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「伝える×伝える」 〜いま、リーダーに必要な伝え方〜(越川慎司氏 講演)(全1記事)

「1スライド105文字、3色以内」を厳守したら、成約率が2割増 オンラインでも伝わる、効果的なPowerPointの極意

リモートワークが一般的になり、課長をはじめとするリーダー層は、“目隠し”をされた状態でマネジメントをしなければならなくなりました。離れた場所で働いているメンバーにどう働きかけて、チームとして結果を出したらいいのか? 「いま、リーダーに必要な伝え方」というテーマで、『AI分析でわかった トップ5%リーダーの習慣』著者の越川慎司氏と、『課長2.0』著者の前田鎌利氏が対談。本記事では、トップ5パーセントのリーダーが実践している「伝え方」の特徴を、越川氏が解説しています。

不確実性の高い時代で、成果を出し続けるためには?

前田鎌利氏(以下、前田):ということで、毎回行っています「伝×伝」です。友恵ちゃんから、あらためて今日のゲストのご紹介をお願いいたします。

堀口友恵氏(以下、堀口):お待たせいたしました。本日のゲストは株式会社クロスリバー代表取締役社長の越川慎司さんです。越川さん、よろしくお願いします。

越川慎司氏(以下、越川):よろしくお願いします。今、すごく期待値が上がっている状態でベタ褒めだったので、出にくかったんですが(笑)。

参加者1:めちゃくちゃうれしい~!

越川:ありがとうございます。(先ほどは)PowerPointと連呼していただいて、ありがとうございます。

前田:ははは(笑)。

越川:先に謝っておきます。PowerPointの責任者でした、使いづらくてすみません(笑)。プレゼンテーション協会の前でプレゼンをするのって、相当手厳しい状態ですからね?

前田:いやいや(笑)。

越川:あたたかい目で見ていただければなと思います。それでは、PowerPointの共有をさせていただきます。

堀口:よろしくお願いします。

越川:みなさんに学んでいただきたいのは、「不確実性の高い時に成果を出し続けるリーダーシップを持っていただきたい」ということです。これは個の力で打開できます。17万人のクライントの中から、トップ5パーセントの成果を出し続けるんです。

「成果を出す」じゃないですよ。コロナの前でもWithコロナでも「出し続ける」んです。成果を出し続ける方々の行動の共通点を見たら、けっこう似ていることがあったんです。ほかの17万人で再現実験をやったら91パーセントが真似できたので、ぜひみなさんにも真似していただきたいなと思います。

トップ5パーセントのリーダーの共通点

越川:簡単に自己紹介をすると、私は4つの職場で働いたことがあります。NTTからWebExに入って、ベンチャーをやって、マイクロソフトにいて、みなさんを苦しめて(笑)。マイクロソフトを卒業して、働き方改革の支援をしています。今日、ご参加の方はどうですか? (スライドの)縦軸が従業員数で、上が大企業、下が中小企業です。

左が国内中心(ドメスティック)で、右側がグローバルです。どこかの組織に所属されている個人事業主の方は多いのではないでしょうか。私はどこでも働いていましたし、どこでもプレゼンテーションをやっていました。なので、みなさんと距離感を縮めながら、今日は残りの時間をトゥギャザーさせていただきたいなと思います。

トゥギャザーを知っていますか? トオルおじさん(ルー大柴氏)は親戚のおじさんです。すみませんが、ここからはグローバルなど横文字が増えます。私の会社名は、「越川」だから株式会社クロスリバーです。……スベったので、次のスライドにいきます。

さて、「トップ5パーセントリーダーの行動」です。AI分析をして、共通点を13個抽出しました。成果を出し続けるリーダーにはこんな特徴があるんです。1番、おもしろくないですか? 管理職は出勤する時に歩くのが遅いんです。(理由は)話しかけられるようにするためです。

「話が短い」「ストイックにならない」「やる気をあてにしない」。11番は成功後に「なぜ成功したんだろう?」と振り返る。これが上位5パーセントのリーダーなんです。この中で、自分が「これは当てはまるな」「これは似ているな」というのをどれか1つを選んでいただいて、数字をチャットに入力してもらっていいですか。

ありがとうございます。2番の「話が短い」が多いですね。さすがプレゼンテーション協会、もう今日は話を短くします。AI分析したら、2、9、12番を入力した方は、なんとトップ5パーセントのリーダーになる確率が高いという行動予測もしてくれているんです。

上司や取引先に対する「忖度資料」をやめよう

越川:さて。今、みなさんに書いていただいた数字と画面上のピンクの数字は、重なるものがありますか? 2、9、12は再現性の高いルールなので、これをもとに今日は3つのアクションをご説明したいと思います。

まず1つ目が「やる気をあてにしない」です。やる気が高まったら仕事をするのではないですからね。仕事というのは、作業をしていたら作業興奮でドーパミンやノルアドレナリンが出て、モチベーションが高まってくるんです。

「やる気がある時は成果が出る、やる気がない時は成果がでない」ではダメで、やる気に関わらず初動を早めないといけないんです。そうすると、行動ハードルを下げなきゃいけないんです。

どこかのプロ野球球団の社長が「優勝なんか目指しません」と言っていましたよね。これは大正解です。優勝を目指しちゃうと、行動を起こしにくいからなんです。だって、下位のグループが優勝なんて目指したら、萎縮しちゃって練習に力が入らないですよ。

「日々の試合に力を入れていって、優勝が見えたら優勝を目指す」でいいじゃないですか。だから、初動を早くするんです。上位5パーセントのリーダーは作業効率が早いのではなくて、仕事を始める初動が早いんです。だからルーティンなどを持っているんです。

ルーティンとしてはこのメカニズムです。やらない理由を5秒で考えてしまうので、今日からは「モチベーションを高めてから作業する」という考え方をやめてください。「作業をしていたらモチベーションが上がる」というメカニズムがわかるだけで、初動は早くなります。

僕の責任だと思うのですが、知っていましたか? 日本で作られているPowerPoint資料のうち24パーセントのページが、上司およびお客さまに対する過剰な気遣いで作られています。これを「忖度資料」と言います。忖度資料を追跡調査したら、なんと8割がページをめくられてもいないんです。

使われない資料を作ってしまうんです。だから、こういうルールにしませんか。やる気に関わらず、パワポを作るのを次のように行動・ルール化するんです。

資料作成の目的は「伝えること」ではなく「伝わること」

越川:19,000人で実験をしました。終わったあとに「良かった?」と聞くのがフィードバックですよね。フィードフォワード(feed forward)とは、進捗20パーセントで「イメージは合っていますか?」と、1分聞くことです。

1分聞くと、「いやいや。この資料はそもそもいらないから」「5枚でいいよ」「データを入れて」と言われます。これを先に言うと、なんと差し戻しが74パーセント減るんです。

今の20代はすごく閉塞感を持っているのですが、差し戻しが89パーセント減るんです。1分間「今、ちょっといいですか? イメージは合っていますか?」と、上司やお客さまに聞くと、なんと差し戻しが74パーセント減少するんです。

営業のみなさん、おめでとうございます。成約率はプラス22パーセント高まります。お客さんと共に創っていくフェーズに変わるからです。今後は共感・共創ですから、共に感じて共に創っていくんです。すぐに実践できますので、明日からフィードフォワードをやってください。

アクション2が「妄想資料をなくす」です。ここが、僕が一番頭の痛いところです。(マイクロソフトを)辞めたから言いますが、PowerPointを使うことを目的にしないでください。さっき前田さんが言っていましたが、資料の目的は何かというと、「伝える」ではなく「伝わる」なんです。

コミュニケーションの目的は、「相手と共鳴して思いどおりに相手を動かすこと」だと思います。「相手にどう動いてほしいか」が設計されていないと、プレゼンテーションをしたあとに動かないですよね。社内で「わかりやすいスライドを作れ」と、よく言われませんか? わかりやすいスライドを科学分析してきました。

PowerPoint作成でやりがちな、NGパターン

越川:我々は暇なので、826名の意思決定者に「あなたの意思決定や行動を促した資料はどういうものですか?」と聞いて回り、PowerPointを5万ファイル集めたんです。人を動かすPowerPointと、人を動かさないPowerPoint。意思決定者に「わかりやすいスライドはどういうものですか?」と聞いたら、こう言っていました。

「要(要点)は何か?」、そして「これは記憶しておいたほうがいいか?」。10秒間でわかる資料がわかりやすいスライドだそうです。「何だろう? これはどういう意味かな。この色は……? このアイコンは……?」と、考える時間が10秒を超えてしまうと、わかりにくいんだそうです。

人間は、約6割の情報を目から前頭葉に入れます。だから、目で困らせてはいけないんです。特にテレワークで疲れるのは、目と腰と気持ちです。なので、目と気持ちを疲れさせないPowerPointを作らないと、オンラインでも伝わらないことがわかったんです。にもかかわらず、PowerPointを作ることが目的の官公庁がありますよね。どことは言いませんよ。

10秒間で「要は何か」を伝えることが大切です。では、試しにこの資料を10秒間見てください。どこに目がいくかです。視覚から入れますから、目線誘導です。

いいですよ、10秒間ニヤニヤしながら見てください。……はい、終わり! 頭の中に何が残っていますか? 頭の中に残っているものが「伝わったもの」です。

ほとんど伝わらないし、頭の中には入りません。(視聴者からのコメントで)「何も残っていません」「諦めました」。これは気持ちが疲れるというやつです。唯一言うと、「構成のソーラーパネル」ですね。画像アイコンは(頭に)残っているでしょ?

みなさん、「なんだよ。意外とダサいアイコンを使っているな」と思っているでしょ。アイコンは1スライドに4つ以内しか使っちゃいけないんです。

AI分析でわかったんです。目線誘導ができないので、オンラインだったら2つくらいにしてください。あとは色です。水色は頭の中に残っていませんか? 水色は、PowerPointで使っちゃいけない色なんです。

PowerPointの初期設定で、原色・鮮やか度の高い、高彩度の色が使う色になってしまっているんですが、そのまま使っちゃダメですよ。目が疲れますから、鮮やか度を下げてください。真っ青じゃなくてダークブルー、真っ赤じゃなくて小豆色です。

人間の視線の動きを把握し、目線誘導する資料作成を

越川:ちなみにこの中で「要は何か」というと、どこだと思いますか?(スライドの)この2行です。このスライドは1時間半かけて作ったそうです。絶対に目線はここには行かないですよね。「下線だと見てくれる」「赤文字だと見てくれる」というものを、妄想資料といいます。実際は見ないからです。

このようなことを言うと、お役所にお呼び立てされるんです。パワポの責任者だったということで、お役所にパソコンを持ち込んで5分15秒で作り直しました。では、どこに目がいくのか、10秒間見てください。

おそらくみなさんの目は、タイトルの「太陽光発電で安心と安定を」か、もしくはアイコンのこのへんに来ていませんか? これは僕がわざとやっているんです。PowerPointは目線がこう(対角線に)動くんです。Zじゃないですよ、対角線です。対角線の上にアイコンを置くと、必ず右を読みます。さらに興味を持つと、次のサポートを読みます。

さらに興味を持つと、「詳細は補足資料①へ」を読みます。これで事務次官が作った詳細資料をめくってくれるんです。なんと、78パーセントの聴講者がわざわざめくって見てくれました。これが人を動かす資料です。

AIは見つけました。「1スライド105文字、3色以内で対角線を意識して作ってやってみな!」と。9,000人に試したところ、なんと作成時間が2割減ったんです。にもかかわらず、オンラインプレゼンの商談成約率が22パーセント上がりました。これを「働き方改革」と呼びます。

労働時間の削減が働き方改革ではないですからね。短い時間で成果を残すこと(More with Less)ですから、妄想資料をやめましょう。

トップ5パーセントのリーダーは「偶然の出会い」を大切にする

越川:最後に「偶然の出会いを必然にする」です。「意外と良かった」を目指すのが、トップ5パーセントリーダーの特徴です。なぜかというと、ビジネスのチャンス、キャリアの成長の機会、転職は、すべて偶然の出会いから来ていませんか?

キャリア形成の7割が、偶然の出会いから来ると言われています。たまたま知り合いと会ってなにかを紹介してもらうとか。だって今日の機会なんて、編集者同士が仲良くてつながって、鎌利さんと対談したらこうなっちゃったんです。これは偶然の機会ですよね。

この偶然の機会が、コロナで分断されてしまっているんです。出社もしないし、出歩かないし、セミナーにも行かない。だから、この偶然の出会いを必然にしていかないといけないんです。そうしないと、ビジネスとキャリアのチャンスが潰れてしまうからです。

トップ5パーセントのリーダーは、これを習慣化しています。習慣化とはどういうことかというと、デジタル社会で歩き回る「デジタルさまよい」ですね。降ってくる情報は、バイアスがかかっているから都合のいい情報しか入ってこないので、意外と偶然の出会いがないんです。

そうではなくて、自ら踏み出して情報を取りにいくことです。デジタルの世界でも歩き回れますよね。このプレゼンテーション協会の(Webセミナーに)今後も出ていただきたいと思いますが、例えば、今日の「Eight ONAIR」のようにウェビナーやWebセミナーにみなさんは参加していますか?

ウェビナーに月2回以上参加していますか?(という質問に「参加している」と答えたのは)一般社員の方で21.2パーセントと、全体の5分の1です。みなさんは月に2回出ていますか? なんと、トップ5パーセントのリーダーは76.9パーセントと3倍以上です。

おもしろいのが、トップ5パーセントのリーダーはまず参加します。出てみて、おもしろくなかったら途中で退席するんです。それでいいじゃないですか。PDCAはもう古いから、これからはDCAです。「まずやってみる」(Do)、「振り返る」(Check)、「無駄だったらやめる」(Action)。DCA、いいじゃないですか。

人を動かすプレゼンテーションの極意

越川:良かったら続けて、ダメだったら元に戻す。自分から歩き出していかないと、特に20代はチャンスが来ないんです。20代は成長の機会がないですし、(リモートワークでは)「今、ちょっといいですか」と、上司に言えない状態です。なので、偶然の出会いを必然にするために、まずはみなさんがやりませんか? 

みなさんがやって、「SanSanのセミナーを受けたら、意外と良かったんだよね。2週間悩んでいたのが5分で解決したよ」と周りに言えば、「じゃあ僕も出てみようかな」と、触発の連鎖が広がっていきますよね。ぜひみなさんにこれをやっていただきたいなと思います。

みなさんにご質問です。「やる気をあてにしない」「妄想資料をなくす」「偶然の出会いを必然」にする。この3つを明日からやるとしたら、1、2、3のうち、どれをやりますか? チャットに1から3で入力をしていただければなと思います。……ありがとうございます。「どれか」と言っているのに、「1と2」。いいですね。

今日はドラレコを書いていただいているとのことで、若干、笑顔多めでしゃべっています。なぜこれを書いてもらったかわかりますか? これは宣言効果です。これを英語でコミットメント(commitment)と言います。プレゼンテーションで人を動かすためには、相手の運動記憶を使ったほうがいいんです。

「しゃべらせる」「書かせる」ですね。今、みなさんの前で書いて宣言しましたよね。絶対に明日やってくれます。これが人を動かす越川マジックです。どうですか、ちょっとはやってみたいと思いましたか? これが私のプレゼンテーションです。

最後に僕がもう1つお約束したことがあるのですが、覚えていますか。僕がプレゼンをする前にお約束したことです。一応、時間ピッタシで説明をするプレゼンテーションでしたので、秒単位で終わらせていただきたいと思います。

お約束を守りましたので、チャットに入力したことはぜひ明日からやってください。ということで、私のプレゼンテーションは終わりです。ご静聴ありがとうございます。

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