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『ミッション』を語り続けるリーダーが組織を変える~「ついていきたい」と思われるリーダーになるには~(全6記事)

社長を含め、どの役員も「自社のビジョンを語れない」問題 伝教大師の言葉「一隅を照らす」に基づく行動が、仲間を生む?

多くのビジネスパーソンは、上から「ミッション」が落ちてくるものの「なぜ、今それをすべきなのか?」「その中で自分の活躍がどのように作用するのか?」を考えず、与えられた仕事を淡々と処理しがち。そのような会社では社員に「ミッション」が浸透しません。すると行動是正や行動強化に繋がらず組織文化が根付かないため、「世の中をよくするために会社があり、その一員として自分がいる」と理解するのは難しいと考えられます。そこで、スターバックスコーヒージャパンの代表として業績向上・ブランド定着に多大な功績があり、著書『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』が35万部を超えるベストセラーとなっている、株式会社リーダーシップ コンサルティング代表取締役社長・岩田松雄氏が登壇したウェビナーの模様を公開します。

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「この事業部・この課のミッションは何か?」

斉藤知明氏(以下、斉藤):では、続けさせてください。こちら、けっこう難しい問いだなと思ってるんですけれども。「社長含めた役員にビジョンを求めたら、誰一人として語ってくれませんでした。どうも一度は考えたようですが、役員一人ひとりで使う言葉が違っていて、まとめることができなかったようです。どうしたらいいのでしょうか?」

という問いです。一部門の責任者をしている私としては気になるところですが、どうしたらよろしいでしょうか。

岩田松雄氏(以下、岩田):例えば講演なんかすると、社長から「ミッションの浸透どうしたらいいんですか?」って質問があった一方で、わりと若い方から「自分はこの会社のミッションに共鳴して入った。でも自分の上司は売上や利益の話ばかりしている。どうしたらいいですか?」って質問が来るんですね。

トップと若手の人というのは当然、影響度が違うんです。私がその時に言うのは「一隅を照らす」っていう伝教大師(最澄)の言葉です。つまり「自分の足元を照らしなさい」と。

世の中全体を照らそうと思うと、太陽みたいに核融合しないと、それぐらいのパワーがないと世の中全体は明るくはならない。でも自分の足元・自分の部署を照らす、つまり会社のミッションからきている、自分の目の前の仕事のミッションは何かを考え、それを愚直にやっていくってことですよね。

そうすると、必ず仲間が増えてくるわけです。それが1人、2人、3人となってくると、影響度が高くなっていきます。上司も巻き込んでそういった「会社のミッション」、あるいは事業について考えてみる。「会社のミッション」となると大きくなってくるから「この事業部・この課のミッションは何か?」ってことを話しあって。

それは、もともとの「会社のミッション」から下りて、より具体的になってくるものですね。会社のミッションに方向性があったものを作って「我々の部署でできること」あるいは「私でできることはなにか?」を考え、それをやっていけばいい。

すると必ず、それを見てる横の人が「私も一緒にやりたいと思います」といった仲間を増絵ていく。一つひとつの明かりは小ちゃくても、人が増えてくると全体が明るくなってきますよね。

もちろん、一番いいのは社長ですね。半分冗談で言いますけど「社長の机の上に、僕の本『MISSION』を置いてください。それがいいですよ」って話をするんですね。読んでくれるかどうかわかりませんけどね。

斉藤:ありがとうございます。本当に難しいですよね。難しいですけど「そこが変わらないと」っていうところはありつつも。ただ、おっしゃっていただいた「事業部としてのミッション」とか「チームとしてのミッション」っていうのはあって、そこを定義していく。

活動していって、そのチームが変わったなって思うと、経営者もバカじゃないんで「なんかあのチーム変わってきてすごくいいな。なんで?」って聞きに来て。それがどんどん、逆に経営にも転用させていくぐらいの気概でやると、むしろいいんじゃないかという。そういう観点ももしかしたら今の岩田社長のご回答にはあるのかなと、受け取らせていただきました。

いいことは褒める。そうじゃないことは注意をする

斉藤:次のご質問はすごく気になるなと思ってるんですけれども。

「『スタバではオペレーションマニュアルはあれど、サービスマニュアルはない』という言葉にハッとしました。ただ、その上で『何をしないか?という『NGゾーン』みたいなものを決めるのって大事なんじゃないかと思いますが、岩田さんはどう思われますか?」

という問いです。

岩田:これについては、毎回同じことの繰り返しだったら定義できるけど、実際、お店では毎日違うことが起こってますよね。スターバックスのお店でやってることは……これは英語の訳なので言葉が堅いんですけども「行動是正と行動強化」。つまり、よかったことは褒めてあげる。「今あなたは、スターバックスのミッションに従った行動をしてくれましたね。ありがとうございます」。これが行動強化ですよね。

行動是正っていうのは「今のお客さんへの対応は、本当によかったんでしょうか?」。もちろん、叱るってことはあまりしませんが、問いかけて。「いや、あれはこうやるべきでした」「あの言葉づかいはちょっとよくなかったです」とか、そういうことをお店で常に、ミッションに従ったフィードバックをやってるわけです。いわゆるコーチングみたいなことですよね。

そういうことの繰り返しによって、スターバックスのお店って、1,000店舗超えてもあのクオリティが保てるんだと思うんですね。結局、そういう地道なこと。いいことは褒める。そうじゃないことは注意をする、もしくは本人に気づかせるっていうことを、地道にやっていくしかない。

それはもう、究極はトップですよ。私は、先ほど話したシナモンロールを届けたFさんのエピソードについて、全社員にメッセージを発したわけです。ああいった手紙でいただいた内容を、全社員に共有化して「このFさんはすばらしい」って褒めたんですね。

そういうことの繰り返しでしかない。つまり、よかったことは褒める。そうじゃないことは、誰かを吊るし上げる必要はないから「実はお店回っていてこういうことがあったんですが、あれで本当によかったんですか?」っていうことを、社長としてできるだけ、周りや自分で聞いてきた内容を、みんなに問いかける。

「あれはボディショップらしくないんじゃないですか?」とか「こういう話を聞いたけどどうなんでしょうか?」ということは、常に問いかけてましたよね。

スタバのお店やディズニーランドにある「空気感」

斉藤:NGはほぼ規定してないってことなんですよね。

岩田:要するに、ミッションに従った行動をしてない場合は、もちろんNGですけどね。でも範囲って決めようがないですね。「ここからここまで」とか。例えば「シナモンロールは届けてもいいけど、コーヒー器具は届けちゃいけない」とかね。値段が高いからかわかりませんけど、こんな話って決めようがないですよね。

斉藤:でも、グングン前に進んでいく気概を感じますね。ミッションにおいてやりたいことがずっとあって、それに対して一人ひとりがとった幅の広い行動が「これは“らしい”よね」って称賛されていくと、前に進むエネルギーばっかり生まれますよね。

岩田:なかなか難しいですよね。それはやっぱり話し合うことが大切だと思います。「本当にいいのか?」と。ある観点からは「イエス」かもしれないし、ある観点からは「ノー」かもしれない。考え方によって、いわゆるケーススタディがどんどんできてきますよね。そういうことじゃないかなと思います。

本にもいっぱい事例を書きましたけど、さっきのFさんの話でお手紙いただいた時に「これ、Fさん本人が書いたんじゃないか?」って思うぐらいの話だったわけですね。それくらい驚いちゃって、調べたんですよ。お手紙に住所が書いてあるから「本当にこの家あるのかな?」って。で、実際にそこに(手術を受けた少女の)家があったと。

社長になりたてだったのでそういう疑念もあったんだけど。あまりにもできすぎた話なのでね。だけど、半年も社長やってると「こういうことはお店では日々起こってるな」と感じたんですね。その「空気」としか言いようがないんだけど、本当にみんながそういうことを信じてやってくれてるっていう。

この言葉(「本質において一致」「行動において自由」「すべてにおいて信頼」)をみんなが知ってたかどうかわかりませんけど、ミッションに従った行動をしていくとていうことを、みんなが徹底してるというか、体現する。ある意味では、そういうことができない人は辞めていきますよね。クビにすることって滅多にないけれども、そういうことにアグリーできない人は辞めていきます。

「100パーセント雇用を守りましょう」みたいな話はしてないし、ほとんどアルバイトですからね。有期の人たちなんで、次の時に契約更新しないってことは当然やってると思いますけどね。

斉藤:「ミッションに共鳴した人が集まる」っていうところについて、のべつ幕なし「全員を守るため」をとなるとブレる。だからからこそ社長として「それがいいのか、悪いのか?」という価値基準の判断をしっかり定義するし。いいものはいいと伝えて、それをどんどんエネルギーに変えていく。そういう経営スタイルというか、ミッション。

岩田:「私が」っていうよりも、お店がそういう空気感を持ってますよね。例えば、みなさんディズニーランドに行くと、ゴミを(ゴミ箱以外のところに)捨てないですよね。きれいだし。そういう空気がありますよね。でも、同じ人が実は舞浜駅に行く途中(の道)でゴミを捨ててる可能性はありますよね。まさに、その空気としか言いようがないです。「それが当たり前」。

その空気感ができてるから、私は(スターバックスを)すごいと思ったわけだし。作った創業者であったり、最初の5年、10年でそういうカルチャーを作ったことが本当にすばらしい。私はそれをちょっとブラッシュアップしたぐらいの話にすぎないんです。やっぱり、すごいカルチャー持ってる会社だと思いますけどね。

みんながそこに「参加したこと」が大切

斉藤:ありがとうございます。ではお時間となりましたのでので、本日は終了とさせていただければと思うんですけど。最後に岩田社長、ひと言ございますでしょうか。

岩田:みなさんありがとうございます。「ミッション」っていう言葉でなくてもいいんです。そういう「自分たちは何のために働いてるのか?」を考えてもらえればいいし、経営者の方は自分たちの理念・ミッションをまずは作るということ。

作るのも、社長がいきなり作っちゃってもいいと思いますけど、できればそれをみんなで作って。みんながそこに「参加したこと」が大切なんですね。そうすると、説得・納得できるわけですから。「みんなで作ったけど、守られてないよね」という言い方ができるじゃないですか。もしこれから作るんだったら、みんなを巻き込んで。最終的にはやっぱり社長が決めるべきだと思いますけれど、でもみんなを巻き込んで「ミッション・ビジョン・バリュー(行動指針)」を作ればいい。

あとは、明文化していくこと。今日の「ミッション・ビジョン・バリュー」というのは、非常に難しい言葉で抽象的な話なので。もう一度、言葉の定義をしっかりした上で、その言葉自体をしっかりみんなで共有化した上で、ミッションを作っていく。あるいは、みんなで共有していく、みんなに浸透していくことをされたらいいんじゃないかなと思います。

以上です。ぜひ、みなさんがんばっていただきたいなと思います。本を読んでいただいたら、その内容も細かく書いてますので、参考になるかと思います。以上です。今日はどうもありがとうございました。

斉藤:ありがとうございました!

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