゆめみの中で一番認知されているツールが、(コーポレートエンジニアリングチームで内製開発した)「feedit」という、Slackをベースにしているものです。Slackで「/feedit-feedback」と「/feedit-thanks」というコマンドラインがあり、機会として一番多いのは「感謝を相手に伝える時(/feedit-thanks)」だと思います。例えば先回りして議事録やアジェンダを作ってくれていたとか、「さっきのミーティングでここをフォローしてくれた」とかですね。
あとゆめみには「給与自己決定制度」があり、そこに「給与プロリク」というものがあります。給与についてSlack上に「給与をこれくらい上げたい」と上げるんです。そこに「給与レビュー」というフィードバックを入れるんですが、誰からレビューを受けたいか指名できるんですね。
ーー逆指名するんですね。
栄前田:自分と関係性を持っているメンバーに「レビューをください」と逆指名するんです。なのでゆめみの中のフィードバックの機会は、日々のミーティングやプロジェクト進行における「感謝」と、給与プロリクにおける「レビュー」です。これらが仕組み化されていることが大きなポイントだと思います。
栄前田:さらに言うと「feedit-thanks」には、毎週金曜日にボーナスタイムがあるんですよ。Feeditでは、thanksを送るとポイントがもらえるんですよね。金曜日のボーナスタイムになると、そのポイントが倍増するんです。なので、金曜日のその時間になると、たくさん感謝が送られるんですよ。
入り口はポイント欲しさというのがあったかもしれないんですけど、毎週金曜になると「あ、始まったな」という感じがあって。週の終わりに今週の感謝を伝える、その波にみんなで乗る。それがフィードバックの習慣化になっているかなと思います。
ーー他の人がやっているのを見ると、「自分もやってみようかな」と気軽に参加できますよね。
栄前田:そうですね。きっかけは何でもいいなとは思っているんですが、周りでフィードバックをし合う状態が目に入ってくることで、「今こういうことが行われているんだ」「やってみようかな」と思える。
フィードバックには「気付き」があるというか、言葉にしないと伝わらないことが本当にあると思うんです。フルリモートの中で、それが文字になって伝わるのは、大きなフィードバックになっているのではないかなとは思っています。
栄前田:さっきの質問の「どういう関係性の人たちがフィードバックをしているのか」というところで言うと、一番多いのはプロジェクトベースです。クライアントワークにおけるプロジェクトチームのメンバー間で送り合うのが一番多いんじゃないかなと思います。
ゆめみの中での「チーム」は、プロジェクトのチームと職能のチームの2つに分かれますが、それぞれで送り合っていますね。
ーープロジェクトチームのメンバーから送られるフィードバックと、いわゆるエンジニアとかデザイナーとか、同じ職能の人から送られるフィードバックでは何か視点が違ったりするんですか?
栄前田:内容を見ていると、視点は一緒かなと思っています。職能で違いがあるというよりは、属人的なんですよね。人によってフィードバックの視点や内容が変わるかなと思います。
ーーなるほど。組織開発として「フィードバック」を中心においたことで、どんな良かったことがありましたか?
栄前田:私の視点からは2つあります。1つは「相手のことを考える機会」ができたことだと思うんですよね。
フィードバックを送るためには、もちろん相手のことを考えなければならないと思うんです。相手の何に対してフィードバックするのか、相手のことを考える機会ができたのはけっこう大きいところだなぁと思うんです。
もう1つは「可視化」です。Slack上でフィードバックし合っているところが見える。「この人とこの人が今そんなプロジェクトをやってるんだ」と、他の人の関係性が見える。これはフィードバックに加えてSlackというシステムを使ってるからだと思うんですけど、関係性が可視化されたところも、フルリモートの組織ならではの重要なところかなと思います。
――リモートだとどうしても関係性が薄くなってしまう部分があるので、そこがカバーできたんですね。フィードバックにはどのくらいの時間をかけていらっしゃるんですか?
栄前田:シーンによってボリュームが違うと思っています。例えば感謝を伝えると言っても、短い人はスパーンと短いんですよね。一言だけだったり、スタンプだけの人もいます。ふだんはそれでもいいなと思っています。
(ゆめみが自社開発したピアボーナスの)Feeditのシステムには2種類あって、1つは感謝を送ること(/feedit-thanks)、もう1つは相手に機会点を与えること(/feedit-feedback)、つまり「ここは良かったんだけど、さらにこうするともっと良くなるよ」という気付きを与えるんですね。
相手に、成長のための機会点を与えるためにフィードバックを送るんですが、そういう時は長くコメントを書かれてる方もいます。あと私が給与プロリクのレビュワーに指名された時は、2週間ぐらいかけるんですよ。
――そんなに時間をかけていらっしゃるんですね。
栄前田:給与プロリクのレビュワーは相手の成長機会としてとても大切な機会だと考えていますので。相手に対して「相手の成長にどうしたらつながるか」「何を伝えればいいか」と考えるので、時間をかけて長い文章を書きますね。
――気軽にやってもいいし、相手のことを考える時間は長く取ってもいい。そうやって使い分けているんですね。
栄前田:そうですね、社内の様子を見てるとそう見受けられます。あとはたまに「これはフィードバックかな? 詩を送っているのかな?」という、ポエムのようなフィードバックもあるんですよね。
フィードバックには、送る人のキャラクターがけっこう出てるんじゃないかなと思います。ゆめみならではかもしれないんですけど、すごく真面目に書いてくれる人もいれば、少しエモさを持って、感情的なところを伝えてくれる人もいるんです。
でも、どちらもその人がテンプレではなく、ちゃんと(自分のことを考えて)送ってくれてるんだなと伝わってくるので、それはありがたいなと思います。
ーー伝え方のお話があったので質問なんですが、ゆめみさんは独自のフィードバックガイドラインを定めていらっしゃいます。今おっしゃったように、人によって違いはあれど、ある程度「こういう言い方をするといいよね」というのを会社として定めている。なぜガイドラインをここまで細かく規定したのか、理由は何かあるんでしょうか?
栄前田:ゆめみは昨年ぐらいから「態度」を重視しているところがあります。例えば「採用態度」「営業態度」という言い方をしたりするんですけれども、ゆめみは上司・部下が存在しないので、どうしてもオン・ザ・ジョブ的にトレーニングをするところもないんですね。
なので、人を動かす要素は基本的に「仕組み化」していく。仕組みドリブンと言ってもいいと思います。そういうところでガイドラインは、「このフィードバックに従え」というわけではなく、「これに沿ってやると、やり方がわかるよ」という、ある意味(フィードバックの態度を示した)マニュアル的なものだと思うんですね。
ガイドラインはルールではないんですよ。「これに従ってやってみたらどう?」くらいの感じです。守破離の考え方のように、まずはガイドラインをベースにやってみて、その後でそれぞれカスタマイズを加えていったり、それぞれのスタイルを出していくことが推奨されています。
栄前田:ただ、冒頭で言っていたようにフィードバックは「ダメ出し」的なものになりがちです。なので「相手を伸ばすために何が必要か」ということが定められています。「ここの視点を持ってフィードバックしましょうね」という態度を示すために、このガイドラインが出来上がったと理解しています。
ゆめみの中では、トップダウン的に「こうやるんだよ」「こうやらなきゃダメだよ」というものはありません。基本「標準はこれでやっていこう」というものがあって、もし違和感があったり、もっとこうした方が適していると思ったら、上書きしてもいいんです。
代表の片岡が何か作ろうとする時は、一回ファーストペンギン的に「こんな感じでやるよ」という声を上げるんです。その後、ゆめみの他の社員の中で「自分はこう思うけど」という声が上がってくる。そうやってアップデートがかかっていくんじゃないかなとは思っています。
ゆめみが目指しているアジャイル組織は各個人が自律的に動いていくので、やはり自分で考えてほしいんです。なので余白があったり、「絶対じゃないんだ」というのがベースになっている。そこがゆめみらしさにつながっていると思います。フィードバックガイドラインにも、それが含まれていると思います。
ーー実際にフィードバックガイドラインを制定した後に出てきた課題や良かった点は何かありますか。
栄前田:社員の中には、「feedit-thanks」の温度感が入社直後でつかみ切れていなくて、一人ひとりに丁寧に送っていたら、thanksを送るだけで2時間半を費やしてしまったというメンバーもいました。最初はちょっとやりづらいと感じる方もいるかもしれません。
ーー(笑)。
栄前田:私は社内コーチでもあるので、コーチングの基本として「良かったところ(Good)」と「さらに言うならば(More)」というフィードバックの仕方がそもそも染み付いているんですね。ただ、フィードバックの項目はすごくヒントになると思いました。
「感謝」とか「褒める」などもあるんですけど、「期待」というのもめちゃめちゃいいなと思っていて。
例えば給与プロリクもそうなんですけど、基本、相手が「こうしたい、このくらい給与を上げたい」と思っているものは尊重したいんです。なので金額に関してのフィードバックは私はしないんですけど、
ただ「こういうことを期待しているよ」と言いたい時はやっぱりあるんですよね。でもふだんから期待していると言っていると、それが重荷になってしまう可能性も否めないので。
ーープレッシャーになってしまうかもしれないですね。
栄前田:そうですね。プレッシャーになってしまうので普段はなかなか伝えられないのですが、フィードバックとして「期待」が規定されているので、そのタイミングを活用するかたちで言いやすくなったなと思います。
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