ビジネスの賢人たちが2時間怒る、深夜番組最終回の“リアル”　さらば森田氏が実感した「芸人×ビジネス番組」の難しさ

「てつや」同士の対談が実現

司会者：大変お待たせいたしました。デザイン会社れもんらいふ代表でアートディレクターの千原徹也さん、お笑い芸人のさらば青春の光・森田哲矢さんをお迎えいたします。みなさま拍手でお迎えください。

（会場拍手）

森田哲矢氏（以下、森田）：あ、どうも。

千原徹也氏（以下、千原）：緊張感ありますね。

森田：とりあえず千原さん、出版おめでとうございます。

（花束を渡す）

千原：いろいろご用意いただいてありがとうございます。今日、クランクアップだったんですよね。

森田：実は映画を撮ってまして、今日はそのクランクアップ。

千原：それでもらった花でしょ、これ（笑）。

森田：クランクアップでさっきもらったやつを千原さんに……（笑）。持って帰っても何もすることないんで。

千原：ちょうどよかったですね。

森田：誰か女子、欲しかったら持って帰ってください（笑）。すみません、よろしくお願いします。

千原：よろしくお願いします。さらば青春の光の森田さんです。

森田：森田です。お願いしまーす。異様に緊張しますね。

千原：いや、緊張しますね？　さっきギリギリで「緊張する」って言ったでしょ。僕もそれで緊張しました（笑）。

森田：千原でしょ。トークでしょ。その時点でちょっと緊張するんすよ。

千原：そうですか？　「NewsPicks」のほうが緊張するでしょ。

森田：（笑）。いやいや。千原とトークをするのが『チハラトーク』以来ですから。

千原：（笑）。あぁそっか、「千原」ね。

元から天才のような顔と空気感でも、実は“負けてきた”人生

千原：僕の本（『これはデザインではない　「勝てない」僕の人生〈徹〉学』）が出ることになりまして、もう読んでいただいたんですよね。

『これはデザインではない 「勝てない」僕の人生〈徹〉学』(CCCメディアハウス)

森田：読ませていただきました。わりと壮絶な人生で、安心しましたよ。俺、（千原さんは）元から天才なんかなと思ってて。

千原：そんなことないです。

森田：意外にけっこう下積み長いねんなと思って。

千原：長いんですよ。

森田：だから安心しましたね。ずっと元から天才の顔してるじゃないですか、なんとなく。

千原：意外と僕、順風満帆で大して何も苦労をせず、なんとなく来たみたいな空気感があるんですよ。

森田：そう！　むちゃくちゃその空気感をまとってました。

千原：（笑）。

森田：でも意外に下積みが長いとか、落ちこぼれというか、負けてきたんやなという。そこがわかって、すごく親近感が湧いてきます。

千原：よかったですね。ああいうの意外と言う機会ないでしょ。「苦労した！」とかね。しかも人の前で苦労した話をすると、空気が悪くなるんですよ。

森田：なんとなく押し付けがましいというか。

千原：そうそう。だからあまり言えないんですよね。最初は「ビジネス書を作りましょう」って（声をかけて）いただいたんです。「仕事のさばき方のような本を作ってください」と言われたんですけど、ぜんぜんさばけてないんですよ（笑）。

森田：社長でしょ？　

千原：社長なんですけど、めちゃめちゃ苦労しているんです。効率よくやってると思われているんですけど、そんな大して効率もよくないし。「大した話は書けないですね」となって、「ほんなら生い立ちからの本のほうがおもしろいですかね」ってなったんですよね。

裏方の仕事と思っていたら、実は多かった「しゃべる仕事」

森田：だからその金髪も、かましで金髪にしたということじゃないですか。もう相手に何も言わせないように。

千原：そうです。そもそも僕がビビりですからね（笑）。

森田：なんかすごく人間味のある人やなって思いましたね。

千原：ありがとうございます。金髪じゃない時は本当に緊張して、ここでもしゃべれないですよね。

森田：えっ。北野武さんがかぶり物しないとみたいな感じ。

千原：そんな感じです。

森田：金髪じゃないと。

千原：無理ですね。

森田：（笑）。そうなんすね。

千原：こういう感じの出で立ちで、コスプレしている感じじゃないと、人前でしゃべれないですね。

森田：でもデザイナーというか、アートディレクターの人たちは別に表に出る仕事じゃないから、そもそもしゃべらなくていいっちゃいいんですけど。

千原：確かにそうですね（笑）。

森田：まぁでもプレゼンの場とかあるから、そういうとこでっていうことでしょうけど。

千原：けっこう裏方の仕事だと思ってたんですけど、蓋を開けたら意外としゃべることがあるんですよ。ラジオとか。

森田：ラジオやっていますよね。たまに聞いていますよ。「やっとんなぁ！」って思いながら聞いてます。車に乗ってる時に、「なんか小洒落た女性とやってんなぁ」って。

千原：あの番組は終わったんですよ。

森田：終わったんですか？　

千原：今は深夜になったんですよ。J-WAVEで、1人です。

森田：1人でやってんすか？　いやいや、めっちゃしゃべれてるやん。

千原：（笑）。本当に1人で30分しゃべってるだけなんですけど、まぁ深夜だからすごい気楽にやってますよ。

きっかけは深夜番組『今日からやる会議』での共演

森田：もともと千原さんとはあれっすよね。テレビ東京の『今日からやる会議』という、僕らとカミナリがやらせていただいていた番組で。

千原：あの番組、おもしろかったですよね。あんな番組なかなかないですよね。

森田：おもしろかったんですけどね。ちょっと東ブクロの不祥事でなくなっちゃいまして。

（一同笑）

森田：そん時にけっこう序盤に千原さんに出ていただいて、一緒に「東京フォーク・TOKYOスプーン」というグッズのプロデュースをしてね。

千原：大して売れなかったですけどね（笑）。

森田：ぜんぜん売れなかったですね。ま、全部コロナのせいにしてますけど。

千原：でも、コロナのせいはありますね。

森田：インバウンドを意識してやっちゃいましたから。

千原：東京ブランド（を全面に押し出したグッズ）ですからね。外国から人が来ないですからね。いや、でも最終回すごくなかったですか？　

森田：あ、そうなんです。見てない方はあれでしょうけど。僕らがビジネスをするために、いろんなビジネスの賢人たちに話を聞いて助けてもらうという。時には千原さんのように、一緒に物を作って売りましょうということを2年ぐらいやっていた番組なんすよ。

千原：コルクの佐渡島（庸平）さんとかね。

森田：箕輪（厚介）さんとか、ビジネスのすごい人たちが出てくれて。

千原：ああいう人にテレビで会うことはないですもんね？　

森田：ないです。だからめちゃくちゃ貴重な体験で。佐渡島さんとも一緒に漫画を出させていただきましたから。

千原：『ザ・ゲリラ』ね。見ました。見ました。

森田：あ、見てくれたんですか？　

千原：デジタルで買いました。

森田：本当ですか。ありがとうございます。あれも結局ぜんぜん売れなくて。

千原：（笑）。

森田：そう考えたら俺らが悪いんちゃうか？　っていう（笑）。

売れてもお金は入らなかった

千原：でもセガかなんかのやつは売れてましたよね。

森田：バンダイのガシャポン（「にゃんこミュージアム」）っすかね。まあまあぼちぼちって感じです。

千原：番組の最終回でやっていたのは、まあまあ売れたのに……お弁当でしたっけ。

森田：オリジン弁当（「GO！ミート大地の雄叫び」「WOWWOW！フィッシュ五種の贅沢」）ですね。

千原：売れたのに、大してお金が入らなかったんですよね？　

森田：オリジン弁当の売上は7,000万円か8,000万円で、僕らには2万円しか入ってこなかったんです（笑）。俺、もう絶対に副業で弁当屋なんかやらんとこうと思いました。

千原：そんな比率あります？　

森田：そういうもんなんですって。そういう世界なんすよ。7,000万～8,000万円の売り上げなんて、弁当業界からしたら微々たるもんで。

千原：あ、そうなんですね。

森田：そんだけ売っても僕らにはそんだけしか入ってこないっていう。テレ東がどんだけ抜いてるかというのもあるんすけど。

千原：だから（最終回で番組プロデューサーの）太田勇さんが「（テレ東側の比率は）言えない」ってなってましたもんね。

森田：実はテレビ東京がわりと厳し目というか。

ビジネスの賢人たちが2時間怒る、ヒリヒリの最終回

森田：テレ東とようもめてましたもんね？　なんか俺らの知らんとこでけっこうもめてたって聞きましたよ。

千原：（笑）。

森田：テレ東に千原さんがガンガン言ってるみたいな。

千原：違うんです、なんか……（プロデューサーの）合田知弘さんが途中で変わったじゃないですか。

森田：はい、テレビ東京の社員さんが異動になって。

千原：異動になって、それまで進めてたことがさーっと止まってしまったと。

森田：引き継ぎをしてなかった？

千原：そうそう。それで「え？」みたいなのはあったりとかして。

森田：そうなんすね。僕らも「あれ、千原さんがテレ東に対して怒ってるぞ？」ってなって。えぇっていう。

千原：あぁ、そうそう。なんか怒ってたな。なんだったっけな。

森田：ちょっとどうしようってなりました。そのタイミングで俺も『東京フォーク・TOKYOスプーン』もっかい告知しようみたいな（笑）。

千原：。そうでしたね。でも勉強になりましたね。

森田：そうっすね。最終回は特にね。

千原：最終回、もうあれ見れないですかね？　（※「Paravi」「テレ東Biz」で視聴可能） すごくなかったですか。

森田：見た人います？　あれはテレビでは伝わってないぐらい……。

千原：テレビでは30分ぐらいでしょ。本当は2時間しゃべってたから。

森田：今まで出てくれたビジネスの賢人たちが、2時間怒ってるという。

（一同笑）

森田：テレ東もそうだし、僕らも相手に、ずっと怒っている2時間。ヒリヒリしましたもんね。

千原：普通は裏でやるような話を。

続編を「やらない」と言い切ったワケ

森田：僕が印象的だったのが、「次やりますか」「次やりましょう」って言った時に、「今のままだったらやらないです」って言いましたよね。

森田：僕がね。『今日からやる会議』の続編。

千原：続編やるとしてもという話がすごくリアルでしたね。

森田：そうですね。もうこんだけ怒られたら、いったんやらないって言いたいですもん。

千原：（笑）。

森田：ビジネスってこんな怒られんねやと。

千原：でもすごくおもしろかったのは、結局ビジネスというものをガチでやりたくないから芸人になってるのに番組でビジネスをやるという、矛盾したことをやっているんですよね。

森田：そうですね（笑）。サラリーマンにはなられへんし、9時5時で働けへん人間やから、こういうふしだらな世界に入っているのに、なんでビジネスやらなあかんねんっていうのはありますけれど。まぁ楽しいビジネスではあったし、やりがいもあったんですけど。

千原：そうですね。だからどこまで本気でやるのかが難しいと思いますね。

森田：ビジネスのみにのめりこむなら、たぶんできるんです。たぶんもうちょっと儲けられるんです。でも本業があるから、こっちを疎かにしてまでそっちにはいけないですよという前提があったので、「このままやるんなら僕はやらないです」って言いました。

千原：それが感動の域でしたね。あの2時間は。

森田：そうですね。それが30分にまとめられると……。テレ東はもう損したくない、でも賢人たちにも損させたらあかんという……。マイルドな30分になってましたね。

千原：もっと厳しい意見がいっぱいありましたもんね。

森田：本当にヒリヒリしてましたね。佐渡島さんの言葉とか、本当に響きましたもん。

千原：がーっ言ってましたもんね。太田さんも、会社に対する怒りとかいろいろ言ってましたからね。

森田：組織ってむずいっすね。あなた、社長でよかったっすよ。

千原：いや、あなたもね（笑）。

森田：そうですね。