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学校・会社では教えてくれない!新しいキャリアの見つけ方(全4記事)

会社都合の“とりあえず異動”は、人が辞めていく原因に 20代と50代で違う「ジョブローテーション」の意義とやり方

さまざまなセクターから集う30人の若手メンバーで横浜のまちづくりを行う「横浜をつなげる30人」発・チームIKIGAI主催にて、一般社団法人プロティアン・キャリア協会代表理事 有山徹氏の著書『今のまま働き続けていいのか一度でも悩んだことがある人のための新しいキャリアの見つけ方 自律の時代を生きるプロティアン・キャリア戦略』の出版記念講演が開催されました。予測不可能な時代で生きるための「プロティアン・キャリア」では、キャリアは組織の評価では無く、自分自身で成否を決めるとしています。最終回の本記事では、自分自身の心理的成功のために考えるべき5つのステップについて語られました。

同じ会社の同じような人と同じような仕事をしても、キャリア資本は少ない

有山徹氏(以下、有山):心理的成功に近づくためのキャリア戦略のステップで、こちらは本の中でも述べさせていただきましたけど、まずは現状把握が大事です。

このアイデンティティで、自分は何者か、自分はなぜ生きているのか、どういう社会にしたいのか、どういう時に幸せを感じるのか、没頭しているのか、そういうところを考えてちゃんと言語化すること。そして、このキャリア資本ですね。「知識・経験」「人的ネットワーク」「貯金・資産」の3つでキャリア資本というんですけども、この3つと時間と情報がキャリアの資源です。

これをどう現状を持っていって、どう増やしていくのかを考えるのがプロティアンの考え方になっています。基本的には先ほど言ったように、ビジネス資本と社会関係資本は先に蓄積します。経済資本は後からついてきます。基本的にお金は後からついてくるので、先にビジネスの学びですとか、人脈やコミュニティという信頼の残高を上げて蓄積していくことが大事ですよ。それが後々の経済資本につながるという考え方になっております。

キャリア資本の考え方で1個重要なのが、同一業務・同負荷とか同集団で得られる資本と、複数業務をやったり負荷を徐々にかけていったり、複数の集団で得られる資本は、こちらのほうが大きいです。なので同じように会社に行って、同じような人たちと同じように仕事をしている方は、キャリア資本は貯まるんですけども、少ないです。

そうではなく、越境とか新しい業務とか、もしくは同じことをやっても負荷を高めていくとか、複数の集団、複数のプロジェクト、先ほどの診断の中でもあった中で活動したほうが資本は大きく貯まります。

新たな業務などのほうが、ビジネス資本とか社会関係資本が蓄積されます。これは別に会社から与えられた業務だけと考える必要性はないです。自らキャリア資本は増やせます。

自分のスキルに対して適切な高さのチャレンジを、自ら作り出す

有山:これまでいくつかの会社さんで、ある一定層の方でいらっしゃったのが、キャリアを積むことを「組織から与えられた仕事の中だけで考える」と捉えている方です。「ここに異動しろ」と言われたから自分はキャリアが積めないとか。プロティアンではそうはまったく考えません。

もちろんそれも職業のキャリアの1個なんですけども、それ以外でも、自分で主体的にキャリア資本を蓄積する、増やすことがいくらでもできます。右側の考え方が大切です。

それで言うと、「チャレンジ」に対するスキルの考え方があります。スキルが低い人が高いチャレンジをすると不安になります。新入社員が重要なプロジェクトを任されたら不安になりますよね。

逆にスキルの高い方のチャレンジが低いと退屈になります。実力のある管理職の方が、役職定年になって急に単純な業務をやってくれとか言われたら、スキルがあるのにチャレンジが低いので退屈になります。

仕事をやっていく上でキャリア資本を蓄積するためには、ここをフローの状態にすることが大事です。自分のスキルに対してチャレンジも適切な高さにある仕事を、意図的に自ら作り出すことです。

自分の強みとキャリア機会を考える「未来洞察」

有山:自ら作り出すというのは、「昨日1時間でやっていた業務を今日は45分でやってみよう」というのでもいいんです。「この資料を作るのにだいたい1時間かかっている、じゃあ明日は45分で作ってみよう」「どうやったら45分で作れるのか」という負荷のかけ方もできます。つまり、自分の心がけ次第でキャリア資本を蓄積できます。

もちろんその15分の空いた時間は、1ヶ月でいうと300分、5時間になりますよね。その5時間を新しい学びとかに蓄積することによって、より将来的な自分の心理的成功に近づいていくことができます。

負荷のかけ方を工夫することで、いくらでも蓄積できるということです。先ほど言った増量の考え方ですね。配置の場所、キャリアを積む場の職場だけでキャリアを考えないことです。

あとステップ2に関しましては「未来洞察と分析」ということで、徹底して強みを活かす戦略策定です。強みを活かす。日本人はけっこう弱みに焦点を当てる方が多いですが、別に弱みを見る必要性はないです。

強みを徹底的に磨くことを意識していただくのがいいと思います。今までですと「弱いところをなくしていこう」というところがありました。今の時代は、自分の強みをいかに活かしてキャリア開発していくという観点が大事です。

この未来洞察によって、未来に求められるスキルを、将来を見据えて蓄積していくことが大事です。強みとキャリア機会を考えるところが大事ですね。

キャリア開発は「ギャップを埋めていくこと」を考える

有山:キャリア開発について、プロティアンでは「ギャップを埋めていくこと」と考えます。そこでいかにギャップを可視化するか、言語化するか。そしてこのキャリア資本を蓄積していくところが大事になります。もっと具体的に言うと、これは本でも書いているんですけれども、要は可視化してギャップを埋めるための行動がある時に、その行動にどれだけの時間を使うのかですね。

「時間」という資源が、キャリアの資源の中で一番大事なものです。「何に時間をどれくらい使うのか」は、「どう生きるのか」と同義です。それだけ時間の使い方は大事です。なので「時間の使い方をちゃんと見直す」ということが、行動を変えることになります。

大前研一さんという有名なコンサルタントの方も「人間が変わるには3つを変えればいい」とおっしゃっていました。「時間の使い方を変える」「付き合う人を変える」「住む場所を変える」です。

住む場所を変えるのはなかなか難しいんですけれども、まずは時間の使い方を変えることが、変化の時代にはとっても大事です。付き合う人を変えるというのも、プロティアンでは社会関係資本という人的なネットワークを戦略的に考えて構築していくのも大事なことです。

この「時間を変える」が重要なキーワードですね。漠然と、いつも同じように時間を使っていると、なかなかキャリア開発は未来志向ではできない。キャリア開発はトレーニングです。自ら負荷を高め続けることが重要になります。これは行動の習慣化です。

キャリア戦略は永遠のベータ版

有山:だいぶ終盤にきています。「戦略投資の習慣化」ということで、こちらは本でも書いているんですが、心理的成功に向けた7つの習慣があります。この7つの習慣を意識してやりましょうということで、パッと見ていただければと思います。

最後ですね。キャリア戦略は永遠のベータ版です。ベータ版というのは、お試し版ということです。永遠に完成することはないので、一度決めたからといってそこにこだわる必要性はありません。アジャイルとかピボットという言葉があると思いますが、まさにその考え方でキャリアも考えます。

OODAループですね。観察して、情勢判断して、意思決定して、行動するというループをどんどんキャリア開発でも回していくことが大事であると我々は捉えております。ですので我々のキャリア研修では、年1回の1日研修だけのキャリア研修を否定しています。あまり効果はないです。

そうじゃなくて、キャリア開発をいかに日常化していくのかが大事です。それがないから、例えばツールを入れてもなかなか学ばないと人事の方が悩んでいるわけです。「いやいや、それはそうです」と。「もともと学ぶ人は自分で勝手に学びますから」と。

いかにキャリア開発を日常化して、キャリアと向き合うか。自分の学ぶ目的を作る機会を、内省とかで作っていくのか。我々はそういうかたちで(キャリア研修に)取り組んでいるという特徴もあります。

日々の行動の蓄積がキャリアである

有山:最後にまとめです。「強み」と書いてありますけども、今までの考え方は、キャリアの棚卸しで過去分析をやっていました。プロティアンでは、過去分析は半分、未来構想が重要ですよとお伝えしています。

キャリアトランジションの点の分析として、転職する時、結婚した時、異動した時、もしくは異動申請をするタイミングだけキャリアを考えるのではなく、先ほどのようにキャリア資本で、蓄積して考える。日々の行動の蓄積がキャリアです。その考え方で、資本を取り入れることが大切です。

経営戦略と人事戦略のタイムラグということで。人材版伊藤レポートでもありましたが、新人材戦略ということで、経営戦略とつなげてキャリアの戦略を考えていく。これをプロティアン・キャリアの強みとしています。

キャリアのSWOT分析等も通じて、企業側の戦略とのシナジーをしっかりと考えていくという特徴があります。先ほどお伝えしたとおり、「強み」を戦略的に、徹底的に磨くことが重要です。キャリア・レバレッジの中長期・分散型の自己投資、つまり中長期でキャリアを考えることですね。未来志向です。そのために蓄積していくことですね。

それで「自分だけがよくなればいい」ではなくて、関わり合う人・組織をキャリアの開発をする、支援するところも大事になってきます。

自分のキャリアコンディションを「5点」だけ上げる小さなこと

有山:では私からは最後ですね。最後にみなさんに教えていただきたいんですけど、みなさん最初に教えていただいた「キャリアコンディション」があったかと思います。

100点の方もいましたが、その場合は105点に上げるために、もしくは70点の人は75点に上げるために今日か明日でできることはなんでしょうか? チャットに書いてもらってもいいですか?

5点だけですよ。10点上げちゃだめです。5点の小さなことでいいんです。自分のキャリアの評価を上げるためにできることはなんでしょうか? 100点は目指さなくていいです。

(チャット欄を見て)素晴らしいですね。「家内との関係性」、キャリアや生きることにおいて家族との関係性はめちゃくちゃ大事ですね。私も妻との関係性はいつもやばいなと思って注力しています。「新規事業の計画を5個作ってみる」、素晴らしいですね。「朝1時間の使い方を見つめ直す」「子育て」。みなさん素晴らしいです。

「今日のセミナーの内容を明日の職場へフィードバックする」、ぜひ人事の方にフィードバックしてください(笑)。「身辺整理を進める」、ありがとうございます。

というところで、いったん私からの話は以上にして、質問に回答したほうがいいですかね。

安部裕一氏(以下、あべ):せっかくなので、みなさん質問を直接聞いていただけるといいかなと思います。よろしくお願いいたします。

有山:よろしくお願いします。

50代のジョブローテーションは「会社都合」ではよくない

質問者1:本日は本当に貴重なお話しありがとうございました。ちょっと私の質問がわかりづらいかもしれないので、少し補足をしながら説明させていただきます。最後のキャリア資本の話の中で「増量」の話があったと思います。複数業務を行うのも増量の一環だと。

個人の話ではなくて、会社として何ができるかなと思ってお聞きしていたんですけど、会社で人事ローテーションをするのは、ある意味いろんな仕事を経験することなので、複数業務イコール増量にあたるのかなと思っていました。そういう考え方はありますか? というのが質問の1つです。

続けて、人事ローテーションはいわゆるメンバーシップ型とジョブ型でいうとメンバーシップ型にあります。私は人事なんですけど、歴史が長く古いうちの会社では、メンバーシップ型が合っているんですよ。世の中ではすごくジョブ型と言われていて、それは将来的に必要だなとは思うんです。でもすぐにジョブ型に移行するのはすごく難しくて、当面メンバーシップ型でやっていかなきゃいけないと思っています。

途中のご説明の中に「未来を考えていく時にはメンバーシップ型よりもジョブ型」というお話もあって、そのへんをもう一度、関係性を整理したいと思ってご質問をさせていただきました。

有山:ありがとうございます。この観点でいうと、1個、わかりやすい言葉で「年齢」になっちゃうんですけど。プロティアンはあまり年齢という軸では考えないんですけど、一般論でいうと年齢の軸はあるのかなと思っています。

当たり前ですが、若者のほうが経験値が少ないので視野が狭いですよね。例えば20代の時のジョブローテーションは、間違いなく有効だと思うんですよ。ただ50代になってジョブローテーションといった時に、会社側の都合だけでのジョブローテーションはよろしくないかなという捉え方です。

そこまでの30年間の経験を踏まえて、ある程度会社の中も見えている。自分の「こうしたい」があるはずですから、そこといかに時間軸をもって調節するのかが大事なのかなと思っています。

34期連続増益のニトリから学ぶ「やり方の工夫」

有山:人事ローテーション自体は否定しませんし、先ほど出た34期連続増益のニトリさんもローテーションをやっていますよね。自律型なんですけど、定期的に人事のローテーションをやるんですよ。でも別に会社側の都合だけじゃないんですよね。ちゃんと「未来はこうなりたい」ということもセットでやっているんですよね。

社員の方にアウトプットとして言語化してもらって、そこを踏まえてローテーションを組んでいるということをニトリさんはやっています。1か0かで組織側の都合だけで動かすというのはやめたほうがいいと思いますし、具体的にいうとローテーションの「やり方の工夫」が必要なのかなと思います。回答になっていますでしょうか?

質問者1:ありがとうございます。先生のおっしゃったように20代の若手にはかなり事業をまたがっていろんな経験をしてもらうと、適性も見つけたいというのもあって、そういうローテーションをやっています。年齢が上がっていくと、あまり違いすぎるところにローテーションは実際させていないので。ただ、社員一人ひとりと一緒になって考えているかというと、会社主導の色合いが強いものですから、やり方は考えたいです。

有山:そうですね。おそらく今の日本企業の多くはジョブローテーションと言っても、基本的には組織都合がほとんどです。ほとんどの会社はその「関係性の作り方」がよくないなと思っています。

質問者1:関係性のお話はとてもいいと思いました。

「とりあえず行って」の異動は、人が辞める原因に

有山:いつも「時間軸を持ちましょう」と言うんですよね。本人が意図していない異動をさせるのであれば、そこに時間軸を埋め込むだけでも、その人にとっての意味づけが変わってくる。それもなく「とりあえず行って」となるので、モチベーションがだだ下がりして辞めていくんですよ。

ある程度、例えば3年でこういう成果を出したら、その人がやりたい部門に組織としては考慮しますと、一言言うだけでぜんぜんモチベーションも違いますし、そういう姿勢で仕事にも取り組めるんですけども、日本の人事が言いたがらないのは、「それを言っちゃうとやらなきゃならない」と言うんですよ。

別にやらなくてもいいんです。その時の状況で、もし会社の状況が変わっていればそこはそこでちゃんと理解してもらえるようにコミュニケーションを取ればいいだけなんです。「それを言ったらやらなきゃいけないから人事は言えないんです」ではなく、社員との関係性の作り方なんですよ。その関係性に踏み込まずに異動させようとするので、関係性が悪くなって辞めていっちゃうんですよね。

関係性の作り方と異動のさせ方が上手くない会社が多いかと思っています。

質問者1:わかりました、ありがとうございます。

有山:ありがとうございます。

人事部に薦めたい『新しいキャリアの見つけ方』

佐々木隆太氏(以下、ささりゅう):今追加で質問が来ておりますが、続きは延長戦でというところで、ここでいったん本が当たるかもしれないクイズタイムに入りたいなと思います。よろしいですか?

有山:大丈夫です。

ささりゅう:クイズをこれから表示しますので、少々お待ちください。

有山:本当はこのスライドを使いたかったんですけどね(笑)。

ささりゅう:どうしましょうか? クイズは私から1番目から順に読み上げていきましょうか? みなさんもうすでに回答できる状態になっているかと思いますので、ポチポチ押して投票に進んでもらえればと思います。

1問目「今の職場のままでもキャリア開発はできる」マルかバツか。2問目、「will-can-mustは万能のツールである」マルかバツか。3問目、「キャリア開発において年齢は一番重要な要素である」マルかバツか。

4、「キャリアは個人のものである」マルかバツか。5、「組織が個人のキャリアを応援する必要性はない」、マルかバツか。

6、「私、有山徹の身長は175センチメートル以下である」、マルかバツか。7、「横浜市は神奈川県の中で一番人口が多い」、マルかバツか。8、「私、有山徹は中華街でデートをしたことがある」、マルかバツか。

というところで、みなさん回答が終わりましたら投票ボタンを押してください。続々と投票が集まってきております。後半の質問はなかなか難問になっていますね(笑)。ちなみに身長は最初のほうに実は答えが出ていました。

有山:だいたい答えは出ていたと思います。中華街のデートはちょっと言いませんでしたね。これはもうみなさんのカンですね。住んでいるところは東京で、サザンとか聞いていましたからね。すごいヒント言っちゃった(笑)。

ささりゅう:投票を終了させていただきました。では結果を共有させていただきたいと思います。全問正解した方、おめでとうございます。有山さんの著書『新しいキャリアの見つけ方』プレゼントいたします!最後のアンケートに、全問正解した方が選択するところがありますので、そちらから申請をお願いします。

『今のまま働き続けていいのか一度でも悩んだことがある人のための新しいキャリアの見つけ方 自律の時代を生きるプロティアン・キャリア戦略』(有山徹氏・著、田中研之輔氏・監修/アスコム)

(参加者のチャット「全問正解しましたが、すでに購入して読ませていただきました!」)

有山:既に持っている方は人事部の方に渡してください(笑)。

(一同笑)

あべ:配布用ですね。

有山:「これ、いいみたいですよ」「なんかあの大手企業でもプロティアンをやっているみたいです」と言って渡してください(笑)。

ささりゅう:では時間になりましたので、あらためまして有山さん、今日はどうもありがとうございました!

有山:ありがとうございました、楽しかったです!みなさんもありがとうございました!

(一同拍手)

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