
2025.02.12
職員一人あたり52時間の残業削減に成功 kintone導入がもたらした富士吉田市の自治体DX“変革”ハウツー
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柳田佳孝氏(以下、柳田):視聴者からのプロセスエコノミー関連の質問では、これを最後にお聞きしようかなと思っているのですが、「実際に本書『プロセスエコノミー』を作っていく過程でも、実際尾原さん自身がプロセスエコノミーを体現されていたという話を聞いていて、具体的にはどんな進め方をされたんですか?」という質問をいただいています。
尾原和啓氏(以下、尾原):そもそもプロセスエコノミーという概念はけんすうさんが作ったので、けんすうさんとの話の中で「尾原さん、プロセスエコノミーを本にしてみたらどうですか」と出てきて、その会議自体をサロンで共有して一緒にやっていったというところから始まっています。
さらに言えば、今は本がゴールじゃなくて、むしろ出発点だと思っていて。本の素晴らしさは普通講演で1時間とか2時間で話す内容を、相手がすでに読んでくださっている状態で始まりますから。本を読んでくださった方と一緒に対談することによって、「こういうプロセスエコノミーの考え方があるよね」と議論ができるんです。
例えば楠木建さんとか山口周さんとか、いろんな方に広げていって、その対談も全部公開していくし、さらに言えばサラタメさんのようにこちらの想定外の方が読んでくださって、まったく違う方向からプロセスエコノミーを照らしてくださるし。
そうしたらその後はTwitterで即ナンパですよ。「サラタメさん、マジで僕ファンだったんですけど、この前の作品もこういう感じでやられていて、やっぱりサラタメさんってサラリーマンのためになるという視点から、ずっと書評を上げてこられたからこその『持たざるもののプロセスエコノミー』ですよね」と言って。
「相手がどこから歩んで来ている(のかわかる)から、この『プロセスエコノミー』をサラタメさんのプロセスエコノミーとして描いたんですよね」ということを言えば、向こうだって単に「俺がインフルエンサーだから擦り寄っているんだろ」じゃなくて、「ちゃんとこの人は自分の『Why?』とかプロセスをわかってくれた上でナンパしてくれているんだな」となって、喜びますから。
尾原:そこでまたワチャワチャといろいろ話をして、そうすると「こんなことできるよね」といって別のプロジェクトが動き出したりする、連鎖反応ですよね。それぞれが持っているプロセスエコノミーをどう掛け算していくか。
柳田:そのプロセス自体が本当におもしろいし楽しいですよね。ありがとうございます。
続いて尾原さんに関連する話でいくつか質問をいただいているんですけれども、一番「いいね」がついているのが、『アフターデジタル』も『ダブルハーベスト』も読みましたという方からのご質問です。
「こういった新しい概念を他者から聞いて本にするのは、本当に難しいことなんじゃないか。尾原さんも何冊も本を書かれているわけですけれども、その背景にある、もし共通で持っていらっしゃる課題感や、あるいは新しい概念を捉える時の軸とか判断基準、感度がもしあるのであれば教えていただきたい」と。こういった質問をいただいています。
尾原:僕は未だに、本には魔力があると思うんですね。読者の数だけで言えば、YouTubeのほうが100万人にあっという間に見ていただけたりとか、ブログのほうが10万人の方が見ていただけたりするけど、『プロセスエコノミー』だってビジネス本のイノベーション大賞を受賞させていただいていますけど、まだ5万部なんですよね。
でも本の決まりは、さっき言ったように2時間物語に共感してくれる力があるし、あともう1個、ぶっちゃけ本になるとなんとなくみんな権威と思うから、社会記号化しやすいわけですよ。
『アフターデジタル - オフラインのない時代に生き残る』(日経BP)
だから『アフターデジタル』だって部数からしてみればシリーズ20万部しか売れていないですし、でも世の中の人がみんな「アフターデジタル」という言葉を使ってくれたり、後はOMOというアフターデジタルの中心概念を当たり前のように使ってくださっていて。本の「当たり前を上書きする力」はすごいんですよね。
尾原:だとした時に大事なことは、誰の当たり前を上書きするとみんながハッピーになるかということ。僕はどちらかというと今回の『プロセスエコノミー』に関しては小さき方々、個人の物語の方々まで届かせたいから、5万部、10万部売れる言葉で設計しているし。
一方で『アフターデジタル』はビジネスを作っていく人の中でも、「リアルがネットによって上書きされていく時代にどうすればいいの?」という、大企業の中で働いている課長以上の方々が読んでくれればいいなと思っているから、2万部売れればいいやと設計している。
『アルゴリズム フェアネス もっと自由に生きるために、ぼくたちが知るべきこと』(KADOKAWA)
一方で『アルゴリズム フェアネス』は、いわゆるGAFAにやられたという監視資本主義みたいな本が去年流行りましたけど、そういった言葉に対抗する言葉を日本の中では持っていないので。
監視資本主義みたいな言葉が日本に来る前に、アルゴリズムが僕たちの自由を広げてくれているんだという概念を、識者の方に入れておかないとものすごいアンバランスな議論になってしまう。
だから最初から「『アルゴリズム フェアネス』は6,000部以上売れませんよ」と。下手すると出版社には申し訳ないけど赤字にしてしまう。電子本の比率を上げるから(と交渉をしたんです)。だから僕は出版社のPLを書くんですよ。
柳田:そうなんですね。
尾原:これでギリ黒字にさせるので、という話をして。その中で「でも尾原さん、意義があるから書こうよ」と角川さんが言ってくださって『アルゴリズム フェアネス』を書いたんです。
要は誰の当たり前を上書きしたいのかということから逆算して届かせられるものを書くし、じゃあなんで僕が1年間に5冊とかビジネス書を書けるかというと、もう1個は僕は別にムーブメントを作ることが楽しさだからです。
尾原:インターネットがインターネットらしくなって、人の笑顔と自分らしさが増えるために生きているので、インターネットの正義の味方だからこんな小っ恥ずかしい赤マフラーをしているし。幸いなことに本は魔力があるから、1冊本を書けば1回の講演が50万円とか60万円で来るので、そうすると究極5回講演すれば別に生きていけるわけですよ。
さっき言ったようにオンラインコミュニティのほうに300人くらい入ってくれれば僕も生きていけるので、ある種、本は手段なんですよね。手段だとすると、なんで僕がこんなに本を連発できるかというと……例えば次の本は僕は印税を一銭ももらっていないんですね。
柳田:そうなんですね。
尾原:僕はライターさんに書いてもらっているので、8時間くらいしゃべるとだいたい1冊の本ができるんですけど、その本が売れるサイズ感を考えたら、ライターさんに全部(あげたほうがいいなと)。「この部数しか売れないとすると、本当にいいライターさんに冒険を一緒にしてもらいたいから、ライターさんに全部あげたほうがいい本になるよね」というような書き方をしているんです。
だから繰り返すんですけど「あなたの魂のごちそうは何なんですか」と。僕はインターネットのインターネットらしさが広がること。それによって自分らしさでみんなの笑顔が増えるということが増えると幸せなので。
尾原:もう1個は、他の人がまだ思いついていない言葉をみなさんに提供した時に「その言葉でめっちゃ落ち着くわ」とか、「腹落ちした」とか。僕にとって最高の本のレビューは「わかっていることしか書いていなかった」と言われることなんですね。
「あなたの中に言葉がある、でもこの記号はなかったでしょ」、「でもこの記号を置いただけで、あなたの中にすべての整合性がとれるよね」と。そういう本を書ける着想が、僕の魂のごちそうだから。
ものすごく僕固有の話だけど、自分が何のために、誰を笑顔にすることが楽しいか(が大事なんです)。
ただ、ビジネスとしてやる以上は周りを持続的にハッピーにしないとお仕事は続かないので、自分の魂のごちそうが得られるんだったら、あなたの持続的な生活のためにどうぞどうぞと。「お金が必要だったら、お金儲け用の本を書きます」、と組み直していく。
尾原:なによりも大事なことは「誰を幸せにしたいんですか?」ということ。どうしても100万部ほしい、10万部ほしいとは思うけど、「6,000部でも日本の識者の方にこの言葉が置かれれば、それだけでオッケー」というものもあるんです。逆に「10万部届かないと世の中を少し変えられないな」という本もあるけれども、数のおばけはすごく憑依力があるので、みんな数のおばけに取り憑かれやすいんですよね。
柳田:そうですよね。
尾原:だから数のおばけからどう降りて、魂のごちそうと一緒に冒険を楽しむところに向かっていけるのかというのが、みなさんがビジネスを作る上では大事なことなのかなと個人的には思います。
柳田:ありがとうございます。本当にまだまだ質問があって、もっとたくさんお聞きしたいなと思うんですけれども、時間がそろそろ迫ってきてしまったので、最後に尾原さんから一言メッセージをいただければなと思います。
尾原:ちなみに逆質問ですけど、今日のネタの中で柳田さん的にはどこが一番響きました? もともと柳田さんとはグロービスでテクノベートの講座とか、直接お会いはしていないですけどそれぞれやっていたりして。テクノロジーが作っていくイノベーションの仲間だなと勝手に思っていたりするんですけれども。
柳田:ありがとうございます。今日はテクノロジーじゃないところがすごく響いていて、魂のごちそうの部分ですかね。本を読んだり、動画を見て概念としては理解していたんですけれども。
柳田:グロービスに通われる方の中にも「自分にはまだ志と言えるような大きなものがなくて……」といって迷われる方も多いんです。でも、そんなたいそうな志というものに向かってギャップを一生懸命埋めようとがんばる、という話ではなくて、目の前の人を幸せにしたいとか、自分が単純に楽しいと思うものにちゃんと取り組んでいればいいんですよね。
「それ自体が楽しいし幸せだよね」という考え方は、「志が迷子です」と思っている方にとってのエールになるというか、勇気をもらえる話なんじゃないかなと思って聞いていました。そこが個人的には一番しっくりきた、心に残った部分ですね。
尾原:テクノロジーは最終的には「人間らしさ」を引き出すことだと思うんですよね。ヒューマナイズという言葉があるんですけど、要は人間じゃなくてもできることは、AIとかロボットが単純作業でどんどんやってくれるから、むしろ人間にしかできないことに開放していくというのがテクノロジーの役割なんです。
例えば今Web3に夢中になっている、スクエアの創業者であるジャック・ドーシーは、今はブロックという名前に変わりましたけど、スクエア時代に言っていたことで、スクエアは店頭の自動決済の会社なんですけど、なんでそれをやりたがっているかというと、「物を買うほど非人間的なものはない」と。
「大好きな物を買うためなのに、お金を渡して戻してということに時間がとらわれるんだったら、あの金銭の時間を消してあげれば、『今日のコーヒー、こんないいものが入ったんですよ』とか、『いつもこういう淹れ方してくれてうれしいよ』というコミュニケーションと物語の交換に戻る」という言い方をしているんです。
すごい素敵なことだなと思っていて、テクノロジーは人間を人間らしくする、ヒューマナイズするためにあるんだなと個人的に思っています。
柳田:本当におっしゃるとおりだと思います。テクノロジーは冷たいものではなくて、人間をより人間らしくするためのツールかなと思いますね。
柳田:ではたいへん名残惜しいんですけれども、最後に尾原さんから一言、今日の参加者に向けてメッセージをいただいて終了にしたいと思います。尾原さん、よろしくお願いします。
尾原:日本はものづくり大国であったから僕たちの繁栄があるので、ものづくり大国であったことの誇りを捨てる必要性はないと思うんですよね。ただ、安く高品質なものを作るということは、歩留まりを上げなきゃいけないから、「失敗を極力減らす」という文化が染み付いちゃっているんです。そして「いいものを作るまでは我慢しよう」という結果目的的なものを重視しがちなんですよ。
でも日本は江戸時代末期もそうだし、今のアニメだとか物語を作ることとか、実は「新しいものを育んでいくこと」がすごく得意な国でもあります。ものづくり大国で染みついた「失敗を減らして、結果目的的になってしまう会社陣」をアンラーニングする必要があります。
プライベートの中では、気づいたら時間が経っていたようなプロセス目的的にやっていることだったり、その中で自然と仲間が生まれたことだったりが、何かあるはずなんですよね。だからそのプロセス目的的な自分だったり、魂のごちそうが自分の内側にあると思うし、会社のサービスの中にもあると思うので、それを見ていくことが大事だと思っています。
最後に『学習する組織』を書いたピーター・センゲがめっちゃいいことを言っているんですよ。その言葉で終わりたいと思うんですけど、「想像することと問題を解決することの根本的な違いは簡単である。問題を解決する場合は、私たちは望んでいないことを取り除こうとする。一方、想像する場合は本当に大切としていることを存在させようとする。これ以上に根本的な違いはほとんどない」と言っています。
BtoBはたくさん残っていますけど、少なくともBtoCにおいては問題を解決するというフェーズは成熟化しているので(終わっています)。想像するのであれば、本当に大切にしていることを存在させようとする、これがイノベーションにとって本当に大事なことだと思うので、みなさんぜひ大切なものを大切に存在させようとするプロセスを楽しんでいただければと思います。
柳田:尾原さん、あらためまして本日は本当にお忙しい中、示唆や学びに富む話をたくさんいただいて、ありがとうございました。
尾原:今日の感想を見る余裕がなかったので、ぜひTwitterにハッシュタグを付けて送っていただければと思います。コメントできるところはコメントをしていきますし、コロナで視界が狭くなりがちな時に知の飛地、知の冒険、知の海外旅行をやっていく「ビジネス書グランプリ」は本当にいい取り組みなので、ぜひ「#ビジネス書グランプリ」のハッシュタグを付けて感想をしていただければ、絶対に全部読みます。よろしくお願いいたします。
柳田:ありがとうございます。では事務局に戻したいと思います。
尾原:(コメントを見て)本当だ、ハッシュタグが「グランプ」になっている(笑)。
柳田:「グランプリ」でお願いします(笑)。
尾原:こうやってみんなで直していくのもプロセスエコノミーなので。「#ビジネス書グランプ2022」も、「#ビジネス書グランプリ2022」も両方見ますので、よろしくお願いします。みなさんの感想ツイートを楽しみにしています。ありがとうございました。
柳田:ありがとうございました。
司会者:ありがとうございました。
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