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宗次德二氏(全2記事)

ずっと右肩上がりで、社員の給料を上げ続けられるココイチ 創業者が「他店に追随した値下げ」を検討すらしなかった理由

さまざまな壁を乗り越えてきた各界のトップランナーによる、人生の特別講義を提供するイベント「Climbers(クライマーズ)2021 秋」。本記事ではカレーハウスCoCo壱番屋 創業者の宗次德二氏が登壇されたセッションの模様を公開します。

月に約3万通のアンケートは、100パーセント全部、真っ先に読む

舘野晴彦氏(以下、舘野):ココイチさんで有名なのは、(アンケートハガキがテーブルに置いてあって、)お客さまはメッセージなどを(書いていけるんですよね)。今は他のお店でも増えましたけれども。それをすごく丁寧に、1日にすごい数を読まれるわけですか?

宗次德二氏(以下、宗次):100パーセント全部、私が真っ先に拝見しました。

舘野:全部見るんですか?

宗次:ええ。あれはもうファンレターですから。

舘野:何百枚になっちゃったり。

宗次:当時、1日1,000通、月に約3万通。だいたい1日分を1枚ずつ読むのに、3時間ぐらいかかります。それはお叱りを受けようと、教えていただく(姿勢でいます)。「気に入らなかったことを教えてください」って。褒めていただくことはあまり価値がないと思っています。もうクレーム(が大切)です。クレームをいただくと「ラッキー。やったー」って、おわび状を書いて、その店にすぐ連絡しました。

舘野:おわび状も書くんですか。

宗次:そうですね。1日、これはざっとですが30~40枚ぐらいは書いていたと思います。

舘野:すごいな。

宗次:そのために朝4時台に会社へ行くんですから。

舘野:その時間を利用して書くんですね。

宗次:そうです。早朝は妨害が入らない時間なので。

お客からの「値下げすべき」という要望は、一切検討しなかった

舘野:なるほど。お客さんのクレーム、訴えというのはすごく細かいこともあるわけですよね?

宗次:ああ、もちろんそうですね。

舘野:例えばどんなことでしょうか?

宗次:私は最初から接客が一番重要(という考え)でやってきましたから、接客に関わることですね。「無視をされた」「忘れられた」とか。考えられないことが(書いて)あるんです。あとは商品のことだとか、いろいろです。

それとご要望ですね。でもご要望の中でも「値下げをすべきです。よそはやってます」っていうのは、一切検討しなかったです。「適正利益をいただいてもお客さまに喜ばれる商売をしよう」っていうことでやってましたから。

舘野:なるほど。そうすると、どんどん手応えがあって、お客さん(がいらして)繁盛していくってことですか?

宗次:それはそうですね。最初から繁盛しなくても1年、2年、3年と、期間の経過とともに積み上げていきますから。昨年対比で必ず上昇していきますね。

舘野:お客さまから反応をもらって、それに1つずつ丁寧に対応していく。すごくシンプルなことですよね。あえてうかがいますが、他の人たちはどうして宗次さんと同じことが(できないんでしょうか?)

宗次:やっぱり根気が要ります。私の場合は、現場第一主義で朝から晩までお店のこと、会社のことです。もったいなくて休みも取りませんから。休んでいる場合じゃない。その頃は経営がおもしろかったですね。もう打てば響くようにお客さまも、社員さんも応えてくれますからね。

だからずっと右肩上がりです。その結果、問題は何も発生しませんでした。社員さんの給料も上げ続けることができているしね。

舘野:みんなが幸せになるってことですね。

宗次:それしかないじゃないですかね。右肩上がり経営の良さでしょうね。だからトップである私は、朝から晩まで会社が発展するための方策を一生懸命に考える。自分も動く。そうする価値がありましたね。

300店舗目が開店する朝の、夫婦のやりとり

舘野:なるほど。こうやってお話をうかがっていても、(宗次さんは)すごくまろやか(なお人柄)で、マイルドな印象なんですけど、怒ったりは(されないのでしょうか?)

宗次:仕事ですから、社内ではあります。でも手や足は出ません。出ないタイプです。

舘野:出ないタイプ(笑)。

宗次:うちの奥さんは足が出るんです。

舘野:奥さんは足が出るんですか(笑)。それは言っちゃって大丈夫ですか?

宗次:大丈夫でしょう(笑)。よく話題になりました。主従(関係)ではないですからね。

舘野:やっぱりうかがっていると、奥さまの存在は相当(大きいですよね?)

宗次:もう絶対です。300店舗目が開店する朝に、「よくここまで来たな」ってしみじみと言ったんです。(その話の中で)「五分と五分だね」って私がちょっと言いましたら、「あんたなんか2割でしょ。8割は私でしょう?」と。

(会場笑)

舘野:ご自分が8割だと。

宗次:そうそう。だから、それ以来「9対1」にしています。

舘野:(笑)。

宗次:ココイチは本当、嫁さんの力なんです。

「100万円貯めたら結婚しても良いよ」

舘野:なるほど。先ほどお話にも少しありましたが、どういう出会いだったんでしょうか?

宗次:出会いはね、大手のプレハブメーカー、住宅メーカーに転職して、私は建築の勉強を(していました)。お客さまに土地を買っていただいたら、平面プランぐらい書けるようになりたいなと。それで朝早くから、7時台には会社へ行っていたんです。

私は寄せ集めの営業部隊で採用されて、唯一の正社員でまだ高校を出て1年半後ぐらいでした。(奥さんは当時、)いつも朝早くから来て、いろんな営業マンの「お茶を入れてくれ」「電話を取り次いでくれ」「郵便局へ行ってくれ」「たばこを買ってきてくれ」と、もういろんなことを(やっていて)(笑)。

舘野:特に女性の方だと、そういう時代ですよね。

宗次:それを全部気持ち良くやっているのを見ていて、「ああ、良い子だな」と思って、押しの一手でした。

舘野:宗次さんのほうから。

宗次:私は戸籍謄本を見ると実際の親もいないし、身内が1人もいませんからね。そりゃ心配しますよね。気楽で良いんですが。

舘野:奥さまは快く(受け入れてくださった)。

宗次:いやいや、相当悩んだのでしょうね。「100万円貯めたら(結婚)しても良いよ」って言ってくれて。営業をがんばって、半年で100万円貯めて結婚しました。相愛でしたからね。

舘野:じゃあそれ以来、お二人でいろいろ相談しながら、五分五分だか9:1だか(でやってこられたんですね)。

宗次:若いうちはけっこう仲良くやっていました。時とともにっていうのはありますけどね。余談ですが、今はまた(仲が)良いんですよ。(奥さんは)社交的で明るくて、とにかく自分にないものを持っていましたから。

舘野:ちょうどカップリングというか、相性が良かったんですね。

宗次:最高だと思いますね。よく言われます。

福利厚生と待遇をナンバーワンにしよう

舘野:仕事がどんどん右肩上がりですが、そうは言ってもその当時、(仕事以外で)何か楽しみにしていることや気晴らしは(あったんでしょうか?)

宗次:全部家族と一緒か社員と一緒です。「福利厚生は(漠然と地域の会社で)ナンバーワンにしよう」ってことでね、楽しいことだと、バスを買ったりいろんなことをしましたね。社員と一緒にバスでグルメツアーしたりして。

舘野:じゃあ社員のために、一緒に出掛けるためのバスまで購入されたんですね。

宗次:そうです。研修にも使えましたけど。福利厚生と待遇をナンバーワンにしようと、(他にも)オープンカーだとか、ワゴン車、キャンピングカー(も購入しました)。

ナンバーワンって他社と比較できるわけじゃないけども、(例えば、社員が)友人なんかと話をしていても、明らかに「自分の会社、ココイチが一番良い」って思っていただけるようなところまで持っていこうと思いました。

舘野:なるほど。

宗次:自分の中では、できたと思っていますね。(それは)非上場の時ですね。

舘野:なるほど。じゃあ社員の方々とも常にコミュニケーションを取って(いたんですね?)

宗次:コミュニケーションというか、私は背中で教えるタイプです。言って諭してっていうことは、あまりしない。

お店で社員が感情的な面で失礼なことをやったりすると、お客さまにも聞こえるように(注意するんです)。「今の場合はこうやってくれないとダメだよ」って。お客さまは、「そこまで注意してやっているのか。教育がしっかりしているな」(と思ってくださる)。逆にそう思っていただけるような叱り方をするんですね。

舘野:なるほど。その過程もちゃんと伝わるようにするんですね。

接客における「これで良し」は、99パーセントない

宗次:そうです。常にお客さまを意識していますから。朝から晩までお店回りです。1日にカレーを5~6食は食べていたんじゃないですかね。お店を巡回すると、客席に座ってカレーを注文してね。

舘野:ご自分で確かめると。

宗次:ええ、そうです。盛り付けだとか。他のお客さまもいて、座ってメモを取るわけにもいきませんから。

舘野:立ちながらぱっと食べて。

宗次:いや、座ってお客さま目線でということです。(注文してから)何分何秒で出てきて、お皿が温かいか、動きはどうか。いっぱいポイントや注意点がありますからね。

舘野:なるほど。そうすると、ココイチさん(の店)に入ってカレーを注文して出てきて、そして食べ終わるまでの流れの中で、宗次さんの中には理想形というか、1つの形ができているわけですね?

宗次:もちろんあります。マニュアルに沿ったやり方をして欲しいけども、そのとおりにいきませんしね。接客で「これで良し」は98パーセント、99パーセントないです。どこまでいっても終わりがないんです。だからこだわり続けたんですね。

「ああ、良い接客をしてくれているな」っていうのはお昼のいっときとか、そういう時間帯ではあるんですが、1日を通してだと難しいですね。

舘野:何十年やられていても、完成形にはまだいきついていないんですね?

宗次:そんなことができている店はないですね。古いから良いっていうものでもないですし。ただ店長によって、スタッフによって良い店に対してはランク付けしています。上位はもちろん何パーセントか(良い店は)ありますけどね。

ライバルが何をしたって「追随しよう」と考える必要はなかった

舘野:なるほど。続いてもいろいろ、質問させていただきます。いっときデフレで、牛丼屋さんなどでも安売りというか「安値競争」みたいになったことがありましたよね。消費者としても「これ、大丈夫なのかな?」と思うような状況でしたが、ココイチさんのところは一切それをしなかったんですね?

宗次:検討すらしたことがないです。議題に挙げたことがないです。

舘野:それはなぜですか?

宗次:やっぱり適正利益はいただきたいんですね。社員さん、スタッフが疲弊してまでライバル対策の値下げはできない。やろうとも思わない。

舘野:普通の経営者だと、目先の利益でわっと、そこにはまっていく感じがありますけど、それはもう迷いもしなかったんですね。

宗次:そうですね。やっぱり接客を重視しているので、「スタッフ1人当たり、1時間に何人のお客さまに接客するのが適正か」ということに沿ってやりたいですね。「接客するお客さまが多ければ多いほど効率が良いんだ」って、そういう考えには至らないですよね。

舘野:なるほど。

宗次:まあまあのサービスがしたいのもあります。それと値下げしなくても、売上が順調でしたからね。だから、ライバルが何をしたからって「うちも追随しよう」とは、一切考える必要がなかったです。

舘野:なるほど。では、だいたいもうご自分のイメージどおりにビジネスがどんどん大きくなっていったということですか?

宗次:もう出来過ぎですよね。毎期毎期の目標は必達していましたから。だから、値下げもしないですね。売上が伸びたら店舗が増えて、利益率はずっとほぼ安定して一定ですから増収増益です。

舘野:今のコロナ禍においても。

宗次:いや、ちょっと様子は違うでしょうね。(売り上げは)7割、8割、9割、店によって(違うと思いますが)。今は経営から離れて随分経ちますから、開示されるものは決算書ぐらい見ますけど、逐一報告を受けないし、しなくて良いっていうスタンスできてますから。

舘野:すごいな。

経営するんだったら、起業するんだったら、身を捧げなさい

宗次:だから、誰にでもチャンスがあるけども、一生懸命やりなさいっていうことですよね。だから、目標とか夢ばっかり掲げて「起業します」っていうんだったら辞めなさいと。そんな甘くはないですからね。

舘野:この配信を見てくださっている方の中にも、起業にすごく興味がある方がいらっしゃると思います。また、今は若い学生たちでも「何をやって良いのかわからない」という人がすごく多くて。真面目な気持ちはあるのに、どういうふうに人生に取り組んでいくか(わからない)。出会いがないということもあると思います。

宗次さんからみて、そういう若い世代に何か伝えていただけることはありますか? それとも、正直「甘いな」と思われますか? 

宗次:これは私流ですけども、経営するんだったら、起業するんだったら、身を捧げなさいよって思います。それだけ期待も大きいし、責任も重いものがあるし、生半可なことでやっちゃダメですよ、ということです。

舘野:なるほど。

宗次:ただ、一歩踏み出さないとね、やってみないとわからないことばかりです。逆にやってみればすべて答えが出ますから。そこで諦めないで情熱を持ち続けてやればね、現場に明日の成功の種がいっぱい落ちていますから。

舘野:なるほど、わかりました。そうですよね、最初の喫茶店の時も決して良い条件ではなくて、とにかくやってみるということだったんですよね。

宗次:そうです。

舘野:それに対応していくことで。

宗次:やろうと決めたら、後先考えず、やりたいだけですから。私はそのまま、今に至っても行き当たりばったりです。その時々を必死にやる。がんばってやる。そんな中で、修正しながらも方向性が定まっていきますよね。

「若い時に戻りたい、あの時代に戻りたい」とは、一切思わない

舘野:なるほど。ご自分の人生で、もし戻れる時間があるとしたら、どこに戻りたいとかはございますか?

宗次:いや、今、私は73歳ですけども「よくここまでこうやって、今日現在も元気でいられて、こんなラッキーなことはないな」ってよく思うんです。「若い時に戻りたい、あの時代に戻りたい」とは、一切思いません。

30歳、40歳から突然、73歳になった訳ではなく今日まで良いことがいっぱいありましたから、ぜんぜんそういうことは思いませんね。

舘野:なるほど。(宗次さんは)音楽ホールを建てられたり、なかなか手に入らないような貴重な楽器を無償で提供・貸与されたりしています。これからも、そういったことはどんどん広げていかれるのでしょうか?、

宗次:今まさに、世の中全般が助け合いですよね。困った人が周囲にもいますし、一生懸命やりたいのに学業を続けられない人もいますからね。奨学金を提供したり、困窮者を支援したり、助け合いましょうよっていうことですね。

自分ばっかりが豊かで恵まれていてもね、やっぱり虚しいしおもしろくないですから。今以上に、みんなが良くなるような世の中になって欲しいんです。

舘野:なるほど。

宗次:最高の贅沢が寄付ですよ。助け合いですよって言っています。

舘野:(宗次さんはこれまでに)いろんなことをやっていらっしゃいましたが、今後成し遂げたいことって、まだございますか?

宗次:もう今日の続きで良いです。今もけっこういろんなことをさせてもらっていますから、これ以上新たなことも考えないし、もう歳から言ってもね。今の延長を今年も(やっていきたいです)。

多くの人の支えになってあげたいっていう(のはあります)。昨日か一昨日も防寒具を何十着も買って、ホームレスさんの支援団体に取りに来てもらって。野宿の人たちが越冬するのにね、もう寒さが厳しくなってきましたから。こんなことがいっぱいある。私が関心あるのは、こういうことなんです。

「超一流の三流経営者」の私でも、何とかなった

舘野:ありがとうございます。そろそろ質問のお時間に入らせてください。ごめんなさい、お聞きしたいことがたくさんあるので、つい問い詰めるようになってしまいました。

宗次:いえいえ、私も話したいことがいっぱいあるから、早口になってしまって。すみませんでした。

舘野:(笑)。ありがとうございます。では、質問を読み上げさせていただきます。「60歳になるのですが、今から海外での飲食(店)を起業するのは難しいでしょうか? ただ、単独では資金的に難しいので、パートナーを見つけてのことになりますが、どう思いますか?」ということですね。

宗次:それはご本人の熱意とか人間性にもよりますけどね。私自身は「相談ができない」って最初に言いましたとおり、パートナーとやるっていうのは、絶対考えられないんです。

舘野:そうですよね。

宗次:本当にパンの耳を食べながらでも良いから小さく始めて、そこから切り拓いていくっていうスタイルですね。

何をやっても難しいですよね。生半可な希望と目標だけではなかなかできない。でも(私は自分のことを)「超一流の三流経営者」と言っているんですが、私でも何とかなったんですからね。やっぱり一生懸命、真面目に心を込めてやれば、少しずつ開いていくんじゃないですかね。

経営者が誰よりも真面目に一生懸命がんばり続ける

舘野:ありがとうございます。では、次の質問です。「Withコロナのこれからの接客業は、どのような考え方、気持ちがあれば楽しく仕事ができると思いますか?」と。コロナと付き合っていかなきゃいけない時代ですよね。

宗次:そうですね。Afterコロナもこれまでも、騒動のさなかにある今現在も、姿勢は変わらないんですよね。繰り返しますが、やっぱり経営者が誰よりも真面目に一生懸命がんばり続ける。真心を込めて、お客さまに伝えられるような経営をすれば、やっぱり周りもそのように動いてくれますし、必ず売上が上がっていきますから。そういう店にすれば、スタッフに給与で返してあげることもできます。

舘野:循環していくってことですよね。

宗次:良い循環がどんどんできてきます。なにがなんでも右肩上がり経営をするっていうことで。

舘野:なかなかできないんですよ。すごいです。

宗次:いや、だからそれを本気でやるんです。誰も来ていないうちから店の前を掃除したり。私もそんなことしかできないんですよ。

舘野:そうですよね。朝もずっと早いんですものね。

宗次:(それが私の)姿勢ですから。今日も朝の5時ぐらいからやっています。

舘野:町の掃除をして。

宗次:朝5時から8時ぐらいまで、今日は3時間ぐらいしています。人の通る道路に、花を植えてますから。

「朝4時台に会社へ行こう」と決めたのは、アンケートハガキから

舘野:背筋が伸びます。次の質問は「経営者が部下を育てるために重要視すべきことは、『能力』『情熱』『人間性』『相性』などあると思いますが、一番は何でしょうか?」ということですが。

宗次:私の場合は良いかどうかは、一緒に仕事をしてみないとわからないですよね。面接の段階ではわからない。「どうやって見極めるんですか?」(と聞かれますが)「そんなの失敗ばっかりです」って答えています。でも、2割が本当に「社長にどこまでもついていきます」って幹部を目指します。Aランク社員が2割いてくれれば(良い)。そうすると、会社はまあ発展を続けられるかなって。

やっぱり、経営者・トップが率先垂範で、誰よりも一番厳しい気持ちで仕事をする。私流はそうでした。

舘野:お話をうかがっていると、そこに尽きますね。

宗次:私流はね。もっと他のやり方がいっぱいあるので、賢い経営者は、誰も私のようにはやろうとはしませんけどね。

舘野:先ほどからお話をお聞きしていると、(それはなかなか)できないのかもしれないですね。

宗次:でも経営が、仕事が一番おもしろいんですけどね。

舘野:徹底して早起きですものね。

宗次:起床が3時55分。「さあ、ゴー、ゴー」ですから。

(会場笑)

毎朝、それも365日。

舘野:365日全部。それを何年もですものね。

宗次:もちろん、もう何年もです。

舘野:背筋が伸びます。

宗次:もともとは「早く起きよう。4時台に会社へ行こう」と決めたのは、アンケートハガキからなんです。良いことはだんだんエスカレートしますから。今は3時55分。

(会場笑)

社会人になって、経営者になってから、挫折は一度もない

舘野:では、次が最後の質問になります。「ここまで来るのに大きな挫折があったと思います。挫折した時に諦めず挑戦する原動力はどこから生まれてきたのでしょうか?」

宗次:社会人になって、経営者になってからは、挫折は一度もないんです。順風満帆でした。はっきり言えますね。

舘野:そうですか。

宗次:「あの時が節目かな」っていうのがないんです。今日はグラフがないけども、棒グラフはずっと右肩上がりですもん。

舘野:「やらなきゃいけないことを全部1つずつやってきたから」の証ですかね。

宗次:飲食(業)は労働集約型で、日常的に同じ繰り返し。そりゃあ人によっては「もっと近代経営を」とか言うかもれないけど、私は1対1で、お客さまに感謝の気持ちを込めて商売をやっていれば成長すると思っていますから。

舘野:では、順風満帆も含めて原動力にすれば、お客さまの喜びになるんですか?

宗次:もちろんそうですね。それが目的の大きな部分ですからね。

いざという時に慌てなくて良いように、まさかに備えた経営を

舘野:なるほど。最後に聞いていらっしゃる方に、宗次さんからメッセージをいただければと思います。

宗次:私流で(やってきましたが、)経営を通じて多くの人(によろこんでもらって)、自分自身の心の豊かさ、幸せをいただきました。今、コロナで大変な中、何兆円、何十兆円の、協力金だとか助成金だとかいろんな(ことがあります)。

ましてや、今は落ち着いているけども、医療従事者さんたちは大変な思いでやっていた。私はもう、自分自身の思いをあえて言わせていただくと、「経営は自己責任」であると。そういう前提で、いざという時に慌てなくて良いように、まさかに備えた経営を日頃からやっていただくと良いと思います。

舘野:すべては自己責任で、考え抜いて手を打っておくということですね。

宗次:そうですね。日頃の積み上げ、蓄積ですよね。

舘野:ありがとうございます。

宗次:いえいえ。

舘野:次からはココイチさんに入った時には、いろいろなところを見て、「一つひとつに思い入れがあるんだろうな」「メニュー1つにしても(考えがあるんだろうな)」「どんな意味合いがあるんだろう」など(感じてみようと思います)。

宗次:「聞くと見るとじゃ大違いじゃないか」ってアンケートハガキで出しておいてください。

舘野:(笑)。どうも本当にありがとうございました。

宗次:どうもありがとうございました。失礼しました。

(会場拍手)

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