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永久ベンチャー ディー・エヌ・エーの多事業化を支える組織作りとこれから(全2記事)

新卒が提案した「絶対にあり得ない」サービスが、業界No.1に DeNA南場氏が実践する、人が育つ仕事の任せ方

人材獲得競争の激化、雇用や働き方の多様化、「ニューノーマル」の到来など、今、社会全体が大きな変革の時期を迎えています。株式会社ビズリーチが主催したHR SUCCES SUMMIT 2021は、「DX時代の採用力」をテーマとし、各分野の著名人が採用・人事領域における成功事例を紹介。本記事では、株式会社ディー・エヌ・エー 代表取締役会長 南場智子氏が登壇したセッションをお届けします。さまざまな分野で事業を展開する同社が大切にしている、組織作りのキーワードを語りました。

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新卒3年目が始めた事業が、業界シェアNo.1に急成長

南場智子氏:今日はこのような会にお声がけいただきまして、ありがとうございます。「HR SUCCES SUMMIT」というタイトルなんですが、ディー・エヌ・エーはまだ「超サクセスストーリー!」みたいな会社にはなっていなくて。道半ばというか、1合目、2合目ぐらいのところにいるので(笑)、こういうところで偉そうに話していいのかどうか、わからないんですけど、組織や人材について、ディー・エヌ・エー独特の考え方がありますので、その考え方をご紹介させていただけたらと思います。

さっき「多事業化」と言われたんですが、確かにディー・エヌ・エーはいろんな事業をやっています。当然ゲームも作っていますが、我々が内製で作るものもあれば、他社さんのタイトルを活用させていただいたスマートフォンゲームを作って、世界で配信することもやっています。

ゲームの会社だと思われがちですが、実はゲーム以外にもたくさんのことをやっています。例えば「Pococha」のようなライブストリーミングサービス、これはリアルタイムでライバーとリスナーがやり取りをしながら、動画を配信していくサービスで、これも急成長中です。「SHOWROOM」も当社グループで提供しています。

それから「Anyca」という、カーシェアリングのサービスですね。経営会議で新卒3年目が「やりたい」と言ってきた時に、私は全力で反対したんですよね(笑)。とにかく車はこだわりが強くて、「自分のこだわりの愛車を他人とシェアするとか、絶対にあり得ない」って却下したんですけど、3回、4回と食い下がられて。

結局私が「ああだからダメ」「こうだからダメ」と言ってるところを全部論破されて、もう「ごめんなさい、自由にやってください」と折れてしまってですね(笑)。新卒3年目が始めた事業で、おそらく今はカーシェアリングでナンバー1のシェアじゃないかなと思います。

あとは自動運転(「Easy Ride」)にも取り組んでいますし、タクシー配車の「GO」というサービス。こちらも使われてる方は多いと思うんですが、当社の中で始めたタクシー配車アプリを、日本交通さんと一緒になって提供しています。

さらに遺伝子検査サービス、ヘルスケア事業などもやっています。ほかにもヘルスケア事業は数多くあるんですけれども、健康寿命を延伸する目的で「できることはなんでもやろう」ということで、特にスマホを中心に活用しながらも、最近はデータヘルスのサービスなどに取り組んでいます。

あと、スポーツ。プレーオフは残念ながら準決勝で敗れてしまったんですが、「川崎ブレイブサンダース」。

そしてこちら。今年は弱いというのか、ちょっと強くないっていうか(笑)。でもこれから「あんなドツボにハマったどん底の球団が、ここまで這い上がったのか」と思われるドラマの演出に向けた準備はもう整って、「横浜DeNAベイスターズ」はこれから登っていきます。

事業展開のキーワードは「言い出しっぺは現場である」

球団の運営だけではなくて、横浜スタジアムの球場の運営もさせていただいています。それから球場だけじゃなくて、球場の周りの施設です。

球場から外に出て、横浜公園があり、その周りもどうやって盛り上げていくか。市庁舎がみなとみらいに移って、三井不動産などと組んでコンソーシアムを築き、市庁舎街区再開発権を得ました。ここは、2025年のまちびらきを目標に取り組んでいるところです。

(スライドを指しながら)こんな感じのイメージですね。

もちろん、今日は全部をご紹介できませんが、確かにいろんな事業をやっているんです。横軸にエンタメ・社会課題解決、縦軸にリアル・バーチャルをプロットしてみると、幅の広さが伝わると思います。

多様な事業が展開されてるんですが、基本的には「言い出しっぺは現場である」ということです。世の中に大きなDelight(喜び)を提供できて、私たちがやるに足る、おもしろみがあって。そして、“やりたくてたまらなくて目がキラキラしてるやつ”が社内にいることが条件で、会社で新しいことにどんどん挑戦する。

「コングロマリット・ディスカウント」という言葉がありますが、私たちはむしろこれをディー・エヌ・エーのあり方としています。こっちの事業で培ったノウハウや知見を、こっちの新しい事業でも活かす、というかたちで、きちんとシナジーを効かせていく。

例えば社会課題解決型の事業でも、エンタメ的な要素とか、人と競うという「ピアプレッシャー」とか、ちょっとおもしろさを入れてみる。そういった、エンタメ・社会課題の両方をやっていることの良さを活かして、幅広く展開して、世の中に大きなDelightを届けていきたい。それがディー・エヌ・エーです。

「人は仕事で育つ」を実践する、DeNA流の任せ方

そしてここからいくつか、私たちディー・エヌ・エーが大事にしている、人材や組織に対する考え方のお話をします。一番大事にしている概念が「ストレッチアサイン」です。

これは社員一人ひとりが七転八倒ギリギリがんばって、できるかできないかフィフティ・フィフティの仕事をアサインする。これがディー・エヌ・エーの理想、本当に一番大事にしていることかなと思います。

さらに「人は仕事で育つ」。もちろん研修やトレーニングは大事なんですが、基本的には“本番の打席”ですよね。とにかく「これを達成してください、やり方は任せます」「(個々で)工夫してください」というかたちで目標ごとぶん投げて、リアルの仕事で育てています。そのためにはやっぱり、簡単な仕事だと育たないので、ストレッチアサインをすること(が大事)じゃないのかなと思います。

それから、ディー・エヌ・エーの中ではすごくよく使われる言葉なんですが、「球の表面積」という考え方もすごく大事にしています。会社って普通はピラミッド型組織ですが、ディー・エヌ・エーがイメージするのは球体です。

昨日入ったばかりで、まだまだ未熟な初めての社会人というような社員も、すごくベテランでスキルのある社員も、球の表面積を担わされる。好むと好まざるとに関わらず、担わされるということなんですね。それほど大事にしている「球の表面積を担う」って、どういうことかというと「ディー・エヌ・エーを代表する気概と責任感を持つ」ということなんですね。

もちろん仕事はチームでやるけれど、その中でもしっかりと役割があって、果たす役割においては「ディー・エヌ・エー全体を代表しますよ」というイメージです。球ってすごく特徴があって、見る角度によって無数の真正面があるんです。

自分が責任を持つ領域においては、「〇〇さんの下」と誰かの影に隠れることなく、真正面でディー・エヌ・エー全体を代表する。そういう気概と責任感で仕事をしましょう、というイメージで「球の表面積」という言葉も大切にしています。

上司との握手で異動が決まる「シェイクハンズ制度」

それからあともう1つ、私たちが大事にしているのが「個性と夢中をリスペクト」ということです。これは「個性と夢中を育む」ということではなくて、リスペクトすることがすごく大事じゃないかなと思うんです。

具体的にどういうことをしているかというと、例えば配属の決め方です。……人事権は会社にあるのに甘えるな、という厳しい考え方もあるかもしれないんですけど。もちろん、会社の都合や事業上の必要性もあるんですが、やっぱり個人の希望を大切にします。「やりたいことは何?」ということを、相当頻繁にコミュニケーションしています。

これからの成長のために必要な経験、その人が何をやりたいか・やりたくないかということに加えて、本人がどういうキャリアビジョンを持っていて、「それに到達するためには、こういう経験が必要だね」という、成長に向けた考え方でのアサインメントですね。

「個人の希望」「成長に向けて必要な経験」「事業上の必要」の3つの要素を加味して、コミュニケーションを相当徹底して、アサインメントを決めるということです。

あと、最近はよくあるかもしれないんですが、「シェイクハンズ制度」というものがあります。これは「どうしても、今やっている仕事にパッションが持てない」「夢中になれないんだ」という人は、どんどん社内で夢中になれる仕事を探してください、という制度です。

最近はZoomになっているのでなかなか大変ですけど、事業本部長も自分の部にいるだけではなく、ほかの部門に出かけていって、自分のやっている事業のすばらしさやパッションをどんどん語ってくださいと。その事業を「やりたいな」と言う人がいたら、そこで面接をする。「じゃあ何ができるの」「これまで何をやってきたの」と話を聞いて、「いいね、おいでよ」「行きます」となって握手をすると、その瞬間に異動が決まる制度なんですね。

もちろん引き継ぎなどがあるので、例えば(異動までに)1ヶ月とか3ヶ月かかる場合はありますが、決定はその瞬間にするってことなんですね。ですから事業部長や事業リーダーたちは、社内で自分の事業を熱く語って、ヘッドハントをがんばるわけですね。

あんまり外の部門をほっつき歩いていると、戻ると自分の部門に誰もいなくなってた、なんてことがないように(笑)、外でも中でもパッションを語り。「Passion or Death」という感じですね。これ、本当に大事にしていることです。

だからいつでも異動を申し出ることができるし、いつでも自ら兼業や副業、起業を申し出ることができる。こういうすごく柔軟性のある企業も、今は増えてきているのかもしれないですね。

“偉い人が言ったから”という理由で仕事をしない

自分のパッションに正直に、夢中をリスペクトしてアサインメントやキャリアを考えていこうよ、ということです。それから、歯を食いしばって「これは維持したい」というディー・エヌ・エーの大事なポイントなんですが、「ヒエラルキーで仕事をしない」ということですね。

会社の中でいくつか大事にしている言葉の1つで、「誰が言ったかではなく、何を言ったか」というのがあります。例えば「これは社長が言ったから」「これは〇〇さんが言ったから」という、オーソリティ(権威者)に正しさを求める言動は、我が社ではリスペクトされない。というか、そういう人はいないですね。

「誰が言ったかより何を言ったかだよね」という話をよくされていますし、事実、昨日入ったばっかりの新卒の社員でも、正しいことを言ったらしっかり耳を傾けようねと。これは共通言語になっています。

あとは「思考の独立性」。元コンサルタントの私の経験では、例えば会議室の中で一番位の高い人の意見を推し量って、その人の意見に合わせていくのが日本の会社では多いんですが、思考の独立性はすごく重視されています。「おもねり禁止」もよく使われる言葉で、「それちょっとおもねってんじゃない?」とか。

「DeNA Quality」という5つの約束ごとのトップにくる、本当に一番大事されている「コトに向かう」という言葉ですね。言動にはいろんな動機があるわけなんですが、私たちは「会社の中やプロフェッショナルな場での言動は、すべてコトに向かっていなければいけない」というルールで運営をしています。

ですから「うーん。それってコトに向かってる?」というような、お互いのチェックとか。あとは自分自身の「どうして今、こういう気持ちになってるんだろう?」「どうしてこの仕事の仕方を変えたくないと思ってるんだっけ?」「これって今、私はコトに向かってるのかな?」というかたちで、共通言語になっています。

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