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〜出光はData is The New Oil! 石油からデータビジネスへ〜100年企業のデジタル変革(全1記事)

ガソリンスタンドを燃料供給だけの拠点にしない 「新しい時代のよろずや」を目指す、出光興産のDX

コロナ禍で、企業におけるデジタル化への対応は急務となり、大手企業でもDX人材の採用・DX化を推進する組織が強化されています。そのような中で行われた株式会社ビズリーチの主催イベント「創業70年以上のCDOが語る DX人材を活かす真の人事・組織戦略とは」に、味の素、出光興産、パイオニアの3社のDX推進部門の責任者が登壇。本記事では、カーボンニュートラルという大きな転換点を迎えている出光興産の三枝幸夫氏のセッションをお届けします。

DX推進で大切な3つのこと

多田洋祐氏(以下、多田):では、引き続き三枝さま、よろしくお願いします。

三枝幸夫氏(以下、三枝):はい、よろしくお願いします。ではあらためまして、出光興産の三枝でございます。

まず自己紹介させていただきますと、私は今、出光興産でCDO(最高デジタル責任者)とCIO(最高情報責任者)をやっておりますけれども、一昨年まではタイヤメーカーのブリヂストンに長らく勤めておりました。その中でも、生産技術の開発を長くやっておりまして、工場の生産性をいかに上げるか、品質をどう上げるかといったことに注力していたんですけれども。

もの作り、製造メーカーとしてのあり方が問われるような時代になって、後半はCDOとしてバリューチェーン全体の変革を引っ張ってきたという経歴で。昨年、縁ありまして出光興産に移ってまいりました。

これまでやってきた中で、DXを進めるには大切なことが3つあると思いまして。1つ目は、先ほど(味の素の)福士(博司)さんもおっしゃられていましたけれども、リーダーシップですね。トップが「変革していくんだ」と、本気の意思表示をすること。

2番目は、トップだけ突っ走ってもついてくる人材がいないと困るので、しっかり人材を揃えること。そして、なんと言っても3番目で、会社全体を変革していくために、一部の人材だけが一生懸命走るのではなく、従業員みんながチャレンジするようなムードにしていく、風土を変えていく。その3つが重要だなと思っておりまして。

せっかく出光に移ったんで、これを全部やってみようとトライしているところでございます。

コロナ禍、そしてカーボンニュートラルという大きな転換点

もともと出光興産は、映画にもなった『海賊とよばれた男』のモデルにもなったように、いろいろチャレンジャブルなことをやってきた歴史がある会社でございます。現在は、燃料に加えて、電力や基礎科学、そのほか高機能材や資源開発など、さまざまなビジネスをやっておりますけれども、化石燃料を使った燃料に、売上・利益ともに大きく依存してるという実態でございますが。

毎日、新聞を開けば、カーボンニュートラル。自動車、ガソリン車をやめて電気自動車にするんだというのが出ている中で、我々の主力事業である燃料はこれからどんどん需要が少なくなっていくところで、大きな変革を迫られている状況でございます。

今日のテーマ「70年以上の企業」でございますけれども、出光興産は1911年に創業しまして、今年110年になりますので、70年以上は達成しております。創業以来、第2次世界大戦やオイルショックなど、さまざまな危機を乗り越えてきたんですけれども。

今回まさにコロナ禍、それからカーボンニュートラルという、当社にとってものすごく大きな転換点に差し掛かっている中で、DXを使って次の成長軌道に乗せていけないかというチャレンジでございます。

DXを進めるための組織と人づくりを行う

「デジタル変革ってなんですか?」と従業員に聞いたら、みんな違うことを言います。AIを入れることだとか、IoTをやることだとか。

そうではなくて、みんなで会社のビジネスを変えていく活動なんだ、と標榜しておりまして。内部のDX「Digital for idemitsu」、エコシステム作り、そしてお客さまへの新しい価値提供。「この3つをやっていくんだ」と、取り組みを進めております。

まず最初に手を付けたのが、プラントの保全の業務ですね。これは、経営課題として燃料の需要がどんどん減っていく中で、工場は老朽化して操業・維持コストが上がっている。だから現場には「コストをもっと下げられないか」と指示がくるんですけれども、現場はベテラン技術者の定年退職と重なって、非常に中堅技術者に疲弊、負担がいっていたと。

ここをテクノロジーでうまく解決できないかとチャレンジしました。現場の技術者をお客さんに見立てたデザインシンキング。それから、アジャイルでクイックにソリューションを作って体験してもらう。こういったことを進めることで、現場の人たちに「DXってこういうもの。いいことでしょ?」と知ってもらうことを進めました。

それからマーケットでは、ガソリンスタンドもこれからは、ガソリンを供給するだけの拠点としてはどんどん需要がなくなっていきますので、地域に必要なさまざまなサービスを提供できるような、「新しい時代のよろずや」になっていこうという活動を進めております。

DXの戦略部隊が口だけで勝負して、マネジメントが「やらなきゃだめだね」と思っても、現場はついてきません。ですから、やっぱり現場にしっかり入り込んで、最初のうちは全部手取り足取りやってあげて、「いいでしょ?」というのを体験してもらって。

次に、「これ、自分たちでできたほうがいいでしょ? じゃあ一緒にやりましょう」と共創型にしていって。最後は、各事業部が自ら自走できるようなネイティブ組織にしていく、ということをやっております。

言い換えますと、「DXはいいものなんだよ」というプレゼンスを社内で上げて、現場の人たちを仲間にして増やしていく。DXを進めるための組織と人づくりを進めていく、ということです。

お客さまのニーズへの対応に必要なテクノロジーをサポートするのがCDO

私が出光に入ってすぐコロナ(禍)になってしまいましたので、在宅勤務になって。在宅勤務でみんな余裕があるのではないかと思って、啓蒙活動として社内向けのWebセミナーをやってみたら、思ったとおりたくさんの人に参加していただきました。

これに味をしめて、有識者の方を呼んだり、実際に現場で保全のデジタル改革をしたメンバーに登壇してもらったりということを定期的にやりました。

塾も3つ立ち上げました。先ほどご紹介しました、新しい時代のよろずやを立ち上げていく「よろずや塾」、カーボンニュートラルを進めるメンバーを育てる「CNXセンター塾」、それからビジネスそのものを変えていく「ビジネスデザイン塾」。この3つを通じて、DXリテラシーと起業家マインドを醸成していく、という活動をスタートしたところでございます。

要は何が言いたいかと申しますと、デジタル変革だからと言って「技術、技術」「テクノロジー」ということではなく、ビジネスドリブンで、お客さまにとって必要なことをしっかり考えていく。そのために必要なテクノロジーをサポートしていくのがCDOではないかと思って活動しております。以上でございます。

多田:どうもありがとうございます。共通項がおありなようにも感じましたし、また違った観点もあったなと思いました。ぜひまた後ほどお聞かせください。

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