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イノベーションを創出する組織づくり ―人と組織の創造性を高める問いかけの作法―(全4記事)

優秀な上司ほどしてしまう、部下の無能を責める「断罪の問い」 意見が出やすい組織を作る「問いかけ=懐中電灯」の考え方

変化が激しい現代社会においても成長し続けるために、組織変革や人材育成などを通じて、新たな競争優位性を確立することの重要性が増している、昨今。 しかし、これからの時代を生き抜くための、新たなイノベーションや挑戦の重要性を訴えても、あまり変化が起こらず「改革疲れ」に陥った企業も少なくありません。「組織が近眼的でイノベーションどころか、職場が変わらない」「競争優位性を確立するため組織変革に動いても、なかなか実現されない」といった悩みを持つ、人事担当者や管理職も多いのではないでしょうか。そこで、HRアワード2021最優秀賞を受賞した『問いのデザイン:創造的対話のファシリテーション』、また2021年12月の新刊『問いかけの作法:チームの魅力と才能を引き出す技術』の著者である、株式会社MIMIGURI代表取締役Co-CEO / 東京大学大学院 情報学環 特任助教の安斎勇樹氏が登壇したウェビナー「イノベーションを創出する組織づくり 人と組織の創造性を高める問いかけの作法」の模様を公開します。

人と組織の創造性を高める「問いかけの作法」

斉藤知明氏(以下、斉藤):みなさん、おはようございます。本日のUniposウェビナーは「イノベーションを創出する組織づくり 人と組織の創造性を高める問いかけの作法」について、安斎勇樹さんとお送りしていきます。

プログラムはこちら。今回はテーマとして「イノベーションを創出する組織」を掲げています。みなさんは、これについてどうお考えですか? せっかくお集まりいただいているので、まずこちらについてみなさんと一緒に考えていきたいと思います。

続いて、安斎さんから「イノベーションを創出する組織づくり 人と組織の創造性を高める問いかけの作法」をテーマにご講演いただいてからディスカッションに入っていき、最後にQ&Aにお答えする流れです。よろしくお願いします。

ではオープニングの前に、少し私の自己紹介をさせてください。Unipos株式会社でプロダクトの責任者、CTOをしている斉藤と申します。

在学時に英単語アプリで起業し、Uniposの前身であるFringe81に入社後、社内で「Unipos」という事業を立ち上げました。社名がFringe81からUniposに変わり、そこでプロダクトの責任者をしています。

自分自身も小さな組織から(スタートして、)今は150人ぐらいの組織のマネジメントをしています。また、Uniposを通していろんな会社の組織づくりのご支援をさせていただいています。本日はその観点からファシリテートを務めますので、よろしくお願いします。

では本日のゲスト、株式会社MIMIGURI代表取締役Co-CEO、東京大学大学院情報学環特任助教でいらっしゃいます、安斎勇樹さんです。よろしくお願いします。

安斎勇樹氏(以下、安斎):みなさんおはようございます。ご紹介いただきました安斎です。よろしくお願いいたします。

今2つ、肩書をご紹介いただきましたけれども、MIMIGURIという50人ぐらいの組織を経営しながら、研究者として「組織の創造性をどうやったら高められるのか」ということを研究しております。

特に「問いのデザイン」や「問いかけ」などを中心に研究しているので、今日はそんなお話ができればと思っています。よろしくお願いします。

意見が「出にくい組織」を作るなら、どんな問いかけをする?

斉藤:よろしくお願いします。ではさっそくオープニングといたしまして、みなさんに2つの問いかけをしていきます、ぜひチャットでコメントください。

まずはイノベーションの、もっと手前のところ。「自分はこうしたい」「こうあるべきだ」「こうやったほうが良いんじゃないか」などの一人ひとりの意見。こういう意見が「出にくい組織」を作るとしたら、どんな問いかけをしますか? あるいは、すでにしてしまっていますか? こちらについて、ぜひみなさんのご意見やご感想をお聞かせください。

斉藤:(コメントを指して)「すべての指示を言い切りにしたトップマネジメント」。こうなると、もう問いかけをしないってことですね。

「『○○じゃないか?』と、イエスかノーでしか答えにくい質問にする」、なるほど。イエス・ノーの後、その次を聞かないってことなんですかね。

「否定とノーリアクション」「上意下達で指示をする」「『何か意見ありますか?』は意見が出ない」。

続々といただいていますが、安斎さん。ここが気になるなとか、こういう声がすごいなとかありますか?

安斎:みなさん、すごいですね。なんか“名言集”みたいな感じのものを作りたいです。「何か間違っているか?」とか、絵とともに飾っておきたいくらいのダメな問いですよね(笑)。

斉藤:(安斎氏の著書)『問いかけの作法 チームの魅力と才能を引き出す技術(ディスカヴァー・トゥエンティワン)』実践編の、布令・政令で出せるかもしれないですね(笑)。

安斎:そうですね、BADパターン集に(笑)。

斉藤:「『さあやれ。ほらやれ。なんでやらないんだ?』と問い続ける」。それは問いというよりも詰め寄り続けるみたいな話ですよね。「基本のフィードバックがBAD or NOになってしまっている」。

「自分はこう考えてるけど、意見はあるか?」。これ、自分がまず意見を出すのが大事だという反面、先に答えらしきことを言われると、後から意見を出しづらいのも、確かに経験としてもあります。難しいですね。

「会議の人数規模が多すぎる」、そもそも問いかけの場が(大きすぎると)言いづらいですよね。「『これで良いよな?』の一言」「『これでいきます』という問いかけに対して、まず否定する」「上位者が発信しまくる」「漠然としすぎた問いを投げかける」。たくさんありますね。たまにギクッとしながら「こういうこと言ってしまったことあるかも」と思いながら、拝読をさせていただきました。

意見が「出やすい組織」を作るための、問いかけ・行動とは?

斉藤:では続いての問いです。先ほどは「意見が出にくい組織を作るとしたら?」という問いかけでしたが、次は逆です。今回の本題になりますが「意見が出やすい組織」を作るためには、どんな問いかけ・行動をすることができるでしょうか? どうしたら良いと思いますか? みなさんのご意見をおうかがいさせてください。

斉藤:(コメントを指して)「現場に意思決定権がある」「飲み会承認」「なんでも良いから話してごらん」「ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)マトリックスを利用した組織」「意見へのフィードバックをしてあげる」。なるほど、意見を否定するんじゃなくてフィードバックをする。

「笑顔を多くするためにはどうすると良いのか?」「みんなはどう思う?」「リアクションがある」「言ったことに対して丁寧にリアクションする」。「4、5人のグループで小さく話す」、先ほどの「大人数すぎる」の逆ですね。

「まずアイデアを10個メモしてみて」。10個という制限があって、それをまず「メモしてみて」っていうのは、(上長や同僚に)見られるとは限らないのでやりやすい。確かにできるかもしれないですね。おもしろい。

「笑いを含ませる」「最初のリアクションは肯定的」「まずは黙って聞く。じっくり聞く」「すべての意見を否定しない」「意見を出すことに対して、まずは『ありがとう』という組織」「山本五十六(やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば、人は動かじ)的な組織」。安斎さん、気になるところありますか?

安斎:どれもおもしろいです。「聞く」という言葉がやっぱり大きく出てきていますね。誰かがしゃべってる間、他の人はしゃべれないので「まず黙って聞く」ことですよね。これがすごくおもしろいなと思いました。

斉藤:そうですね。意見が出やすくなる「行動」の部分ですよね。どんな問いかけであれ、聞く。(質問者・問いかけた側は)しゃべらないという。

安斎:問いかけておいて、聞いてない場合がありますからね。

斉藤:「はいはいはいはい」っていう(笑)。

安斎:そうそう。気づかせるために問いかけて、もう意見は聞いていないみたいなこともありますから。

斉藤:もうそうなると「(上司が部下に)答え合わせしている問いかけ」ですよね。(そんな気持ちが)透けて見えて、一番萎えるやつですね。

「ファシリ-テータ-が上司ではない」「ふだんからフラットなコミュニケーションをとる」。問いかけのタイミングだけじゃなくて、ふだんからフラットなコミュニケーションをとることも大事ですよね。

あとは「部下から教えてもらうスタンスをとるのが重要ではないか」、そうですね。意見が出やすい問いかけというと、部下から上司、上司から部下の両方あるでしょうね。ありがとうございます。

続々とご意見をいただいています。「心理的安全性が確保できるか」「心理的安全性を伝えた上で意見を聞く」「ポストイット活用」。ありがとうございます。

「新入社員の時に『社会人は上下年齢関係なく良い意見を出したやつが偉い。新入社員も意見を出すことで貢献できる』と言われて、(自分の意見を)言わなければならないと思いました」。組織として、この価値観をちゃんと持っていることは大事ですね。ありがとうございます。

すべてのコメントを読み切ることはできませんでしたが、現時点で640人の方にご参加いただいて、たくさんのご意見をいただきました。

ではあらためて、今回の本題に入っていきます。「イノベーション」とは、言い換えると「創造性」です。「人と組織の創造性を高めるための、問いかけの作法」について、どうやったら創造性に富んだ意見が出てきやすいのか。結果的にイノベーションが起こってくるのか。今日はこれについて読み解いていきたいと思います。

斉藤:では、安斎さん。「イノベーションを創出する組織づくり」について、ご講演よろしくお願いします。

「どうすれば人と組織の創造性を高められるか」を研究する安斎氏

安斎:はい。あらためましてみなさん、おはようございます。600人以上の方が聞いてくださっていて、こんなにチャットが活発なウェビナーって、なかなかないです。さすが心理的安全性が高いUniposさんのウェビナーだなと思って、朝からテンションが上っています。

あらためて自己紹介をさせていただきます。先ほど紹介したとおり、企業の経営と研究活動を往復しながら「どうやったら人と組織の創造性を高められるか」について、ずっと研究をしております。

一番代表的な実績としては、2020年に『問いのデザイン:創造的対話のファシリテーション』という本を出版しました。読んでいただいた方がいらっしゃるとうれしいです。今は4万部を突破して、じわじわ売れてきている本です。

ちょうど今年(※イベント開催時の2021年)のHRアワードの書籍部門で最優秀賞をいただきまして。優秀賞に心理的安全性の本が2つ並んでいたので、そこで票が割れたから最優秀にしてもらえた説もあるんですけども(笑)。『問いのデザイン』が最優秀賞をいただくことができました。

「上流の『問い』をいかに立てるか」というところに、どんな問題も課題解決の成否がある。これについて、体系的に語ることにトライした実践書となっております。

HR担当の方はもちろんですが、組織の課題解決に関わるすべての方に読んでいただきたいと思っています。(コメントを指して)「読んで感動しました」と書いていただいている方、ありがとうございます。

続いて、今月(※イベント開催時の2021年12月)の23日に『問いかけの作法 チームの魅力と才能を引き出す技術』という本を出版予定になっておりますので、今日はこの本のエッセンスを一足先に、みなさんにご紹介できればと思っています。

こちらは『問いのデザイン』を、より現場レベルで実践的にしたものです。日々のミーティングや1on1での問いかけを、具体的にどう変えていくか。こうしたことを、体系的に書いた実践書になっております。

こちらは予約受付中(※イベント開催時。記事を公開している現在は発売中)なんですが、ありがたいことに予約段階で1万4,000部を突破しておりまして。大変反響を呼んでおりますので、ぜひご予約いただければと思います。

優秀なリーダーがハマってしまう「孤軍奮闘の悪循環」

安斎:今日は『問いかけの作法』の話をしていきたいと思います。最近、いろんなところで「お通夜ミーティング」っていう言葉を聞くようになっていて。Zoomでもオフラインでも良いんですけど、一生懸命に誰かが「さあ、なんか意見ないですか?」「この企画いかがでしょう?」「どなたでも!」「どうぞ! どうぞ!」って言っているんだけど、誰も意見言わないどころか、画面をミュートみたいな状態で。まさに“お通夜”みたいな状態ということがよくあると思うんですね。

そして、リーダー職の方とかマネージャーの方は「おいおい……」と思いながら、次の1on1で部下にお願いしちゃうんですね。「もう社会人だからさ、意見を1個ぐらい言ってよ」とか「なんでも良いから発言してよ」みたいな感じで、直接お願いして。(部下は)「はあ、わかりました。すみません」って言うんですけど、翌週の会議でも何も出てこない。

「あいつはもうダメだ。自分でやったほうが早い」と、優秀なリーダー・マネージャーほど自分ががんばったほうが良いという、僕が呼ぶところの「孤軍奮闘の悪循環」にハマっていくわけですね。

でも、この最初の「さあ、みなさんいかがですか?」という問いかけ。僕はここに問題があると思っているわけです。ここをもうちょっと気の利いた問いかけにする。例えば「1個だけどっか変えるとしたら、なんかありますか?」とか。

あるいは「お客さんの目線で考えた時に、気になるところはありますかね?」とか。あるいは「アイデアは来週聞かせてください。でも、今、頭の中にパッと浮かんだこと、なんでも良いんでチャットに書いてくれませんか?」とか。こう言われたら、出たりするじゃないですか。

これもやっぱり問いかけの力なんです。冒頭のチェックインで、斉藤さんが非常に良い問いかけをしてくださったので、チャットがあんなに活況になりましたよね。

「さあみなさん、なんかあったらチャットどうぞ!」と言って、200人ぐらい見てるはずなのに「無」みたいなこと、ウェビナーでもありますよね。「チャット壊れてんのかな?」みたいな時。

「なんか言ってください」じゃなくて「なにか言いたくなる問いかけをしていく」ことが、チームを好循環に回していくためのレバレッジポイントなんじゃないか。これが『問いかけの作法』という本の提案です。

やっぱり心理的安全性はすごく大事なんですが「心理的安全性が高くないから意見が出ないんだ」「心理的安全性が高ければ意見が出るんだ」。これは正しいんですけど「鶏(が先か)卵(が先か)」みたいな関係で、意見を出しやすい問いかけをしていくうちに心理的安全性が高くなるんですね。

これまさに「鶏・卵の関係」だと思っています。「うちは心理的安全性が低いからダメだったんだ」と言う前に、まずはそこに寄与するコミュニケーションや、状態を作っていく。そのために問いかけを変えていこう。そんなことをメッセージとして掲げてます。

「ファクトリー型組織」から「ワークショップ型組織」へ

安斎:今日、僕のキーノートスピーチは10分間ぐらいなので、ここから後半として、問いかけのエッセンスを少しだけご紹介しようと思います。いきなりテクニックに入る前に、まずなんでこんなこと(お通夜会議のような状態)が起きちゃうのか? っていうことを、ちょっとでも捉えておくことが重要です。

すごく乱暴にまとめると、ここ10~20年で組織の在り方が大きく変化しつつあると考えています。。これまでの組織の形態は「ファクトリー型」と呼ばれる経営起点のトップダウン型の組織が有効でしたが、これからはより現場起点・ミドル起点でボトムアップ型の「ワークショップ型」の組織に切り替えていく必要があるのではないかと感じています。

これまでは、創業者が見つけ出した問題を、上から「解け」「これをたくさん作れ」と現場に落とし込んで、現場がhowを磨いてきた。それをマネージャーが監督することが、今までの勝ちパターンで、会社が伸びていくパターンだったわけです。

でも、今はVUCAの時代と言われていて「単発の事業の選択」と「集中」がなかなか通用しなくなっている。ベンチャーの最初のステータスとして、1つ目の事業をスケールして掘っていくことはとても大事ですが、それが例えば300人から500人、1,000人になる規模では、事業はどうしても多角化してかなきゃいけない。そうなると必然的に数百人以上の組織は、右側(ワークショップ型)にどんどん切り替えていかなきゃいけないんですね。

もっと言うと、ベンチャーもいつでもワークショップ型に切り替えられるように、組織を少し柔軟にしながら1個目の事業を掘る。そんな戦略が求められてくると思っています。ファクトリー型の世界観では、効率的に分業して、上から設計図とやるべきことを落としていけば良かったんです。

一方でワークショップ型の世界では、一人ひとりが個性やこだわりを発揮して、チームでコミュニケーションしながら(進めていく。)大きい理念の中で、(それぞれ)何がやりたいのか、自分たちの目的を見つけていくようなコミュニケーションをしていかなきゃいけない。

開発の現場でも「ウォーターフォール型」から「アジャイル型」と言われていますが、こういう背景があるので心理的安全性が大事とされているわけです。

ある意味、こっち(ファクトリー型)だったら心理的安全性がなくてもできたんです。でも、こういうふうに切り替えていかなきゃいけなくなった中で「一人ひとりの個性をどう引き出すか」「どうやってコミュニケーションしやすくするか」などの問題が生まれている。

そういった背景の中、これまで数値を管理して指示すれば良かったマネージャーに「問いかけをして、マネジメントしていく」(必要性が出てきた)。現場から意見を引き出すことが、組織的に求められていく。

「問いかけ」とは、手に持った懐中電灯で「どこを照らすか?」

安斎:今日聞いていただいているみなさんに、ぜひ持ち帰ってほしい武器・ティップスを紹介しようと思いますが、その前に大事なことがありますので、心の中に思い浮かべてみてください。

「問いかけ」とは、どういうものか? これは「スポットライト」「懐中電灯」みたいなイメージを持っていただくと、問いかけを変えることがしやすくなると思います。問いかけとは、それがどんな問いだとしても、手に持っている懐中電灯みたいなもので「どこに照らすか?」。これが問いかけなんですね。

例えば「昨日の晩ごはんは何を食べました?」って僕が問いかけたら、みなさん、記憶をたぐり寄せますよね。さらに「みなさん先月・今月で、一番豊かだった食事って何ですか?」というライトを当てたら、「非常事態宣言が明けて久々に会えた、あいつとの食事かな」など、自分の価値観も含めながら経験を振り返るかもしれないですよね。

そんなふうに「どう光を当てるか?」によって、相手の中に浮かび上がる感情や景色、意見は変わってくる。これが問いかけの力です。

まず、ライトの当て方を変えるところから始めましょう。これが問いかけの“基本のキ”です。今日は4つだけパパッとティップスをご紹介します。このライトの当て方のうち、どれか刺さるものを1つでも、今日のお昼のミーティングなどで使っていただければなと思います。

まずは、すごくシンプルなんだけど意外にできないことです。1つ目は「相手のこだわりにちゃんと光を当ててください」というものです。

優秀な方ほど、部下が逸脱していることや、やっていないことをすぐ見つけられるので、もう探偵かのように「なんでこんなことしたの? 先週言ったよね?」と、相手の至らなさ、無能さに全光源をピカーッと当ててしまうんです。

自分の至らなさに光を当てられたら、相手はどうするか。もう「すみません」って謝るしかないんです。これは「断罪の問いかけ」ですね。

そうじゃなくて「先週言ったのにこんな企画書を作ってきたってことは、なんか他にやりたかったことがあるに違いない」って(気づいてあげる。その上で)「これ、何かトライしたかったことあるの?」と「何かやってみたかったこと」に光を当ててあげると。これだけでも、だいぶチームの風土が変わってくると思います。

2つ目は「光の広さ」ですね。むやみな自由さは、かえって思考を止めるという人間の特徴があるので「なんでも良いですよ」「なんかありますか?」「自由にどうぞ」と言われても、なかなか出てこないんですね。だから、例えば「いろいろアイデアがあるけど、今日はユーザーについて話しましょうか」みたいに範囲を狭めてあげる。

あとは、ちょっとした“とっかかり”を作る。「良いアイデアの前に、惜しかったボツネタって、なにか思い当たるのあります?」として、何でも答えられるきっかけを作ってあげる。

ちょうど良い光の範囲と光源で、答えたくなるように当ててみる

安斎:3つ目は「相手の口を重くする問いかけをしない」というもの。「先週に社長が発表した戦略について、何か意見ある人?」って聞いてみても、だいたい「あっ、大丈夫です」って返ってきますね。

そうじゃなくて。本当に意見がほしいんだったら、答えたくなる(問いかけをする。)「それだったら考えてみようかな」という(問いかけになるように)工夫する。これも大事なポイントです。

4つ目の「言葉遣いをちょっと変えてみる」というのも、とても大事ですね。やっぱり人はルーティンの中で思考が凝り固まっているので、いつもと同じ言葉で「はい、じゃあ質問ある人? 疑問がある人?」と言えば「またか」と思って誰も発言しない。

そこで、本当にちゃんと疑問を出してほしいんだったら「なんかプチモヤッとしたことがあるとしたら、何ですかね?」とか言ったら、ちょっと今日は考えてみようかなってなるかもしれない。

せっかくみなさんは問いかけのライトを持っているので、そのライトをなるべくその人の個性に、ちょうど良い光の範囲と光源で、かつ答えたくなるように当ててみる。いつもとちょっと違う角度で当ててみる。

そんな工夫をしてみるだけでも、意見の出やすさがすごく変わってくる。ぜひ実践していただけると良いと思います。短いですが、以上が僕のきっかけとしての話題提供となります。

繰り返しになりますが、ぜひ興味がありましたら『問いかけの作法』が絶賛予約受付中(※イベント開催時。記事を公開している現在は発売中)なので、ぜひご予約いただけるとうれしいです。いったん僕のキーノート、話題提供は以上になります。

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