2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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斉藤知明氏(以下、斉藤):鈴木先生、ありがとうございました。では、ここからディスカッションのパートに入っていきます。いやぁ、難しいテーマですね。いま「管理と自律」のスライドを映しています。管理するためには、ある意味、無駄を減らす。合理的・効率的な組織運営。
斉藤:実際に僕がご支援させていただいている、3,000人の企業さんの例で。「今週中にアンケート答えてくださいね」って役員が言うと、翌日までに9割が集まる。そういうのが、もう当たり前という組織になっている。逆にベンチャー企業とかだと、あんまり集まらないんですよね(笑)。5割ぐらいしか集まらなくて、最後まで「出してよ」「出してよ」って言っちゃう。そういう(前者の)組織は、ある意味で管理型が機能している組織であると考えられる。
また今度、自律型って呼ばれるためには「小さなイノベーション」というキーワードもありました。「大きなイノベーション」が毎日生まれるというより「自分の目の前の仕事に対しての創意工夫が生まれ続けている状態」があるから、ある意味、自由度を許容している。そういった場合に、この管理と自律は両方重要でバランスをとるべきだ、ってことなんですよね?
鈴木竜太氏(以下、鈴木):そうですね。その組織においてはどっちも大事じゃないかなと思うんです。経営管理論では、まず最初にどうやって効率的に動くか? ということが大事になるわけで。そう考えると、やっぱり「きちんと管理する」というのは、もう前提にあるんです。
一方で、我々はそういうこと(管理すること)が、かえって活力を減らしてしまうということもよくわかっていて。あるいは、マニュアルどおり働くということは、そこで働く意欲そのものを失わせるというのかな。ゆえに、活力を活かす(ことが大事)ということになるんです。
ただ、マネジメントとコントロールを少し切り分けたほうがいいのかな? という気はします。すごく狭い中でいうと、管理者ってどうしてもコントロールすること考えがちなんですが。どういう行動を引き出していくか? って考えて、そういうマネジメントの視点から立つと、両方が大事だということでつながるんじゃないかなと思いますね。
斉藤:秩序過剰な組織において機能しているというか、はびこっているのは「統制をきかせよう」というコントロールだということですか?
鈴木:じゃないかなと思います。「マネジメント=コントロール」というかね。
斉藤:「関わり合う職場」というキーワードが出てきましたが、コミュニティってコントロールはされないですよね。どちらかというと「なにか同じ目的のために『この指とまれ』で集まった人たちが、1つの目的を達成するためにお互いギブしあう」というか「協力しあうようなもの」をコミュニティであるとイメージしています。
いわゆる「旧態依然の日本型組織・管理型の組織・統制型の組織」と「コミュニティ型の組織」って、経営者や管理職の意識で何が一番違いますか?
鈴木:スライドには載せたんですけれども「上からのマネジメントになるか、下からのマネジメントになるか」ということなんですよね。当然ですけど、我々は組織の一員になった時に「お金もらってるんだけど、僕はなにをしたらいいの?」という話になるわけです。
その時に、やっぱり「上から降りてくるものをやればよろしい」という考え方が、極めて旧態的な組織なわけですが、そうではない組織です。もう少し「下からの部分」がすごく大事かなと思ってます。
自分たちで「この中でこういうことが必要だよな」ということを考えながら、あるいは自分の中で考えながら行動していくということですね。ここらへんが統制型と大きく違うところかなと思います。
斉藤:いわゆる「トップダウン・ボトムアップ」とか「上から下から」というところにおりた時に、ある意味「下から任せる」。僕、経営者として働かせてもらってるんですけど。「下からの自主性が大事だ」みたいなことをみんなに説くと「何言ってんの? お前は仕事しないの?」みたいに見られるのかな? って想像することがあります。
とした時に、その中で「コミュニティとして機能するための条件」ってあるのかな? という感じがしてるんですよ。「新卒一括採用の終身雇用」として採用された人たちが「理想を達成するために動くこと」を最初から当たり前のアセットとして入っているか? というと、そうじゃない。そういう人たちの集団の中でコミュニティ、つまり「同じ目的に向かうこと」が達成されるのって、どうやったらうまくいくんですかね。
鈴木:うーん。どうやったらうまくいくのかというのは、非常に難しい問題で。具体的なところは難しいんですけど、私のことを踏まえれば「お互い様で目標達成するんだ」をどれだけ認識するか? ということなんですよね。だから場合によると、本当にそういうものが必要ないようなところもあるんですよ。
「どの組織でもそれが大事だ」と言ってるわけじゃなくて。例えばなんていうのかな……。「個人の業績が積み重なれば集団の業績になる」という組織では、なかなかそうは思いにくいところがあると思います。
ですが、やっぱり「お互い様でうまくやってくこと」がすごく理解されているかどうか? ということが大事で。例えば私、車のディーラーさんを取材したことがあるんですが、当然、ディーラーというのは自分が売った数を積算していくと支店の業績になるわけです。
斉藤:そうですよね。
鈴木:そういう意味では、あまりそういう感じ(お互い様のイメージ)はしないんですが、実は強い業績を上げている支店というのは、例えば「ショールームをみんながきれいにすること」「気づいた人がきれいにしていくこと」が、決して自分に直接影響するわけじゃないし、それよりも自分で営業まわったほうが(成績としては)いいんだけど。
でも結果として、それがみんなの業績を少しずつ上げていくようなことがあるわけです。そういうことを理解しているので、例えば職場・ショールームをきれいにすることをみんなでやり合うことで、結果としてちょっとずつみんなの業績は上がっていくんです。
あるいは、自分の目標にいかない時でも、メカニックの人が「このオーナーさんはそろそろタイヤを替えてもいい頃だよ」ということを言ってあげるだけでも営業の成績が伸びたりとか、お互い様で仕事が伸びたりということがあるんですよね。
そういうことが積み重なっている組織と「このお客さんは、あの人のお客さんでしょ」みたいな組織とでは、ぜんぜん積み重なる業績が違ってくるんですよ。そういう意識を持てるかどうか? みたいなところ。「ショールームをきれいにするということは、結果としてみんなのためだよな。自分にも返ってくるよな」となったり。
「ちょっとしたアドバイスをしてあげることは、その人のためだけじゃなくて自分のためにもなるよな」ということ。こう思えるかどうか? なんです。
斉藤:今のお話に、すごくいろいろなヒントが隠れてたなと思います。自律型と管理型。例えば今のメカニックの人を例にとると、たぶん管理型の組織だと「あなたの仕事は車を点検して、どのパーツの耐用年数が切れそう・変えるべきを営業に報告すること。それを何分以内にやることが大事です」という目的のきり方をするのが“極で”管理型に振っている組織。
一方で自由気ままな組織になりすぎると、今度は「みんなで成績たてようぜ、それはもう任せるわ」という組織になる。でもバランスのとれたコミュニティの組織だと「僕らは支店として、営業成績を高めることやお客さんに価値を提供することが大事だよね」っていう前提の中で「あなたの『誰よりも明確に車の状態を正しく語ることができる力』を最大限発揮してほしい」みたいな目標設定にする。
というのを「三すくみ」(管理型組織、自由気ままな組織、コミュニティの組織)であえて考えた時、こういう目標設定が行われてるんじゃないかな? と想像してみたんですけど、いかがですかね。
鈴木:最後の点で言うと、たぶん自律型の組織ではそこまで具体的には言わないと思います。結局、それは「じゃあ言われたからやります」ということを、かえって促してしまうことになる。ある種の自律性から来るわけではなくて「言われたからそういうことをします、報告します」というだけになってしまうんですよね。
だからやっぱり自律的というのは「自分でなにができるか? を考えること」がすごく大事で。マネジメントからすると、具体的に指示してしまうと、そういうところ(「じゃあ言われたからやります」を促してしまうこと)は逆に気をつけないといけないということはありますね。
だから実は、評価の問題とのすごく難しい兼ね合いがあるんですよね。今みたいに、個人を丁寧に不公平なく評価するなら、事前に「こういうところを評価しますよ」みたいなところが提示されなければいけない。「『あなたの仕事はこれですよ』みたいにわかってないと嫌だ」みたいなことがあるので。
そうすると、どうしても「言われたことをちゃんとやれたかどうか?」というような「テスト範囲以外のものを出すわけにいかん」ということになっちゃうわけですよね。
斉藤:確かに。今の最後のお話だと、成績を向上させるために「あなたの得意はこれです」が1つの規定になってしまうから。
鈴木:そうです。
斉藤:ではなくて。例えば「こういう強みを持っているから、(自分は)どういうことができると思う」って考えた時に「お客さんや営業に報告してあげよう」とかそういうことをどんどん創発的に考えるのが、ある意味、自律型の組織。
やっぱりマネジメントとか部署型構造みたいなものができてきたのが、まさに戦前ぐらいからですかね。いわゆる部署制というものが出てきたり、まさに「マネジメント1.5」とか言われてますけれども。
それによって、かなり管理型組織というものが広がってきた中で。確かに人間って、昔はもっと小さなコミュニティである「村」とかでいた時って、かなり自律型の考え方をする習慣が強かったんですかね。
鈴木:そういうところがあったと思います。ただ、実は日本の中で会社・企業というのができるのは明治以降になるんです。その中で「資本家と労働者」の関係の中では、随分と管理型だったと思いますね。
労働者というのは、もっともっと“機械のような存在”というのかな。まさしく“労働力”としての存在の扱いだったので、あまりそういうところはなかったと思います。
もうちょっとさかのぼると、例えば農村の社会なんかではまさしくそういう働き方をしてたと思いますね。これは家族というものが、あるいは村落というものがそこにあったからなんです。
ただ、この村落の問題・村社会の問題はなにがあるか? というと、いわゆる「村八分」みたいなことがあったりして、価値観に合わない人が弾かれてしまうという問題があるんです。だから私は、そういう閉じたコミュニティにしてはいけないと思っています。それは非常に閉鎖的で、価値観が固定化してるから、かえって自律的なものを阻害してしまうということが起こるんですね。
斉藤:なるほど。「原則として開放的」というのは、まさにそこで述べてらっしゃることなんだなぁって思ったんですけど。開放的について、旧態依然とした「情報を抱えちゃう」とか「情報格差マネジメント」はよくないマネジメントだ、って言われてきていますけど。「中での情報がちゃんと開放されている状態」「中での目的が合一化されている状態」ということを、なんとなく想像してたんです。
今おっしゃっていただいた会社っていうのは、そもそも国・世界というコミュニティに属していて、その中でやっていきたい方向性とまったく逆転のことをやっちゃうと、会社としても成り立たなくなっていくし、弾かれていってしまうし、存続し得なくなってしまう。確かにこれは村社会とは少し違ったコミュニティなんだなというのが、今お話ししていての気づきでした。
鈴木:先ほど「自律的になると、マネージャーの仕事はいらないんじゃないですか?」という話がありましたけど、確かにそういう側面があるとは思うんですよね。ですけど、いわゆるレッセフェール(自由放任)って言いますけど「本当になにもしない」というわけではなくて。端的に言うと「本当にこの職場の今の個性を活かして、どうやったら目標が達成できるか? ということを、常に創造的に考える」ということが大事なんです。
「この役割の人がいなくなったから、この役割の人を連れてこよう」というわけではなくて。現在いるメンバーの考え方とか価値観とか個性とか能力とか、そういうものを常に更新しながら目標を達成していく。そんなことのために、マネージャーは尽力することになるんじゃないかなと思いますね。
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