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ピョートル氏と考える「あなたのチームの成果を最大にする方法」(全2記事)

偉い人が問題を起こして帰る「カモメ・マネジメント」が起きる理由 『世界最高のコーチ』著者が語る、「問いかけ」に大切な2要素

ハイブリッド総合書店hontoが主催する読書会「ペアドク」。2人でペアとなって同じ本を読み話し合ったり、直接著者に質問ができる読書会を通して、新しい読書のかたちを提案しています。今回はピョートル・フェリクス・グジバチの『世界最高のコーチ 「個人の成長」を「チームの成果」に変えるたった2つのマネジメントスキル』(朝日新聞出版)の読書会が開催されました。Googleで人材開発を担当し、経営コンサルタント・起業家として活動するピョートル氏は「よきマネジャーは、よきコーチである」と提唱しています。本記事ではコーチングを行う上で大切な2つの要素について、ピョートル氏がこの本を書いたきっかけである「日本企業の問題点」についてが語られました。

世界中の“猛獣たち”にコーチングを実践

松原嘉哉氏(以下、松原):ピョートルさん、いらっしゃいますか。

ピョートル・フェリクス・グジバチ氏(以下、ピョートル):はい、こんばんは。よろしくお願いします。

松原:よろしくお願いします。最初にごあいさつ代わりにお話しいただければなと思っております。

ピョートル:すみません、今日は朝からずっとしゃべってる状態で、ちょっと声が出なくなってるんですよね。それが心配で(笑)。

松原:(笑)。

ピョートル:途中で出なくなったら、みなさんにバトンタッチをします。みなさん、こんばんは。ピョートルと申します。何をやってるかというと、いろいろやってます(笑)。基本的に(スライドには)英語で書いてるんですけれども、「誰もが自己実現ができる世界を作る」というのが個人的なミッションです。

子どもの頃にポーランドの共産主義、独裁社会を経験しました。みなさんがイメージしやすいことで言うと、おそらく今の北朝鮮のような状態なんですけれども。それで自分の家族も苦しんだり、自己実現ができなかったからこそ、ここに至るんですよね。

今日のテーマに関係あるのは、僕の経営、あるいはマネジメントの視点ですよね。もちろんモルガンスタンレーとGoogleで長くがんばって、世界中の猛獣たちにコーチングしてきたこともあるんですけれども。

今主にやっている活動は、プロノイア・グループでの「未来創造事業」です。典型的なコンサルではないんですね。まず先を読んで、つないで、新規事業とか戦略とかの仕組みを作っていくということをやっています。

コーチングに大切なことは「好奇心を持つ」「相手に集中する」

ピョートル:その中で、人をどうするか、経営者の心をどうするかという「対話」と、TimeLeapという投資した企業で「子どもたちの起業家育成」として、10代の子どもが自分の道を切り開くサポートをしています。

イグジットしたんですが、ワークスタイルテックというHRテックの会社を共同創立しました。それから今ちょうどニュースに出ているんですが、「RENOSY」というおもしろいサービスを出してる日本最大の不動産テックの1社の社外取締役をやってます。なので毎日、猛獣と猛獣と猛獣、という感じなんですけど。

松原:(笑)。

ピョートル:結局何を大切にしているかというと、まず、好奇心を持っていただくこと。目の前にいる人、それは経営者の猛獣なのか、お掃除のおばあちゃまなのか、その他なのかわかりませんが、まずはひたすら好奇心を持っていただかないと、コーチングなんてできないんですよね。

みなさんは「ラポール(相互に信頼している状態:フランス語で「橋を架ける)」を考えていただければと思います。自分に好奇心を持っている人にしか、ラポールを作れないんですよね。どう見ても上司が自分に好奇心がない、あるいは配偶者が自分に好奇心を持ってない状態であれば、ちょっと申し訳ないんですけど、離婚したほうがいいと思います。

あとは、ひたすら相手に集中していただくこと。話すとしたら、携帯を見たりメールを見たりするのではなく、相手はどういう人で、何を望んでて、今言ってることとやってることのどこが違っていて、どんな感情を表現しているのかを、理解だけではなく「感じる」ことがポイントですね。

感じて、集中して、好奇心を持って初めて相手に適切な問いかけができる

ピョートル:感じて、集中して、好奇心を持つ。それで初めて、相手に適切な問いかけやフィードバックができるはずですよね。自信を持つことは、言ってみれば失敗しても謝ればいいということです。例えば「あなたは今こういうことですよね」と……松原さんをちょっといじってみましょう。松原さんは何者ですか?

松原:「何者」? ……プロデューサーですかね。

ピョートル:どういう意味ですか?

松原:新しい価値を提供することをビジネスにしてます。

ピョートル:その新しい価値をもたらすのは、なんで大切なんですか?

松原:うーん、本にもっと可能性があると感じたいからですかね。

ピョートル:なるほど。松原さんは今何が一番欲しいですか。

松原:何が欲しい……「時間」ですかね。

ピョートル:でもね、本当は何が欲しいんですか?

松原:(笑)。「刺激」ですかね。

ピョートル:その「刺激」は、何のために欲しいんですか。

松原:さっき言った、自分が「世界がこうなったらいいんじゃないか」という仮説をぶつける相手とか、ぶつけてどうなるかとかいう実験をたくさんしたいからです。最初は「時間」と言ったんですけど、「刺激」のほうがいいかなと。

ピョートル:なるほど。じゃあ刺激が欲しくて、実験を行いたいということですけれども。でも、本当は何が欲しいですか?

松原:うーん、何だろう(笑)。昨日と違う結果、データですかね。

ピョートル:その「昨日と違う結果」は、何のために欲しいですか。

松原:自分が飽きないためですかね。

ピョートル:……本当は、何のために?

松原:(笑)。うーん……。

ピョートル:もういやになっちゃいそうですよね(笑)。僕は自分が作った会社の社員と、こういう会話を毎日のようにしているんです。「まず好奇心を持って人に集中するというのは、こういうものだ」というデモンストレーションだったんですけど。

典型的な日本の会社の問題は「カモメ・マネジメント」

ピョートル:松原さん、すいません。あと何分ですか(笑)。

松原:(笑)。あと2、3分で!

ピョートル:了解です。「なんでこの本を書いたか」をみなさんにお伝えしたいんですが、日本の会社を見ると、やっぱりストラクチャ(構造)が足りなすぎるんですよね。要は会話のストラクチャ、合意設定のストラクチャ、評価のストラクチャ……さきほど、さらっとみなさんから事前に頂いた質問を見ていたんですけれども。

典型的な日本の会社の問題、症状は、「カモメ・マネジメント」です。ご存じですか? カモメが飛んで自分の頭の上にうんちを落としていくというマネジメントですね。偉い人が現場のコンテクストもわからずに登場して、問題を起こして帰っていく。「お前らは何もやってないんだ! なぜKPIを達成していないんだ!」とぶつぶつ言って帰るんですよね。

なんでそれが起こるかというと、ストラクチャがないからなんです。会議がうまく行われてない、目標設定がない、あるいは会話が足りないということです。

現場にいるのは「やる気がない評論家」や「なんでも従うYESマン」

ピョートル:上司が悪いというわけではないんです。実際、中間管理職は板挟みになってかわいそうですよ。上にもぶつぶつ言われるし、みなさんをなんとかしなきゃならないんですけれども、現場は問題児も多いんですよね。

論理的思考力と組織へのコミットメントを見れば、例えば論理的思考力が高いんだけどコミットメントが低い人は、ぶつぶつ言う「やる気がない評論家」ですよね。

逆にコミットメントが高いんだけど論理的思考力がない人は、「なんでも従うYESマン」ですよね。「とりあえずあれやって」「はーい!」って飛び込むんですけど、違うのよ(笑)。

「『あれ』って何ですか」「具体的に何が欲しいんですか」「いつまでに欲しいんですか」という問いかけをみなさんが上司にしてないのであれば、ぜひ明日からしてほしいです。

あと論理的思考力もコミットメントもない「迷える子羊」もいるし、「前向きなフォロワー・ナビゲーター」もいるんですけれども。それぞれにどういう接し方をしていくかを考えなきゃならないですね。

僕も心理カウンセラーのコーチなどの資格をいろいろ持っているんですけど、典型的なライフコーチ、要は「あなたを幸せにしますよ、なんでも優しく聞きます」という考え方は好きじゃないんですね。非効果的だと思ったほうがいいです。

マネジメントの仕事は、メンバーが最高の自分になれる状態を提供していくこと

ピョートル:何が大事かというと、まずマネジメントの立場に立てば、(やることは)「メンバーのマネジメント」だけではない。プロジェクトでもちょっとした対話でも、メンバーの好き嫌いや性格に感情やバイアスを抱くことなく、常に彼らが最高のパフォーマンスを発揮できる状態を作り、最高の自分になれる状態を提供していくことが仕事です。だから厳しいことも言わなきゃならないし、きつい質問もしないとダメですよね。

「コーチングは創造的な対話」です。いかに結果を生み出すか、成果を生み出していくかがポイントですね。だから、自由で新たな発想は大事だけれども、残酷なほどに率直に話さないとダメなんです。

あと、否定しないことですね。さっき松原さんに問いかけをした時に、否定をしなかったんですよね。「何が欲しい? ……それ違うんだよね、ウソつくんだよね」ということではなく、「本当に何が欲しい?」と。

仮のシミュレーションでしたけれども、そのターンに、もうあるんですよね。松原さんが一言おっしゃると、もう答えになっている。それに偏ったりとらわれたりするのではなく、「本当は何が本質的なの?」ということを(深掘りすることが大切なんです)。

僕もいろいろ毎日話すんですけれども、「いかに深いところまで入るか」ということと、「人に優しく、結果に厳しく」がコーチングの基本です。人がまず避けようとするのは「痛み」「拒否」「恐れ」ですね。それとペアになって得ようとするのは「喜び」「社会的承認」「希望」です。

このスライドだけ覚えていただければ、みなさんはすごいリーダーになるんですね。松原さんは何を避けようとするか、何を得ようとするかというのをサポートすれば、簡単なんです。

経営の立場ではアウトカム(成果)がポイントになる

ピョートル:ただ、それでは終わらないんです。「3人のレンガ職人」のストーリーをご存知かと思うんですが、みなさんが日常で何をなさろうとしているかというと、まずインプット(行動)があるんです。レンガを積み重ねるということですよね。

その次にアウトプット(結果)があるんです。例えば「この仕事を通じて給料を得たい」とか。ただ申し訳ないんですが、経営の立場に立つと、アウトカム(成果)がポイントなんです。成果を出して、どんな社会的なインパクトを出していくかというのは、どの領域においても成功の土台です。

例えば音楽でアウトカムを出していくと考えた時に、「ショパンコンクールで勝つ」というのはポイントではないんですね。「多くの人たちに音楽を通じて感動を与えて、その人たちの人生を変えていく」というのがポイントですね。

ここまでで一旦黙っておきます。すみません、しゃべりすぎました(笑)。松原さん、よろしくお願いします。

松原:ありがとうございます。「本当は何が欲しいの?」って言われたら、ちょっとまた考えちゃうというのはすごくおもしろいなと思って聞いていました。じゃあ質疑応答の時間に移ります。

「リーダー」ではなく「人」として接する

松原:上からいきますが、最初の質問は「心理的安全性を作るために、一番努力してやっていることは何でしょうか」ということです。何か質問に補足はありますか?

質問者1:私はリーダーにはなったことがないんですけれども、部下側としてリーダーと心理的安全性を作るためにはどうしたらいいかというのも聞きたいです。

ピョートル:なるほど。すでに答えたと思いますけれども、まずひたすら好奇心を持つ、ひたすら集中していくこと。申し訳ないんですけれども、「リーダー」とはただの用語で、忘れていただいたほうがいいと思います。これは「人」としてですよね。

例えば質問者さんはご家族もいらっしゃるし、コンビニで店員さんと接してるし、あるいは隣のおばあちゃまと話するかもしれない。いろんな人に接していくんですよね。心理的安全性とはまず「自分らしくいられる状態」です。その人がそのままで自分らしくいられる状態を、いかに作って差し上げるかと。

会社であれば、さらにリスクが取れる。お互いを高めあえる状態で、建設的な意見の対立が推奨される状態ですよね。例えば「松原さん、松原さん! すいません、これ持ってきたんだけどどう思う?」「ピョートル、これ間違ってるよ? 数字と計算が間違ってるよ」「え、本当?」「だって、ここどう見ても計算間違ってるよ」……という会話がパパッとできれば、組織がいきいき進めるんですよね。

心理的安全性を作るのは「信頼」と「尊敬」

ピョートル:心理的安全性は、簡単に言うと2つの要素のバランスです。まず「信頼」。要は質問者さんに納期が明日までの仕事をお願いしたとします。すると明日までに必ず、僕が納得できる結果が戻ってくるということですね。要は期待を裏切ることがないんです。

で、もう1つは「尊敬」。質問者さんから得た結果がすばらしくて、「すごいね! どこからきてるんだろう、天才!」……ということじゃなくてもいいんだけど、「やってくれたんだ、がんばってくれたんだ」という、(信頼に対する尊敬の)バランスですよね。どっちかがなくなるともう、心理的安全性がなくなってしまうんです。

なので僕が工夫しているのは、まず人に好奇心を持つことです。例えば「お前、何でいつも遅刻するの?」と言われたら、どうするんですかね。みなさんはたぶん「うわっ」て驚くと思うんです。

そのメッセージは何のメッセージなのか、その人の今の心理状態はどんな心理状態なのか。例えば(言われた側が)「僕は何が足りなかったのか」とかいう好奇心を持って接したら、「あぁ、わかった。あなたが僕に時間どおりに来てほしいということですね」……と言い返してみればいいんです。

自分の軸をぶらさずに言い返してみれば、相手が落ち着いて「そうですよ。もう、あなたはいつもいつも遅刻するんですよね」「あぁ、やっぱり時間を守ってほしいということですね。ちなみに『いつも』って具体的には? 今日も遅刻しちゃったんですけれども、昨日は時間どおりに来たんじゃない?」「そっか、ごめんねピョートル。確かに言いすぎた」という会話になるんですね。

松原:なるほど。質問者さん、大丈夫ですか。

質問者1:はい、ありがとうございます。

松原:「信頼」と「尊敬」にわかれるというのはおもしろいなと思いましたし、なるほどなと思いました。ありがとうございます。

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