2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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西舘聖哉氏(以下、西舘):これ(伊達洋駆氏の話)を受けて、たぶんあまねさんもいろいろ話したいことがたくさんあると思うので、ここからあまねさんパートをお願いしたいと思います。
沢渡あまね氏(以下、沢渡):よろしくお願いします。伊達さんから採用の専門的なお話をしていただいたので、私はどちらかと言うと、組織論全般の話を深めていけたらなと思います。
「地方企業の採用のこれから」を、20分でお話ししたいと思います。ハッシュタグは「#これからの地方採用」です。
今日はこんな話をしたいなと思います。キーメッセージは「3つの戦略」です。3つの戦略を立体的につないで、発展的解決をしていきましょう。
1つ目は「採用戦略」。2つ目は、採用した後の「定着戦略」。そしてそれを束ねる「ビジネスモデル戦略」。さぁ、ここをどう風穴を開けていきましょうか、束ねていきましょうか。そんな話をしていきたいと思います。
自己紹介をします。あらためて、「沢」が「渡る」と書いて、沢渡あまねです。作家、物書きをしています。今日は最新作の『バリューサイクル・マネジメント』の世界観を基にお話をしていきたいと思います。
沢渡:私はワークスタイル、組織開発を生業としております。日産自動車、NTTデータ、大手製薬会社など、16年間勤め人をした後に現在の立場に活動をしています。IT×広報で組織の景色を変えていく。組織を中から自走化していく。そんな支援をしております。
いわゆるパラレルキャリアで活動をしていまして、作家・講演者の顔と、西舘さんとは同僚の関係で、なないろのはな取締役。私は浜松ワークスタイルLabの責任者、取締役をしております。また、同じく浜松に本社があります、オンラインの育休者向けスクール「育休スクラ」を展開している、NOKIOOのアドバイザーなどを兼任しております。
経験職種はIT×広報で、350以上の組織の改善支援、組織の景色を中から変えるお手伝いをしてまいりました。そんな人間です。今日は新刊『バリューサイクル・マネジメント』をもとに人事がどう組織を変えていくか。「採用」という入り口で、どう組織をアップデートしていくかというお話ができたらと思います。
変わった趣味がありまして、今日もダム際の高いところから失礼いたします、ダム際ワーキング(ダム際で行うワーケーション)が趣味でして、サイトも展開しておりますので。よろしければ、「こういうところから働き方を変えていくのもいいかな」というような気休めに、ご欄いただけたらと思います。
実際ダム際ワーキングで成果も出しています。私はこれからの新しい働き方を経験するきっかけに、ワーケーションはすごく良いなと思っています。
先ほど伊達さんのお話でもバイアスという、今までの囚われているものから自由になっていくという話と、自己効力感というお話がありました。「こういう働き方をしたら、実は生産性が上がったな」とか、「今までにないアイデアが生まれたな」、あるいは「なんか相互理解が深まったな」など、小さな自己効力感を作っていくのにも、ダム際ワーキングをおすすめしているわけですね。
ダムの話と、地方都市活性の話は、7月19日に静岡新聞SBSさん主催で、ダム際のオンラインセミナーをやりますので、ぜひ行政のみなさん、経営者のみなさん、人事のみなさんに聞いていただけたらと思います。
沢渡:こんなちょっとおかしな話もしましたけども、まず簡単に、これからの時代ってそもそもどういう時代なんだろうという話をしてから、この後の伊達さんと西舘さんとの全体のトークセッションにつなげていきたいと思います。
私は最近、こういう話をしています。書籍『バリューサイクル・マネジメント』でじっくり書いたのもここなんですが、「これからの時代の勝ちパターン」。これまでの時代の勝ちパターンが変化しつつあるという話ですね。
おそらく今日、こういう場に来ているみなさんは薄々気づいていらっしゃると思うんですけれども、過去50年60年の日本のやり方に、もう限界があると。今までと同じやり方では勝てないことに、みなさん気づいてらっしゃると思うんですね。オンライン採用など、あるいは伊達さんのお話を聞きに来られるのも、そういう考えの上での行動と理解をしております。
過去50年60年の日本の勝ちパターンは、この絵で言うと、左側。ピラミッド型だったわけですね。“旧来製造業モデル”と書いておりますが、基本的に同じやり方、指示されたやり方を、同じ環境で、同質性の高い人たちが行動していれば勝てた、というやり方だったわけですね。
しかしながら、今、一言で言うと不確実性がこれまでにないぐらい増している時代になっていっています。不確実性について、私は大きく3つで説明しています。
1つ目、技術の革新ですね。ITテクノロジーを使って、新しいやり方、デジタルトランスフォーメーションをやっていける企業に、分(ぶ)がある。「技術の不確実性」が1つ目です。
2つ目が、「環境の不確実性」です。COVID-19のような未知のリスクが、これだけ世の中を脅かすと、誰が想定していたでしょうかという話なんですね。
3つ目は「人口の不確実性」。少子高齢化による労働力不足が現実のものになってきた時代、同じ組織の中で抱えられる社員・従業員に、ますます限りがある。ひいては人気職種と不人気職種で、採用力の格差が顕著になりつつある時代。
沢渡:そうすると、組織の中に答えが求められない時代になります。過去に答えが求められない、中に答えを求められない。徐々にでも、右側のオープン型になっていきます。ティール型組織、ネットワーク型組織という言い方もしますが、個々人、組織の中の社員と社員。あるいは中の人・外の人。あるいは、組織同士。同じ社内の、部門同士。部門を越えてつながりあう、コラボレーションするやり方に変えていかないと、事業発展、イノベーションはおろか、事業継続すら危うくなる。これが加速しつつある時代だと思うんですね。
今日申し上げたいのは大きく2つです。本日のテーマである「採用」の仕方も、過去の勝ちパターンではなく、オンライン採用のような新しいやり方を取り入れて、オープンにつながっていくやり方に変えていかないと、採用の成功法則が通用しないよ、という話が1つです。
2つ目が、採用して、いい人材を採った後の話。入社した後、統制型オンリーの、ガチガチの、失敗を許さないクローズドな仕事のやり方の人たちで、その採用した人が活躍できますか? 活躍し続けられますか? 正しく成長できますか? という話なんですね。
2つ目は少し大きな話です。「採用」という入り口から、自社のビジネスモデルや組織の回し方をアップデートしていかないと、人材を定着させられないという話だと思うんですね。
現に、最近は西舘さんがご出身の富士通さんもそうですし、このような危機感を持っている大手企業が、徐々にオープン型、アジャイル型の経営にかじ切りしつつあります。
私は統制型を否定しているわけではないです。統制型も合理性があるんです。決められたものをビシッと作っていく。その場合において統制型のやり方は、管理する側、される側、双方にものすごく合理性があります。
管理する側は、基本的に指示命令型、監視型のマネジメントで答えが出せますから、管理コストが低く済むんです。考えなくていいんです。指示を受ける側も、言われたことをきちんとこなしていれば答えが出せる。終身雇用のモデルの中で60歳までがんばれば、要するに「おめでとうございます。家族もあなたも幸せな老後が待っています。潤沢な年金と、潤沢な退職金です」ということです。
決められたことを回して答えを出しつづけるには、統制型のやり方はものすごく合理的。大きな投資をして、何か大きな物事を展開して動かしていく最初の一押しは、統制型・ピラミッド型は正しく設計して正しく運用すれば、合理的なモデルです。
一方で大きな変化に弱い。これまでにない不確実性と向き合っていく、不確実なパラメーターが入った瞬間に、管理する側もされる側もたちまち思考停止しがちなんですね。いままで、主体的に思考したり、行動する経験をしたことがないのだから仕方がない。
思考停止リスク、行動停止リスクを減らすためにも、徐々にでもオープン型の仕事のやり方を取り入れていく必要があります。
例えば「うちは製造業だから」「うちは地方都市だから」でアナログな古いやり方を温存するのではなく、部分的にでも、例えばマーケティング部門からオープンなやり方を取り入れていく。あるいは「採用」という1つのテーマ、イシューに対して、オープン型のスタイルを取り入れていく。こうした取り組みが、組織を健全な成長に導きます。
沢渡:今日は「地方都市」というテーマで、解像度を上げてお話をしていきたいと思いますが、私は格差の広がりを実感しています。私もそれまでは東京に拠点を置きながら、今では浜松という地方都市で仕事をしておりまして、格差を実感しています。
1つ目が「大都市と地方都市の格差」です。オンライン採用のようなものも、やはり事実上東京のような大都市の企業が先に飛びついて、先にエクスペリエンス(経験)して。そこから、成功体験や失敗体験を振り返りにより言語化して、成長につなげていっている。COVID-19をとらえても、地方都市は大都市ほど感染が拡大していない現状と、車通勤が主流な通勤事情において、「テレワーク? 必要ないよね」というようなムードの企業もまだまだ目立ちます。
2つ目が「先進企業と鈍感企業の格差」。ここ浜松においても、新しいオンラインの採用、あるいはデジタルマーケティングを取り入れてビジネスモデルを変えてきた先進的な企業もあります。
大都市・地方都市に関わらず、「先進企業と鈍感企業の格差」はますます広がりつつある。採用もそうです。定着もそうです。人材維持・獲得もそうです。それが、ひいてはビジネスモデル格差、働き方格差、事業継続性格差、ブランド力格差……。
すなわち、御社がファンを作る力の格差を生んでいる。御社とつながりたいと思う未来の従業員、あるいは未来のお取引先、未来の投資家、未来の地域を、ファンにするかアンチにするかの差を決めつつある。このようなリアルに向き合う必要があると思うんです。
「うちは製造業だから無理」「うちは地方都市だから無理」「うちは中小企業だから」「現場の人たちと不公平だから全員出社、採用も出社だ」。全部、思考停止、成長停止フレーズです。ゴールはビジネスモデル変革です。御社のビジネスモデルを変えるために、さぁどこから風穴を開けていきましょうか。「採用」は、その1つテーマであり、切り口であると考えます。
沢渡:この図をご覧ください。私が最近描いた「地方都市の問題地図」です。後でじっくり見てほしいんですが、けっこう辛辣なことを言っていて。
私自身、浜松に身を置きながら、こういうことを言うのは非常に勇気が要るのですが(苦笑)、公開してみたら、先進的なことをやりたい地域の社長がファンになってくれまして。「実は自分も問題だと思っていたけど、僕は言えないからどんどん言って」と背中を押される機会が増えてきました。だもんで、今日も遠慮なく公開します。
私は別に地方都市を否定したい訳ではないのです。地方の企業が、「高利益体質に変わっていく」ことによって、良い人材が集まるようになって欲しい、地域の人材が正しく成長し、正しく活躍できるようになって欲しい。その思いを込めています。
やはり特に下請け産業中心の地方都市では、悪気なく下請けのマインドやビジネスモデルから脱却できず、いつまでたっても高利益モデルにならない。さらには少子高齢化が進む中、いよいよ良い人材を集められない、定着しきれないということがリアルに起こっている。ここからどう風穴を開けていくか、どこをどう変えていくかの、立体的な議論につなげていって欲しいのです。
その意味で、「採用」は自社や自社のビジネスモデルの悪さ加減を見える化し、自社をアップデートする良いチャンスだと思います。単に採れた採れないとか、その結果に一喜一憂するのではなく、人事のみなさんが中心に、そこからどうやって経営のイシューを研ぎ澄ませて、経営にフィードバックしていくか。これができる人事担当者は、経営の右腕としての価値も高いです。
ですから、その入り口である「採用」のやり方をどんどんオープンにしていって、そこから浮き彫りになった不都合な真実にきちんと名前をつけていく。そのツールとして、「地方都市の問題地図」を描きました。
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