2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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斉藤知明氏(以下、斉藤):安斎さん、ありがとうございました。では、ここからディスカッションのパートに入っていきます。(スライドを指して)このメカニズムの部分がすごく気になっていて。
斉藤:今まであったトップダウン式のファクトリー型から、ボトムアップ式のワークショップ型に変わってきているのって、なぜなんでしょうね? なんかちょっと不思議なところがあるんですよ。
そこまでボトムアップが希求されている理由って何なんだろう? と。ここがわからないままで、マネージャーも「やらなきゃいけない」「これが今のリーダーシップだから」と考えている面もあるのではないでしょうか。そもそも今、僕らがボトムアップ式・ワークショップ型に変わらないといけない理由って何なんですかね?
安斎勇樹氏(以下、安斎):ありがとうございます。そこはけっこう複層的なので、シンプルに捉えるのがちょっと難しいんです。まず1つは、経営戦略上の理由があると思っています。それが何かというと、さっきの企業のフェーズの話に近いんですね。
企業が成長していく過程で、最初は5人だったのが30人、50人になって、100人、300人、500人、1,000人になって。さらに大きくなっていくと1万人、2万人になっていく。このように成長していく中で「創造性をいかに発揮し続けられるか」が、やっぱりすごく課題になってくると思うんです。
そうすると明確に、300人から500人(に成長する)段階に(関して)、実際に企業の成長過程を段階的にみた論文があるんですが、けっこう戦略の転換ポイントがあるんです。
スタートアップでいったら、1つ目の事業がPMF、つまり市場にフィットしてスケールして、それがグワーっと伸びて。例えば100億円いって、IPOしていっていった時に「次の手どうする?」となる。
今までは「サービス名=アイデンティティ、会社名」だった。でも次の新規事業を立てようとする時、(今までのサービスと)遠いことをやると「なんでうちの会社はあんなことをやっているんだ?」となる。
近すぎることをやっても「事業が多角化していけない」と言われるので、そこでいったん企業理念を問い直しながら、複数の事業に多角的に展開していく(必要性が出てきます)。そうしないと「この事業が折れたら俺たち終わっちゃうよね」となるので、事業を分散していくフェーズが出てくるんですよね。
そのフェーズで、だいたい採用する人も劇的に多様な人を採用するようになり、そうすると評価制度も変えなきゃいけない。今まではシンプルに、例えばエンジニアがめっちゃ評価されれば良かったんだけど、すごく多様な人が出てくるから、評価制度を変えなきゃいけなくなってくる。
するといよいよ「ダイバーシティを活かさないといけない」とか「わかり合えない」とか「個性を活かして自分がやりがいのある仕事をしたい」みたいな。もうちょっと一般的な、個人目線の理由とミートして、ちょっとボトムアップに多様性を活かしながら「みんなで理念を探求する会社」に切り替えていかなきゃいけない。そんなことが起きるんじゃないかなと思っていますね。
斉藤:今の世の中って「ダイバーシティやらなきゃ」「インクルージョンやらなきゃ」という傾向がありますよね。今の話を聞いて、それを手段の1つとして捉え直すと、すごく理解しやすいんだなと思いました。
経営上、そういうことが希求されてきているんですね。法人という組織において、僕らが変化して複線化していく中で、トップダウンだともう「お殿さま(経営者)」が全部考えないといけないんですよね。
それをきれいに(下・現場に)落としていかないといけない世界から、ちゃんと横に分けても同じミッションを達成できるようにしていかないといけない。そんな中で、一人ひとりの強みが活かされると。
あともう1つ、昔に比べて個の力が強くなったのも、もしかしたらあるのかなと感じていて。1人ができる仕事の幅がとても広がったと思うんですよ。今まで、例えばダイレクトメールを作るとか、メールマーケティングをするにしても、1人で全部することはできなかった。
今はメールツールを使えば、デザイン含め、もうワンクリックでできちゃう。1人の力の幅というか、裁量が増えたからこそ、それぞれが考える習慣をしないと(いけないし)。(それで)経営やリーダーが全部をコントロールすることができなくなってきているのかなという気がします。
安斎:それも非常にあると思いますね。スキル面やツール面、テクノロジーとかいろんな発達で、個の仕事の範囲がすごく広がったのもありますし。あとは、キャリア観もすごく変わってきていますよね。
やっぱり今は人生100年時代と言われて、種目が変わっちゃってるわけじゃないですか。300メートル走だったら「全力で走りきってもゴールテープを切れる」と思っていたけど、30キロ走ですって言われたら「ちょっとどっかで休まなきゃいけないな」というのと一緒で。
専門性を1つ獲得して、ポジションを得て走り切るみたいなキャリア戦略じゃなくなってきた時に、必然的に「自分は何者か」と考えるようになる。
かつ、こうやってリモートワークが広がると、家にいるアイデンティティ・時間が物理的にも広がってくる。そうすると、主語を「私」として考える時間がとりわけ多くなってきてると思うんですよね。
そうすると「何のために働くか」という問いが発生し、転職することも当たり前になっていく。個人の目線、キャリア観的にもそうしていかないと対応できない。魅力的な会社じゃないということも、当然あると思うんですけど。
斉藤:複層的とおっしゃっていたのはまさにそういうところですよね。個人のキャリアやスキル目線の話でもあり、会社としても、VUCAの時代にあって、企業のフェーズの変化にも対応しないといけないということなんでしょうね。
あらためて、経営層はそこを認めて、会社・チームを作る側としてやらざるを得ないぐらいの気持ちで向き合っていかなきゃいけない。
斉藤:ここで(ディスカッションの)1つ目の問いです。この時に、意見が出やすい、イノベーションを創出する組織を作るために、HR部門のリーダーや各チームのリーダーたちは、このワークショップ型ミドルマネジメントの中でどんな役割を担うべきなんでしょうか?
斉藤:「どうやったら僕らは、良いファシリテート型のチーム、ボトムアップ型のチームを作っていけるのでしょうか?」という問いかけ、質問に移っていきたいと思います。
「意見が出にくい問いかけを減らし、出やすい問いかけを増やす」ということ。これは、少し意地悪な言い方になるかもしれないですが、性善説だなって思ったんですよ。特に定石1の「こだわりを尊重する」。これってあえて嫌な言い方をすると「サボってんじゃないか」というマインドになってしまうこともあると思うんです。
「もしかしたら“窓際”みたいな人がいるんじゃないか?」と想像してしまうこともあるかもしれない。その時に、この人たちが奮起するために「問いかけ(だけ)で良いんだろうか?」って思いました。どう思われますか?
安斎:なるほど、ありがとうございます。良いご質問で、どこから答えていこうか、ちょっと悩ましいんですけど。まず前提として、具体的なところから整理していくと、問いかけがレバレッジで非常に重要だと思っていますが、フィードバックもまた重要であるのは否定していないんです。これはけっこう大事なポイントで。
上司が「部下の至らなさ」だけに光を全部当て続けている状態って、それはもう心理的安全性もなにもない状態で、芽が育たないと思うんですね。
中長期的に上司が部下をどうしたいのかというと、やっぱりその人の「スペシャリティが育って」「専門家として一人前になって」「マネジメントコストがないまま一人前になる」状況だと思うんですよ。
そこに育成するためにはフィードバック、(つまり)至らないところをちゃんと指導してあげることは、当然ながら重要です。けど他方で、やっぱりこだわりに光がまったく当たらなくなると。土が枯れてしまう。だから、そこにまずちゃんと光を当てましょうと。
その上で、フィードバックすべきことはちゃんと分けてフィードバックしましょう。ここがやっぱり大事なポイントなんだと思います。
安斎:そうすると、さきほど傾聴の話もありましたが、ミドルマネージャーの難しいところとして、ただ話を聞いてあげるだけではダメなんですね。
ファシリテーション型のミドルマネジメントの難しさに関して、スライドを出しますね。まず、みなさんがファシリテーターだとして、自分がどのタイプだか考えてみてほしいと思います。
コミュニケーションの場で「あー、わかるー。そうだよね」と感情的に話を受け止める「共感」することを軸にやっていくタイプなのか。「あー、なるほどね。ってことは、悩みはいろいろあるけど3つにまとめられる。こんな感じ?」みたいに「整理」してあげるタイプもいる。
そして、自分から「こうやったほうが良いよ」って言ってあげる「提案」タイプか、「いや、大丈夫だからさ。とりあえず次回のプロジェクトで最高のアウトプット出そうぜ」「そうっすね」みたいな感じにしていく、「触発」するタイプもある。
ファシリテーターをやっていこうとすると、このうちのどれかに分かれることが多いんですよ。
僕は「提案タイプ」ですし、うちのチームには「共感タイプ」の人もいます。難しいのは、ミドル起点のボトムアップファシリテーションをしようとすると、組織の理念とメンバーの景色をつなぎ合わせるために、両方(上【提案・触発】下【整理・共感】)の象限が必要になってくるんですよね。(スライドを指して)上の「組織主語・事業主語」と、下の「個人がどう思っているのか」(の両方が必要。)
下(個人・プロジェクト主語)に寄り過ぎちゃうと、めちゃめちゃ話を聞いてくれるんだけど、マネジメントのエラーがつぶせない。課題を解決できない。
左下(整理タイプ)だと「いつもすごく整理してくれるんだけど、あの人は何考えてるかわからない」って言われちゃう。上にいくと「なんかすごいトップダウンっぽいよね」となる。あるいは左上(提案タイプ)だと、メンバーをただの“howマシーン”にしてしまったりする。
うまいミドルファシリテーターがやっていることは、この4つの象限をすべてグルっと回すことなんですね。
「日々のコミュニケーションの中で、一人ひとりのことを問いかけて、話を共感的に受け止める」→「絡まっている課題・要件を正しく整理する」→他のマネージャーと連携したりアクションに落とし込みながら「ちゃんと組織や事業のことが考えられるように(アドバイス)する」→「視座上げする」ということです。
これがどちらかに寄っちゃうと「あの人めっちゃ話聞いてくれる時もあったのに、翌週マネージャー会議になったらすごいトップダウンになって、急に指示出してきた」と(言われてしまう)。二重人格になるみたいなことも、けっこうあるあるなんですね。ここがけっこうミドルマネージャーの難しいところだと思うんです。
「明日から何をやっていけば良いか」的な提案にしては、ちょっと難しい話になってしまいましたけれども。けっこうそこの両立は課題になるんじゃないかなと思います。
斉藤:なるほど。だから(安斎さんは)問いかけに焦点を当てられたんだなと思いまして。ファクトリー型組織は、多くのミドルマネージャーが、上から指示をしたり「こうやっていくべきだ」と話すことに慣れていたと思うんです。
自分自身もそういう経験をして育ってきたので、そこに対してある意味、知見も体得しているかもしれない。しかし、ワークショップ型に移っていくにあたって「WHYを考えるチームにしていく」ためには、フィードバックだけでは足りない。
なので「問いかけ」という武器が必要だよね、と。この2つを組み合わせることで「事業の目的」と「個人の目的」を接合させられるファシリテート型リーダーシップを発揮できるんじゃないか。だから今、ここ(ワークショップ型への移行)が必要なんだと認識をしました。
安斎:まさにそうだと思います。だから、完全にそっちの世界だけに行きたいわけではないんです。心理的安全性にしても「ぬるま湯を作りたいわけじゃない」と言われていますよね。
だけど、こっち(トップダウン式)に寄り過ぎていたから、(より意見を)言いやすくする。その結果として「正しく自己研鑽し、正しくお互いにバチバチできるような(環境)になるんだよ」ということだと思うんですよね。
斉藤:これは今日の講演では出されていないスライドですけど、まさにこの「ユサブリモード」の問いかけを、安斎さんは世の中に発信しているんだなという気持ちになりました。
安斎:そうですね。これは『問いかけの作法:チームの魅力と才能を引き出す技術』の第4章で書いています。問いかけには2種類ありまして、それらを使い分けてほしいんです。
1つ目は、相手の「こだわり」や「価値観」を深堀っていくモード。でも、相手がこだわりだと思っていることが、実は「明日の『とらわれ』」かもしれない。世の中にもいろんな固定観点、とらわれがあります。だから2つ目は、そこを揺さぶっていく問いかけです。この両方のパターンを使いこなしていくことが大事です。
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