2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
#2 事例① 社員の離職率が高い!|西村創一朗の「マーケティングの力」で「HRをアップデート」する具体策(全1記事)
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西村創一朗氏(以下、西村):今回のパートでは、具体的な事例・お悩みをもとにHRマーケティングの活用方法についてお話ししたいと思います。まずは「社員の離職率が高い!」といったお悩みを非常に多くいただいておりますので、そちらについてお話ししたいと思います。
上司として、あるいは人事として「退職願」をもらう時ほど辛く、嫌な時はないと思いますが、この退職届が続々と届き、社員の離職率がなかなか下がらない。そしてなぜか優秀な人ほどどんどん辞めていってしまう。こういった時にどうしたらいいかとお悩みの方が非常に多くいらっしゃいます。
ここで、先ほどのHRマーケティングのパートでお話しした「エンプロイージャーニーマップ」が活躍するんですね。エンプロイージャーニーには、入社する前から入社、オンボーディング、配属、業務、育成、評価、そして退職までさまざまな過程があります。
もちろん入社して数ヶ月で辞めてしまうケースもあれば、1年2年、あるいは5年10年経ってから辞めてしまうケースもある中で、どこに問題があったかを特定することから始めます。具体的には、エンプロイージャーニーマップにおいてどこがボトルネックになったのか、退職要因になったかを、洗い出すことが重要です。
ただ、やたらめったらヒアリングを行っても、なかなか対象者が本音を言ってくれず、表層的な理由しかヒアリングできず、重要性の高い本質的な打ち手が打てなかったりします。
なのでまずは、データや退職者の退職理由などから、これが離職率が高い原因、優秀な人が辞める原因ではないかという仮説を立てて、その上で「この人に辞められては困る」という優秀な方をペルソナに設定して、そのペルソナにあてはまる対象者に実際にヒアリングを行います。
聞き方としては、「今後もっと働きがいのある会社、働きやすい会社にして、みなさんが働き続けたい、働いていきたいと思える会社にしていきたいので、ぜひアドバイスをいただけないか。何をどう改善すれば良いかを率直に聞かせてもらえないか」と。
そういった聞き方であれば、必要以上の警戒心を感じられることなく、本音のフィードバックをいただけると思います。「これはもっとこうすれば」「これがあるからなかなかやりたいことができない」「現状はこれができないから、できる環境にしていきたい」といった本音が出てきます。
そして、どうすればエンプロイーエクスペリエンス、従業員体験を高めていけるのか、あるいは従業員体験を下げることを防げるのかを洗い出していきます。洗い出した上で、効果とコストの2軸で優先順位をつけて実行していくのが次のフェーズになります。
具体的にどんなことができるのかを、実際にあった事例をもとにお伝えしたいと思います。これはとあるITベンチャー企業での事例になります。ターゲットとなる従業員の方々にヒアリングを行った結果、「これがあったらいいのに」あるいは「これがなくなればいいのに」といったいろいろなアイデアが出てきました。もちろん、すべてを一気に実践できればいいわけですが、なかなかそうはいかないケースも多いわけですよね。
例えば右下にあるようなオシャレなオフィスへの移転は、たくさんの時間とお金がかかります。ですので、いろんなアイデアがある中で優先順位をつけていくことが重要です。その時に考え方の1つとして、縦軸に「効果が大きそう・小さそう」、横軸に「コストが高い・低い」といったマトリックス図で優先順位をつけていくことをお勧めします。
「金銭的なコスト」ももちろんそうですが、やろうと思った時にすぐにできるのか、あるいは大きな企業の場合は取締役会の承認などが必要で時間がかかるといった「時間的なコスト」も含めて、コストの高い、低いでしっかりと優先順位をつけていきます。
みなさんの企業にも当てはまるかどうかはまた別の問題ですが、この会社ではヒアリングで出たアイデア、打ち手を効果とコストの2軸でマッピングした結果、こんなふうに分けることができました。
この中でどこから優先的に着手すべきかと言うと、もちろん左上です。つまりお金や時間をあまりかけずに導入できるにもかかわらず、効果が大きいところですね。言い換えるとコストパフォーマンスが高い打ち手と言えるので、そこから優先的に着手をします。
一方で、時間とお金がかかるけど効果が大きいところに関しては、今すぐはできなくても、時間がかかるからこそ早い段階からしっかり検討を始めることが大事です。
コストが低くて効果が大きいところから優先的にやりながら、同時にコストは高いけど効果も大きい打ち手の検討も並行で進めることが重要かなと思います。
こちらの会社では、なぜエンジニアの方が退職を選択し、転職活動を始めたのか。エンジニアの方は副業の引き合いが多くありますが、この会社では副業を禁止していました。それによって多くのチャンスを失っていると考え、副業を認めている会社への転職を決意したという声が多く集まりました。
そこで、副業を認めるほうが「退職を踏みとどまらせることができる」、あるいは「優秀な方を新規で採用することができる」という考えで、副業を解禁した。あるいはこれはコロナ前でしたが、リモートワークを認めることで働く柔軟性をアップさせた。そういった打ち手で離職率をダウンさせることに成功しました。
これはあくまで1つの事例ですが、退職者はどこのポイントでどんな課題を持ったのか。その課題を解決するためにどんな打ち手、方法があるのか。そしてそれを効果とコストの2軸でマッピングした時にどこから優先的に取り掛かるべきか。といったことを考えるヒントにしていただければと思います。
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