2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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白崎雄吾氏(以下、白崎):では、さっそくご紹介します。11月29日に『だから僕たちは、組織を変えていける やる気に満ちた「やさしい組織」のつくりかた』を出版されます斉藤徹先生です。斉藤徹先生、今日はよろしくお願います。
斉藤徹氏(以下、斉藤):ありがとうございます、よろしくお願いします。
今シェアしたのが、自分でコツコツ作った書籍ページがあってですね(笑)。ここで今日お話しするのはカットしていますけれども、その全部のスライドやこの本に入っている150以上のイラストとか図表がこのページからダウンロードできますので、もしよろしければご覧ください。
では『だから僕たちは、組織を変えていける』という本のお話をしたいと思います。僕はこんな感じで生きてきました。20代では日本IBM、それから30年間はずっと起業家をしています。5年前に学習院大学の客員教授になって、去年からビジネス・ブレークスルー大学(BBT大学)の教授に就任しています。こんな本を書いています。
専門分野が2つあって、1つは「新しい時代の企業経営」です。今日のお話はこの分野ですね。もう1つは「ビジネス・インキュベーション」、事業を作っていくほうです。これはBBT大学でも「幸せ視点のイノベーション」という授業があります。
経歴でみるとすごくきれいに見えますが、ここの年表にあるとおり、ご存知の方はご存知なんですが、本当にひどい人生を歩んできました(笑)。何回も倒産寸前になったり、自殺も考えたり、いろんなことでいろんな失敗をしてきました。起業家としてすごく濃い人生を歩んできたんです。
20世紀の僕は、戦略経営の申し子のようでした。選択と集中とか、時価総額経営とか。でもリーマンショックの時に考え方が大きく変わりました。それから僕の人生も大きく好転したんです。その経験をもとに、今の僕が一生懸命やっているのが、今日のタイトルでもある「やる気に満ちたやさしい組織をつくる」ことです。それも理想論ではなくて、理論と実践にもとづく科学的なメソッドをずっと探求してきてます。
社員が幸せを感じて、その結果顧客の価値を生んで、組織が持続的に繁栄する仕組みというのは、科学的にどう作ればいいんだろうかということを、ずっと考えてきました。その30年間の実践を経て書いた本が、この『だから僕たちは、組織を変えていける』です。ようやくこういうことが言えるようになったのかなと思います。
斉藤:かなり具体的な内容が書いてあります。この本は6章立てで、最初の1章はWhyです。「なぜ今の組織が時代遅れになったのか」。2章はWhatですね。「どういう組織が必要なのか」。で、3章、4章、5章、6章は、すべてHowです。「どうやれば理想の組織を実現できるのか」ということを、たっぷり書いてます。中でも、今日の講演でお話しするのは、この赤字の部分です。
まず第1部「私たちの違和感は、どこから来ているのか」。第2部「やる気に満ちた『やさしい組織』のつくりかた」、第3部「だから僕たちは、組織を変えていける」。そういったお話をしたいと思います。
みなさんはどうでしょう、違和感がありますでしょうか? みなさんの組織はどうでしょう。このエンゲージメントサーベイはGallup社が毎年行っていますけれども、日本は非常に不満を撒き散らす社員が多くて、やる気に満ちた社員が少ない。これが日本の実態なんですよね。
「どうしてうちの会社はこうなんだろう」「なんでわざわざこう効率の悪いことしてるんだろう」「こんなバカみたいなことをしてるんだろう」と思っている方が多いと思うんです。組織に歪みがあって、それによってやる気に満ちた社員が非常に少ない。これが現実です。
これがどういう結果をもたらすかというと、Bain & Companyの調査では、「やる気に満ちている社員」、いわゆるエンゲージメントの高い社員の生産性は「満足していない社員」の3倍、「満足している社員」と比べても2倍なんです。
日本はどうなっているかというと、この3倍の生産性がある人が、わずかに6%しかいない。むしろ生産性が非常に低い人たちが、やる気に満ちた社員の4倍ぐらいいる状態。なんでこんなことになってしまったのでしょう。
斉藤:1970〜80年代といえば、日本的経営がとても注目されたんです。特に日本的経営に注目していたヘンリー・ミンツバーグとか、ピーター・センゲとか、世界の名だたる経営思想家が、リーマンショックの直前の2008年に、36名も集まった。実業界からもすごい人たちが来てるんですが。
この人たちは「何かおかしいぞ」と。21世紀のマネジメントを再定義しなくてはいけないということで、3つの提言を出しました。日本は世界的に見ても振れ幅が極端で、今の日本の組織の問題を、非常に的確についている指摘だと思います。
まず1つめは、マネジメントはとっても大切なものだよねということです。でも2つめでは、彼らの提言は非常に厳しい言葉を使っていました。「ほとんどの大企業で見られるマネジメントモデルは、とんでもなく時代遅れだ」と言ったんですね。これは19世紀に1つの重大な問題云々、と書いています。
でも、これは今最優先すべき課題ではないと。では今私たちはどうすればいいのかというと、根本から再定義する必要があると。「組織をより人間味あるものにすることだ」という提言をしたんですね。
この「とんでもなく時代遅れ」というのは、「科学的管理法」のことを指しています。流れ作業の効率を高める手法です。工場で人が歯車のようになる作業の場合に、科学的管理法によって非常に生産性が高まったんですね。でもその代わり、人はこのような感じです。(例えば)2人でタイヤに鉄輪をはめるのを1日中、7,000個やるという。こういうような仕事では、科学的管理法が非常に効きました。
斉藤:ドラッカーは『ポスト資本主義社会』でこう言っています。20世紀の企業における最も価値のある資産は、「生産設備」だったんです。でも、情報革命によって、指数関数的に時代が変わっています。そして今、21世紀の組織で最も価値のある資産は「知識労働者」で、彼らの生産性であると。
20世紀は科学的管理法によって、「肉体労働の生産性」が50倍になったんです。でも21世紀はむしろそれが逆に生産性を下げてしまう。これから求められるのは、「知識労働の生産性」を同じように大幅に引き上げることだ、と彼は言ったんですね。
でも「僕は工場勤めだから」とか「私は知的なことやってるわけじゃないから」と感じる方もいらっしゃるかもしれないんだけれども。実はもう人間は今、クリエイティブで人間的な仕事ばかりをやっているんです。そうじゃないものは工場の機械がやったり、コンピュータがやったり、AIも出てきてますからね。どんどん人間の仕事は高度化しています。
それだけじゃなくて、何か引き渡しておしまいという仕事がどんどんなくなってきています。常にチームで、相互依存の体制で話し合って、作って、永遠にベータバージョンでずっと改善していかなくちゃいけない。そういった仕事がとても多くなってきてますよね。つまり、ほぼすべての仕事は知識産業・知識労働になってきてるんです。
工業社会の組織モデルは、投資と効率。計画して、警戒して、統制することを大切にしていました。でも21世紀の知識社会の組織モデルは人が中心です。創造性と人間性です。VUCA(の時代)は環境が常に変わるので、常に学習をして、人に共感して、一人ひとりが自走するような組織が求められています。
斉藤:21世紀に入っても昔のやり方をずっと続けているとどうなるかというと、この漫画のようになるんです。
課長さんが暗い顔して営業会議から戻ってきた。ずいぶん詰められたんでしょうね。でも課長が戻ってきた瞬間、現場は現場で「こんなことも直らないんですか!?」といったクレームが入っている。本当は簡単に直ることなんだけど、ルールがあるし、管轄も別れているから、なかなかそれを直せない、とか。
かと言って、お客さんにも今は一方的な広告がぜんぜん届かなくなってますよね。情報過多で広告が効かなくなって、今までのやり方が通用しない。(目標は)また未達。でもどうしても結果が命で、仕事は結果というのが会社の方針だから、どんどん疲弊していってしまう。
これが工業社会のやり方をそのまま今に持ち込んでいる会社の姿です。この結果、日本のエンゲージメントの高い人たちは6パーセントになっちゃったんです。
斉藤:この新しい知識社会の原則その1は、「結果を作ろうとすると、結果は逃げてしまう」。昔は結果を作ろうとすると、機械が相手だったからできたんです。でも今は機械ではなく人が相手です。人には心があるから、結果を作ろうとするとかえって逃げてしまう。
これを絵にしたものが、有名なダニエル・キムの成功循環モデルです。まず結果を作ろうとする。そうするとどうなるかというと、人間関係が悪くなって、不安とか疑心暗鬼が出て守りに入ってしまって、行動が消極的になって、またさらに結果が悪くなる。こういう循環に入りやすいんですね。
今大切なのは、成果を上げたいのであれば関係性から始めることです。人は心を持つ生き物だからです。さっきの循環と同じなんだけれども、「結果の質」じゃなくて「関係の質」を起点にすること。そうすると思考が高まって、行動が高まって、結果が高まって、さらに関係が良くなっていきます。
そうは言っても、こんなめちゃくちゃ「乾いた場」でどうやって関係性を高めればいいのか。関係性が、今の要素の中で一番難しいんです。
あの循環はわかるんだけど、それぞれ「関係の質」「思考の質」「行動の質」は具体的にどう高めればいいのかというのは、成功循環モデルでは言っていない。それを具体的に、科学的な高め方をしていく(方法を)ご紹介しているのがこの本です。
それと、今日も後半にお話ししますけれども、「たった1人から組織を変えていく」。今、なにか問題をかかえている会社がほとんどです。でも会社全体を変えようとしてもなかなか難しいので、1人から組織を変えていくメソッドを、最後にお話しします。だから僕たちは組織を変えていけるんだ、って話です。
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