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『ミッション』を語り続けるリーダーが組織を変える~「ついていきたい」と思われるリーダーになるには~(全6記事)

スターバックスがコーヒーを売るのは、あくまでも“手段”? カップに絵を描いたり、客の名前を覚えたりしてくれる理由

多くのビジネスパーソンは、上から「ミッション」が落ちてくるものの「なぜ、今それをすべきなのか?」「その中で自分の活躍がどのように作用するのか?」を考えず、与えられた仕事を淡々と処理しがち。そのような会社では社員に「ミッション」が浸透しません。すると行動是正や行動強化に繋がらず組織文化が根付かないため、「世の中をよくするために会社があり、その一員として自分がいる」と理解するのは難しいと考えられます。そこで、スターバックスコーヒージャパンの代表として業績向上・ブランド定着に多大な功績があり、著書『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』が35万部を超えるベストセラーとなっている、株式会社リーダーシップ コンサルティング代表取締役社長・岩田松雄氏が登壇したウェビナーの模様を公開します。

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スターバックスがコーヒーを売るのは、あくまでも“手段”

斉藤知明氏(以下、斉藤):会社として、その「ミッション」とか「浸透」「共鳴」という言葉を岩田社長は使ってらしたじゃないですか。共鳴してる人を集める。これってたぶん、さっきの「個人のミッション」も含めた、構築されていくプロセスを会社は材料にできると捉えるといいのかな? っていうのは、すごく感じました。

岩田松雄氏(以下、岩田):人生において、仕事の占める割合は時間的にもその他の意味合いでも大きいですよね。「公務員みたい」という言い方は変だけど、あくまでも会社っていうのは「生活の糧を得る手段」で。「アフター5で自分のミッションを達成する」のも、なくはないんだけれども。仕事してる8時間なり9時間なりって、もったいないと思うんですね。

だからその仕事に、自分が意義を見出す。スターバックスとスターバックス以外のコーヒーショップって、やってること自体は同じです。一般的なコーヒーショップって「時給8〜900円で、9時〜17時で働いてます」と。それだけですよね。

でも、スターバックスの人たちは、あくまでも「inspire and nurture the human spirit」。つまり「人々の心に活力と栄養を与える」というミッションがあって、その手段としてコーヒーを売っていると。そのミッションを一人一人のパートナーが共感してくれているから、別に会社がなにも言ってないのに、カップにニコちゃんマークを描いてくれたり、お客さんの名前を覚えて「今日もいつものやつですか?」とか、ちょっと違う時間に行ったら「今日は遅いですね」と言ってくれるんですね。だってコーヒーを売るのはあくまでも手段で、目的(ミッション)は人々の心を潤すことだからです。

これ、会社側が強制してないんです。会社の「nurture the human spirit 」というミッションに従った行動を、みんなが自然としてくれてるわけですね。

それはやっぱりミッションを体現してるから。コーヒーはミッションを達成する手段であって、ワンオブゼムです。僕みたいなオヤジがスターバックスに行く理由って「コーヒー飲む」というよりは「ひと言声かけてもらうために行く」わけです。あの笑顔を見るために行ってるようなもんですよね。

斉藤:(笑)。

岩田:それがスターバックスの存在理由、ミッションなんですね。コーヒーはその手段にすぎないんです。

経営者あるいはリーダーの、一番の仕事とは

斉藤:個々人が一人ひとりのお客さんだったり、市場・マーケットとの対話を通して、どんどん自分から「あっ、これっていいな」って気づく。ニコちゃんマークを描いたり「今日は早いですね。遅いですね」という対話の中で、相手がほっこりしてるのを見て「これって私のやりがいにつながってるかもしれない」「好きなことかもしれない」という言語化がされてきて。

それを対話としてできているということが、ある意味「得意なこと」かもしれない。なおかつ「人のためになってる」という実感が伴うと、自分のミッションとして言語化されていくものが、どんどん層状に厚くなっていって。「得意なこと」「好きなこと」が広がっていくと、ミッションも広がっていく。

岩田社長みたいに、日産の一社員からさまざまな経営をしていった時に、この「経営者を再現性高く生み出せるかもしれない」というところ。「好きなこと」「得意なこと」が見つかったから、ミッションがアップデートされていった。そういうプロセスが、人生を通してどんどんできていくといいんだろうなと。

この3軸を整理していく機会を「対個人」で作れると、会社としてもいいんだろうなと感じました。

岩田:そうですね。経営者の一番の仕事というのは、今日のテーマにも書かれてるように、やっぱり「ミッションを語ること」です。それは結局、自分の仕事に意義づけ・意味づけすることですよね。スターバックスのように、直接お客さまから「ありがとう」と言ってもらうというのは、僕の言葉でいうと「火花散る瞬間」なわけです。

例えば、BtoBのような仕事。Mr.Childrenの「彩り」っていう曲が、僕のテーマソングなんです。あれはまさに、ミッションのことを歌ってる歌だと思っていて。あの曲の歌詞は「目の前の単純作業が回り回って、誰かの笑顔につながってる」っていう内容です。桜井(和寿)さんのサーファーのお友だちが、夜勤のために途中で帰っちゃったと。その彼に捧げた。

部品会社さんで自動車の部品を作ってる。それって直接、お客さんから「ありがとう」って言われないけど、それが車の一部となり、その車でどこかの家族がキャンプに行って笑っている姿が想像できるわけですね。

経営者は、自分の仕事は単に「このギアである」と言ってもやる気にならないですよね。でもこのギアが車について、その車が家族を安全にどっかに運んで、みんなでワイワイ言ってる姿。その時にこのギアも役に立っていると言えば、やりがいも生まれてくると思うんです。仕事って、よっぽどブラック……「働き方」の意味じゃなくて、反社という意味のブラック企業。麻薬売ってるような企業じゃない限り、必ずどこかの誰かの役に立ってるんですね。

経営者はちゃんとそれを語らないといけないと思います。経営者あるいはリーダーって、ミッションを語るのが一番の仕事なんですね。有名な話で、松下幸之助さんがまだ中堅企業の時に電球を作っていたんです。で、電球を最後に布かなにかで磨くおじさんがいたと。

松下さんが行って「あんた、いい仕事してまんな」と。「なんでやねん。電球拭くだけやないか」「いやいや。今までは暗くなったら絵本を読めなかった子どもが、あんたの磨いた電球をつければ、またウルトラマンの本読めるやろう」ってね。あるいは「今までOLさんが、駅から暗い道を通って怖かった。でも街灯がつくことによって安心して帰れるやろう。あんたええ仕事してまんな」って言ったんですね。

つまり「電球を磨く」ということ自体は本当に単純な作業だけど、それはすごく世の中に役立ってる。そう言われたら「よし、一所懸命に磨こう!」って思うじゃないですか。そういうことを語るのが経営者の仕事だと思うんですね。

ミッションが浸透すれば、その範囲内であれば好きに行動できる

斉藤:なるほど。ここでいったん、ディスカッションを仮締めにさせていただきたいなと思ってるんですけれども。(スライドを指して)こちらについて、岩田社長。

「ミッションがちゃんと語られて、かつ『個人のミッション』もある状態の組織はどうなるんですか?」という問いに対する、アンサーとしてご用意いただいた資料かなと思うんですけれども。こちら、あらためてご説明いただいてもよろしいでしょうか。

岩田:そうですね。仕事というか、日々やってることに「定型なこと」ってそんなにないですよね。「毎週、右から左に移すだけ」というような単純作業でない限り。つまり、すべての事象に対してマニュアルを作れるか? っていうと、用意できないです。常に想定外のことが起こっていきますからですね。

それを想定できないとしたら、基本的にミッションに戻る。細かなルールやマニュアルを作るんじゃなくて、そのミッションに従って行動すればいい。つまり、お客さんが大切だったら「お客さんにとってなにがいいか?」を考えて行動すればいいということです。

でも、なかなかそれができていない会社は多いので。「誰がお客さんだ?」となったとき、社内・上司を見てる人が多いですよね。そうじゃなくて。会社のミッションがあって、そのミッション達成するために自分たちが存在してるわけだから。

なにか迷った時はミッションに戻って行動すれば、その場で解決できる。もちろん、お金を使ったり大きなことだったら上司に相談することも必要かもしれないけれども。分厚くて何百ページとあるマニュアルって読めないし、覚えきれないですよね。それよりも私はは、ミッションがしっかり浸透していけば、その範囲内であれば好きに行動できると思うんです。でもそれは、会社と従業員の間に信頼関係がないとできない。

「本質において一致、行動において自由、すべてにおいて信頼」。私が好きな言葉です。

「ルールの上にあるものがミッション」

岩田:今日はお話ししなかったですけども、シナモンロールを届けてくれたパートナーがいてね。心臓病の手術のためアメリカに行く少女がいて、その子が「最後にスタバのシナモンロールが食べたい」って言ってたんです。そこでお店のFさんっていう人が、自分の判断で早朝にその商品を少女に届けてくれたんですね。

これって、ルール違反なんですよ。就業時間外に商品を持ち出してお金のやり取りするっていうのは、明らかにルール違反。だけど彼女は、スターバックスのミッションには「nurture the human spirit」があるから、そのミッションに従って行動してくれたんですね。つまり「ルールの上にあるものがミッション」だと思うんです。もし彼女が「そんなことやったらクビになる」と思ったら、さすがにやらないですよね。

それで、手術を受けたけどその娘さんは亡くなってしまったんですが、私はその心臓病の手術をした少女のお父さんからお礼状をもらって知ったんです。Fさんも「ルールを破っても会社は私のことをクビにしない。認めてくれるだろう」って信頼関係があるし、私はその手紙を読んで本当に感動したので、みんなに紹介したんです。だけども、全店で毎朝Fさんのようなことをされたら困るわけですよ。人も足りなくなるし、デリバリーサービスも本来はやってない。

でもみんなを信頼してるから「そんなバカなことしない」って前提が、僕の中にある。スターバックスではスタッフを「パートナー」って呼びますけど、お店のパートナーのみなさんには「こういうことやっていいのかな?」って迷ってる人がいっぱいる。

だけど私は社長として「Fさんすばらしい」って褒めることによって、みんなが「こういうことやっていんだな」って安心できるんですね。そういう事例を話す、いわゆるストーリーをしゃべるわけです。私は社長という立場からすると、やっぱり「ルール違反してもいい」とは言えないですよね。あくまでも、ルールは守るべきものです。だから、そこは阿吽の呼吸ですよね。

「ミッションさえ共有しちゃえば大丈夫だろう」という前提

岩田:会社がどんどん大きくなってくると、1人が不祥事を起こせば、あたかもみんなが犯人かのようにルールやマニュアルを作ったりするわけです。でもそんなことするよりも「何のためにこの事業をやってるか?」というミッションさえ、お互い共有化すればいい。もちろんマニュアルが必要な部分もあるんですよ。それは否定しないけれども、それよりもっと本質的なこと(=ミッション)を共有しておけば、その時々によって自分たちで判断できるわけです。

これはある意味では、エンパワーメントしてるわけですね。つまり「何をするか?」についての権限移譲をして任せている。だけど「ミッションは必ず共有化する」という話。そこからきてる「本質において一致」「行動において自由」「すべてにおいて信頼」っていうことです。

僕はスタバの社長の時、最初に出したマネジメントレターにこれを書いたんですね。僕はこの方針でやっていきたいと思ったわけです。スターバックスには、いわゆるオペレーションマニュアルはあるけれども、サービスマニュアルはないんですね。決して「交通事故が起こったら1杯コーヒー出してくれ」ってこと書いてないわけです。

それはミッションに従った行動である限りは、お店の人たちそれぞれの判断に任せるわけです。

斉藤:許可もいらないし、許可されなくても許してくれるだろうという信頼がある。なぜなら、本質において一致してるから。なるほど。

岩田:ルールやマニュアルもあっていいと思うんだけど、その作り方。つまりみんなが犯人かのような作り方じゃなくて「ここからここまでは自由にやっていい。でもその先はダメだよ」っていう。結果的に同じかもしれないけれども、みんなを守るためにルールを作るというその考え方。

何か不祥事が起こると「みんな同じように悪いことするだろう」という前提で、ルールやマニュアルを作るわけですね。そうじゃなくて、まずは「自由にやってくれ」と。でも「この先はダメだよ」「ここから先は上長の判断をあおぎなさい」ということは必要です。やっぱり、それぞれに対する権限の範囲が限られてますからね。100万円なのか1,000万円なのかによって。そういうことですよね。

言いたいことは「性善説か、性悪説か?」って話もあるけども、基本的に「ミッションさえ共有しちゃえば大丈夫だろう」という前提がある。つまり、お互いに信頼してるわけです。会社は社員のことを信頼してるし、社員の人たちも会社のことを信頼してるから、こういうことが成り立つわけですね。

だから「本質において一致」「行動において自由」「すべてにおいて信頼」。本当に、僕は深い言葉だと思ってるんです。

「感情報酬の社会実装」をミッションとする、Unipos

斉藤:ありがとうございます。ではここで少し「Unipos」のご紹介をさせていただいてから、Q&Aに移っていきたいなと思います。

ちょうどUnipos社でも「ビジョン」「ミッション」の再定義をしてるんですよ。もともと「ビジョン」は「『はたらく』と『人』を大切にできる世界を作る」と申し上げていたんですけれども。「ミッション」として「感情報酬の社会実装」と言い換えたんですね。

ミッションについて語り始めると長くなるんで割愛しますが。もともとUniposは、経営理念だったり、会社として大事にしている行動、みんながミッションとして大事にしてる行動に一人ひとりが貢献した時に、それを感謝・称賛・激励・労りによって後押ししようという、そういうサービスを提供させていただいてます。

例えば岩田社長が「『本質において一致』『行動において自由』『すべてにおいて信頼』という組織にしていくんだ」って発信されたとして。「それにすごく共感しました。私はついていきます!」というメッセージが集まったりとか。それを体現してる人たちに対して称賛が集まったりするような世界を作っていきたいなと思って、このUniposというサービスをご提供しています。

簡単な仕組みでいうと、AさんがBさんに対して「こういうことしてくれてありがとう。何ポイント」という感謝のメッセージを、ハッシュタグ「#失敗を恐れず、前向きに挑戦する」とかを付けて送れる。Bさんの行為が会社にとって大事な行動指針やクレドに基づいていた場合は、Aさんからそんなメッセージを送ることができますという仕組みなんですよ。

実際にFringe81の社内でやってるところですと、最近「#感情報酬の社会実装」というのを作ったら、社長はこのハッシュタグをつけて語ります。「それはどういうことなのか?」と。それで社長が語ったことに対して、一人ひとりが互いの行動を称賛し始めて。その称賛したことを「#感情報酬の社会実装 ってこれなんじゃないか?」っていうメッセージをつけて、語り始めるわけですよね。

僕は「個人のミッションの言語化」とか「会社のミッションの自分ごと化」って、すごく難しいなって思うんです。でも、先ほどのスターバックスさんの事例もありましたけれども、一つひとつの相手の行動を見る。もしくは、自分の行動を表現される時に、もしかしたら「得意なこと」「好きなこと」「社会の役に立つこと」として「これがミッションに通ずるのかもしれないな」という再解釈が進む場所が必要なんじゃないか? と思っていて。そこにUniposがお役立ちできるのかな、というのがこのサービスです。

他にも「メンバーがどういうことを実際にしてくれてるのか?」については、相手をフォローしていると「自分のチーム・自分の店舗のみんながこういうことしてくれてるんだ、こういうことをやり始めてるんだ」というのを知って、拍手して「いいね!」で後押しできる。そんな機能があったりするんですけれども。

そちらを通して、サービス業のみなさん、メーカーのみなさん、あとは銀行さんなんかでも最近はご導入が進んできておりますので。

ぜひご興味お持ちの方は、こちらのUnipos。今回、岩田社長に語っていただいたことから、もう少し実践的といいますか。実際に落とし込んでいくための「エンゲージメントの高い組織作り」と「組織風土改革ってどうしていくんだろう?」について、Uniposも交えて実践プロセスをご紹介するウェビナーを開催しております。

こちらはNEWONEさんという、組織作りの専門家のみなさんとご一緒させていただいてお届けしておりますので、ぜひお申込みいただければと思っております。

「わかりやすい言葉」が浸透を後押しする

斉藤:岩田社長。これまでUniposについてご紹介させていただいたことはないかな? と思うんですけど。さっきの話をお聞きになって、いかが思われましたか?

岩田:単純に「感情報酬の社会実装」って言葉が難しいから、もうちょっと違う言葉がいいかなって。わかりやすさがやっぱり必要だと思うので。人事系の人はこの言葉で通じるけど、一般社員の人たち「感情報酬の社会実装」って言われても、ほとんどの人は「えー?」って思うでしょう。だから、もうちょっと易しい言葉を使う。

言葉、言語化するのって、やっぱりとても大切です。例えばスターバックスだと「サンクスカード」とか「GAB(Grenn Apronn Book)カード」って言い方してたり。もうちょっとわかりやすい言葉を使われたほうが、もっとより浸透しやすいかなって思いました。

斉藤:ありがとうございます(笑)。まさにそこはミッションで整えていきます。難しいですよね、こだわりを出したいポイントとわかりやすさと共感しやすいってのって。

岩田:そうですね、本当難しいと思いますね。

斉藤:ありがとうございます。

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