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味の素のDXご紹介(全1記事)

きっかけは、下がり続けた株価 社長への直談判に始まり、4年間の株価低迷から抜け出した味の素のDX

コロナ禍で、企業におけるデジタル化への対応は急務となり、大手企業でもDX人材の採用・DX化を推進する組織が強化されています。そのような中で行われた株式会社ビズリーチの主催イベント「創業70年以上のCDOが語る DX人材を活かす真の人事・組織戦略とは」に、味の素、出光興産、パイオニアの3社のDX推進部門の責任者が登壇。本記事では、味の素初のCDOとして変革の旗振り役を務めた同社取締役 代表執行役副社長の福士博司氏のセッションをお届けします。

DXのきっかけは、4年間下がり続けた株価

福士博司氏:さっそく始めさせていただきます。ご紹介に預かりました、味の素の取締役の福士でございます。今日、(他セッションに登壇している)3人は、ふだんから仲良くさせていただいておりますが、私もCDO Club Japanのラウンドテーブルメンバーでございます。

現在の業務はCDO(Chief Digital Officer)で、通常から多くの新規事業を立ち上げてきた経験があるんですが、最近ではCDOとして、イチ企業に留まらずに広く業界の枠を超えて、デジタルによる協業を促進しようと、日々努力している最中でございます。

味の素グループの歴史は112年目で、従業員が約3万人、展開国が約130。工場も多くございまして、食品会社のわりには1,700人という研究開発要員を抱えており、それが1つの特徴になっております。

DXを始めるきっかけはいろいろあるんですけれども、端的には企業価値。いわゆる株価に集約されるものが、2012年から海外食品の進捗とともに着実に伸びていったんですが、残念なことに2016年から一方的に下がり始めました。

5年連続になろうとした時に、まだ保守的な戦略を継続するように見受けられたので、「このままじゃ無理だ」と社長に言いまして、同意を得て変革を始めたわけです。

DXとは社内外の見えない情報を数字によって見える化すること

変革にあたっては、私がボランティアをしたわけじゃないんですが、取締役から「これから変革するなら、デジタルをレバレッジにしたデジタル・トランスフォーメーションでしょう」ということで、幸か不幸か、私が味の素初のCDOとして、デジタル・トランスフォーメーションを始めることになりました。

その時には、アミノサイエンス系の事業で本部長をやっておりまして、6年間で事業ポートフォリオを完全に入れ替えるという経験があったんですが、デジタルに関してはほぼ素人に近かったので、CDO CLUB JAPANに入りまして、優秀な各所のCDOのみなさまと一緒にやることになりました。 

この当時は、途中で変革できなかったら、取締役からメンバーが総辞職という話にもなったんですが、そんなことは知る由もなくて。「なんとなく楽しそうだな」と思って始めました。

CDOとして、まず変革しなきゃいけないことを社長と握ったわけですが、「デジタルで何をやろうか」と2人で徹底的に話しまして、「すなわちデジタルとは、見えない情報を数字によって見える化することじゃないか」という仮説を持ちました。

そしたらやはり、企業価値を上げるために、見えない情報、企業にある情報、社内外の情報をデジタルで見える化して、付加価値を上げる方向で高速回転させればいいなという結論になりました。

(スライドを指しながら)この左に描いてある絵にありますように、組織資産ですね。企業価値を人材価値と顧客価値。このへんを全部見えるようにして、高速回転で回そうという結論に達したわけです。

デジタル関係、変革関係は私がやるとして、やはりこの会社が「変わるんだ」ということを宣言してもらうことが、社長の役割だということで。

これまではどちらかというと、数値思考、成長思考、規模思考だったわけですが。そうじゃなくて、目的思考、社会的課題を解決する味の素に関しましては、「食と健康の課題解決に生まれ変わる」ということを宣言するのが、まず最初の社長の仕事でした。

多くを社内で育成した、DXを推進するための3つの人材

デジタル・トランスフォーメーションにつきましては、一橋大学ビジネススクールの名和(高司)先生が、たまたま社外(取締役)でしたので、先生の提唱するDXn.0モデルを採用しました。

すなわち、DX1.0がオペレーションの変革であり、DX2.0が業界を超えたエコシステムの変革で、DX3.0がまったく新しい事業への挑戦。最終的には、食と健康の課題解決の社会的変革のリーダーになることを目指しております。

やり方もあまり工夫はないんですが、通常の縦ライン。我々の場合は事業本部が3つありますが、それに対して横軸機能として、CDOがリードするDX推進委員会。機能は左に書いてあるように5つありますが、これとのマトリックスでやることにしました。 

1つ、ノウハウがあり工夫したのは、海外事業本部もかなり大きな事業になっているんですが、ここは縦ラインだと非常に長いので、DX推進委員会とCEOが直で本部とやることにしました。これは非常に効果がありました。

デジタルでいうと、無形資産であり、人材の育成が必要になります。我々は3種類の人材が必要だと考え、主に社内で育成し、必要なプロフェッショナル人材は外部から採用することにしました。ビジネス人材にデジタルリテラシーを加えた、DX人材ですね。

それと、データサイエンティスト人材と、それらの間を取り持つインターフェースを開発するシステム開発者。この3種類で、いずれも教育については外部機関を利用しましたが、一人ひとり(の研修)に発生する費用を会社が出すことにコミットして、人材育成をしております。

最後のスライドになりますが、この年表の上にありますように、DXの道のり自体はまだ3年目ですが、最初はポリシーを作って、準備委員会、推進委員会、そしてDX部という専門組織を設立して、今日に至っております。

その前の段階として、DXというよりも全体の変革ということでXXをやってまいりましたし、XXの締めとしまして、最終的に会社のガバナンス形態が委員会設置会社へ移行しました。こういうことで、当初1,640円くらいまで下がった株が、おかげさまで今日も3,100円を超えるような状況になっております。簡単ですが、以上がご紹介です。

多田洋祐氏:福士さま、ありがとうございます。

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