2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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小山美紀氏(以下、小山):みなさま、お待たせいたしました。本日は「ビジネスの観点からSDGsを考えるセミナー」にご参加いただき、誠にありがとうございます。こちらのセッションでは「Look Good, Feel Good, Do Good ~オールバーズが描く未来~」をテーマに蓑輪さんからお話しを伺っていきたいと思います。私は本日司会進行を務めます、DMMオンラインイベント事業部の小山と申します。
近藤雄太郎氏(以下、近藤):同じくオンラインイベント事業部の近藤と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
小山:それでは、お待たせいたしました。ゲストをご紹介させていただきます。オールバーズ合同会社Marketing本部長、蓑輪光浩さんです。蓑輪さん、どうぞよろしくお願いいたします。
蓑輪光浩氏(以下、蓑輪):よろしくお願いします。オールバーズの蓑輪と申します。
ではさっそく始めたいと思います。40分間くらいですが、けっこう資料があるのでトントンといこうと思います。僕のプロフィールは簡単に飛ばそうかなと思いますが、基本的には外資系の会社が多いです。
NIKEで「NIKEiD」という、オンラインでカスタマイズできるプロジェクトを運営していたので、マーケティングとビジネスの立ち上げや運営などをやっていたのと、本社とリージョンとカントリーという、3つのレイヤーで働いたことがあります。そういう意味でも今日はマーケティング寄りになりますが、お話しさせていただければと思います。
蓑輪:まず、今日の一番のメイントピックに近いんですけど、我々オールバーズが大切にしていることを簡単にまとめてみました。我々は環境問題、ファッションが与えている気候変動のインパクトであるCO2の排出をなるべく削減したいと思っています。なので地球規模の問題を解決する強い意志を会社として持っています。
お客さまがみんな「サステナビリティだから」と買うわけではありません。やはり商品とサービスに正面に向き合って、我々でいうとすごく快適な、どこでも履いていける・着られるような、TPOをあまり選ばないような服や靴を、みなさんが買いやすい値段で提供する。商品とサービスに正面に向き合って、ちゃんとサステナビリティをど真ん中に置いているというところがあります。
デザインもそうなんですけど、メッセージも「シンプルに、正直に、透明に、素直に」。サステナビリティはわからないことがいっぱいあって複雑ですから、なるべく自分たちがわからないことを理解しながら、正直に行っています。
新しいイノベーションが起きないとブレークスルーしていかないので、今ある固定概念とか常識を疑って、いい意味で期待を裏切るようなことを常にしていこうと思います。なので真面目なメッセージだけじゃなくて、時にはふざけた感じもやります。固いメッセージだけじゃなくて、柔らかい感じのトーンで話しかけたりします。
あとは「競合から協業へ」とありますけど、パートナーシップをなるべく推進しようと思っています。どうしても本社の機能にいるとコンペティターマップ(競合マップ)がどうだとか、ライバルがどうだとか、そういうことを作りたがりますけど。実際にお店にいるスタッフにとっては我々がコンペティターだと思っているところも、同じテナントに入っている仲間なんです。
近々発売を予定されていますけど、adidasさんとのコラボレーションですとか、普段だったら考えづらいような同じような業種のところと一緒に、オープンに話し合って「競合」から「協業」していくことを推進しています。
蓑輪:それと「社内外に仲間をつくる」。やはり我々はサステナビリティがど真ん中で会社が起業された経緯があるんですけど、そうではない方々もたくさんいると思います。なので社内の方々が一番のメンターであったり、仲間であったり、時には一番のお客さんであったりとかするので、社内に仲間を作って話しかけていく。もちろんその周りにいるコミュニティとかメディアさんをすごく大事にします
「会話のきっかけを作る」というのは、すごく大事だなと思っていて。このサステナビリティの問題は非常に難しいので、少なくともみんなが気づいてアクションして、会話できるようなかたちを常に進めています。インスタは僕が「中の人」なんですけど、なるべくコメントがあったら返事したり、Twitterもタグ付けされていなくても返事しています。会話するようにしていますね。
「アクションする、小さく始める」。いきなり大きい規模のことを回すのはすごく大変だと思うので、まずは小さいところから始めていっても構わないと思っています。やらないことのほうが罪だと思うので、小さいことを常にアクションしています。
「最後は情熱と愛」と書いてありますけど、いかにチームメイトやお客さんの心を焚きつけるか、どうやったら仲間にしていった人たちを強力にしていくか。あまりみなさんに「これしてください」「あれしてください」とは言わないようにして、ある程度自由度を与えて任せる。それによって情熱が生まれる。地球にも人にも優しくしていくことを大事にしています。
蓑輪:オールバーズの創始者は2人いまして、2016年にサンフランシスコでスタートしました。日本では2020年の1月に原宿店をオープンして、今年は丸の内の中通りにオープンして、店舗は2店舗。世界中で35店舗あります。
あとはオンラインコマースをやっています。画面の左のTimさんという方が、ニュージーランド出身の元プロサッカー選手で、ニュージーランドを2010年ワールドカップ南アフリカ大会に導いた立役者です。
彼はプロのレベルですから、ずっとアスリートとして育ってきました。僕もNIKEにいたり、ユニクロでスポーツ事業をやっていたのでわかるんですけど、アスリートは比較的時間があるんです。
試合とか移動はすごく大変なんですけど、午前中は試合の練習をして、午後はお休みという人がけっこう多い。彼は「なんでこのピンク色のスパイクを履かなきゃいけないんだ」「なんでこの黄色い派手な靴を履かなきゃいけないんだ」と常に思っていて、なるべくシンプルなものを作って履いてみたいと考えていたんです。
なのでこの午後の時間を使って、自分でデザインして、Googleで工場を探して、プロトタイプのスニーカーを作って、チームメイトにこき下ろされながら販売して、どんどんリノベーションしていたらしんですよ。
それで引退してから、ロンドンのビジネススクールに行ってKickstarter(キックスターター:世界最大のクラウドファンディングサイト)にプロジェクトを立ち上げました。ニュージーランドは人口より羊のほうが多いですから、メリノウールでシューズを作るというのはなかなか難しかったのですが、それにチャレンジしてビジネスを立ち上げようを決意しました。
蓑輪:かたや右側のJoeyさんは、バイオテクノロジーの研究をされていたり、ビジネスの仕事をしていたり、金融系でコンサルタントとして働いていたりという方だったんですけど。10年前から20年前の話だと、どうしてもエコフレンドリーなマテリアル(原材料)を日本の商社に卸しても、まだ市場がそれを求めていなかったんですね。
せっかくいいものを作っても買ってくれない。だったら自分でやりたいなと思っていたらしいんですよね。この2人の奥さま同士が、大学の同じ寮のルームメイトだったんです。奥さま同士がキューピットになって、旦那さん同士を紹介したら意気投合して、2016年に起業となりました。
サンフランシスコはシリコンバレーと非常に近い影響か、スピード感がすごくありますし、フロンティアスピリットに溢れていて多様性もあります。いろんなアプリを使ったりしていて、例えばこの写真は会社の入り口なんですけど、裏のドアはアプリで開くようになっているんですね。なのでゲストの人も受付を通す必要がなくて、アプリをダウンロードしてコードを入れれば開きます。
そういういろんなものをテスト的に使ったりしている、チャレンジングな会社なんですけど、左右にある靴のデザインのように、我々はなるべくシンプルな靴を作っています。タイムマガジンさんに「世界一快適なシューズ」と紹介いただいた経緯で、シリコンバレーやハリウッドの方々、トップランナーの方から支持をいただき、レオナルド・ディカプリオさんに当初は投資家として我々のビジネスを支えていただきました。
立ち上げから4年経って原宿に店舗をオープンしたんですけど、2020年の各店舗の売上で、原宿が一番でした。サステナビリティについて「日本はどうなんだ」とよく言われるんですけど、結果的には日本が一番成績がよかったということです。これはニューヨークとかロンドンの観光客が減ったところも若干あるんですけど、とはいえ日本が一番です。
蓑輪:今日は私がいろんな会社で働いていくうちに感じたこと、オールバーズが大切にしているブランド戦略の内の、特に大事にしている8つのことを説明したいと思います。この8つの理解があって、細かい戦術が生まれてくるんじゃないかなと思っています。
1番目は、ミッションを大事にすること。会社の社訓とか、社長の言葉とか、受け継がれている伝統とか、会社のDNAとかがあると思います。その価値観を理解することからまず始めていく必要があり、これは一番大事な作業です。
2番目に、課題と背景の認識をしています。ブランドが解決すべき課題とか、業界の背景とか、社会情勢とか、お客さまの行動様式の変化とか。そういうことを認識していっています。
3番目に、共感できるビジョンを描きます。言葉にするのがすごく大事で、ブランドとかサービスとか、みなさんが行っているものがどう解釈されたいか、どんなビジョンをリーダーやチームが持つべきなのか、そういうのを明確にして言葉にします。あとで話しますが、僕はすごくコピーライターを大事にしています。
4番目が、目標設定です。達成したい目標やKPI、社会の目標や個人の目標など、みなさんの会社でもいろいろあると思います。デジタルのKPIはけっこういろいろ出てきますけど、僕はあまり信じていなくて。リファレンスとしては見ますけど、数字だけで人々の動きは計測できないと思っているので、KPIを立ててはいますがあまり信じてはいません。
5番目は、自己認識ですね。自分のポジションを明確にしています。どのような役割を果たすのか、どのような武器を会社やサービスが持っているのか、どこに競争優位があるのかを確認します。
6番目のターゲットは、どういうお客さまに届けるのか、社内の人も共通理解できるようなかたちにしていく。
7番目の「伝わり方の設計」は、コミュニケーションとかメディアとか、どんな社会情勢になっているのか、どう波に乗るかというのを考えています。
最後に「課題解決とアクション」。プレゼンを作っていてもだめなんです。実際に現場に行ってアクションしていくことがすごく大事だなと思っています。もちろん、9番目には書いていないですけど、検証して次につなげる作業もしていかなければなりません。
蓑輪:ミッションを理解する件について話そうかなと思います。オールバーズのミッションは「より良いことを、より良い方法で」と書いています。これは会社のホームページにも書いてありますけど、もしオールバーズを持っている方がいたら中敷きを抜いてみてください。中敷きの裏に印刷しています。
(ミッションは)どこの会社もある創業時から変わらないものだったり、変わっていくものだったりします。僕らはこれを北極星のようなものだと思っていて、到達できないけど目指すべき道だと思っています。
オールバーズが一番懸念しているのは、地球環境が気候変動によって壊れてしまうことです。だからなるべく環境負荷の低い素材や方法で、人々の生活に快適でLook Good, Feel Goodなものをお届けしたいと思っています。
なので、お客さまの意見はすごく聞きます。自分たちは完璧じゃないと思っていますし、SDGsのパートナーシップは非常に大事だと思っています。我々が全部の素材を新しく開発するわけではないんですけど、どうしても作らなきゃいけない素材はあります。
例えば今は「プラントレザー」を開発しています。植物性のものから作られた合成皮革です。オープンソースにして、いろんな人が使えるようにしています。我々の靴底のサトウキビからできている素材もオープンソースにしています。
オープンソースにするのは、インターネットの成り立ちと一緒です。昔は軍事用のネットワークだったものが、オープンになってイノベーションが起きて、20年くらいかけて今みんなが使えるようになったわけじゃないですか。
なので我々もオープンにすることによって、いろんな方に使っていただいて、結果的にはイノベーションが起きてコストも下がってくる。やはりオールバーズなんてシェアがめっちゃ小さいので、だからこそ自分が作ったものをみなさんに使っていただきたいと考えています。
蓑輪:我々が使ったサトウキビをベースにした靴底ですけど、(一般的なシューズの)靴底は石油からできているんですよね。石油から作ると安定して供給できますし、加工もしやすいし安い。これを植物性にすることによって、植物の光合成、二酸化炭素を吸って酸素を吐き出す。
どうしても作る時に二酸化炭素が出ますけど、その元になる素材に石油由来じゃないものを使う。それをオープンにしたことによって、今ティンバーランドさんとかUGGさんとか、それ以外の100以上の会社に、この素材を違う名前で使っていただいています。
サステナビリティについては、この17の目標と169のゴールがありますけど、10人いれば10人違う答えがありますし、ファッションの世界でいうと、ステラ・マッカートニーさんだけが昔からこういうことを言っていましたが、今ではどこの雑誌にもメディアさんにもサステナビリティと言っていますし、いろんな会社の方がSDGsを推進していると思います。
これは本当にイノベーションのチャンスだと思っています。インターネットが盛り上がってきた2000年の初頭くらいの雰囲気を今感じています。ただ、あまりサステナビリティを突き詰めていくと答えが見つからないので、自分らしいちょうどよさを見つけるのが大事かなと思っています。
これは去年Googleさんが行った調査です。ちょっとわかりづらいかもしれないんですけど、18歳から34歳までのお客さんの購買要因は、どういうことが中心になっているかということなんですけど、一番下の「サステナビリティ」は66%でプラス7と書かれています。この世代は他の世代に比べて「サステナビリティだから購入する」という意志が強く表れていると言われています。
日本で「GenZ(Z世代)」と呼ばれる方々は、バブルが弾けた後に生まれて、10代で東日本大震災とリーマンショックを経験して、20代でこのコロナを経験して、非常に社会に対してチャレンジングな時代に生まれてきました。なので彼らは、特にこの地球を、この世界をよくしたいという意志がすごく強い。我々もそれをひしひしと感じています。
オールバーズのことを調べていただくと、サステナビリティとか快適性とかいろいろ出てくると思うんですけど、「サステナビリティだから」では売れません。オーガニックの野菜も「おいしい」オーガニックの野菜だから食べるわけで、我々もいい商品をちゃんと作って、その上でサステナビリティになると、ベストなものになると信じています。
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