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経営者力診断スペシャルトークライブ 経営者・役員になれる人 vs なれない人(全6記事)

社外取締役が社長を指名すると、会社が回らなくなる 学者や会計系の偉い人に好まれる、“きれいな人”の問題点

経営者JPのオリジナルプログラム「経営者力診断」のリリースを記念して開催されたスペシャルトークライブ「経営者・役員になれる人 vs なれない人」に、『社長が〝将来〟役員にしたい人』の著者で、プリンシプル・コンサルティング・グループ代表の秋山進氏が登壇。経営者JPの代表・井上和幸氏と共に、役員候補の強みと弱みを明確にする「四天王チャート」や、社外取締役が社長を指名することで生じる問題などを語っています。

役員候補の強みと弱みを明確にする「四天王チャート」

秋山進氏(以下、秋山):これ(四天王が備える特性)が全部できたらいいのですが、もう少し人によって強みや弱みがほしいなということで、実はある会社の社長さんが僕と同じ仏像好きだったものですから、こんな四天王チャートを作ったんです(笑)。

井上和幸氏(以下、井上):これはすごいですね(笑)。

秋山:多聞天や持国天や広目天などを使ったんです(笑)。全方位に向けてそれぞれの項目があるのですが、どれかの項目で広げてくれればいいけど、最低限持っていない人はやっぱり困るということで、ポイントとして足切りラインを作ったんです。

増長天的にすごく攻めが強いんだけど、持国天的なリスクマネジメント視点があまりにも弱いと、「営業部長や事業開発部長はいいかもしれないけど、役員として意思決定をするのはしんどいよね」という感じです。

例えばこんなものを作ったのですが、「この人のポイントはこうだね。広目天スケールだとなんとかで、持国天だとこうだ」とか「いや、この人はやっぱり持国天と広目天が低いからダメだよね」などと評価をしました。

こういう増長天や多聞天が外向けに視点がいっている人には、「もう少し中向けの視点で見てください」というアドバイスをします。変わってもらえる人と変わってもらえない人がいるのですが、そういうことをやっていました。

井上:この(1つ目のチャートの)方であれば、持国天と広目天が足切りラインに入ってしまっているので、役員登用は見送るということですか?

秋山:(役員には)しません。ちゃんとフィードバックします。

井上:今までのスライドに出た人は全部ダメですよね。どこかで足切りラインに入っていましたよね(笑)。

秋山:そういうのを今日は作ってお見せしたのですが、やっぱり優秀な方は全部高いという人がいるんです。でも全部高いとかえって「こいつ大丈夫か?」とみんなで心配するという感じです(笑)。

井上:なるほど(笑)。

秋山:なので、強みみたいなものを持っていて、その上でほかの人たちと協調できる人こそがやっぱり経営陣にふさわしいんです。

四天王の真ん中に入る、経営トップにふさわしい人

秋山:最後にもう1個ありまして、四天王はお釈迦さんを守っています。お釈迦さんとは、その会社の中で最も重要な、さっきのパーパスや経営理念などを最も体現できる考え方・意思決定基準を持っていて、それがまったく揺るがない人です。

その人に真ん中に入ってもらうと、周りの人がよく働きます。例えば人によっては攻めるほうが大好きで、「攻めることができるのであれば別に会社の経営理念なんかどうでもいいよ」とまでは言えなくても、場合によっては「変えてもいいんじゃない?」という方がいます。

例えばその人が役員であったらいいかもしれないけど、社長は向いてないよねというかたちで設定をして、今の四天王のかたちでやってもらった人の中から、最も当社の中心に置くべき人は誰なのかを考えます。

場合によってはそんなに実績もなく、このチャートで高くなくても「揺るがない感」がすばらしい人だと優秀な人が使えるので、そういう人にトップをお願いしたらいいのではないかということを、ここの会社さんとはやっていました。

これはどこの会社にも合うという話じゃないですよ(笑)。今日お見せしてはいますが、このフェーズはさすがに変な感じになって話が出ると困るので、ここはお渡ししません(笑)。ですが、こんなアホなこともやっています。

井上:ありがとうございます。でも、これはおもしろいですよね。今お話ししてくださっているような整理をして作られたわけではないかもしれませんが、ヒンドゥー教なりに世の中を良くしていくための整理をした時に、きっとこう(四天王に)なったわけですよね?

秋山:いや、違うんです。ヒンドゥー教の中から仏教がセレクトして、この4人にしたんです。

井上:あ、仏教が選び出したんですね。そうか、ほかにもいろいろいますもんね。

秋山:そうなんです。吉祥天とかいっぱいいるんです。

井上:仏教として、この4つのガードマンがお釈迦さまを守るにはベストフォーメーションだと考えたんですね。

秋山:そうです。ベストフォーメーションだと考えたんだろうと思うんです。なので、これは経営チームの話なんです。

井上:なるほど。おもしろいなぁ。

秋山:でもこれを偉そうにしゃべるには、もう少し仏教のことを深くわかってからしゃべらないと、「こいつ何言うとんねん」という話になります。なので、これはあくまで遊びです(笑)。

井上:そこは極めていくということで。

秋山:将来は遊びじゃないようにしたいと思っていますが、現段階では遊びです(笑)。

秋山氏が見てきた、優秀な役員候補のチャートの特徴

井上:まだまだ聞きたいことがたくさんあるのですが、あっという間に残り時間が6~7分です。なので、直接的に関係なくてもかまいません。よろしければみなさん、秋山さんへ聞いてみたいことをぜひチャットで投稿してください。あ、「四天王チャートの数値はどう出すのでしょうか?」という質問です(笑)。

秋山:これは秘密です(笑)。さっきやったリスクマネジメント視点やなんとか視点をそれぞれの項目に出して、上の人と点を付けました。当人は付けません。その人のことをよく知っている周りの人で、「こいつはどうかな?」とそれぞれの項目について点を付けていき、「最終的にはこのぐらいかな?」と言って決めるという感じです。

要するに委員会です。その会社の役員登用の委員会の中で、みんなでそれぞれの細かい項目について点を付けていきます。「こいつOK!」とか(笑)。今はもう少し進化させたので、この四天王チャートは昔使っておもしろかったというものです。

井上:「ものの見方」の1つの参考にしていただいたらおもしろいのではないかなと思います。最近、私も「5つの力」に関連するコラムを少し書かせていただいています。やっぱり聞いていて、「5つの力」がこの四天王の考え方と近いなと思っています。全部をパーフェクトでやるという方は当然いませんし、そうである必要はないと思うんです。

逆にみなさんの突出した強みを活かしていただければいいと思います。ただ、足切りラインという話にけっこう近いところがあるなとは思っています。やっぱり「ゼロでいいのか?」と言われてしまうと、「5つの力」も特にマネジメントの方であれば一定水準以上が求められます。なので、これは強みや弱みがあっていいものの、最低基準ラインは全部超えていただくことが必要な5要素かなと思います。

秋山:一般的に見ている感じだと、みなさん最低ラインのほうがむしろ良くて、もう少しパカッと強いところを持っていただくほうが大事なことかなと思います。優秀な方はそれなりにバランスが取れていらっしゃるので。

井上:「ものの見方」で少し感じるのは、今日のお話の中の構想力に関するあたりで、幹部陣として突出したものがなくても経営トップが大きく打ち出したものの中で考えていけば良かったりしますし、今はトップの方が強烈に決めていかれる会社もまだまだあるかもしれませんが、概ねは1人だけが考えるのではなくて、経営陣の方に問いを立てる力が求められているなという気がします。

社外取締役が社長を指名することで生じる問題

井上:ご質問ありがとうございます。「社外取締役が主体の役員指名委員会が社長を指名する時代になりつつありますが、その際に留意すべきことは何でしょうか」。なかなか悩ましく思っていらっしゃるということです。秋山さん、どうですか?

秋山:ありがとうございます。これは難しい問題です。「社外取締役が決める」という話ですから、おそらく大きい会社ですね。大きい会社なので、社外取締役の人が外から見た際にどういう人がいいかを考えるわけです。その時にどういう人が選ばれるか。社外取締役が外から見ると、さっきの資料の左側「信奉された価値」に突出しているように見える人が、良く見えてしまうんです。

問題はそっち側で良く見えている人の中に、(右側の)本音のところ・マジョリティの価値がどう動いているかがわかっていて、その間をうまくつなげる技術を自分が持っていなければ、ほかの人を呼んできてやらせることができる体制でトップを選べるかどうか。これがものすごく重要です。

どうしても、外の人は“きれいな人”を選んじゃうんですよ。

井上:そうですね(笑)。

秋山:もう少し言うと、“きれいさ”とは弁舌でさわやかにしゃべることができて、英語もうまく、ディスカッションをしたらバチバチと答えてくれる人です。そういう人を外の人は選びたくなってしまうんです。それがある種、問題なんです(笑)。

そういう人を選んでもいいんです。ですが、先ほども言ったように世界は理想の世界と本音の世界があります。そこをどうつなぐのか、どうするかも自己認識してちゃんと考えているのか? 当人がどれぐらいできるのか? そういったことも含めて社外取締役は意思決定をしないとダメなんです。ですが、そうはならず、やっぱり“きれいな人”を選んでしまうんです。そこが問題です。

質問の答えで言うと、先ほどの左(信奉された価値)と右(多数派の価値)の間をどういうふうに「つなぐ体制でできる人」を選ぶのか。「つなぐ」というところも、「誰にするか」という意思決定をする時に、きちんと選ばないといけないと思います。マネジメントの一番重要なところを知らない学者や会計系や法務系の偉い人が理屈の観点から社外取締役ばかりやっていると、会社がうまく回らなくなってしまう問題が起きると思います。

社外の人は「スキルマトリックス」に引っ張られる傾向がある

井上:秋山さんが挙げてくださった、空間支配力を含む各要素がありました。もちろん(それ以外の要素を)まったく見ていないというのは、指名委員会の中でもないと思います。ただ僕も今ふと思ったのですが、圧倒的空間支配力がある方に引きずられて着任されるケースはある気がしますね。

秋山:ありますね。

井上:空間支配力は現場を掌握したり会社全体を率いていくためには必要なことなのでいいんです。ただ、そのイメージだけでは会社は変わらなかったり、本当の意味では動きません。

なので、そういう意味ではバイアスがかかることを社外取締役の方々に認識いただいた上で、空間支配力が強すぎる方については冷静にもう一度、資質面やファクトベースで、どういうふうにオペレーションに取り組まれる方かを、ちゃんと見ていくことが大事な気がします。

秋山:社外取締役は「スキルマトリックスを作れ」と言っているわけです。スキルマトリックスは大事で必要ですが、あんまりウエイトを高くしすぎちゃダメだなと私は思います。

井上:そうですね。どういうところに強みがあるかがわかるというのは別に……。

秋山:必要なんです。ただバランスが取れていないとまずいんです。

井上:ただ、スキルマトリックスだけでどうこうというわけではないと思うんですけど。

秋山:ないんですけど、外の人は引きずられるんです。やっぱりハーバードを出ていたら良さげに見えてしまうんです(笑)。いや、実際にハーバードを出て優秀な人はたくさんいるので、良いんですけどね(笑)。……今のワードもちゃんと言っておかないとね(笑)。

でも、外に説明できるかどうかのウエイトが少し高くなりすぎてしまっているので、そのへんを上手にやらないといけないなと思います。

井上:そうですね。秋山さん、ありがとうございます。あっという間に1時間半が過ぎました。

秋山:たくさんしゃべってしまって申し訳ありませんでした(笑)。

井上:いろんな意味でなるほどという話が多くありました。参加者のみなさんの経営陣の抜擢や育成、またご自身の経営幹部としてのあり方について参考にしていただけるかと思います。

4月22日には、「時間・空間・組織・仕事・役割」の5つの観点をもとに自社事業を棚卸しして、経営的視点を強化するための秋山先生の1DAY研修も行います。ご興味のある方はぜひご参加ください。本日はありがとうございました。

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