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「90分腹落ちセミナー」男性育休から考える“組織と個人の成長”(全3記事)

ある男性が育休取得で実現できた「代替可能な仕事」の見極め “事前のゴング”で個人・組織の双方が得られる、数々のメリット

育児・介護休業法が改正され、来年の4月より「男性の育休取得推進に取り組むこと」が企業に義務付けられます。男女に関わらず、当事者だけの問題ではない育休取得。これをポジティブな機会ととらえ、業務遂行上のリスクにしない、なおかつ本人のキャリアの壁にしないために、組織は育休とどう向き合ったらよいのでしょうか?そこで、ビジネスメディアの編集長を務めながら育休を取得された経験を持つ野島光太郎氏をゲストに迎え、育休のリアルを知り尽くしたNOKIOOの沢渡あまね氏・小田木朝子氏が「育休マネジメント」について語ったウェビナー「男性育休から考える “組織と個人の成長” 今、人事担当者がおさえたい育休マネジメントの発想」の模様を公開します。

旦那さんが横にいて「直前にわかる」ことはあり得ない

小田木朝子氏(以下、小田木):あともう1つ。「男性育休法改正」のニュースに関して「なぜ男性育休の取得が難しいのか?」ということが一般によく論じられます。この時に、必ず言われるのが「直前にならないとわからないので」という意見です。アンケートなどでもこれが必ず入ってくるんですが、そもそも思い込みなんですよね。

野島光太郎氏(以下、野島):そうですね。旦那さんが横にいて「直前にわかる」ということはあり得ないわけで。

小田木:あり得ない。あり得ない(笑)。

野島:会社にとっては「わからない」。もしくは、会社がそういった情報を「収集できていない」。これが本当の声だと思うんですね。

小田木:あと本人も直前まで決めかねているか、もしくは言えないみたいなところですかね。

野島:そうですね。

小田木:ありがとうございます。

沢渡あまね氏(以下、沢渡):良いコメント入りましたね。「病気などで突然戦線を離れることもあるわけで、それに比べればお互い、前もっての準備がしやすいですよね」。

野島:おっしゃるとおりですね。

小田木:ありがとうございます。ちょうど参加者さんからこういったコメントもいただきましたので、早く伝えた後の野島さんのアクション、不安解消の手立てについてもお話を聞かせてください。

野島:そうですね。早く言うと自分のスタンスを周りにアピールできるので「じゃあどうするんだ」というコミュニケーションを、そこからスタートできると思うんです。

そこから「この仕事はどうケアするのか?」「この仕事はどうアサインするのか?」など、自分の仕事を構造分解していく。VUCA時代とこれだけ言われる中で、出産は当然ながら、だいたい時期が予測できることですよね。

小田木:VUCAの中では確実性の高い事象じゃないかという(笑)。

野島:そうですよね。確実性が高い。

沢渡:確かに。

仕事の棚卸しで生まれる「整理する場・共有の場・構造分解していく場」

野島:(育休制度とは)その期間中に給付金が出たり、会社としてもきちんとした体制があり、VUCA時代にしてはかなり解像度が高く見える取り組みだと思うんです。じゃあその期間のために、どういう対策をしていくのか? 僕はまず、仕事の棚卸しをしました。

棚卸しをする中で「これって本当に必要な仕事なの?」「これって本当に自分がやりたい仕事なの?」というものが出てきます。つまり、復帰した後も継続してやりたいのか、力を入れたいのか、もっと得意な人に振ったほうが良いのか? 必然的に「整理する場」が生まれるんです。

整理した後に、上司やチームに共有しなければ引継ぎもできないので「共有の場」も生まれます。その後、それをみんなで「構造分解していく場」も必然的に生じてきます。

沢渡:今のお話だけでも「業務改善」「働き方改革」「育休マネジメント」の点が線となって、面でつながっていきそうな気がしますね。小田木さん。

小田木:うーん。それぞれに固定化された役割や仕事があって、みんながみんな短期的に忙しい中で、その時間を捻出する難しさもあるのが実情だと思うんですよね。でも「決めた」という前提に基づいて、仕分けしていく・整理していく。

もっと言うと、チームが困らないように、そして自分のためにもこの機会にきちんと仕分けをする。その取り組みをチーム全体で進めることが、不安解消の方法であり、いったん職場を離れる前の準備でもあると。こんなことが生れたわけですね。

野島:お互いに対話することが不安の解消になります。あとは「早く言う」ことは本当にポイントだと思っていまして。私はデータを扱うメディアをやっていますが、プロスペクト理論みたいな随分先のことだと、ある意味、理想形を描けるけれども、直近のことになると目先の課題が目に付きやすくなるんです。

「総論」としての育休に反対する人は、たぶん社会にあまりいないと思うんです。一方で「各論」だとどうしても「業務があるから」とか「引き継ぎがあるから」とか、現実的な課題が先にくるので難しいところがあると思うんですけど。

沢渡:ありますね。「総論賛成。各論いきなり言われても困る」みたいな。

野島:はい。(育休取得を周囲に言う)タイミングが大事とはいえ、言いづらい環境もあるかもしれません。それも工夫次第で(なんとかなる気がします)。例えば、子どもが生まれたタイミングで、会社から社員へとプレゼントを贈る仕組みを作る。そうすれば必然的に会社が(社員の育休取得を)知るタイミングが早くなるかもしれません。

沢渡:なるほど。

野島:うちの会社にすでにあるわけではないんですが、そういう仕組みを作ればやりやすくなるのかなと思いますね。

育休取得で起きた「家庭・子ども・仕事」に対する、ポジティブな変化

小田木:ありがとうございます。今、育休を取る前の不安解消という観点でお話をいただきました。ここから(スライドを指して)右側のテーマに移っていきたいと思います。育休を取ってどうだったか。その後、仕事に復帰にしてどうだったか。こちらについて、今ふり返って言えることを共有していただけますか?

野島:そうですね。

小田木:仕事が三度の飯より好きだったんですよね。そんな野島さんが育休を取ってみてどうでした?

野島:先ほどの参加者さんのコメントのように、まず「本当は仕事がしたい」という気持ちになりました。

小田木:なるほど。

野島:復帰したら頑張ってやろうとか、なんか立ち上げてやろうみたいな。

小田木:渇望感。

野島:はい(笑)。ワーカホリックだったというのは、本当に仕事が好きだったんだなと(わかって)。あらためて、ある意味エネルギーをもらえた感じですね。

小田木:離れてその大事さが、あらためてよくわかったみたいな感じ。

野島:かつ、それまではしっかり育児に携わることをしていなかったんです。オムツ替えをするとか、送り迎えをするとか。今は毎日のようにやっていますけれども。

そういった育児の楽しみも増えて、幸せが倍増したんです。仕事もそのまま、楽しくやる気が出て取り組めるし、今まで何も見えていなかった家庭も楽しめるようになって。育休を取る前は、実はそこまで想像していませんでした。

本当に妻が大変だったので、そこに寄り添うのが最優先でした。先ほど「育休期間に何をやるのか?」という質問がありましたが、あまり考えていなくて。(とにかく)「育児に集中しよう」と思っていたんです。

小田木:「とりあえず役割果たすぜ」みたいな(笑)。

野島:そこだけだったんですよね。ただ、実際取得してみると、もちろん育児はやっているんですが「仕事復帰したらこれをやろう」「自分の仕事、これダメだったな」とかいうのが、走馬灯のように毎日頭の中で生まれて。

あと環境に感謝してしまうんですよ。例えば、昼間にオムツを替えているこの環境がありがたいなと思うんです。会社への感謝です。育休前に想像していたのと、取っている最中では、だいぶ意識に変化があったというのが正直なところです。

結果的に見ると「家庭」「子ども」「仕事」すべてにおいて、ポジティブな変化しか、個人的にはなかったですね。あくまで“個人的には”ですが。それが実感です。

小田木:ありがとうございます。ポジティブな変化しかなかった。断言いただきました。「幸せ倍増」(笑)。これ、なかなか強烈なスローガンですよね。

沢渡:本当ですね。

小田木:あらためて仕事の楽しさに気づいた。それに加えて仕事以外の楽しさも見つかった。「あれ? 仕事はさらに楽しくなったし、会社への感謝も増しちゃったし、さらにここに家庭、家族という楽しみまで加わったら倍々じゃん」みたいな、そういう手応え。

野島:そうなんですよね。

小田木:想像していなかったけれども得られたんですね。

野島:まったく想像していなくて。「仕事の借りは仕事で返す」とか、そういうスタンスだったので(笑)。

沢渡:(笑)。

野島:ただ、仕事と家庭ってもちろん分断されておらず、一つのパッケージなんだなとわかりました。家庭も仕事もそれぞれがつながっていて、パフォーマンスが出てくるんだなと。それをあらためて感じましたね。

一方で、それが会社にとってどうかというのは、本当に難しい問題だと思います。私は恵まれた環境にありましたが、会社にそういう制度があっても、たくさんの人が(育休を取った)前例があったわけじゃないんですよね。それ(自分の育休取得)を通して、会社もいろいろ工夫したり、考えたりしてくれたことがたくさんあったと思うんです。

なので、そこだけをあえて見ないようにすれば、個人的にはすごくポジティブな影響しかないです。これは本当に言えることだと思います。

「育休取得前の取材本数」と「取得後の取材本数」は倍ぐらい違う

小田木:ありがとうございます。個人的にはポジティブな影響しかない。しかし組織にとってはどうだったであろうか? というクエスチョンも含めながら、お話しいただきました。まさに(スライドを指して)ここが、目を向けたいところなんです。「野島さん、幸せになって良かったですね」だけじゃなくて、さらにそこから踏み込んで考えたいと思います。

野島さんの(ビフォーアフター)として、育休を取る前と後では、仕事のパフォーマンスが上がったかどうか? ご自身のジャッジで良いので、この考察をさらに進めていきたいと思います。謙遜など一切なしでお願いします。

沢渡:(笑)。

小田木:ぜひここをオープンに話をしていきたいと思います。仕事のパフォーマンスは上がりましたか?

野島:仕事のパフォーマンスは上がっています。

沢渡:上がった!

小田木:なぜならば……?

野島:なぜなら、取得前の棚卸しが一番大きいと思います。具体的にやったことを、詳細にお話しするとイメージ湧くと思いますが。

小田木:ぜひぜひ。

沢渡:ぜひ聞きたいです。

小田木:ケースでお願いします。

野島『データのじかん』というメディアを運営していたり、コーポレートのCMなどブランディングをやっているので、必然的に外部の方とコミュニケーションすることがすごく多いんですね。

例えば『データのじかん』だと執筆していただいたり、デザインしていただいたり。あとサーバーやWebサイトなどに関するいろんな業務もあって。もちろん、私含め社内の社員が行う仕事もあれば、外部の方にお願いする仕事もあります。

そこを整理していくと、その人に属人化している仕事と、そうじゃない仕事がある。それがグラデーションで分かれているというよりは、二極化しているんですよ。

沢渡:二極化。うんうん。

野島:具体的に言うと、例えばIT・DXに詳しいライターがいるとします。じゃあその人が「請求処理をする、発注書を作る、何かのドキュメントを作る」といった場合、ライティングとは違うスキルが必要になってきたりする。

ただ、そこは他のチームで代替したり、外部委託したり問題なくできるんですよね。社員の時間給で考えると、外部委託したほうが正直リーズナブルですし。こういうことが整理する中で徐々にわかってきて。

私が持っていたそういう雑多な作業を、他のメンバーに引き継ぐタイミングで「これって(本当に)僕がやるべきですかね?」というフィードバックが来るんです。

(そう言ってきた)彼の場合は、(他のスキルがあって)プロフェッショナルでやっているのだから、確かに他の得意な人に雑多な作業は振ったほうが良い。そこで僕は、派遣の方をアサインしたり、外部のサービスを使ったり、社員の中にいるそういった業務の人にバトンパスをしたり、ということを具体的に行いました。

上司と部下の関係だと、上司の仕事をそのまま部下が引き継ぐのが、一番わかりやすいですよね。その中でもけっこうブルシットジョブ(どうでもいい仕事)みたいな仕事もあれば、その人が活かせる仕事もあって。それで整理ができました。

それが育休期間中、回っていたので、復帰後、私から他の方にお願いした仕事もあります。それで、それこそ沢渡さんや小田木さんとお話して取材するような仕事に集中することができて。実はこれがパフォーマンスとして一番わかりやすいんですが、育休取得前の取材本数と、取得後の取材本数はたぶん倍ぐらい違うんです。

小田木:へえ!

沢渡:すごい成果ですね。

野島:はい。コロナ禍にもかかわらず。育休というサバティカル(長期休暇)のために棚卸しを行って、引き継ぐ期間があって、復帰後にはやるべき仕事に集中できる環境ができた。私の能力が上がったというよりは、集中できる環境になったことが一番大きいんだと思います。

「自分の仕事が奪われてしまう」という恐怖感で、人は仕事を抱え込む

沢渡:ありがとうございます。本日は「育休マネジメント」というテーマでお送りしていますが、まさにマネジメントの本質だなと思って聞いていました。「変化というピンチ」に、きちんと俯瞰して向き合うことによって強みに変えていく。怖くないものに変えていく。ここがマネジメントの本質だと思うんですよね。

私も全国350の職場を見てきていますが、業務改善の抵抗勢力って「自分の仕事がなくなってしまうのではないか」「奪われてしまうのではないか」という恐怖感。この恐怖感によって、人は仕事を抱え込むんですね。

ところが、それが組織のリスクになる。個人の成長リスクになる。そういう局面において、育休という環境要因が、無理矢理(個人で抱え込んだ仕事を)引きはがすタイミングとなるんですよね。ここで正しく俯瞰して、どれが代替可能な仕事であるか見極める。そして本来社員が、あるいは個々のプロフェッショナルがやるべき仕事に正しく集中していく。注力していく。

きれいごとで、よく「トランスフォーメーションを行う」などと言いますが、泥臭くこんなふうに進めていくと明るい変化が生まれるんですね。今の野島さんの話で、ものすごく腹落ちしました。

野島:本当に沢渡さんおっしゃるとおりで、育休があったからこそできたと思うんですよ。

沢渡:うんうん。

野島:自分の無駄な仕事を他の人にお願いするって、気持ち的にもハードル高いと思います。また、先ほどの話にもあった「自分の仕事を引きはがして他の人にお願いする」のは、自分の価値が下がるわけなので、育休のような絶対的な機会がないとできないと思うんです。また育休のようにみんなが応援できることって、けっこう少ないんじゃないかな。

沢渡:おっしゃるとおりですね。あるいは、日常の空気の中でみんなが一生懸命やっている仕事を「これ無駄だと思います」って言いにくいですよね。「何言っちゃってんの、この人?」みたいな。

小田木:(笑)。

野島:そうですね。「あの人に育休取らせてやりたいから、そういうのを整理しましょう」だったら言いやすいと思うんですけど「あなたの仕事って無駄そうに見えるから整理しましょう」って、もう口が裂けても言えないですよね。

沢渡:言いにくいですよ。私みたいな空気読まない人間はどんどん言いますけれども。

野島:いやいや(笑)。そういう方は良いですけど……。(仕事の整理は)必ず必要なんですよ。

沢渡:ですから、こういったみんなで向き合う環境変化って大きなチャンスだなって。野島さんの話を聞いて、あらためて納得しました。

前もって“ゴングを鳴らしておくこと”が、組織にとっても大事

小田木:組織の「育休取得推進マジモード」にスポットライトが当たりますよね。それには(棚卸し)が欠かせないと。

「確かに個人にとっては良いんだけれども、ちょっと組織としてはいろいろ手痛いことも多くて。現場の状況を考えると難しくて……」っていう論調になりがちなところを「やったほうが個人にとっても組織にとっても断然良いから」って言える。

その根拠を「(本人の)幸福感がパフォーマンス向上につながる」だけじゃなくて、「業務的な付加価値増大」や「生産性向上」の観点で語れることが不可欠ですよね。

沢渡:そうですね。そして、あらためて育休取得前から前もって“ゴングを鳴らしておくこと”が、本当に組織にとっても大事だなってね。

小田木:ゴング(笑)。

沢渡:あらためて納得しました。

小田木:そう考えると「いやー、言いにくいなあ」で、抱えて、抱えて。「すみません、思い切って!」みたいな感じで1ヶ月前にバンッて言って。それで「(育休)取りにくいんで、サッと戻ってきますんで」では、めちゃくちゃもったいないですよね。

野島:すごくもったいないですね。

沢渡:お聞きのみなさんも、明日からどんどんゴングを鳴らすレフェリーになって欲しいなと思いました。

野島:ようやく言いやすくなったと思うんですよね。昔は「男性育休」なんてキーワード、たぶん、こんなに言われてなかったと思うんですよね。

沢渡:そうですね。

野島:法改正があって義務化されるということは、これまで呼び名すらなかったものに「男性育休」と名前を付けることです。ある意味、法改正によって定義されたと。

見えないものを議論するのってすごく難しいと思います。(でも今は)「男性育休」としっかり定義された中で、ようやくそれに向き合う土壌が出てきた。チャンスですよね。

「健康経営」とか、いろんな打ち手はあると思うんですけれども。「企業」、「家庭」「子ども」、社会として「少子化」、そして自分の「キャリアパス」。いろんな(要素がある中で)近江商人の「三方よし」じゃないですが、「五方よし」「六方よし」ぐらいのレベルで取り組みしやすい。

もちろんこれは「相対的に」ですが。取り組みしやすいかどうかは会社によって変わると思いますが。いきなりDXをやって何千万円っていうよりも、こういうことを通してDXにつなげていくほうが、地に足がついている気がします。従業員の満足度、従業員の幸せに紐付いて改善や構造改革ができるチャンスだとすごく感じています。

沢渡:さすが『データのじかん』の編集者さんですね。もうさまざまなキーワードが宇宙にまでつながってくる(笑)。

野島:すみません、なんかそういうことばっかり考えてるので(笑)。

小田木:ありがとうございます。ここまで野島さんのケースを聞いてきました。今ちょうどコメントに「これぐらい論理的に『なぜ取得推進をすべきなのか?』っていうことが言えれば、個人にも組織にもウェルカムですよね」って、書き込みいただきました。

仕事を引き継ぐためには、どれぐらい時間がかかった?

沢渡:(他のコメントに対して)1つご質問にお答えしましょうか?

小田木:お願いします。

沢渡:「仕事を引き継ぐためにはどれぐらい時間がかかりましたか? 私のグループの同僚の男性育休では、1週間程度で厳しかったです」。ご質問ありがとうございます。

小田木:厳しい(笑)。

野島:そうですよね、厳しい。

沢渡:野島さん、いかがです?

野島:1週間は、どんなに優秀な人でも厳しいんじゃないかなと思います。まず「引き継げる仕事」と「引き継げない仕事」って、確実にあると思うんですよね。マニュアル化できる仕事とは、つまり属人化していない仕事で、たぶん人にバトンパスできる仕事なんですね。マニュアル化できない仕事こそ、ご自身の強みが活かせる仕事だと思うんで。

そういったものが多ければ多いほど、引き継ぎってすごく時間がかかると思います。どういった理由で1週間だったのか? がわからないままの回答で恐縮ですが、1週間だと、よほどライトな仕事じゃない限りは難しいんじゃないかなと思います。

たぶん「1週間前にしか言えなかった環境」や「1週間前にしかわからなかった環境」が、この問題を難しくしていると思います。私自身の業務でいうと、1週間だと全然足りなくて。

沢渡:実際どのくらいでした? 

野島:考えていたのは半年前からです。ずっと考えていました。オプショナルでいろんな準備をしたんですね。例えば「私がいなくなった時のために採用しよう」とか「業務委託を雇おう」とか。

いろんな選択肢の中から、採用をかけたり、業務委託をかけたりは実際に行いました。採用はなかなか集まらなかったので、スポットのプロジェクトに関しては最終的に、業務委託でプロフェッショナルな方を3ヶ月間雇うことにしました。これは自分で見つけてきて。

実際お願いしたのは、ちょうど出産の2ヶ月ぐらい前だったので、正味4ヶ月ぐらいかかっていると思います。

沢渡:ありがとうございます。

育休取得中も、組織のパフォーマンスに変化はなかった

小田木:もう1つご質問いただいているんで、これも一緒にお願いします。「取得自体は賛成ですが、組織目線でいくと育休期間中の生産性、パフォーマンスは変化ありませんか?」。さっきのお話ともつながると思うんですけれども。

野島:これ、すごく鋭くてですね。私はメディアをやっているので、如実にPV数とかUU数っていう、Webのパフォーマンスでわかりやすく出てくるんですね。結論から言うと、全然変わらなかったっていう。悲しくもありうれしくもありみたいな。

小田木:(笑)。備えあってこそ、という見方もできると思うんですけれども。

野島:まさにそこ、備えがあったからということで。メディアはある意味で“弾込め”をしやすい業務形態ですので。育休期間って予定を立てやすいです。だから、その期間中に「何を発信するのか」「どういうコンテンツを配信するのか」は、事前に設計できたんですね。

結論から言うと、組織のパフォーマンスに変化はなかった。(さらに)戻ってきてから良かったのが、もともといたメンバーに新たなスキルセットが追加されたことです。

先ほどお話ししたとおり、煩雑な作業をちゃんと切り分けておいたので、僕も復帰後はやるべき仕事に集中できました。それで取得後に、パフォーマンスが大きく上がって。これが私自身の経験です。

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