2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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井上和幸氏(以下、井上):5番目、6番目あたりが、「構想力を持つ人」の思考・行動様式に入っているのはちょっとおもしろいなと思ったんですが。
秋山進氏(以下、秋山):構想がどう鍛えられるかというと、自分がまず発信することですよね。やっぱり言ってみないとフィードバックももらえない。黙って、自分でノートを書いて「こうだ」と言っても改善しないし、レベルアップもしていかないので。
井上:まあそうですよね。
秋山:やっぱり、言わないとダメですね。言ったり、レポートを書いたりすると、ポジティブなフィードバックがもらえて、初めて構想力が上がっていく感じですかね。
井上:なるほど。時にはボコボコになるとか(笑)。
秋山:ボコボコになるのがやっぱり大事ですよね。僕もネットの記事とか書いて、けっこうみんなにボコボコに文句言われる時があるんですよ。
井上:本当ですか(笑)。
秋山:Yahoo!ニュースのコメントとかでボコボコに言われる時があって。
井上:Yahoo!ニュースに上がるとかなり書かれますよね。僕もありますけど(笑)。
秋山:99パーセントは「まあまあ、それはそれで」という内容ですが。やっぱり1パーセントぐらいは「おお、これはすごい」というコメントがあって、真摯に反省をしています(笑)。
井上:なるほど。秋山さんが「なるほどな」と思う1パーセントとは、どういうタイプのコメントですか?
秋山:この記事を書いている人はこの範囲の枠組みでしか考えていない、本来はこの要素も入れて考えるべきだ、といった指摘をする人です。
井上:自分はそこまで考えていなかった、確かにそういう側面もあるよな、みたいな。
秋山:ここを入れたら違う話になるはずだとか、「ええ!? すごいなこの人!」と思って。すごく感心する時があります。
井上:そういうフィードバックをいただけるのもありがたいことですけどね。
秋山:だから、やっぱり言ってみたらいいと思いますね。
井上:そういう意味では堂々と、自分なりの考えを作って述べてみるということですね。
秋山:そうですね。
井上:ありがとうございます。
秋山:次にいきましょうか。将来「良い情報を集め判断できる人」とはどういう人か。1つ目はさっきの「構想力を持つ人」と似ているんですけど、「幅広い興味関心を持つ人ではなく、興味関心が広がる人である」。2つ目は「強烈な目的意識だけでなく、偶然の活用を知っている人である」。3つ目は「ただちに整理せず、別の意味の可能性を考慮できる人である」。4つ目が「個別最適化だけでなく、全体最適化を理解できる人である」。
5つ目は「複雑に把握せず、目的的にシンプルに整理できる人である」。6つ目は「直属上司に合わせるのではなく、狭あいな判断とぶつかる人である」。最後7つ目は「合議ではなく、自分で決めることのできる人である」。まとめると、収集 × 解釈 × 意思決定の「高いインテリジェンス能力」を持つということです。
ぜんぶ説明したいんですけど、そうすると日が暮れるのでちょっとだけ話をすると、まずは4番ですね。「個別最適化だけでなく、全体最適化を理解できる人である」。これの優れた人がいます。「うちの課で考えたらこれが回答ですけど、部レベルだとこうなりますよね。事業部全体だとこうなります」を言える。
さらに、「会社全体だとこうなるかも」「業界全体だったらこうで」とか。そこに先ほどの未来軸なんかも入れて、「3年以内だったらこれが答えですけど、10年経ったらこうですね」とか。こういう人がいるんです!
これはネタばらしですけど、僕はリスクマネジメントの専門家でもあるので、いろんな人を集めて「どんなことが起こりますかね? 将来こんなことが起こりますよね」とリスクアセスメントを考えたりします。そういう時に、リスク全体をレベルに合わせてちゃんと認識している人がいるんですよ。
これは本当に可能性のある人です。これは先天的なものだと思います。
井上:そういう感じですかね。
秋山:そう、縮尺自由自在という。
井上:ちょっといいですか? いろんな意味で「全体が見えないと嫌な人」がいらっしゃるんですよね。そういう人かなとちょっと思ったんですけど。
秋山:それは1つ井上さんのおっしゃるとおりなんですけど。一方で、マクロ全体の構造を理解して、それで「わかった、わかった」と言う人がいるんですけど、それはそれで困るんですよね。
井上:マクロというか、会社の機能のような観点でいった時に、事業全体が見えていないと「ちょっとそこが気持ち悪い」となる人。友人でもいるし、僕もちょっとそういう傾向があります。
秋山:それは、ここでいう全体最適化ですね。どれぐらい広げて最適解を考えればいいかは案件ごとに違うんですよね。それでいくと、ぜんぶを見られるぐらい広げるのはとても大事で。というか、ぜんぶ見てないと広げられないですから。
全体を見て、どのようなビジネスシステムやビジネスモデルに、どういう機能がどうくっついて、全体構造がどうなっているかがわからないと、個別の正解もわからない。きっと井上さんは、そう考える人のことをおっしゃっているんですかね。
井上:そうです。
秋山:ただ、井上さんはそうおっしゃるけど、簡単ではないんです。なぜ簡単ではないかというと、私や井上さんが最初にいた会社。リクルートぐらいの、ビジネスモデルがある意味簡単なところで、全体といっても大して領域が広くないところなら、簡単にできるんですよ。
井上:そうです(笑)。
秋山:なんだけど、これが大きな製造業で、部品を世界規模で100ヶ国から調達していて、というようなところだと、この「全体を見よう」が……。
井上:無理と言ってはいけないけど、難しいですよね。
秋山:大変なんですよ。大変ですけど、それを先ほど言ったように、ちょっとずつでも、できるだけ広げられるようになる人が実際にいらっしゃるので。そこに興味が持てるか持てないかなんですね。
井上:そう、興味(があるかどうか)みたいな感じはすごくしますね。
秋山:個別最適化でガーッと一箇所を掘っていく人は、それはそれですばらしいので。そっちはそっちでそういう仕事に就いてもらったほうが絶対幸せになりますよね。このへんはもうどっちに自分の適性があるか。
井上:役割ということでしょうからね。
秋山:はい。そのへんは上手にやってもらうのがいいのかなというのが1つですね。
秋山:それから6番も典型的なパターンで、課長にはめちゃくちゃ評判が悪いけど、事業部長には「おもろいやつや」と言われる人もいるんですよ。他でもやってらっしゃると思うんですけど、これを見つけにいくのは定石です。
ただ、だからといってテレビドラマみたいにそういう人はみんな良いわけではなくて。中にはダメな人や、ちょっと「ん~」と思う人も実際いらっしゃる。そんな中に、「やっぱりこれはすごいな」と感じる人もいる。要するに、その課長の下に置いておくとまずい人ですね。こういう人は相当視座が高いので、全体最適化や個別最適化がわかる人のところに異動させる必要があります。
井上:なるほど、念のため3番の解説をいただいてもいいですか?
秋山:はい、2と3は近いんですけど。例えばある目的に対して今日はどうだったとか、何が得られたというのがある。それで、得られたものはこうですと整理して、それ以外の今日やったことをぜんぶ捨ててしまう人がいるんですよ。
井上:ああ~。
秋山:今日は誰に会った。目的で考えると「使えるところはここだった」。あとは「使えない」とか。あるいは、ミーティングで「自分が今大事だと思うところだけを整理しました。あとはノイズなのでぜんぶ捨てました」と言外にいう報告をする。そういう習慣を持っている人がいるんですね。
会社によっては、そういうふうに育てられているんですよ。ですが、経営者になっていく人は、みんなだいたいこう言うんです。「たまたまあの時誰々さんに会って……」。目的とは異なり、何に使えるかもわからないけど、何かに使えそうだと思って、その状況をキープしている。
「マネージング・アンビギュイティ」(あいまい性をマネジメントする)という言葉があります。あいまいな状況を、あいまいなまま持っておくのがすごく大事です。ちゃんと整理して、頭の中から「それ以外はぜんぶノイズ」としてしまうと、せっかく人と話をしても、自分の目的に沿った話以外はぜんぶダメになる。ぜんぶ捨ててしまうので何も残りません。
「おもしろいな」と思ったら、おもしろいなと思った状況と、その時にどんな顔をしていたとか付帯状況とともにキープしていられる。これがとても大事な能力です。こういうのを持っていると、何かあった時に「あっ、そういえばこんなことがあったな」と、例えばその人のところに「ちょっと声をかけてみよう」ということができるんですね。
秋山:判断力を鍛えていく上で、良い情報は必要です。「あれ、何か使えるかもしれない」と、整理しないでじーっとその時の雰囲気のままに、頭の中や体の中にずっとキープしておくことができる。これも大変な能力ですね。こういう能力を持っている人は可能性ありですね。
井上:「良いネタを抱えておける力」みたいな感じなのかな。
秋山:そうですね。良いネタ……ネタにまで限定するともう整理してしまっている感じなので、ネタに限定しなくて。
井上:ああ、そうか。ネタ前ですね? 何だかわからないけど、良いことがあるかもしれないもの。
秋山:そう。そういう自分が言語化できていないものをそのまま持っておく。自分の意識下においてはまだ言葉になっていないけども、なんか貯めておくという。
みなさんの好きな「暗黙知」。日本では違う意味で使われていますけど。マイケル・ポランニーによると、まだ言葉になっていない状況の中から、それを言葉にならない方法を使って言語化していく方法のことを、暗黙知というんですね。そういう意味でいけば、ちょっと意識しない状況のままに置いていたさまざまな、なんかこう「鵺(ぬえ)」のような。
井上:鵺(笑)。
秋山:鵺のような状況をキープしておく力なんですね。
井上:なるほど。決断・判断のところで、そのお話は僕も「ああ、なるほど」と思いました。
秋山:まあそういうのは本ではページ数の都合でカットしましたけどね。
井上:もう1つ、ちょっと違う側面かもしれないんですが、決断できる経営者は良いネタになりそうな何かに出会った時に、飛びつく力が強い印象がすごくあります。ベンチャーの方々と随分お話しするんですが、スタートアップはどうしてもピボット(方向転換)をするケースが多いんですよね。
秋山:はい。とても重要だと思います。
井上:話を聞いていると、ピボットする時の話がこれと同じようなケースなんですよね。
秋山:それでいくと、自分はこう思っていたのに、「いや、これはきっと違うかも」と第六感が働いてぽっと変えてしまうというね。
井上:「どうしよう?」となっている時に、先ほど秋山さんのおっしゃった「その時たまたま」とみなさん言うんですよ。
秋山:そう、だいたいそうです。「たまたま」なんです。
井上:「たまたまこういう件を相談されて、『あ、こっちかも』と思ったのが、今のこのプロダクトの発祥なんです」みたいな話がほとんどな感じがしますね。
秋山:その前に、今までの蓄えの中で「まだ自分は意識してないけど、どうも世の中こっちのほうに動くらしい」という感覚があって、誰かに会った時にひらめくんじゃないですかね。
井上:あるでしょうね。そういうものがマイニングされているわけですよね。
秋山:手前にあるんです。
井上:それがないと死屍累々のほうに行ってしまうんでしょうね。
秋山:「これアカン」というやつですよね。
井上:いや、おもしろいな。なるほど、ありがとうございます。
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