2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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田中研之輔氏(以下、田中):浅井さんにショートクエスチョンが来てるから、僕から聞いちゃってもいいですか。
浅井公一氏(以下、浅井):どうぞ。
田中:「面談後に上司への報告をすると、本人は嫌がらないですか」というものと、「どういう基準を持って『自律している』というのか」。この2点はショートクエスチョンなので、パパッと答えていただいて。
浅井:面談をする最初に、「これを上司にフィードバックします」ということを言っちゃうと、本音が出ないです。「嫌なら『言わないで』と言ってください」「その場合は守秘義務を守ります」と。
相手が50代のベテランになってくると、逆に「自分では上司に言えないけど、代わりに浅井さん言ってくださいよ」という人のほうが多くなっちゃって、けっこうウエルカム状態なんですけど。そこは約束して、「その場限り」と言ったものは上司には言わない。守秘義務は守っています。
それから、自律の定義はいろいろ考えたんですけど、「転職できる」とかそういうことではなくて。その人にキャリア教育をしなくても、今の職場で成果をあげることもでき、かつ自分がどうなりたいかを宣言して、それに向かって行動を起こしている人たちです。
だから2:6:2の、下の2割が変わろうとしない14人という質問も来てますけど、そういうことではなくて。すごい成果を出す人でも、変わろうとしない人……要するに、「楽々とこの職場についていけるので、あまり日の当たらない職場でいたいです」という価値観の人もいると思うんですよね。だから、必ずしもそういうわけではないといったところですかね。
田中:ありがとうございます。須東さん、戻します。
須東朋広氏(以下、須東):さっきも浅井さんが話していた、経営側の理解と実施する人の人選ってあると思うんですが、この「実施する人の人選」って、どうあるべきなんでしょうか? キャリアコンサルティングを実施する人の人選と、実施する人にふさわしい環境の作り方があると思うんですが。
浅井:昨年、キャリアデザイン室というのを立ち上げて、私の部下を人選した時にどうしたかというと、まず自分が幸せであること。実際に幸せかどうかは別で、「幸せだ」とポジティブに考えられる人。要は、自分が幸せでないと人を幸せにすることなんてできない、という発想なんです。
あとは、心身共に自分が健康であることですね。自分が病気を持っていても、「別にあの人に比べたら、私のほうが健康なんだ」というポジティブな思想を持てる人。
あとは「問題児」と言うとちょっと語弊があるかもしれないんですが、“人事の異端児”であることが絶対条件だと思っています。昇格の点で、時には「あなたには将来がないよ」ということを、あるいは若手には「あんた早く辞めちゃいなさい」って言わなくちゃいけない場面もあるんですが、なかなか言えないですよね。
だけど、本人のためにならない時は、そういったことをしっかり言ってあげないといけないので、そういうことが言える人が人選のポイントかなと。私の部下はそうやって選んでます。
あと、上司による環境作りのところ。実は、私はこの仕事をやる時に別の仕事も与えられていたんですけど、上司である当時の部長が「これは大変なことだから、その仕事に専念しろ」ということで、私がやっていた仕事を他の人にアサインしたり。
あるいは「浅井にこんなこと言われた」とか、クレームも実際に来るんですよ。そういったものが来たら、上司だった当時の部門長が「クレームが来たら全部俺に回せ」「お前は手を止めるな」と。私一人でやったように思われていますが、実はそういう周囲のフォロー(があったり)だとか。
あとは、研修名簿を作ったりとか、非生産的な事務処理とかあるじゃないですか。そういうのは会社が「金はいくら使ってもいいから委託しろ」ということで、本当に専念できる体制を作ってくれました。
田中:浅川さん、どうですか。
浅川正健氏(以下、浅川):『ビジトレ』もよく読ませていただいたし、浅井さんとの付き合いもあるわけですけど、本当にうらやましいと思っている方々の山だと思いますよ。
たぶん参考になると思うので、20年前の私のお話を少し短くお伝えしたいんですが、辛くて苦しかったです。特に、転職支援やうつ対策でしか理解されなくて。「俺を辞めさせたら、お前のノルマで“マル”1個だろ?」と言われて。目の前の人のキャリア相談することの辛さで悩んでいる人が、いっぱいいます。
でも後で振り返ったら、「こんな充実したやりがいのある仕事はありません」と、全国のみなさんにお伝えしているんですね。やっぱり企業は「こうしたらいい」ではなくて、文化、歴史、その時の経営者、業績、人事部の方針で、昨日と今日が全部変わります。
ですからそういう意味では、自分の中で軸を持ちつつも、ある意味で変幻自在、柳のようなかたちで、“聴いて聴いて聴いて”さしあげているうちに、いろいろ見えてくるんじゃないかなという気がします。
後で「自分が幸せであるか」と振り返ったら、間違いなくこの20数年間は幸せでした。でも、その時その時はもう苦しくて。「涙が出ることを乗り越えると、みなさんにそれ(幸せ)が来ます」とお伝えしています。すみません、長くなりました。
須東:ちょっと伺いたいんですが、キャリアカウンセリングの領域で、講座で学んでいればできる部分と、知識と経験によってたぶん差が生まれるのがあると思うんです。この辺は、どういうふうに見極めるというか。面談する人に対して変えていかなきゃいけないと思うんですが。
田中:まず、資格のところですね。浅井さんとか浅川さんはプロなので、経験や実践的なスキルはお二人にお任せしますけど。制度と知識でいうと、キャリアコンサルタントが国家資格化して、今度は資格保有者10万人を目指しています。そうなった時に、どういう仕組みであれ、「やっぱりああいうふうにしかできないかな」とちょっと思うわけですよ。
どういうことかと言うと、やっぱり基本的に知っておいていただきたいキャリア理論の基礎知識です。スーパー、シャイン、クランボルツ、ハンセン、シュロスバーグ……。もちろんホールとかね。基本的にあれをみなさんに覚えてもらうじゃない? 弁護士試験と同じで、それを突破して、実地研修や更新研修もあって。
でも、それじゃやっぱり現場のいろんな問題に関しては対応しきれませんよ。だから磨き続けるんですよね。キャリアコンサルタントという仕事は、非常にこれからの世の中にとって重要だし、やりがいもあるし。だけれども、浅川さんがおっしゃるように大変だと思うんですよ。
それはなぜなら、プロとして本は読むし、実地のロープレもするし、スーパービジョン(初心者のカウンセリング学習過程)もするし。自分自身のキャリアコンサルティング技能は、高め続けなきゃいけないんですよね。ただそれを制度的に見ると、資格課程の中で個人的に受講している雰囲気が、一瞬強かったんですよね。ようやく今、例えば協会やいろんな集まりの中、HRラボさんも、浅井さんも浅井塾を立ち上げた。
キャリコンたちが集まって、今、必要なネットワークや情報や知識とか、実践的なところで必要になっているのは何かという問題共有をしながら、連携ができ始めてるんですよね。だから先ほどお伝えしたように、本当に求められているからこそ、一人でやらなくていいということなんですよね。その辺をみんなで共有していければなと思います。
田中:浅川さん、実践のスキルの磨き方とかはどうですかね?
浅川:20年ぐらい前から、来られた企業の方に必ずお伝えするのは、よく名前出しちゃうんですが「宮城まり子先生も平木典子先生も寺田正美先生も、スーパービジョンにいるピカピカの方々も、最初は1人目ですよ」と。ですから、1人目であることを恐れないで。
それから教える気になるのは間違いで、聴いていくうちに目の前の方が変化することを大事にすれば、あえて一般論で言いますが、若い女性でも60代の男性の転職支援の相談だってできるんです。
丁寧に聴いてさしあげる。偉そうに人事の雰囲気で「お前それじゃだめだよ」と言うんじゃなくて、「そういうことなんですね。本当は何がしたかったんですか? 大学の頃は? ピカピカの時ってどうでしたか」とやっていけばできるのに、現場の知識をまた研究することに留まってしまって、内省をしない。みんなで議論しないことが、タナケン先生の言われたポイントだと思います。
須東:ありがとうございます。
田中:須東さん、質問がすごく来ているから、拾ってもらっていいですか?
須東:視聴者からの質問で「浅井さんの『ここまでやったんだ』というところまでやってもらうという点について、『ここまでやった』と思えるのは、個人によって程度に差が出てくると思いますが……」。
浅井:線引きはしていないですけど、自分自身で感じるところですかね。1年目なんて、所感一つでも2,000文字くらい書きました。大晦日も元旦の朝も所感を書いていましたから。実際に「ここまでやったんだ」というアウトプットを見せれば、たぶん上の者に理解してもらえる。「自信を持ってそれを言える」という、完全に主観的判断でやっています。
それからもう一つ。転職を勧める機会には、例えばキャリア・アンカー(「仕事において何を最も大切にするか」という価値観)なんかを使うんですけど。「絶対に私は社長になりたいんだ」「そこは譲れないんだ」といった、絶対に譲れない価値観があった場合、我が社で社長になれる確率というのはもう0.00何パーセントで、ほとんどないということを、しっかり伝える。
絶対にそこが譲れないのであれば、「そういった時は転職したほうがいいよ」「1年目なら準新卒で採ってもらえるから、早く辞めな」ぐらいのことを言う時もあります。やはり数としては少ないですけれども、相談に来る中の本当に何割かには転職を勧めることはあります。
須東:「変化のきっかけをつかむところまで、相談を追えない」というのがあります。この「変化のきっかけ」という部分で、さまざまな例があると思うんですが。例えばどんなことが変化のきっかけになるかの部分として、浅井さん自身の決め台詞みたいなものがあれば。
浅井:決め台詞というか、コミットですね。「私は部下から頼られる存在になりたいです」ではダメなんですよ。「どうしたら『部下から頼られる存在』なんですか?」という定義づけ」。部下に対して、自分の持ってるスキルで「○○勉強会を毎週水曜日に開きます」というところまで約束しないと。
そうすると、水曜日に私が「あなた、やったか?」って電話すればいいんですよね。そしたら「やってません」「やらなきゃだめじゃないか」となるじゃないですか。そうすると抽象的じゃなくて、誰が見てもこの人が動いたことがわかる。自分の口からそのコミットをさせる、そこがきっかけです。
田中:浅川さん、何かありますか?
浅川:先ほどの話に戻りますが、新入社員が「中国の仕事をしないんだったら、配属が違うから辞めたい」というような相談は、山ほどありました。
やっぱりその時に、「それじゃあ今、中国関係のところに転職したらどんなことが起こるんだろう?」「いいね、すばらしいね」って褒めながら、実は何も考えてなくて憧れがあったり、ぼーっとしたキャリア意識だけを大学で教わってきて、勘違いして入ってきた人たちに気づいてもらう。
実はこれ、ミドルもシニアも若手も一緒です。そういう意味でいうと、退職を決めてきた人には「辞めたらどうなる?」「辞めなかったらどうなる?」、ふらふらしてる人には「辞めちゃったらどうなる? いいね、一緒に考えようや」というふうに、逆で迫っていたのが20年前の私のやり方でした。
須東:ありがとうございます。時間なんですが、最後にタナケン先生、なにかあれば一言お願いします。
田中:今日だけでは本当につかみきれない部分がありますが、やっぱりキャリア自律をなんとかしなきゃいけないと思っていますし、みんなでやりたいなと思っています。そういう意味では、最強のスーパーバイザーが2人いてエビデンスもあるわけだから「これがやるべき方向性です」と言えるじゃないですか。
だから、本当に苦しんでいるキャリコンの方と、そもそも活性化できていないポテンシャリティの高いミドルシニアに対して同時多発的に、今日の須藤さんたちの協会とのコラボレーションはすごく意義があると思うので、やり続けたいと思いますね。
また機会を見て、「ここまでできましたね」という共有会を開きたいなと思います。ありがとうございました。
須東:こちらこそありがとうございました。
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