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【人事担当者必見!90分腹落ちセミナー】組織課題を解決する「対話」の力(全5記事)

経営陣は「現場の主体性が…」現場は「上が決めないから...」 組織が思考停止に陥る「他責のムード」を打破する方法

株式会社NOKIOOが開催する「90分腹落ちセミナー」の模様をお届けします。今回のテーマは「組織課題を解決する『対話』の力」。変化の激しい経営環境、また働き方の多様性が広がり、従来の一律のマネジメントでは対応できなくなっている中、組織内の適切な「対話」を後押しする対話型組織開発が注目されています。組織開発エバンジェリストとしても活動をされているZOZO小金蔵人氏をゲストに、組織内の「対話」を人事から仕掛けるためにはどうするべきか考えます。本記事では、組織の困りごとの背景にある「本当の課題」と、その課題を解決するための「対話」の要件について語られました。

困りごとの背景にある「本当の課題」

小田木朝子氏(以下、小田木):今出てきた困りごとは、状況やその方の課題感によって違うんですけども、ここであらためて今日お二人にお聞きしたいのは、1つ1つの事象に対して「どうするか」ではなく、困りごとの背景にある「本当の課題」について、それぞれの着眼点でどう見ているかということです。

まず先にお二人の着眼点をそれぞれお話しいただいた上で対話をしたいと思います。どちらからいきましょうか?

沢渡あまね氏(以下、沢渡):じゃあ僕からいきますか。小金さんはその間に考えててくれるとうれしいです。

小金蔵人氏(以下、小金):はい。

沢渡:1つ目が「経営と現場の景色が合わない」。……と、文学的すぎる表現ですね。具体的に言うと、「総論賛成、各論思考停止」。総論賛成で、各論反対どころか、各論思考停止のような状況が、今全国の企業や官公庁で起こっているなと私は感じているんですね。

例えば私は立場上、組織開発を生業としていますから、DXとか働き方改革とか、なんちゃら改革的な現場に行くことが多いです。そこではトップがDXとか働き方改革とか、ビジネスモデル変革とか、大きいこと言うわけですね。まあそうだろうなと。それをやらなければ企業は潰れるし、「総論賛成」なんだけれども。

いざ各論にいくと、結局変化に抵抗したり、時間がないからできないという、「各論思考停止」の状態になっている。これは経営と現場の景色が合っていない状態ですよね。ここに風穴を開けるための「対話」をどう仕掛けていったらいいか。それが今日深掘りしていく価値のあるテーマの1つかなと思います。

働く人同士の「差」が生む、不都合な真実

小田木:ありがとうございます。2点目はいかがですか?

沢渡:2つ目は少し標高を低くして。今は「経営と現場」という話をしましたけど、標高を地上に、つまり現場に落としていくと、「働き方が異なる人同士の標高温度差」。これが大きくなっていると思います。

例えば「オフィスワーカーvsテレワーカー」の話で、コミュニケーションが噛み合わないとか、綱引きが起こっているとか。あとは「正社員vs派遣社員」とか。

少子高齢化だからこそ、さまざまな働き方の人をチームメンバーとしてチームビルディングして、同じ方向に引っ張っていくことが、今あらゆるチームで求められている。その中で「正社員vs派遣社員」をしていて本当にいいのか? という話があるわけですね。

小田木:立場の違いが対立構造になっている。

沢渡:そうですね。あるいは「フルタイムvs時短勤務」。どっちが偉いとか、どっちに発言権があるかという話。これもよくない不都合な真実だなと思っています。

3つ目が、「ザ・ジェネレーションギャップ」ですね。人生100年時代、60歳定年でゴールできない世の中になってくる。もちろんネガティブな側面ではなく、年齢関わらず地域に貢献したい、組織に貢献したいという人と一緒にインクルージョンしながらパフォーマンス上げていく上で、(働く人同士の)ジェネレーションギャップが大きくなってきてしまう。これも不都合な真実だなと感じています。

組織の中の「イコールじゃない関係」

小田木:ありがとうございます。では小金さん、この困りごとの背景にある本当の課題は何かという着眼点で、小金さんも3つお願いします。

小金:はい。1つ目に、みなさんのチャットを見て、やはり「イコールじゃない関係性」という課題の出発点があると思いました。

さっきどなたかが書いていただいていたんですが、上司の「だるいな」の一言で、部下は「あ、1on1やりたくないんだ」と思い、でもそれすら言えずに、「じゃあ1on1もうやらないほうが…...」と思いながら1on1をすることになるんです。

上司は何もしなくてもワンアップするとよく言いますけども、逆に意図的にワンダウンする、自ら下がっていかないと上司部下はイコールになれないんです。これをよくサーバントリーダーシップと言います。

そもそも「上司部下という言葉もよくない」という話もありますが、基本的には組織はボトムアップ組織になる必要があるんです。でも、そんなに簡単ではなくて。そもそも「自分が意見していいの?」とか、「意見して得はあるの?」とか。

むしろ「あいつは“出る杭”だ」と思って、すぐに出る杭を叩くような言葉をシュッと言いたくなるのは、やはりこの上下がフラットじゃないからだと思います。

あとは単純に上司部下だけではなく、部署間でもなんとなく「あっちの部署のほうが偉い」「売上あげてるから営業のほうが偉い」とか、いろいろあるじゃないですか。そういったことが結果的に「イコールじゃない関係性」を組織の中に生むんです。そこに根本的な問題がありそうだなと思いました。

「自分から見える景色」だけで考えてしまう問題

2点目が、「自分から見える景色に閉じこもってしまう」こと。組織の中ではよくあります。自分から見える景色だけで考える。そういう意味でいうと、沢渡さんが挙げた1点目の「景色が合わない」とつながってくると思います。

景色がどんどん自分から見える範囲になってしまうから、全社視点で何が起こってるかとか、相手の部署が何を考えているかとか、もっとミニマムなことでいうと、上司が・部下が本当は何を考えているかがわかんなくなっていくというのが、課題の根幹にはありそうだなと。

もっと言うと、今日参加してくださった方が「これが課題だ」と挙げてくださったことも本当に課題かどうかわかりません。まさにこの今日の問いそのものですけど、「それがそもそも本当に課題なのか」を探りにいかないと、本当の課題がわからないくらい、組織の課題は難しいと思います。

沢渡:深いですね。

相互に責任を押しつけ合う「他責のムード」

小金:3点目が、よく組織の中で起こってしまう課題に「他責のムード」があります。これはポピュラーな課題で、よく経営陣がマネージャー含めて「現場の主体性が足りない」と言うんです。逆にメンバーの方たちに話を聞いていくと、「いや、上の方針がわからないので、主体性の発揮のしようがないんですよ」と。

沢渡:相互他責、わかります。

小金:実はお互いの「他責」で起こっている。それは問題としてありそうだなと思います。

沢渡:「相互他責」「相互思考停止」みたいな。

小金:ああ、そうですね。どれも「イコールな関係性どう作るか」とか、「景色に閉じこもらないためにどうするか」とか。他責じゃなくて、みんなが自分の責任をちゃんと、適度に適切に感じられるということで、「対話」が必要なんだろうというところにつながるのかなと思いますね。

小田木:ありがとうございます。お二人に観点を挙げていただきましたが、「景色」のような共通項があったり、「立場の違いの対立構造」を沢渡さんも小金さんも本当の課題の見方に置いていたり。

対立構造で何が起こっているのかというと、お互いに相手のせいにしてしまっていたり、相手の立場に立って見たり考えたりするのができていなかったりする。この論点がそれぞれから出てきた時点で、共通性があるなと思いました。

お互いの期待を持ち合い、お互いの責任も持ち合う

沢渡:そうですね。最後のソリューションの話になってしまうかもしれないんですけれども、「他責」ではなく「他への期待」に翻訳する。役割を持つ人とか、あるいは人事や組織開発の人が「他責」ではなく「他への期待・役割」に言葉を転換していく。その翻訳者の役割がものすごく大事なのかなと、なんとなく思いました。

小金:そうですね。自分とちょっと重ねると、本当に近いことを思っていて。よく自分は「落とし物ですよ」と声をかけるんですけど、この言葉は「これはあなたの責任じゃないですか?」という指摘を意味しています。

経営層には経営層の責任、マネージャーにはマネージャーの責任。メンバーにはメンバーの責任があるので、そこはちゃんとお戻しする。逆に言えば、人事とか組織開発担当者には、自分の責任をちゃんと自分に戻すように言っています。

人は気づくと自分の責任をぽっと横に置いて、いい意味で棚上げして、人のことを言えちゃったりするんです。なので「そもそも自分は自分の役割をちゃんと演じきれているのか」と考える場を持っていくとか、そういうやりとりをすることもまた「対話」につながっていくのかなと思いました。

「落とし物ですよ」って、なんか嫌味ったらしいですけど(笑)。

沢渡:「落とし物ですよ」、わかりやすいな。

小田木:(笑)。他人の落とし物を指摘するだけではなく、落とし物をそれぞれ拾い合って、「ごめんごめん。俺も落としてたわ」と。

小金:そうですね。「ごめんなさい」と(笑)。

小田木:ありがとうございます。ここは景色合わせが必要ですね。お互いの期待を持ち合う一方で、お互いの責任も持ち合う。ここが目指すべき、解決の着眼点になるんじゃないかと思います。

真の課題解決に必要な「対話」の3つの要件

小田木:セカンドステップに話を進めていきたいと思います。みなさん、どういう問題意識を持っているか、今どういった課題に取り組んでいるか、本当にオープンに教えていただいてありがとうございます。

この課題をひも解いていくために「対話」が必要である、もっと「対話」をすべきだというのが、ここまでの前提だと思うんですよね。

ではその「対話」で何が求められているのか。最初のオープニングの中でも何人も書き込んでくださってましたけれども、真の課題解決に必要な「対話」とは何なのか、このイメージをみんなで合わせていきたいと思います。

今挙げたような組織課題、もっと言うと個々のテーマの根底にある課題を解決するための「対話」とはどのようなものか。その要件や定義について、ぜひ沢渡さん、小金さんのそれぞれ見ている観点で、まず3つずつ挙げていただきたいなと思っておりますが、いかがでしょうか。

沢渡:今度は小金さんからいきます?

小金:いいですか? すごくシンプルなので先に言わせてもらうと、「対話」について僕がいつも思ってる要件の1個目は、「話すべき人と話すべき人とが」です。

2個目が「話すべき内容を」。3点目が「話すべきタイミングや方法で」。(この3つが揃い)話している状態が、組織課題を解決する「対話」の要件だと自分は思っています。

小田木:シンプルですね。わかりやすいです。

沢渡:わかりやすいですね。上からいくと、Who、What、When、How、Whereみたいな感じですね。

小金:そうですね。でも、これを聞いたみなさんは「なんだ、そんなことか」しか思わない可能性もあるなと思いながら(笑)。この中にはいろいろとお伝えしたいことがあるんですけど、要件としてはその3つかな。

いざ対話するとなった時に気をつけたい「3つの脱却」

小田木:ありがとうございます。先に沢渡さんからも、3つお聞きしてよろしいですか?

沢渡:そうですね。小金さんは対話を促す環境セットアップの話を主にしていただいたと思うので、私はいざ対話をするとなった時の「対話の仕方」の話をしたいかなと思っています。

3つあって。1つ目が、「正解主義からの脱却」です。

小金:言葉のはまりが美しいですね(笑)。

沢渡:2つ目は「完璧主義からの脱却」。そして、3番目が「比較主義からの脱却」。

小田木:3つの脱却ですね。

沢渡:この3つを聞いて、「ん?」と思った人もいると思います。小田木さんのVoicyを聞いてらっしゃる方は、昨日(5月17日)の朝の放送が「手放すと仕事が楽しくなる思考3選」という話でしたね。正解主義、完璧主義、比較主義から解き放たれると仕事が楽になるよという話をされてるんですけども。

私はそれにインスパイアされて、「それって『対話』の仕方にも当てはまるよな」と思った次第です。

小田木:ありがとうございます。こんなタイムリーに沢渡さんに取り上げていただけるとは思いませんでした。

「正解をともに探していくスタイル」でないとうまくいかない

小田木:この3つの主義を脱却した「対話」のイメージについて、それぞれ補足してもらっていいですか?

沢渡:はい。「正解主義からの脱却」とはどういうことかというと、例えば対話をすると、自分の正解を押し付けようとする。1on1ミーティングをやっても、上司の正解に近い答えじゃないと否定する。それによって、相手が対話しなくなることがよくあると思うんです。

これからの時代の「対話」は、未来志向かつ相手思考で進めていくことが、私は大事だと思っています。正解を押し付けるのではなく、正解をともに探していくスタイルでないと、うまくいかないと思うんですね。

小田木:なるほど。正解主義脱却の対話がちょっとイメージできました、ありがとうございます。

アイデアの芽が埋もれる「完璧主義」からの脱却

沢渡:「完璧主義からの脱却」も、100点の答えを持ってこいとか、100パーセント考えてから持ってこいという、下の人からお忙しい上の人にもの申し上げる「ホウ・レン・ソウ(報告・連絡・相談)」型のスタイルだけだと、意見や提言はおろかヒヤリハットさえも共有されにくくなります。

生煮えの段階で相手の力を借りながら、柔道でいうと相手に「胸を貸してください」と。相手の胸を借りて、ともに良い戦いをしたり、良い技を編み出していくような「アジャイル型」で新しいことを起こしていくという発想にならない限り、いつまで経っても良い対話ができるようにならないと思うんですね。

小田木:アジャイル型。

沢渡:相手の知識を借りる、能力を借りる。

小田木:そういうコラボレーション型のやり方にならないと、いつまで経っても馴染んでいけないよねという話ですね。確かに、100点じゃない段階の意見や気づきや発見が、ぜんぶなかったことにされちゃうと考えると、いろんな意味で恐ろしいですよね。

沢渡:そうですね。100点でないと聞いてくれない、取り合ってくれない状態だと、ちょっとしたアイデアの芽が埋もれてしまいますし、それこそヒヤリハットが共有されにくくなるので、ガバナンスとかリスクマネジメントにも大きく影響してしまうんですね。

他人とではなく、その人の過去と比較してあげる2つの意味

小田木:なるほど。では最後に比較主義のイメージを。

沢渡:「比較主義からの脱却」。これは本当にぜひ昨日の小田木さんのVoicyを聞いてほしいんですけれども。

小田木:ありがとうございます(笑)。

沢渡:1on1でも、例えば私が上司で、部下の小金さんと面談するとします。その時に私が「小金さんさ、小田木さんみたいにやったほうがいいね」とか、「もう少し小田木さんのような振る舞いはできないの?」と言ったら、小金さんはどう思うか。「あ、他人と比較されて、いつも評価されてしまうんだ」となってしまいますよね。

比較するのであれば、他人とではなく、その人の過去と比べる。「小金さん、視野広がってきたね」とか、「小金さん、最近すごくアイデア冴えてきてるけど、何かあったの?」と。

これには2つの意味があります。1つ目が、相手の成長を言語化していますよね。受け取る小金さんのほうも、「そうか、自分は成長したのか」とか、または「実は最近読書を重ねていて、そういう日々の見えないところをこの人は評価してくれたんだな」と感じます。「成長を言語化してくれる」ということ(が大切です)。

2つ目が、これは「私はあなたを観察していますよ」という何よりのメッセージですよね。「私はあなたをきちんと見ていますよ」というメッセージが伝わります。

「対話」の前の「観察」がものすごく大事だと思っています。観察なき「対話」は、上滑りしたり、押し付けになったり、ともすればハラスメントになっちゃったりするわけですよね。

小金:そうですね。

沢渡:やはり観察と対話のサイクルを習慣化していくためにも、他人との比較主義から脱却することが、ものすごく大事かなと思っています。

小田木:ありがとうございます。

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