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脳科学で導くあなたのチームビルディングに足りないもの~脳磨きが幸せな強いチームをつくる~(全6記事)

「全員が普通のチーム」でも、「天才のチーム」に打ち勝てる 強い組織作りに欠かせない3つのポイント

新型コロナウイルスの蔓延により、多くの企業がテレワークを取り入れた働き方を余儀なくされました。未だ主要都市では緊急事態宣言・まん延防止等重点措置が適応され、顔を合わせる機会が減った結果、特に社員コミュニケーションやチームビルディングが課題になっている企業も多いはず。そこで、脳科学者/医学博士の岩崎一郎氏を招き、脳科学という今までとは違うアプローチにより、幸せな強いチームの作り方を探求します。本記事では、組織作りに欠かせない「集合知性」について解説しています。

スポーツでも発揮される「集合知性」とは何か?

岩崎一郎氏(以下、岩崎):まず、「集合知性」についてお話しさせていただきます。集合知性っていったい何か? 団体競技のスポーツでは、昔から経験的に知られていることです。

例えば、2つのチームがあります。チームAが「全員が勝利に向かって心を1つにしているチーム」であるのに対して、チームBが「各選手の能力は高いんだけども、個人タイトルに目が向いていて心がバラバラなチーム」。

このうち、いざという時に底力が出せる、心が1つになったチームというのは、スポーツをされたり、あるいは観戦される中で経験されたことがあると思います。

心が1つになったチームでは「1+1=2」にならずに、5にも10にも、場合によっては100にもなっていくということがわかっています。実は知性面でも同じことが起こるというのが、最新の脳科学の研究からわかってきました。みんなで心を1つにして力を合わせることで、天才知性にも勝る優れた力を発揮できる能力。これが、集合知性です。

一人ひとりは「普通」でも、集団では力を発揮するチーム

岩崎:集合知性と個人の知性を調べた、アメリカ・カーネギーメロン大学の研究があります。120人に協力をしてもらって、最初に個人の脳機能テストを受けてもらいます。その中には、IQ=知能指数を調べるテストなども含まれています。

個人の能力テストを受けてもらった後、今度は3人1組の40チームを作ってもらい、チーム力テストを受けてもらいます。いろいろあるんですが、例えば「デザイン」というのは、チーム対抗で建築物のデザインをしてもらって、それを競い合う。

「発想力」は、新しいアイデアをチーム対抗でどんどん出してもらう。「事務処理能力」は、コンピュータゲームみたいなものをチーム対抗で行う。全部で12ほど、まったく違う分野のチーム力テストがあります。その結果、どうなったのか? 縦軸に個人の知性、横軸にチームパフォーマンスの関係を表したグラフでお話しします。

グラフの一番下、「全員が普通の知性のチーム」は、相対的にこれくらい(全チーム中もっとも低い数字)のチームパフォーマンスです。グラフの下から2番目の「全員の知性が平均して高いチーム」はチームパフォーマンスが上がり、3番目の「1人だけが天才知性のチーム」だと、天才に引っ張られるので、チームパフォーマンスはさらに高くなります。

ここまでは想定した範囲内だと思うのですが、3番目の「1人だけが天才知性のチーム」を超える「ぶっちぎりのチーム」が見つかりました。この4番目のチームは、全員が天才なのかというと、実は個人は普通の知性でした。つまり、グラフの1番目のチームと4番目のチームは、個人で見たら差がないんですが、チームでみるとぜんぜん違うんです。

「集合知性」は「天才知性」を超えうる

岩崎:何が起こってるのかをさらに調べていくと、人の脳には集合知性を発揮する能力が備わっていている。それが非常に高く発揮された時に、このような天才知性を超えてしまうことが起こるとわかってきました。

(集合知性が発揮されると、)天才知性を超える高いパフォーマンスが発揮できる。それからお互いの脳がシンクロするので、みんなで“大きな脳を1つ持ってるような状態”になる。そして、お互いの良さが相乗効果を発揮する。みんなの脳が活性化して、やりがいや生きがいを感じる状態が作られます。

それから、集合知性の1つの特長として「分野を超えて高いパフォーマンスが発揮できる」ということがわかってきました。

ちなみに稲盛和夫さんの経営は、最初は製造業である京セラ、それから第二電電、今のKDDIの前身事業ですね。そしてJALと、まったく違う業種業態ですが、高いパフォーマンスが発揮できているんです。これは、集合知性の1つの特長であることがわかっています。

集合知性を発揮するための、3つのポイント

岩崎:集合知性を発揮できると「なんかすごいことが起こりそうだ」というのを感じていただけたと思います。では、どうしたら集合知性を発揮できるのか?それに必要な3つの要素についてお伝えします。

まず1つ目「メンバー同士がお互いを理解し合って、気持ちを汲み取れる」。簡単に言うと「相手の立場に立てる」ということですね。

そして2つ目「全員が対等に発言できる」。言い換えると「本音でお互いに語れる」、もしくは本音を相手にぶつけるというと、ちょっと激しい言葉になりますが「本音を言い合っても大丈夫な関係である」。心理的安全性があるというところですね。

そして3つ目「チームに一体感がある」。これは、みんなで共通の目的に向かって、心が1つになっている状態です。

この3つがうまく重なり合うと、集合知性を発揮できることがわかってきました。

「リーダーシップ」と「マネジメント」の違い

岩崎:では、集合知性を発揮するために、あるいはその3つの要素をうまく満たしていくために、リーダーシップとマネジメントがどのように関係するのかということを、これからお伝えさせていただきます。

リーダーシップとマネジメント。似たようなものに思われている方、もしくは混同している方もおられるかもしれませんが、実はまったく違うものであるということが研究からわかってきました。

「原動力」「対象」「土台」「定義」の4つの視点から、リーダーシップとマネジメントを比べていきたいと思います。まずリーダーシップなんですが、(スライドを指して)上からいくと、リーダーの人間的な魅力、もしくはリーダーの持ってるビジョンの魅力が「原動力」になります。

(「対象」の)メンバーの一人ひとりと『土台』の信頼関係を築いていくと、例えばリーダーが「今度みんなでこういうことをやろうよ!」という提案をした場合、チームメンバーの人たちが「それはいいですね。ぜひやりましょう!」「こんなふうにやるとうまくいくと思いますよ!」みたいな感じで、影響力を発揮します。いい意味での影響力を持っている状態が、リーダーシップ(の「定義」)です。

それに対して、マネジメントでは『原動力』になるのは権限。そして、(「対象」は)組織全体に一様に働きかける。「土台」になるのは、規則やシステムになります。ですので、組織に秩序と効率をもたらす仕組みというのが、マネジメントの『定義』なんです。

リーダーシップのないマネジメントは「押しつけ」

岩崎:もう少しわかりやすく言うと、権限のある「なんとか長」みたいな人が、組織全体に向かって「今度こういう規則を作ります。それが守れない人には罰を与えます」みたいな感じの仕組みを導入していくのが、マネジメントになります。それぞれ、影響力と仕組みということで、まったく違うものなのです。

このリーダーシップとマネジメントは、どっちがいい・悪いということではありません。どちらも組織運営には大事なことなんですけれども、リーダーシップのないマネジメントは押しつけになり、集合知性が発揮できない組織を作ることがわかっています。

順番で言うと、リーダーシップ(影響力)があって、マネジメント(仕組み・ルール)を入れていくとうまくいく。リーダーシップの中には「信頼関係を築くステップ」と「やる気を高めるステップ」があって、実はこれも順番が非常に大事です。最初に必要なことは「信頼関係」の構築です。

(スライドを指して)今、楕円上に7つの言葉(「信頼関係」「一体感」「幸福度」「助け合い」「成長意欲」「パフォーマンス」「やりがい」)が載っています。(これを使って)リーダーシップとマネジメントの違いという視点から、お話をしていきたいと思います。組織がまったく違ったあり方になるということです。

メンバーが「やらされ感」を感じる組織の特徴

岩崎:まず、「リーダーシップがないマネジメントだけの組織」。押しつけが強く、集合知性が発揮できない組織では、(左側の)「パフォーマンス」から始まります。例えば「こういうことをやりなさい」というところから始まると、メンバー的には強いられた状態で、やらされ感が強くなります。

強いられてやらされると「成長意欲」が下がって、「助け合い」が減って、ストレスがすごくかかるので「幸福度」が下がって「一体感」が落ちていきます。次に「信頼関係」が少なくなって「やりがい」が失われていくと。そして結果として、組織全体のパフォーマンスも下がってしまう状態が起こります。

「パフォーマンス」が十分に発揮できてないと、もっと強いられる状態が起こって、この(ネガティブな青の)ループがグルグル回っていくという、非常によろしくない状態になっていきます。

この状態になると、パフォーマンスは「言われたタスクができたかどうか」ばかり見られるため、成長も「言われたタスクをこなせるかどうか」という、非常に味気ないものになっていきます。

そして、倫理的に正しい・正しくない、言い方を変えると「人間として何が正しいのか?」あるいは、会社・組織の理念やフィロソフィ(哲学)、クレド(信条)というものがあったとしても、そういうところはぜんぜん見てもらえない(評価されない)。

“お題目状態”になっていって、結果としてネガティブなループがグルグル回って、みんなのやる気が削がれていく、という状態が起こります。

幸福度の高い「やりがいのある組織」を目指すためには?

岩崎:これに対して「リーダーシップがある信頼関係をベースにした組織」ではどういうことが起こるか? スライドを指して)まったく同じ7つの言葉が楕円上に載ってますが、まったく違う在り方になります。

この組織では「信頼関係」から始まります。「信頼関係」が上がって「一体感」が高まり、「幸福度」が上がる。そうすると「助け合い」が増えて、みんなの「成長意欲」が高まって、みんなで「パフォーマンス」を高め合う。そうすると「やりがい」が上がって、さらに「信頼関係」が深まるという状態が起こっていきます。(赤のループが時計周りに回る)

ここで言う成長は、単に「言われたことができるかどうか」ということだけではなくて、人間的な成長も含まれます。「人間として何が正しいのか?」 道徳的・倫理的に正しいというのが、非常に重要視される組織になります。なぜかというと「信頼関係」がベースになっているからです。

このポジティブな(赤の)ループがグルグル回り始めると、パフォーマンスというのも、単に「タスクをこなす」だけではなくて、組織の理念や大きな大義ですね。大きな目的「社会に貢献する」ということに沿った行動が非常に増えてくる。

そしてみんなで目標達成をして、やりがいをみんなで感じられる状態になっていって、こういう組織が集合知性が発揮できる状態になっていきます。

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