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「90分腹落ちセミナー」組織が本気で取り組みたくなる女性活躍 2.0(全5記事)

男性起点だけの硬直した組織は、すでに“賞味期限切れ” 「女性活躍」を超え、「全員活躍」を目指す組織づくりのポイント

女性活躍推進が注目されているものの、本質を理解せず、見かけだけを整備するだけでは本当の意味での企業価値向上は目指せません。今回の90分腹落ちセミナーは、女性活躍推進の本質について、組織開発のプロフェッショナルである沢渡あまね氏と、多数企業で人材育成支援に携わってきたNOKIOOの小田木朝子氏の2名が「組織が本気で取り組みたくなる女性活躍 2.0」を語り尽くします。本記事では、女性支援型の「1.0」と、女性起点型の「2.0」の違いについて解説しています。

組織開発は「Being」と「Doing」の積み重ね

小田木朝子氏(以下、小田木):女性活躍推進、これは広く捉えると組織開発・組織作りの一環じゃないですか。こういった課題感をベースにしながら、どんなステップが必要なのかを図にしたのがこちらのページ。

まず左側。「女性活躍推進」という言葉を知らない人は、もはや日本の中にはいらっしゃらないと思うんですが、それの望ましい状態。もしくはそれが実現して、会社にとって良い状態が描ききれているか・いないかというところでは、やっぱりギャップがあるんじゃないかなと思うんですよね。

まず1つめのステップが、「望ましい状態」の定義がどれぐらい解像度高くできているか。そして2つめのステップが、望ましい状態が定義できると、今度はその望ましい状態を実現するための具体的な行動として、どんな打ち手が考えられるか。この2つがセットで成立していくのかなと思います。

沢渡あまね氏(以下、沢渡):小田木さん、少し補足してもいいですか。

小田木:お願いします。

沢渡:組織開発とは、BeingプラスDoingの積み重ね。Being・Doing・Being・Doing・Being・Doing……のチェーンリアクション、連鎖だと説明しています。

小田木:チェーン。わかりやすいですね。

沢渡:今日は手短にいきたいと思うんですが、女性が活躍できている状態はBeingですよね。その理想の状態を作るためには、「女性活躍推進だ」と言ってるだけではだめで、Doing、その状態を作るためにどんな行動を増やしていったらいいのか。

例えば小田木さんと私が主張していて、今日も少し出てくる「ヘルプシーキング行動」を増やしていく。それにより、女性が活躍できる状態のBeingができるよね。では、ヘルプシーキング行動を起こしていくためにはどういう組織の状態・雰囲気・風土を作っていけばいいのか。このDoingを支えるBeingがまたあるわけですね。

女性活躍だけでなく、目指すべきはその先の「全員活躍」

沢渡:さらにこれは上方向にも同じことが言えて、女性が活躍できている状態をBeingできると、どんなDoing、どんな行動が生まれてくるのか。それによって、組織としてどういう理想状態、さらに上位のBeingを作っていけるのか。この行き来だと思うんですね。この行き来のディスカッションをしていく必要があるし、実現していく必要がある。

これは「女性活躍推進」という望ましい状態、すなわちBeingだけではなくて。例えば、最近よく組織開発の領域で「心理的安全性の高い状態を作る」と、全国の組織が言ってるわけですね。心理的安全性が高い状態がBeingなんですが、なんのために心理的安全性の高い状態を作るのか。

組織のメンバーにマネージャーに経営層に、その先のDoingと、心理的安全性の状態が高い状態を作るためにはどういう行動を増やしていったらいいか。Beingを支えるDoing、すべてはこの行き来だと思うんですね。今日もこういうディスカッションをしていけたらなと思います。

小田木:ありがとうございます。なので、今日のセミナー「女性活躍2.0」では、まずは望ましい状態を定義して、「女性活躍している組織だよね」という解像度を、さらにもう1歩踏み込んで上げていきたいなと思います。解像度がクリアになると、今度は現状のギャップもクリアになってきますので。

じゃあこのギャップを埋めるためには、「どんな手を打つか」というDoingをクリティカルに優先順位をつけて描けると、それが取り組みや全体像になりそうですよね。

沢渡:おっしゃるとおりです。みなさん、すでに女性活躍という言葉に違和感を持たれている方もいらっしゃると思うんですね。女性だけが活躍すればいい社会ではないよね。そうなんです。その先にある「全員活躍」。この言葉は、昨年の90分腹落ちセミナーで、立教大学の中原淳先生にお越しいただいた時に生まれた言葉ですね。

小田木:そうですね。全員活躍だし、全員総変化。

沢渡:そうです。全員総変化というDoingと、全員活躍というBeingを、女性活躍というキーワードを切り口に作っていく。ここを一緒に考えましょう。

「女性活躍2.0」を構成する、2本の柱

沢渡:そもそも、女性活躍というワードに抵抗感がある経営層の社員が多いのが実態。おっしゃるとおりです。では、社会やマネジメントのどういうキーワードと紐付けて、立体的に宇宙として解決していきましょうか。

小田木:本当に、女性活躍というキーワードが大きすぎるんですよね。

沢渡:そうですね。

小田木:大きすぎるので、それに対してどんなイメージを持つかが収集つかないぐらい、個人の見方や価値観によってばらついているのが、今の状態じゃないかなと思います。なので、そこの定義をしていきましょう。まず今日のタイトル、女性活躍2.0における女性活躍ってどんなBeingよ? というのを言語化してみました。

女性活躍2.0の定義は2つの柱で成り立っているんですが、まず左側ですね。女性を含む多様な人材が組織の中で最高のパフォーマンスを発揮している状態。これがBeingの1本目の柱だと思います。

このように「最高のパフォーマンスが発揮できているか」という物差しがあるかどうかで、描かれるBeingも、打ち手として設計されるDoingも、まったく違うものになってくるんじゃないかなと思います。

沢渡:おっしゃるとおりですね。

小田木:これは2本柱ですので、左と同じぐらいもう1本の柱も超絶重要だと思うんです。右側は何かというと、「女性も含む多様な人材から最高のパフォーマンスを引き出せる組織になっていますか?」という。

沢渡:いい問いかけですね。

小田木:そうなんですよ。なので、多様な人材が最高のパフォーマンスを出せていることと、多様な人材から最高のパフォーマンスを引き出せる組織・環境であるという、この2本が両方成り立って成立する。それが女性活躍2.0の定義であり、Beingじゃないかなというのがこのシートですね。

「女性活躍1.0」は、悪気なく男性に優位な社会構造だった

沢渡:おっしゃるとおりですね。翻って鑑みるに、女性活躍1.0の状態は、悪気なく男性に優位な社会構造・組織構造であったと捉えることができると思うんですね。

悪気なくと申し上げましたが、社会の環境がそうだったから悪気はないんですよ。世の中がそうだったから最適化されていただけであって、そこを責めすぎる必要もないと思うんですね。ただし、世の中が変わったんだからアップデートしていきましょうと。

小田木:そうですね。犯人探しじゃなくて望ましい未来を描くほうにシフトしようよ、という考え方ですね。さっき沢渡さんがおっしゃったように、女性活躍だから女性にどうしてもらうとか、女性をどうするかという話じゃなくて、これをキーワードにしながら複合的な組織の問題を解決して、よりよくしていく方向性にできたらいいですよね。

沢渡:そうですよね。おっしゃるとおりだと思います。だから、男性が悪いというものではまったくなくって。

小田木:ということで、2.0を定義できたということは、1.0と対比すると2.0はどういうことなのかも、1歩踏み込んで考えたいなと思います。

沢渡:そうですね。

小田木:1.0と2.0。まずは私たちベースの定義ですが、こんなふうに定義をしてみて、みなさんとのディスカッションのベースにしたいなと思いました。1.0的女性活躍とはどんな女性活躍か。女性支援型の女性活躍、これが1.0じゃない? 

これはどういう考え方かというと、そもそも支援型です。女性は弱い立場にあって、出産や介護があると機会に恵まれず、仕事が続けられなかったりしてかわいそうじゃないですか。なのでそんな女性に働き続けてもらうために、いろいろ支援してサポートしていくことが必要だよねというのが、女性支援型の女性活躍。

沢渡:かわいそうな人を助ける、というイメージですね。

小田木:これも必要だったので否定しません。これなくしては成り立たない部分もありますので。制度が整うことによって、仕事が継続できるようになる。離職率が下がる。育休取得率が上がって、ライフイベントに関わらず仕事が継続できるようになることは必要でしたよね。でも、ここだけでは行き詰まっているのが今の状態ではないかなと思います。

男性起点の考え方は、“賞味期限切れ”になりつつある

小田木:じゃあ2.0はというと、(スライドの)右側ですね。女性支援型じゃないとしたら何型なのか。「女性起点型」という言葉を作ってみました。

さっき沢渡さんがおっしゃったように、いずれにしても男性中心の硬直化した組織を変えていく必要があって。そのためには、多様な人材が多様なリーダーとして活躍していくことが急務であり、職場の固定概念を破って組織を強くしていくための手段として、ダイバーシティ推進があり、その中の1つが女性活躍推進であると。

沢渡:そうですね。これも別に男性起点が悪いわけではなくて、男性起点だけの考え方や物の見方は、もう“賞味期限切れ”になりつつある、ということだと思うんですね。

小田木:賞味期限(笑)。

沢渡:別の例えをするなら、なんでもかんでも東京発ではなくって、札幌発があっても仙台発があっても名古屋発があってもいいじゃない、ということだと思うんですよ。

小田木:すごくわかりやすいですね。先ほどコメントで「女性活躍からの全員活躍。これは、女性活躍が重すぎて後者とは大きな溝があり、前者だけにフォーカスしちゃうとうまくブリッジできないという問題とつながってるかもしれませんね」と。

沢渡:おっしゃるとおりだと思いますね。ありがとうございます。

小田木:ということで、(女性活躍は)1.0から2.0へ。そして2.0のビジョンは、最高のパフォーマンスが出せていることと、多様な人材から最高のパフォーマンスが引き出せる組織になることであるという「Being」を定義した場合。次に出てくるのが、現状とのギャップ、もしくはBeingを実現することを阻む課題がリアルに頭の中に描けてくるんじゃないかなと思います。それを図にしてみました。

一人ひとりの視点をすり合わせるための「問題地図」

沢渡:お、問題地図だ。

小田木:問題地図といえば沢渡さんです。

沢渡:ありがとうございます。

小田木:女性活躍版問題地図を描いてみました。まず、(この地図を)どう見るかをみなさんに共有させていただきますね。

ちょっと色が薄いですが、背景にいくつかゾーン定義がしてあります。当事者のゾーン、そして組織全体のゾーン、管理職のゾーン、パートナーのゾーン。ゾーンごとに定義をして、かつ最高のパフォーマンスを引き出せないことに対してどんな課題があるのかを、No.1からNo.25までナンバリングして言語化してみました。

これは一つひとつが独立した課題ではなくって、線でつながっている。要は因果関係があり、絡み合っている。

沢渡:見ていただきながら、地図を描く効能をお話ししたいと思うんですけれども。

小田木:ぜひ。みなさんもよかったら、ご自身のケースやご自身の組織に当てはめた時に、どのナンバーがより優先度の高い大きな課題なのか、もしくは着目している問題なのか、ぜひ見ながらコメントいただけるとうれしいです。沢渡さん、地図の効能をぜひ。

沢渡:そうですね。こういう地図を広げることによって、経営層の課題、現場の課題、人事部門の課題や本人の課題、それぞれが俯瞰できると思うんですね。ですからぜひ、こういう地図を広げてみる、または自ら地図を描いてみて相手と景色を合わせてみるディスカッションをしてほしいなと思います。いわば「全員伊能忠敬」みたいな感じ。

小田木:(笑)。「全員○○」が今日のヒントですね。

沢渡:そう。全員伊能忠敬で、組織の景色を合わせていこうぜと。

小田木:一人ひとりの見ている問題が違って、その中で議論するのはなかなか難しいと思うんです。なにか議論のたたき台になるような指差しがあって、お互いが考えていること、もしくはお互いが着目している問題を共有しあえることが議論のスタートかなと思いますので、そういうシーンにぜひこの地図を使ってほしいなと思います。

沢渡:私の『問題地図』シリーズも、そういう思いで書きました。1人のせいや1つのせいにしたくないんですよ。みんなが変わろう、みんなで幸せになろうってね。

キャリアの希望を「言えない」職場で感じる無力感

小田木:ちなみにこのNo.25までの中で、沢渡さんが特に着目している問題があればお聞きしてみたいなと思いました。

沢渡:私はけっこう2番が気になるんですよ。

小田木:2番来ました。

沢渡:キャリアの希望を言わない、言えない。ここはけっこう根深くって。ともすれば本人だけの問題にしがちなんですが、「そもそも、この職場でキャリアの希望って言ってもいいんでしたっけ?」「叶えられる余地があるんでしたっけ?」という無力感とか。

悪気なく、仕事場は自分がやりたいことを言わない場所だと思ってしまうと、言えなくなったりしますよね。これは大いにマネジメントの問題だったり、組織のコミュニケーションのデザインの問題だったりするわけですね。おっしゃるとおり、いいキャリアデザインが少ない。そもそもキャリアをデザインする機会がなかったりとか……。

小田木:まさに、同じ2番の着目でしたね。

沢渡:キャリアの選択肢。実はやり方を変えてITを使えば、男性以上に活躍できる場面はあるのに、組織が「女性には事務職補助的な職位しかないよね」と思い込んでいると、そのチャンスを見失ってしまう。組織にとっても、個人にとってもアンハッピーですよね。

小田木:ありがとうございます。と言ってる間に、(視聴者から)「19番」のコメントもいただきました。仕事定義が固定的、もしくは役割定義が曖昧が故に、多様な人材がパフォーマンスを発揮できていないんじゃないかという問題ですね。

沢渡:そうですね。そして、社会が変わっているのに職場がアップデートしていない。おっしゃるとおりですね。だから、外の風に触れて自分の職場を俯瞰するアップデートの機会を提供していく。人事組織の大きな役割の1つ、レスポンシビリティはそこではないでしょうかね。

「圧倒的な対話不足」によって、ズレ続ける相互理解

小田木:ありがとうございます。ちなみに私が着目しているのは、6番と15番ですね。「時間で成果を出すやり方しか知らない」。はい、これは私でした。

沢渡:あるある。あぁ、小田木さんの内省ね。

小田木:そう、振り返りも含めて。でも私だけかと思ったら、けっこうみんな時間で成果を出すやり方をベースにしているので、「ライフイベントを迎えちゃったら今までのようにやっていくのが難しいかな」とか、任せる側も「任せるの難しいかな」と思っちゃったり。

沢渡:ありますね。

小田木:あと、時間を追って成果を出すやり方のままがんばろうとしちゃって、「もう無理だわ」って思っちゃったり。多様な人材がパフォーマンスを発揮していく中で、これはかなり根深い課題だと思ってるんですよね。

さらに15番はさっきの2番ともつながると思うんですが、対話や業務連絡はしていても、本当に大事な問題意識の共有、もしくは希望の共有など、どうしたいか、どうありたいか、どういったサポートをしてほしいのかは、圧倒的な対話不足もあるなという反省も込めて思っています。

沢渡:相互理解不足、お互いの景色がずれている。こんな感じですかね。

小田木:はい。15番の共感もどうもありがとうございます。「欲が根深いから16に陥っている」という考察もいただきました。

沢渡:おもしろいコメントいただきました。「面接で『部長になる気はありますか?』『課長になる気はありますか?』と、常に聞いています。意外とイエスと答える方もいますよ」。

小田木:なるほど。

沢渡:対話の積み重ねは大事かもしれないですね。

小田木:まさに2番に対して、15番でアプローチしながら「どうしたいか」を聞いているという。

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