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「コロナ時代」における日本ポップカルチャーのグローバル化について(全3記事)

m-flo☆Taku氏、“熱量が高い人”を重視しないとマネタイズは成功しない 音楽業界を救うファンベース戦略

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アメリカの大学で物理を専攻しながら、DJ活動に勤しむ

☆Taku Takahashi氏:髙?拓と申します。今回は、「コロナ時代における日本ポップカルチャーのグローバル化について」お話したいんですが、まずは自己紹介で、自分がどんな人間かをお話させてください。

私は、☆Taku Takahashiと申します。芸名が☆Taku Takahashiで、本名もTaku Takahashi(髙?拓)です。

1974年3月29日生まれ、出身地は横浜で、わりと田舎のほうの緑がたくさんある住宅街で育ちました。横浜というと港とかすごくきれいなイメージがありますが、僕が小さい頃はブルンブルンとバイクを走らせるお兄さんたちがいっぱいいるような街でした。ただ、今はだいぶ変わっちゃったんですけどね。

私は、小学校からインターナショナルスクールという英語でしゃべる学校に通っていました。例えばみなさんがご存知の方でいうと、宇多田ヒカルちゃん、Crystal Kayちゃん、さらにクリス・ペプラーさんといったバイリンガルの人たちが通っていたような学校ですね。

僕が行っていた学校は、世田谷の上野毛にあるSt.Mary's International Schoolというところで、クリスさんは僕の学校の先輩です。

みなさんご存じだと思いますが、インターナショナルスクールは全クラスが英語で教育を受けるシステムです。さらに、1年から12年生、要は日本でいう高3まで、エスカレーター方式です。

さらに、教育機関ではあるが、文部省(文部科学省)には認可されていない。ただし、大学には受かれば入れるので、がんばってそのままアメリカの大学へ行きました。大学の専攻は物理だったんですけど、大学ではDJを本格的にがんばってやっていました。

大学中退で、日本の学歴が「幼稚園卒」に

アメリカにはいいレコード屋さんがいっぱいあったんですよね。レコード屋さんにいっぱい行きまくって、これだけレコードが集まっているから、もちろんパーティでDJをします。パーティにはおいしいお酒があって、どんどん楽しんでいった中で、だんだん勉強がちゃんとできずに疎かになり、あえなく2年で大学をドロップアウト。

その後音楽をやるんですが、大事なことを話させてください。

僕が大学をドロップアウトしたことは、何を意味するのか。ちょっと話を戻しますね。

インターナショナルスクールは、全クラスが英語で教育を受けるシステムだとさっきお話しましたよね。「教育機関ではあるが文部省(文部科学省)には認可されていない」、ここが一番大事なところ。今は変わっているという話もあるんですけど、僕の時はまさしくこういう状態でした。ただし、大学に受かれば入れる。

つまり、大学をドロップアウトしてしまった私、髙?拓の日本の学歴は、「幼稚園卒」なんですね。今回の登壇者の中で一番学歴が低いのが、私、髙?拓でございます。よろしくお願いします。

「m-flo」だけにとどまらない、多彩な活動

大学を辞めたあとから今もずっと音楽の仕事をしていて、20年間m-floというグループをやっています。m-floという音楽グループ以外にも、音楽家であり、自分自身がプロデューサーであり、いろんなアーティストに楽曲提供をしたり。他にもアーティストだけじゃなくて、アニメ作品だったり。

スタジオトリガー、当時のガイナックスですね。『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』や、僕が大好きな渡辺信一郎監督の『スペース☆ダンディ』や、『キャロル&チューズデイ』、『信長協奏曲』といった作品にサントラで音楽を提供していたり、あとはDJをやっています。

音楽面だけじゃなくて、「block.fm」というメディアもやっているんですね。ポップカルチャーや、日本のシーンでのダンスミュージックやオルタナティヴサウンド、そういうポップなカルチャーをラジオと記事で紹介するメディアを運営しています。

もう1つ、日本から英語圏の人たちに情報を発信する「OTAQUEST」という英語メディアをやっています。今日は主にOTAQUESTの話をしていくんですが、その中でもm-floというグループを説明させてください。

m-floはLISA、VERBALと☆Taku Takahashiの3人組で、20年もやっているといろんな曲ができます。みなさんもひょっとしたら『Lotta Love』や『let go』という曲を聴いたことあるかもしれないので、m-floの曲を聴いてみてください。

そんなm-floの3人組の中で、私は3番目に人気のあるメンバーでございます。今日は何卒よろしくお願いします。

通帳の印税を見て「ドヒャー!」と驚いた、夢のある時代

今日はお題が「『コロナ時代』における日本ポップカルチャーのグローバル化について」。そのグローバル化について話す前に、僕の実体験を元に話をさせてください。

振り返ってみよう。m-floの成績表!

(拍手)

2001年、だいぶ前ですね。『EXPO EXPO』というアルバムを出しました。今流れている『come again』といった曲が入っています。このアルバム、累計ではもっと売れているんですけど当時は100万枚くらい売れて、オリコンは3位。すごいですね。

びっくりしたのは、通帳を見たら「ドヒャー!」というような金額が入ってきて、「すごいな、印税」みたいな、夢のある世界でした。

次に、圧倒的な数のゲストをお招きした、私が「超他力本願プロジェクト」と呼んでいる、m-flo『loves』。いろんなゲストに参加していただいて、現在45組のアーティストとコラボレーションをさせてもらっています。その中で、2004年に出たアルバムが『ASTROMANTIC』です。

『ASTROMANTIC』は、オリコン2位で60万枚。素晴らしい。本当に、みなさんのお力をお借りしつつ、素晴らしい結果が出たと思います。そして2005年に『BEAT SPACE NINE』というアルバムが出たんですけど、これは40万枚売れて、ついにオリコン1位を取ったんです。

このアルバムに参加していただいた和田アキ子さんに誘っていただいて、紅白歌合戦にも出演できたんですよ。本当に、めちゃくちゃいい経験をさせていただきました。次に、2007年『COSMICOLOR』。これはオリコン3位で20万枚です。素晴らしい。ん? ん? すごいきれいなカーブですね。80、60、40、20、と下がっている感じですね。行きますよ。

そして2012年の『SQUARE ONE』。m-floはずっとアルバムを出しているんですけど、これは日本の音楽トレンドを完全に無視したアルバムにも関わらず、オリコン10位、iTunesでは1位、枚数は5万枚。しかし、実際はどんどん数字が下がっている。

“多くの人”よりも、“少数でも熱量が高い人”をターゲットに

冷静に分析していくと、音楽CDの生産金額がどんどん右肩下がりになっている。すなわち、CDや音楽コンテンツの価値の在り方が変わってきた。これは音楽だけじゃなく、エンタメ全般に言える話だと思うんです。

これを見てくださっているみなさんは、音楽やエンタメのマネタイズの在り方や勝ちパターンが変化してきたのを体感しながら、いろいろと試行錯誤されていると思います。そういった中、実体験と共にいろいろと時代が変化してきたところで、エンタメの現状について。

昔は、「何百万枚売れる」「何十万枚売れるようにする」など、多くの人に買ってもらう方法でマネタイズをしていましたよね。例えばm-floみたいに、いわば変化球というかド直球じゃない音楽好きに対して発信するような音楽で、グレーゾーンをターゲットにしてもマネタイズがしやすかったんですよね。

そのスキームがまったく使用できなくなってしまった今現在は、人数が少なくなっても、濃い人たちが集まることが必要。ビジネス用語で言うと、「ロイヤルカスタマー」。そのアーティストや作品に、「熱量を持ってくれる人たち」をターゲットにしていかないと、マネタイズは成功しない。

「ファンベース」思考があるアーティストは強い

ライブにあちこち来てくれる人や、必ずグッズを買ってくれる人、あとはグッズを買う時に、「自分が実際に使う用のグッズ」と「キープする用のグッズ」、「友だちにプレゼントするグッズ」とか。前だったら大人数に対してやっていたことを、1人当たりにいっぱいお金を支払ってもらわなきゃいけない。だからこそ、そういったサポートをしてくれる人たちを重要視していかなきゃいけない。

逆に言うと、ファンベース(注:ファンを大切にし、ファンをベースにして、中長期的に売り上げや価値を上げていく考え方)がある人たちは強いんですよね。

他にも、興行やマーチャンダイズ、ファンクラブの収入の重要性が上がっていく中で、ファンベースをどうやってしっかり作っていくかもすごい重要で。

あともう1つは、本当に安定したビジネスをするには、ホールや大きな箱でライブをすることがすごく重要です。実際、私の周りのZeppとかで(ライブを)やっているアーティストたちも、うまく事務所とかを回されていると思うんですけど、やはり昔よりも難しいですよね。

Zeppなどでライブをやる場合、やはり人数が限られています。そこで利益を上げる場合には、ステージの雰囲気(づくりの部分)をちょっとコストダウンしないと黒字になりづらいとか、いろんな知恵を使わないといけないですよね。

自分の作品を好きになってくれる人を国外に探しに行く

いろいろとずっと試行錯誤されていると思うんですけど、もう1つあると思うんですよ。今、「国内でどうやってやっていくか」という内需的な話をしていたんですが、内需だけでなく、リージョン(領域)を広げていく。

要は、今の時代って「ファンベースを作らなきゃ」というふうに話をしたじゃないですか。ファンベースを作るというのは、無理矢理その人にその作品を好きになってもらうという感覚じゃないんですね。

昔は、音楽番組も決まった数しかない中で、テレビでタイアップを付けたCMを流したり、ドラマとかで何度も何度も聴いてもらってファンになってもらっていた。今はそのスキームもなかなか使えなくなってきた。

前だったら、「しょっちゅう聴いているから、もう好きになっちゃうよ」みたいなこともできたと思うんですが、今の時代はそういったこともできないんで。「この作品が好き」という人たちを、どうやって探していくのか。それを国内だけでやっているとうまくいかないんですよね。

つまり、リージョンを広げていかなきゃいけない。自分らが作る作品を、日本以外にも好きだと言ってくれる人たちがいるんですよ。

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