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岩田松雄氏 インタビュー(全1記事)

部下からの悪い報告に、上司が「ありがとう」と言えるかどうか 「自分でやったほうが早い」を脱し、若手を育てる権限委譲

2022年4月より成人年齢が18歳に引き下げられます。成人になることは、義務が追加されるだけでなく、権利が付与されることでもあります。ビジネスの現場でも次世代への権限委譲は新陳代謝やイノベーションには欠かせないことです。そこで本特集では、権限委譲を成功させている企業や組織論の専門家に、「権限委譲」の課題と具体的なノウハウをおうかがいします。 本記事では、スターバックスコーヒージャパン元CEOで、現在はリーダーシップコンサルティングの代表である岩田松雄氏のインタビューをお届けします。

「権限委譲」と「丸投げ」の違い

――昨今、権限移譲を進める風潮が高まってきていますが、「自分でやったほうが早い」「部下に任せると失敗するんじゃないか」と思われる上司も少なくないかと思います。権限移譲を進めていく上で、リーダー層の方はどのようなマインドを持つべきでしょうか。

岩田松雄氏(以下、岩田):まず、権限移譲と丸投げは違うということですね。全部任せるのが権限移譲だと思うのは間違いです。途中でフォローアップも何もせずに、納期になって「できたか?」と聞くのが丸投げですよね。

だいたい、「忙しいからやっといて」と言っているリーダー自身も、実は仕事の目的や意義をわかっていないことがよくあるんです。「とりあえずやっておいて」と言うんだけれども、まずは自分自身がわかっていなかったら、部下も当然わからないですよね。

権限移譲とは、任せても途中で報連相を求めることが必要だと思います。仕事のミッション、目的、意義をしっかり説明する。もしくは、相手がわかっているかどうかをちゃんと確認することが最初です。

もちろん、ある程度背伸びさせるのも大切なので、相手に少し負荷がかかるかなと思ってもわざとやってもらう。それができたら自信にもつながりますよね。でも、くどいですが丸投げしちゃダメですよ。上司がちゃんとフォローアップしなきゃダメです。権限委譲の目的には、部下の教育も含まれています。ですから、適宜相談に乗ったり、指導してあげないといけません。

部下も、「俺が任されたんだから、全部勝手にやればいいんだ」と考えるのではなく、その時々でしっかりこまめに報連相をするべきですよね。自分の裁量の範囲内で決められるものはいいけど、ある程度になった局面では、上司に「こういうふうにしたいんですけど、いかがですか?」と聞かないとダメです。

あと、上司が忙しそうで途中で聞ける雰囲気がなく、「結果だけよこせ」という場合。これは上司の問題だから部下は言いにくいんだけど、「この仕事の目的は何ですか?」「どこで・いつ・誰のために使うんですか?」と、しつこく聞いて確認することです。いわゆる5W1Hは聞かないと仕事ができないですよね。

本来は上司が言ってあげないといけないと思うんですが、聞く側の問題もあります。これをしっかりやらないから、権限移譲したほうもされたほうも困ってしまいます。

部下に権限を与えても、責任は上司が取らなければいけない

ーー権限委譲では、上司にも部下にもそれぞれ心掛けるべき点があるということですね。

岩田:また、「権限」を移譲してもいいけど「責任」は移譲しちゃダメですよね。これもまた、間違ってはいけないことです。(責任を取るのは)上司の仕事なんだから当たり前です。

一般的に権限移譲するメリットは、いちいち上司に聞かなくていいことで、物事のスピードが速くなることですよね。こういったことを通じて、部下の勉強になり育成につながるという、2つの面でメリットがあるわけです。

だけど、仕事の意味や意義をしっかり説明しなければ、間違ったことを一所懸命やってしまう。これほど馬鹿なことはないわけですよね。結果も出ないし、本人のやる気もなくなるし、勉強にもならない。これは上司の問題で、権限移譲することはとても難しいことです。

よく、部下が「もっと権限をください」と言うこともあります。上司としては「結果責任を負ってくれるんですか? あなたが責任を取れるんですか?」と言いたくなることもありますよね。(権限と責任は)セットの話なんだけど、いくら権限移譲をしても、もちろん基本的には上司が責任を取るべきですよ。部下の仕事にも責任を負うのが上司です。

もっと言えば、当然のことながら(上司も権限委譲する)相手は選びますよね。「こいつならできる」と思って任せるけど、ちょっとヤバいなと思ったら、「ここから先はきちんと聞いてね」「こまめに報告してね」とか。

こまめな「報連相」の要求が、部下のやりがいにもつながる

岩田:それから、「納期までに重要な資料が間に合わなかったら」「商談が失注してしまったら」など、うまくいかなかった時にどういう問題が起こるのかを部下に説明する。まずは目的・目標を作り、「うまくいったらどんないいことがあるのか」と「もしうまくいかなかったらどんな悪いことが起こるのか」を説明してあげる。ただ「やっとけ」と言われても、その仕事がどれぐらいの重要度かはわからないですよね。

ーー確かに、部下があとで「先に言ってほしかった」と思ってしまうのは、この部分の説明がないからですね。

岩田:何のためにやるのかによって報告書の精度も違ってきます。午後からのブレストで使う資料だったら、精度よりもスピードで早く出してほしいわけですよ。でも、役員会や社長プレゼンに出す資料は間違えたら困るので、当然何回もチェックをしないといけないわけですよね。

状況によっては作る側も変わるし、ちゃんと説明しておけば、気の利いた部下だったらプラスアルファの仕事もしてくれますよね。例えば役員会だったら、役員は年配の方が多いから資料の文字を大きめに作ろうとか、社外取締役がいるんだったら商品の説明や写真を入れておいたほうがいいかな、とか。

当然のことながら、「こんなに重要な資料を任されているんだ」というやりがいにもつながる。あとで「あの資料よかったよ。社長が褒めていたよ」と言われたら、任せられたほうもすごくうれしいじゃないですか。だからまずは、意義、目的、納期をしっかり伝えていくことです。

それから、報連相をこまめに求めることですね。いい部下は自分からちゃんと報連相してくれますが、上司があまりにも「できたか? できたか?」と聞くと、部下は信用されていないように思ってしまいます。

権限「以上」が必要な仕事を、部下に「移譲」してはいけない

ーーなるほど。部下とのコミュニケーションで、岩田さまご自身が工夫されていたことは何かありますか?

岩田:私が工夫していたのは、「何か困ったことない?」「何か手伝うことない?」と聞くことですね。

商談など、部下が何かしらの仕事をする時に、その人の権限「以上」が必要になることがあります。本人にやる気があっても、自分の権限ではできないこともあるわけですよね。上司がきちんとその部分をフォローしてあげないといけない。当たり前ですが、その上司の権限以上のことは、絶対に部下には委譲してはいけません。

例えば、他の部門の部長に(上司側が)根回しができていない時、担当者も他部署の部長にいきなり話はできないですよね。上司が相手の部長にきちんと根回ししておかないといけません。「○○くんから資料の請求あるけど、よろしくお願いします」と、一言言っておかないと部下は動けないですよね。

でも、根回しがないと「なんで担当者が直接、私のところに聞きに来るんだ」となりますよね。それは権限移譲していなくて、責任だけ押し付けているわけです。当たり前ですが、その上司の権限以上のことは絶対に部下には委譲してはいけません。責任が取れないからです。

もちろん、爽やかなしつこさで部下に進捗管理を尋ねること。部下が「順調です」と言ったらそれでいいんですよ。本来は、部下のほうから「○○の件、順調です」「納期より1日早くできそうです」と、連絡するべきです。「できません」「間に合いません」とか、困ったことや悪い話は早く言うように、ふだんから部下に徹底しておいた方が良いです。

部下の能力を超えているんだったら、その上のもうちょっとできる人に仕事をスイッチしようとしますよね。任せた人が新人だとしたら、「新人にはちょっと荷が重かったな」とかね。あるいは「同じような仕事を他の人に頼んだことがあった。あの人に聞いてみよう」とか。

部下からの悪い報告に、上司が「ありがとう」と言えるかどうか

岩田:その人を指名した上司の責任でもあるわけですから、できればあまりしたくないですが、場合によっては人を替える可能性もあります。ちょっと困るのは、「順調です」と言っているけど、順調じゃないこともあるんですよね。これは会社の雰囲気にもよるんですが、当たり前に悪い報告ってしにくいじゃないですか。

ーー部下からすると「怒られるんじゃないか」と思ってしまいますよね。報告してもらいやすくするには、どうすればいいのでしょうか。

岩田:大切なのは、悪い報告を受けた時に上司が「ありがとう」と言えるかどうかです。「よくぞ言ってくれたな。今だったら間に合う」とか。僕が使っている言葉は、「君ほどの人でもうまく行かなかったんだね」。本当にちょっとした言葉の差ですが、この言い方をしてあげると、本人のプライドを傷付けずに「君のことは信頼しているから、それほど仕事が難しかった」というニュアンスも伝えられます。

人・物・金を動かせるのは上司ですよね。権限のない担当者はなかなかそれらを動かせないです。だから権限移譲して終わりじゃなくて、いろいろなフォローアップをすることがとても大切です。

著書『ミッション』に、「本質において一致、行動において自由、すべてにおいて信頼」という、私の好きな旧カトリック教会のスローガンを書きました。こういう組織になっていくことが理想的だと思います。

本質、つまり会社のミッションはよく理解して共有しているけれど、やり方はある程度任せる。前提は、お互いに信頼関係を持っていること。

社長として、私は「上司に悪い報告をしても叱られない組織」を目指していました。「あいつだったらうまくできる」、あるいは「一所懸命やっていてもできない」ということは、仕事の与え方が間違っていたり、仕事のサイズが大き過ぎたということなんです。こんな信頼関係のある組織が理想でしょうね。

仕事の属人化を防ぐためにも、マニュアル作成は欠かせない

――裁量を持って若手が仕事をすることでモチベーションが上がったり、人材育成にもつながると思いますが、慣れない中で仕事をするのは不安も伴うと思います。権限移譲がうまくいく企業は、どんな体制作りをしているのでしょうか?

岩田:私もいろんな企業を見てきていますが、特にベンチャー企業は人の移動が激しく、担当がどんどん変わったり、事業が成長して新しい人がどんどん入ってきたりと、組織が揺れ動いていますよね。そこで大切なのは、マニュアルを作ることです。

もちろん、まったく新しい仕事もあるとは思いますが、次の担当者のためにちゃんとマニュアルとして記録に残しておくことが重要です。ベンチャー企業の場合、ほとんどマニュアルが揃ってなくて、とても属人的な仕事の仕方をしています。人が代わるたびに、また次の人に一から同じ話をして、また試行錯誤を繰り返すわけですよね。

日産時代のある時期、私はいい上司に恵まれたのですが、「とにかく、何かあったらすぐマニュアルを作れ」と言われていました。マニュアルをまとめること自体もすごく勉強になります。だから、権限移譲の前提はマニュアルがあることですね。

スターバックスではアルバイトに70時間の研修をしています。私は社長として入社しましたが、最初はアルバイトの人に混じって同じ研修を受けました。実際に教えてくれた講師は、トレーニングのプロでも店長クラスでもなくて、お店で言えばナンバー2、ナンバー3ぐらいの人でした。

研修を聞いていてもたどたどしく「大丈夫かな」と非常に心配でした。しかし教育研修のマニュアルがしっかりできているから、教える経験がなくても(研修が)可能なのですね。

スターバックスにはサービスマニュアルはないのですが、オペレーションマニュアルは細かくしっかり決まっています。あまり人に教えた経験のないような人でも、マニュアルどおりに教えればば、最低限のことはちゃんと伝わります。

マニュアルがないと、(属人化して)教育レベルに差が出てしまいますよね。それはやっぱり、会社として困るわけです。マニュアルがしっかりしているから、最低限そのとおりにやっていけば、新人のアルバイトの人たちにも伝わる。だからお店のナンバー2やナンバー3という、研修のプロではない人でも教えられるのです。

たとえ面倒くさくても、マニュアルを残す文化を定着させる

――仕事をうまく引き継げない理由として、マニュアルがないことで「丸投げ」状態に陥りやすくなっているのかなと感じました。

岩田:日本の大企業は時間をかけて大きくなっているので、その中で経験や学びを残すために報告書を求めたり、マニュアルやルール作りをしています。ただ、行き過ぎて報告書やマニュアル作りが目的になって時間をとられてしまうといけませんが、いい会社はマニュアルや教える文化がしっかりあります。

やっぱり上司は忙しいから、(仕事のノウハウ全部は)説明できないわけですよ。だけどマニュアルがあったら、「それを読んでおいて、わからなかったら聞いてね」と言えるでしょう。特に今みたいにコロナ禍でリモートワークだと、なおさら簡単に上司に聞けないですよね。

部下が報告書としてきちんとして記録に残して、それをまとめればマニュアルになるわけです。単にできた・できなかったじゃなくて、何がうまくいって何ができなかったか、やる手順はどうだったかを記録してもらえば、本人の勉強にもなるし、会社の知的財産として残っていきます。

私が日産にいた時は、生産性向上やTQC(全社的品質管理)活動をやるような部署だったので、徹底的に鍛えられました。いろろなプロジェクトでは報告書を求められ、何枚か同じようなプロジェクトが溜まってくるとそれを元にマニュアル作成したり、今までのマニュアルの改訂を求められました。

マニュアルのとおりやるんだけど、当然何かが足りなかったり、自分の工夫を付け加えて(アップデートして)いきますよね。「岩田バージョン」みたいに、マニュアルをどんどん改定してより良いものになっていく。そうすると、それが会社のノウハウとして知的財産になるわけですね。

人が変わっても、新人が入ってきても、最低限のことはできる。もしくは、上司が手取り足取り教えることの代わりになる。安心して仕事を任せて権限移譲もできるわけです。

ベンチャー企業などは人が入れ替わりますから、ある意味そのへんは外資系に近いかもしれません。だからこそ、マニュアルが必要なんです。マニュアルや報告書を作ったりするのは面倒くさいでしょ。でも、「マニュアルをしっかり残していく」という文化を社内で作っていくのが一番大切だと思います。

マニュアルもない状態で権限委譲するのはNG

ーー情報共有が苦手な人も多いと思うのですが、どのように組織風土を作ることが望ましいのでしょうか?

岩田:報告書を書くとか、マニュアルを作るのはその一環ですよね。官僚的な意味で、「報告書をいっぱい書け」ということではなくて、体裁はどうでもいいし、備忘録的でいいから書く癖をつける。あるいは報告書やマニュアルのフォーマットをしっかり作っておけば、時間がかなり節約できます。

報告書を書く意味は、本人の仕事の整理ができることと、記録に残ることですよね。それを何枚か足せばマニュアルになっていきます。「どうして失敗したか」「どうしてお客さまを怒らせたか」を書いておけば、同じ失敗をしないで済みます。

そして、マニュアルは作って終わりじゃなくて改訂していく。必ず次の人が改定する責任があるというカルチャーを作ることですね。その場はめんどくさいかもしれないけど、結果的にみんなが楽になっていきますし、会社のノウハウになっていきます。

ちょっと話が戻りますが、スターバックスの新人研修のように、例えば受講生が10人と1人の講師がいましたと。その中で一番学べるのは「教えている人」です。みなさんもご経験があると思いますし、私も経験がありますが、基本的に受講生は話が右から左へ流れていきますが、教えるほうはそうはいきませんよね。まず、事前にいろいろ調べます。自分が内容をきちんと理解していないと、質問にも答えられないですから。

私は今、ビジネススクールで教えていますが、自分が学生としてビジネススクールに行った時にケーススタディなどを3時間予習していたとしたとして、今度は教える側になったら、その3倍は準備しますよ。だって、いろんな角度から質問が飛んでくるかもしれないので、聞かれて恥をかきたくないじゃないですか。人は教える時に一番学ぶんですね。

ある意味では、マニュアルを作る時にも学べます。だって、なんとなくわかっていることを文字に落としたら、全部確認しないといけない。また、マニュアルを作ることを前提にしていたら、仕事そのものへの真剣味が違ってきます。適当にお茶を濁すわけにはいきません。

権限委譲の美名の下に、目的や意義も聞かされず、ましてマニュアルもないのに丸投げしたらだめです。例えばいきなり太平洋にボンと放り込まれて「お前、泳げ」と言われても、どっちを向いて泳げばいいのか、泳ぎ方も教えてもらってない。最低限「太陽のほうを向いて、浮き輪に捕まって泳げ」というのがないと無理ですよね。

「自分でやったほうが早い」では、いつまでも部下は育たない

岩田:「だったら自分でやったほうが早い」という話になってしまうんですが、リーダーは実績を上げることと人を育てることが大切な仕事です。誰かを教育して任せることによって、その時間より大きな仕事ができるはずなんですね。いつまでも担当者の仕事をやってるのは、会社としても困るわけです。

「船長は血が出るほど唇を噛む」という言葉があるんですが、簡単に教えちゃうと学ばないんですよね。ある程度任せて、我慢もしなきゃいけない。まさしく教育ですよね。あとは教育の観点からすると、答えをすぐに言わずにヒントを与えることですかね。

ーー部下に仕事を任せる上で、信頼関係の構築は欠かせないということですね。そういったチームワークを醸成するには、どんな取り組みが有効でしょうか?

岩田:権限移譲は一部分であって、さっき言った組織の文化やマニュアルの有無も含めての話です。もっと言えば、評価の仕組みまで入ってくるわけですよね。当たり前ですが、部下の仕事の責任は上司が取るべきです。

文化を作っていく方法、信頼関係を作る方法は簡単ではなく、さまざまなことの積み重ねで醸成されていくと思います。僕は『ミッション』という本を書いていますが、組織はまずミッションをしっかり共有しないといけないと思います。

ミッション、つまり「自分たちは何のために存在しているのか?」。次にビジョン。自分たちの向かっている方向を示し、自分たちの価値観である行動指針(Value)もしっかり会社として示し、全員に徹底しないといけません。

例えば、ある10人の部隊が戦争でジャングルの中に行きましたと。相手の敵地を攻撃する時に、いちいち防衛省の本部に「こっちを右に行ったらいいですか? 左に行ったらいいですか?」とは聞けないです。だけど、「あの敵地を攻撃する」というミッションをある程度共有していて、そこを絶対に間違わなければ、やり方については部隊長に任せざるを得ない。

ビジョンやミッションは、各企業における“最高法規”

岩田:例えば、お客さまのところへ行って突発的なことが起こった時。もちろん、本来は上司や本部に聞けばいいんだけど、経験もないし、いつも上司がいるとは限らないわけです。その時に「お客さま第一だ」というミッションが共有されていれば、まずはお客さまのことを心配して、「お客さまの立場で考えてみよう」となります。

「お客さま第一」というミッションをちゃんと共有しておけば、真っ先に取れる行動は自ずと決まってきます。まずお客さまを心配していれば、「こちらの責任ではない」「契約書には書かれていない」という言葉よりも、まずは「大丈夫ですか? 申し訳ありません」という言葉が出てきます。それなら、お客さまからもクレームにならないんですよね。

良い会社には、必ずミッションやビジョンや行動指針(Value)がはっきり明記されています。それを共有して目指せばいいんですよ。部下がミッションやバリューに従って行動している時に、上司が文句を言うのはおかしいですが、実際そういうことはよくあるんですよね。

私は社長だから、もちろん指示や命令することもあるけれども、私の上にさらにミッションがあるんです。社長といえども、ミッションに従った行動をしてないんだったら言ってくれということですよね。だってそれはもう、(企業内での)最高法規のようなものですから。

もし上司がミッションに反するようなことを言ったら、「だってこう書いてあるでしょう」と言い返せばいいと思います。最高法規がミッションであるべきです。ただ、上司と部下は見ている視点が違います。広い視点なり遠くの時間軸を見ていたり、いろんな経験があったりしますからね。一見ミッションに従っていない判断でも、もっと広く高い観点から物事を見て、ミッションに従った判断をしているかもしれません。

ーー権限委譲を行う前に、まずは組織風土を整えること。そして、権限は移譲しても責任は上司がしっかりと取ること。それからマニュアル作成の重要性など、権限委譲が「丸投げ」にならないためのヒントがたくさんありました。岩田さん、本日はありがとうございました。

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