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第4章 服部氏講演(全1記事)

男性育休推進のカギは「取っている人が周りにいる」環境作り 会社・上司・従業員それぞれに効く6つのアプローチ

2022年の4月より、育児・介護休業法の法改正による新ルールが段階的に施行(適用)されます。この法改正により一層注目されるのが「男性の育休」です。今回は電通グループ発のソリューションを紹介するメディア「Do!Solutions」が主催で開催された、電通パパラボによる「男性の育休が、会社をもっと強くする。」のウェビナーの模様をお届けします。本記事では服部嶺氏より、実際に男性の育休を推進するための6つのアプローチと、「パタニティ・トランスフォーメーション」の提案について語られました。

前回の記事はこちら

男性育休を推進する「パタニティ・トランスフォーメーション」の提案

服部嶺氏:ここからは最後のパートになります。今まで魚返と熊木から男性育休の仕組みや、育休を取ることによるメリットを説明させていただきました。ここからは私、電通パパラボの代表を務めております服部が最後のパートとして、どうやってそれ(男性の育休取得)を進めていくのかを説明いたします。

CHAPTER4、「電通の仕事は、広告でなく解決だ」というところで、どうやって進めていくのかということに加えて、なぜ電通やパパラボというチームが支援できるのかを説明させていただければと思います。

「Do! Solutions」(ドゥ・ソリューションズ)という、このウェビナーをやっているサイトは「課題解決マーケティングサイト」と位置付けられております。

「社会にあるさまざまな課題に対して、電通がソリューションを提供する」という取り組みをやっております。今回は「男性の育休」というテーマで行っていきたいということで、我々が今日説明させていただいております。

(ここで提案したいことは、)「パタニティ・トランスフォーメーション」(PX)ということで、男性育休を推進する取り組みをしていこうというものです。

この「パタニティ・トランスフォーメーション」という言葉には、2つの思いを込めております。1つは今日参加いただいているみなさんの企業・組織の話です。企業・組織をより強い組織へと変えていくために(男性の育休推進が)必要なのではないか。それを進めていきたいというところです。

2つ目としては、時代や社会を良くするために、父性のあり方そのものを変えていきたいということです。

PXのこのロゴにも意味を込めております。ベビーピンクとネイビーという色で構成していますが、これまで母性の文脈で使われがちだったベビーピンクをあえて父親の側に取り込んでみました。新しい父性へとアップデートしていこう、というメッセージを込めて作っております。

会社側・従業員側それぞれの「壁」

これがPX(パタニティ・トランスフォーメーション)の全体像です。細かいのですが、大きくここで伝えたいことは、上の段のフェーズ1・2にある、それぞれの企業さんにある問題点や障壁を越えていこうという話です。そして下の緑のところの、そのためにどんな手を打っていけばいいのか、最適な打ち手を設計していこうという、この大きな2つがポイントになっております。

左右にも意味がございまして、左側が企業さんの話です。「何が壁なんだろう?」と考え、企業にとっての壁を越えていくためのアクションです。右側が従業員側で、従業員が持っている心配事や障壁を越えていく。そのアプローチは何かといったところを設計して、ソリューションとして提供したいと思っております。

先ほども熊木からございましたが、それぞれ障壁があります。会社側としても、経営・コーポレート側が「本当に推進すべきなのか」と疑っていたり、現場で働く人たちをまとめるマネージャーの人に、それを認めることでどんな得があるのかちゃんと腹落ちしていただかないと、進められないと思うんです。

従業員も「本当に取得するほうがいいのか」、先ほども話に出たような「仕事は回るのか?」「お金は大丈夫なの?」といった不安。ここをしっかりと越えていけるようなアプローチを、それぞれ用意していきたいと思っております。

「育休を取っている人が周りにいる」環境を作れるかどうか

実際に男性育休を取得した人に「なんで取ったの?」と理由を聞くと、「妻の負担を減らしたい」「子どもとの時間を確保したい」など、男性がしっかりと意思を持って決断した人が一番多いんだなとわかります。

ですが、私が注目しているのはこの2個目の、ピンクの塊のところです。周りの方や上司の方、パートナーなど、「育休を取っている人が周りにいる」という、周りの環境をどう作るか。そういうきっかけがあるのかどうか、それが作れるかどうかがポイントになってくると思います。

実際に私も二女が生まれた時に育休を取得したのですが、きっかけは当時の上司の言葉の影響が非常に強かったです。「二女が生まれるんです」と報告したら、「服部くん、おめでとう。育休はどのくらい取るの?」と言ってくれたんです。「どのくらい取るの?」とまず期間を聞かれたことによって「取るのが当たり前なんだな」という安心感を持つことができました。

あとは、「どのぐらい?」と上司が言うことで、どのくらい取るべきなんだろう? と、より興味を持つきっかけになりました。これは私の話ですが、やっぱり周りの方や上司の方がいろいろな行動のきっかけに影響してくると思います。なので、そこを作っていくことが大切だと思っております。

企業で男性育休を進める6つのアプローチ

さて、企業側からのアプローチには6つの枠があります。上の3つが企業からのトップダウン型のアプローチ、下の3つがボトムアップ型のアプローチとしています。それぞれいろいろなやり方や事例もあると思います。

ただ、これを事例としてつまみ食いして実行していくだけで従業員のみなさんが動いてくれるのかというと、「違う」と思っております。その企業さんの中での課題点はどこなんだろう、それに対してどういう手当が最適なんだろうかというところを、しっかり計算して設計していくことが、パパラボは一番大切だと思っています。

コミュニケーションを生業としている電通として、「企業の課題や商品の課題は何だろう?」「どうやったら人の気持ちを動かせたり、行動習慣を変えられるんだろう?」という部分を鍛えてきたからこそ、男性育休に対しても適切な手段が考えられるのではないかなと思っております。

ここから、先ほどの6個のアプローチについて事例を交えて紹介させていただきます。ここには、男性育休にまつわる事例だけでなく、ほかのテーマのものも含まれていますが、それらも男性育休に応用が利くのではないかと考えながら見ていただければと思います。

企業スタンスのパブリック化

トップダウン型のアプローチの1つ目としては、「企業スタンスのパブリック化」を挙げております。「我々の企業はこういうふうに考えて進めているよ」というビジョンを発信することになるのですが、なかなか今はビジョンを発信しても伝わらない時代だと思うんです。社内に対しても社外に対しても、(他にも)情報が多すぎて、言うだけでは入ってこないんです。なので、伝え方が大事だと思っております。

例えば渋谷区さんや、ウィゴーさん、イオンファンタジーさんの例を挙げております。伝え方として楽曲を使ってみたり、まさにビジネスの場で動いているバッグに書いてみたり、働く場所をデザインしてみたりといった工夫をしていくことで、やっと伝わっていきます。その伝え方のところでも我々がお手伝いできるのではないかなと思っております。

伊勢半さんという化粧品会社(の広告)では、採用というアクション自体を、ビジョンを示す場にしたところが非常に良い事例だなと思っております。化粧品で「自分らしさを表現すること」に貢献していく。だから採用の時も、就活メイクではなく自分らしいメイクで来てねと発信することで、実際に企業のスタンスを出せた。非常に優れた事例だなと思っております。

企業オリジナルの手当や制度を作る

次に、2つ目のアプローチです。「家族への福利厚生」というところで、お金に関わる手当のところを、企業オリジナルで増やしてみるとか。あとは期間を特別にもう少し伸ばしてみるなど、そういう手段ももちろんあると思うのですが、もうすこし飛躍して、例えば「組織作り」でも工夫ができるのではないか。その例が右上のユーグレナさんの事例です。

これは組織の人事制度じたいを変えたアイデアです。Chief Future Officer(CFO・最高未来責任者)ということで、未成年の方にポジションに入っていただいて、外からの自由な意見を言っていただくんです。それによって会社にとって刺激にもなるし、「そういうことも言ってもいいんだ」と、自分たちにも言う安心感が出てくるというところで、こうして新しい制度を作ってしまうのは非常に効果的だったのではないかと思っております。

あとは、育休を取得するルールや伝え方も非常に大事だという例が、下の部分でございます。これは弊社内の例で恐縮なのですが、「ハッピー 電パパ電ママライフ」という、キャラクターを使ってチャーミングにルールを伝えていく取り組みです。育休を取る人にとってはわかりやすいですし、「なるほどな」と読めるものにもなります。このように伝え方で工夫していきたいなと思っております。

育休を取ったことがない世代との情報格差をなくしていく

そして、トップダウン型アプローチの3つ目です。「マネージャーの行動をメソッド化」。先ほどあったように、マネージャーの方のアプローチは非常に効くと思っております。弊社は「バイバイバイアス研修」という、アンコンシャス・バイアスをなくす取り組みを研修としてすでに実施しており、他の企業さまにも実施をしております。好評いただいておりまして、これを育休のところでも適用していきたいなと考えております。

やはり今の上司世代の方は男性が多かったり、今まではそんなに男性で育休を取っていた人もいないので、なかなか育休制度についてわからないことが多いと思うんです。なので、その「情報格差をなくす」「実感としてわかるようにしていく」というところが、非常に大切だと思っています。

育休を取ることだけではなく、育休を取って帰ってきて働いてもらう。子育ての長い期間(を経た)社員にもしっかり気持ちよく働いてもらうことが、先ほどが企業の強さにもつながるのかなと考えております。

3つのボトムアップ型のアプローチ

一方、ボトムアップ型のアプローチも3つ挙げております。まず従業員のみなさんへのアプローチで、「夫婦間のコミュニケーションのアシスト」です。

やはりお父さんとお母さんでも意識が違ったりすると思います。例えば男性のほうが育休を取得したいと思っているけれども、「そんなの取っちゃって大丈夫なの?」と思う女性の方もいらっしゃるかもしれません。その不安を払拭するツールをご用意しておりますし、そこに対してもサポートしていきたいと思っております。

右のものは、ちょっと違うテーマでの実例ですが、自社への転職を考えている人をサポートするためのツールです。プロ野球の日本ハムファイターズさんが北海道に移転する時に、「北海道に移転するので、新たに優秀な人材をいっぱい獲得したい」と。ただ求人に申し込む時、北海道なので引っ越しをしないといけないという不安がパートナーや家族の方にあります。

それを払拭していこうということで、「むしろ北海道に行くことによって良いことがあるんじゃないか」と知っていただくサポートツールをご用意しておりました。このようなかたちで、育休に対しても不安を払拭するようなツールを用意していきたいなと思っております。

男性育休の実体験を伝えて見える化する

あとはボトムアップ型の「実体験の見える化」です。「実際にどういう暮らしをするんだろう?」とか「どんな気持ちが生まれたんだろう?」など、さっきも生の声がありましたが、それが一番効くと思います。それをしっかりと見ていく。

隣の人が言ってくれていたり、同じ部署にいるのが一番強いと思うので、まずは我々もそういう(実際に育休を経験した人の)声を聞き、みなさまに伝えていく取り組みをしていきたいなと思います。

「自社の中で今まで育休を取った人あんまりいないんだよね」というのであれば、我々が実際に集めた声を良いかたちでみなさんにお伝えできればと思っております。

先ほどもありましたけれども、魚返の実体験を基にしたエピソードが書籍化されたり、ドラマ化されたりしたのは、実体験がみんなにとってすごく有益だし、興味のあるものだったということだと思います。

また、伝え方という意味でも先ほどもありましたが、我々はパパと家族の子育ての実態を漫画のかたちでも発信しております。ほかにも採用の情報サイトで、「育児をしながら働くってどういうこと?」というのが非常に興味を持たれるところです。そこに男性が出てくるのを、もう当たり前にしていかなきゃいけないと思います。などなど、いろんな場所で(男性育休の)実体験を伝えていく取り組みがいいのではないかと考えています。

収入にどれだけ影響があるのか見える化する

そして6つ目のアプローチです。「収入シミュレーション」というところで、経済的な不安や障壁を払拭する意味では、収入にどれだけ影響があるのかを見ていきたいというものでございます。

シミュレーションツールとして、実際に数値が出るかたちでツールを用意しております。育休を取得するにあたり、例えば「育休と有給をどう組み合わせて取得すべきなのか?」「いつのタイミングでそれを取るべきなのか?」「どのぐらいの長さで取るべきなのか?」というところで、実際に金額に響く数が見えてきます。

その数をしっかり見ていただいて、どのくらい取るのか、いつ取るのかを検討していただくことが、育休を進めていく上では非常に大切かなと思います。

以上、6つのアプローチを紹介させていただいたのですが、1個ずつどこがポイントなのか、どこが障壁なのかは企業によって違うと思います。また、それに対するアプローチもこちらの会社とあちらの会社では、合うやり方が違います。

「課題は何なのか?」「それに対して一番良いやり方は何なのか?」というのを、我々電通やパパラボが一緒にサポートさせていただいて、男性育休の取得を進めていきたいと考えております。

育休を10年やその先まで続けていくために考えること

なぜそれができるのかといいますと、冒頭にありましたが、パパラボとはただの研究をしている組織ではなく、(さまざまな部署から集まった)いろんな専門性を持った人間がいるからです。

「どこが課題なんだろう?」と戦略を考えるのが得意な人間。「実際のアクションをどう伝えたらいいのか」を生業にしている人間。また「組織を作る」ということを生業にしている人間もおります。最適なスタッフィングをしながら、みなさんの企業の育休促進を進めていきたいと思います。

さらにパパラボだけではなく、電通のさまざまなリソースを使いながらそこを支援していきたいと思っております。また、育休でいうとパパだけではなくママの問題も多いと思います。弊社は「ママラボ」という組織もありますので、そちらとも連携しながら進めていきたいと思います。

こちらが、実際のPXの基本のプロセスです。大きく6段階あるのですが、2段階ずつ3パートぐらいにプロセスが分かれていると思っております。

まずは「御社の課題は何か?」を特定するというフェーズです。問題をいろいろ聞きながら「どこ推していったらいいんだろ?」「どこを解決していったらいいんだろう?」と決めます。

真ん中の2つ目としては、「それを具体的にどういうアクションにしていくのか?」「どういうやり方がいいのか?」を考えて、提案し、実施していくフェーズです。

右側の2つは、「その効果はどうだったんだろう?」「次は何を続けていくべきなのか? 辞めるべきなのか?」。育休は1年、2年の話ではないので、「10年やその先まで続けていくために、どういう組織体制を企業さまの中で作っていく必要があるのか」。そこをサポートしていきたいと思っております。ワンストップでお手伝いというところで、最後まで見ていきたいと思っております。

男性の育休は、会社を強く、社会をより良く変えていく

さて、最後のまとめになります。今回のウェビナーで紹介をさせていただいたように「男性の育休」をテーマに、まずは企業のみなさまの会社を変えていきたい、強い会社にしていくお手伝いをしたいというのが1つあります。

もう1つはそれを続けていくことによって、「社会を変える」というところ。良い働き方や良い子育てができるように変えていきたいと考えながら、パパラボはパタニティ・トランスフォーメーションというのを構想しております。なので、ぜひみなさまと一緒に進めていきたいと思っております。

以上で、本日のパパラボのウェビナーを終わります。「男性の育休が会社をもっと強くする」ということで、パタニティ・トランスフォーメーションの紹介をさせていただきました。ぜひ進めていければと思いますので、これからもよろしくお願いいたします。

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