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カルチャーで突破するDX推進 ~創業135年カクイチが実現したDX改革の舞台裏~(全3記事)

いかにして、創業135年の保守的な中堅企業はDXを推進したか 目指したのは「デジタル化」でなく「感謝体質の組織」?

新たな価値の創造、働き方改革、そして企業の競争力向上のために「デジタルトランスフォーメーション」(DX)の推進が経営戦略の1つとされ、多くの企業がDX推進に取り組んでいる、昨今。しかし「デジタルツールを導入したいが、現場から大きな反発があり進まない」「他部署からの協力が得らず、DX推進担当部署が動きづらい」といった悩みを持つ、経営者やDX推進担当者の方も多いのではないでしょうか。そこで、創業135年の歴史を持ちながら、小売・問屋・メーカー・海外進出・販売・サービス業と、異分野への果敢な事業展開でイノベーションを起こし続けている株式会社カクイチ代表取締役社長の田中離有氏が登壇されたウェビナー「カルチャーで突破するDX推進 ~創業135年カクイチが実現したDX改革の舞台裏~」の模様を公開します。

DX推進がうまくいかない組織には、どんな特徴がある?

横山真介氏(以下、横山):みなさん、おはようございます。本日の進行を務めます、Uniposウェビナー事務局の横山と申します。よろしくお願いします。

本日のテーマは「DX推進」。DXを進める上で組織風土がいかに重要か? こちらについて、ゲストのプレゼンテーションとディスカッションを通して深堀りしていきますので、ぜひ最後までお聞きください。

ではさっそくゲストをお招きします。株式会社カクイチ代表取締役社長の田中離有さんです。よろしくお願いします。

田中離有氏(以下、田中離有):よろしくお願いします。

横山:本日はもう1名、モデレーターとしてUnipos代表の田中(弦)も参加させていただきます。弦さん、よろしくお願いします。

田中弦氏(以下、田中弦):よろしくお願いします。

横山:ではさっそく、ウォーミングアップを兼ねてみなさんに質問をさせていただきます。「DX推進がうまくいかない組織には、どのような特徴があると思いますか?」ぜひチャットにご回答をお願いします。

横山:(コメントを指して)続々と来ていますね、ありがとうございます。「手段と目的が逆転している組織」「トップダウン」などのご回答をいただいています。(カクイチの)田中社長、何かチャット欄で気になるコメントはありますか? 

田中離有:やはり「経営者の理解がない」というのが、非常に刺さりますね(笑)。あとは今日の話につながると思いますが「手段と目的の関係」ですね。

横山:ありがとうございます。弦さんはいかがですか?

田中弦:そうですね。やっぱり「(DXが)目的化しちゃっている」というのが気になりますよね。(こういう声が)続々集まっているということは「(DXが)なかなか進まない」と、みなさん感じられているのかなと思いました。

田中離有:何をもって「進む」と感じるんですかね? 

田中弦:やっぱり「変わった」という実感ですかね。

田中離有:実感か。うちは他人から言われて「あぁ、進んでいるんだ」と気づけたんです。(自分たちでは)わかっていなかったというか。

田中弦:なるほど。

横山:確かにそうですね。コメントを見ていると「経営層」と「推進する方」との関係性やコミュニケーションのところに、進まない要因がある。こんなふうに感じている方が多いようにお見受けしました。みなさん、たくさんのチャットをありがとうございます。

さて、ここで「DX推進」について、2021年11月にUniposで調査を行いましたので、その結果について共有します。

こちらは「DXが『成功した要因』と『失敗した要因』について、どのようなものがありましたか?」というアンケートでした。

横山:「DXが成功した要因」については「変化に対して前向きな風土があった」とあり、一方で「失敗した要因」の3位では、反対に「(変化に対して)後ろ向きの風土があった」という意見があります。

やはりDX推進する上で「組織風土」がいかに重要であるかということが、こういった調査からも見えてきていますね。

本日はその「DX推進と組織風土の関係性」について、田中社長をゲストにお迎えして読み解いていきたいと思います。それではお待たせいたしました。株式会社カクイチ田中社長、プレゼンをお願いします。

「DX無理じゃん!!」という5つの条件が揃っている、カクイチ

田中離有:本日は「ダブル田中」ということで、よろしくお願いします(笑)。

タイトルは「カルチャーで突破するDX推進」。我々が実現したDX改革の舞台裏として、ちょっと裏側の話もできたらと思っております。まずは自己紹介です。田中離有と申します。株式会社カクイチの5代目社長になります。

実際に「Unipos」と「Slack」を導入したのは3年前で、実は(最初は)よくわからずに使い始めました。でも、今は企業変革・事業変革に取り組むことが、私の主な仕事となっております。

奥さんは1人。普通は1人しかいませんね(笑)。娘が2人、犬がメス2匹ということで、会社では威張っていますけど、家では女性に囲まれて肩身が狭いです(笑)。やっぱり女性との会話が大事だと思っています。

(スライドを指して)下に車が映っていますけど、趣味は旧車いじりです。壊れているものを直すのが好きなんです。とにかく夢中になって楽しむことが好きです。来年(2022年)で還暦になる、59歳です。去年あたりから髭を生やして“ちょい悪おやじ”を目指していますが、どうしても宮崎駿とか“良いおやじ”になっちゃって。あとちょっと悪いおやじでは……槇原敬之とかに寄っちゃって、ちょっと失敗しています(笑)。

DXは手段なので「何かをトランスフォーメーションさせるためにやれば良い」と私は思っています。まったく「DX化を目的にはしていない」んですね。

先ほど少し触れましたが、(スライドを指して)こちらが当社の概要です。創業135年、古い体質の会社です。売り上げは本体215億円、グループ350億円。9部門で長年やっていて、ガレージとかホースとか太陽光とか、いろんな事業があります。

工場を4つ、営業拠点が100ヶ所ぐらいあります。社員が本体で250人、全体で550人ぐらい、平均が46歳。いわゆる典型的な日本の中堅企業です。

製造業を持っていますので、やはり保守的になるんですね。ものごとを作るのに品質が大事になりますから、情報に対してもオープンにはならない。

それから事業が多角化されているので、製造業、建築業、ホテル業があり、業務が非常に煩雑になっています。もう、アナログで処理しているという会社です。全国に拠点が分散されていますので、1ヶ所の本社に100人いるような会社ではありません。

ですからコミュニケーションは月1回集まって行う会議が中心でしたので、コミュニケーションに課題がありました。それから平均年齢が46歳と、非常に高い。年功序列というか、居心地が良いので社員がなかなか辞めないというのもあるかもしれません。

(このように、DXが難しくなるような)5つの条件が揃っているので「DX無理じゃん!!」という状況です。それをなんとか、DXが“できているか?”は別にして、そういう方向に向かっている会社です。

導入当時はDXの「デ」の字もなかった

田中離有:Unipos導入のきっかけは3年前。ヒューマンリソース分野のデータサイエンティストの人が「社員のモチベーションが見えますよ」と。「見えるの?」「本音がわかりますよ」と、何かよくわからない誘惑の声に誘われまして(導入しました)。それはそれとして、(当時は)コミュニケーションのかたちを変えたいなとは思っていました。

まさかコロナ禍になるとは思っていなかったので、デジタルツール(の導入)なんて考えていなかったんです。(でも)家族とのコミュニケーションではLINEなどいろんなものを使っているのに「なぜ社内ではメールなのかな?」という疑問があって、チャットがあったら良いなとは思っていましたね。

それから(社内風土としては)「言われたことを真面目にやる体質」でした。でも、事業変革するために「自ら積極的に考える、エネルギーの高い『感謝体質』」になってほしいと思っていました。

なので、導入当時はDXの「デ」の字もなくて、(導入の目的としては)「社内のカルチャーを変えたい」ということ。DXじゃなくて、カルチャー変容が目的だったんですね。カルチャーなんて簡単に変わらないので、やっぱり日々の会話とか環境を変えるしかないかなと。

そこで、まずは社内情報ツールを換えてみようと、UniposとSlackを(ほぼ)同時に入れたのが3年前です。Unipos導入時に特に重視したことは「情報をオープンにしよう」「見える化しよう」ということでした。

社員同士で何が起こっているのか。どんな会話があるのか。我々(経営層)も見ました。(その中での良い取り組みなどに)みんなも拍手をしたりすることも含め、(Unipos導入によって)全社員が文章を読むようになる。(このことによって情報が)だんだんオープンになるんですね。

重視したのは「ありがとう」を言う、感謝体質の組織になること

田中離有:それから、社員同士の絆を強くするためにいろんな手段を講じました。これは「Uniposをやればそれで良い」んじゃなくて、Unipos(でのコミュニケーション)が(自然と)起こるような環境を作るということですね。

例えばちょっとイベントをする。他の人をつなぐ。ただやれば良いということじゃなくて、ネットワークを構築するためには絆を強くすることだと思いました。

Uniposはインジケーターとしての(位置づけで)、それそのものが目的ではありません。(むしろ)インジケーターというより、オープン化されるので「わかっちゃう」ということもありますが。

それから重視したことは「ありがとう」を言う、感謝体質の組織になること。「何でも言って良いんだよ」「やってはいけないんじゃなくて、こうできるよね」といった、いわゆる心理的安全性を高めるような組織にしたい。

これが、Unipos導入時に考えていたことです。先ほども言いましたように、当初はDXしようとはまったく思っていなかったんですね。

(スライドを指して)ここには工場長が映っています。私は工場に対して「iPhoneを(製造)ラインの人まで全員に配って、UniposとSlackを導入しろ!」と言ったんです。

しかし、工場長は「そもそもスマホなんか触ったことがないんだから、安全第一の工場で事故が起きたらどうするんだ。作業中にスマホなんか見れないでしょ。(せめて)管理職までにしてくれ」と言う。

「そんなのだめだ! 命令だ、とにかくやれ」と。つまりそんなにスムーズにいったわけではないんですが、やっぱりUniposがツールとして浸透していきました。

DX云々より重要な「上の人が現場をちゃんと把握する」こと

田中離有:結果、実はUniposとSlackは予想を超えてあっという間に広がりました。よく考えると、(それまでは)黙々と作業をする人たちにとっては「ありがとう」を言いにくい環境だったんですね。作業中だと助けてもらっても、後からお礼が言えないこともあって。そこで、(Uniposなどを通じた)「ありがとう」のコミュニケーションが、実は簡単、そして楽しいと。

リアルな言葉だとちょっと照れ臭いけど、Uniposなら「ありがとう」が言えちゃうので、その気楽さによってどんどん浸透していきました。エッセンシャルワーカーといわれるサービス業をしているのに、感謝されにくい。そんな職場にいる人にとっては、実はこれが非常に大事なツールなんじゃないかと思います。

「ありがとうを言わない」というか「やってもらうのが当たり前」になっている。これが、工場で(Uniposが)バーッと広まった理由の1つです。(経営陣としては)とにかく情報がオープンになって見えるようになるので、現場を把握することができるようになりました。

例えば「カシメ機がライン上で止まっちゃった」と。それを(誰が助けてくれたのか、)社員同士のヘルプの状況がわかる。だからとにかく、役員は社員同士のやり取りを見るべきですね。これで現場のことがわかるんです。

ましてや、Uniposは生の感情のやり取りなので「あの時は助かった」「うれしかった」「なんか困っていたけど良かった」みたいなことが、感情(とともに)出てくる。ここがSlackとはちょっと違うんですね。やっぱり感情のメディアだと思います。

上司は人間関係や働く環境を把握することが大事で、そのことを何気なく「なんでそんなことを知ってるの?」と言われるくらい知っていなければいけないんですよ。だから「クレーム」でも「トラブル」でも「お祝い」でも「プライベート」でも「些細なやり取り」でも把握しておくことが大事です。

だからDX云々より「上の人は現場をちゃんと把握する」ということが重要で、SlackとUniposではそれができました。Slackは現場の細かい情報をいっぺんに共有できるスピード(感があります。一方、)Uniposは感情的な情報、やり取りをゆっくり見ることができると思っています。

三角型ネットワークの強化で強くする、社員同士の絆

田中離有:ポイントの2番目「とにかくオープン」の次は「社員同士の絆を強くする」ことを重視しました。絆を強くするなんて、そんなに簡単にはできないし、どうなのかと思ったんですけど、大切なのは「会話の数」じゃないかなと。要は会話を増やせば良いと。リアルでもデジタルでも増えれば絆ができると(思いました)。

感謝の量を倍増するために、推奨するアンバサダーを入れたりもしました。また、(感謝のコメントを)「貰った人」ではなく、積極的に「送った人」のランキングを社内で発表したりしました。また、リアルの活動を充実させて、(感謝を)送り合える関係を作ることも行いました。

「Uniposは(称賛を)貰ったら返しましょう」と(推奨したり)、会話数をいかに増やすかというところをポイントとして考えていました。私はUniposの良いところって、実は「拍手ができること」だと思っています。Slackは「1対多」になって、ともすれば、自分のやったことを書くだけの人もいるんですね。私どもは、Slackを導入する1ヶ月前にUniposを導入したんです。

なので「相手の投稿に拍手する」という文化がすでにあって、Slackのリアクション率も非常に高くなっています。要は「他人に興味を持つ」「人と人とのやり取りに共感する」ということを重視したんですね。

Uniposはもちろん、Slackでさえも、とにかく三角型会話になるように促しました。家族のように強いつながりの組織にしようとしたんです。家族のようなつながりというのは、(例えば、)私と娘の間で会話があまりなかったとしても、たまにLINEでスタンプを押してあげるだけでも良いと思うんですね。

お父さんがいない時でも「お父さんって、最近こうだよね」と話題にのぼれば(会話が)三角形になって、孤独にならないと言われています。なので、三角型ネットワークの強化によって社員同士の絆を強くしようと。そのためにUniposを使いました。

同じ部署の上司に毎日Uniposを送るのは苦痛というのか、無理

田中離有:また、感謝を増やすためには、どうすれば良いのか悩みました。1年ぐらい経ってから「毎月感謝をしなさい」と(各自に持ち分としてUniposの)ポイントが送られてくることに、違和感がある人もいるんじゃないか? と思うようになりました。実際に社内には、Uniposを使わない人もいるんですね。

それに対して、どうしたら良いのかなと考えまして「一度やめてみるか」という議論もしました。だけどそのまま自然放置していると、(Uniposを)やらない人はやらないし、不満体質の人は居心地が悪くなってくるんですね。結果としては(会社を)辞めてしまうかもしれない。

文化ですから自然に広がるようにしていくと、感謝体質の人(たち同士が)がつながって、広がっていくんですね。感謝は同質化しやすいので、自然に広がるようにしました。

会社としても、あまりどうこうやる必要はないと思いますし、自然に広がることが良いと思います。

気をつけたこととして、社員同士の絆を強めるために、異なる人同士をつなげるようにしました。実際に、同じ部署で、上司に毎日毎日Uniposを送るのは苦痛というのか、無理だと思います。

(そこで、)会社として社員同士をいかにつなげるか(ということに注力しました)。「同期会」「部活」「タスク」など、組織横断的な活動を通して、とにかく人と人とをつなげていく。

(人々は)感謝をしていると仲良くなりますし、何かの時に頼める関係ができてきます。知らない人でもUnipos上で名前が挙がることで、なんとなく組織の壁がなくなる。Uniposによって、こうした効果が出てきたんですね。

ですからインジケーターとして、Uniposがやっぱり役に立ちました。とにかく線がつながればつながるほど、組織力がアップすると思います。

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