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チームビルディングのベストプラクティス -300人の壁(全4記事)

組織はリーダーの写し鏡 優れた後継者を見つけられる経営者の共通点

会社が成長していくときには、300人の壁にぶつかる―――ある程度事業を多角化させていく規模になると、どんな人材が必要になるのか。2020年のIVS(インフィニティ・ベンチャーズ・サミット)では、『チームビルディングのベストプラクティスー300人の壁』と題し、株式会社デジタルホールディングス 代表取締役会長の鉢嶺登氏、サイボウズ株式会社 代表取締役社長の青野慶久氏、Visional株式会社 代表取締役社長の南壮一郎氏、株式会社ナレッジワーク 代表取締役社長の麻野耕司氏による議論が繰り広げられました。本パートでは、創業メンバー集めや後継者を見出すまでの経緯について語りました。

その場で「内定!」と言えるジャッジの早さ

麻野耕司氏(以下、麻野):続いて鉢嶺さんにもお伺いしたいと思います。デジタルホールディングスもかなりいろんな事業があると思うので、そのへんをどうされているかちょっとお伺いしてみたいです。

鉢嶺登氏(以下、鉢嶺):僕も南さんのお話と共通している点が2つあります。1つは僕自身が経営者として向いていないなということには、創業して数年で気づいたんですよね。

麻野:経営者は絶対向いてると思いますけど(笑)。

鉢嶺:経営者に向いてない。なんて言うんだろうな、経営の執行とか。

麻野:あ~、そっち側ですね。

鉢嶺:マネジメントをするのは別の人のほうがいいなということで、たまたま僕の場合は、広告代理店として成功した時は海老根というメンバーに恵まれて、彼がすごく大きく会社を成長させてくれました。今はDXについては野内という創業からのメンバーのもう1人がコミットしてくれたので、今回は彼に社長のバトンを譲りました。

そういう意味で言うと、逆に南さんは「意外だな」と思ったんだけど、僕の場合は、ある意味南さんと同じで、この26年間は本当に経営を委ねられる人を探しているという感じなんですよ。そういう意味では、バトンタッチできる人が見つかったことは、僕にとっては非常にラッキーでしたね。

あとは逆に今、南さんの話を聞いて反省点があるのは、僕は最近あんまり採用にタッチしなくなっちゃってるんですよ。でもやっぱり成長していた時、特に2000年代前半の頃、社員数で言うとまだ20~30人くらいから100人くらいまでは思いっきり前面に出て採用をしていたんですよね。

当たり前だけど、人材紹介会社に依頼する時に「トップが面談しますよ」と言ったほうが当然コンサルタントもやる気になるし、当然求職者の人も社長が会ってくれるんだったら会いに行こうかなとなるじゃないですか。

社長だから、その場で「内定!」と言えちゃうわけだし(笑)。そういう意味で言うと、すごくジャッジが早くてベンチャーらしさを出せたことが、やっぱり社員数が300人くらいまでだったかなと思います。

その頃は新卒採用も必ず僕がやっていたし、それが1,000人を超えてきたくらいから、だんだん僕が採用にタッチする時間が減っていったので。創業時とか会社が小さかった頃のほうが採用に充てる僕の時間は多かったかなと。

優秀な創業メンバーを集められるかどうかが成功の確率にも影響

鉢嶺:今まさしくまた30人の会社を作っているので、そういう意味で言うと、ちょうど僕が前面に出て採用をやらなきゃいけないなというモードになっていたので。ビズリーチを使ってやろうかなという。

麻野:あはは(笑)。

南壮一郎氏(以下、南):ぜひ! 特別なプランを用意しておきます(笑)。

鉢嶺:本当ですか。お願いします!(笑)。

:僕は自分でスカウトを打っているので、今度やり方をレクチャーします。

鉢嶺:本当お願いしたい。今度ちょっと教えて(笑)。

麻野:南さん、ビズリーチって社員が何人の時から使うのがいいんですか? 僕もいつか使いたいなって。まだ社員が7人しかいないんですけど、いつから使うのかなってちょっと個人的に聞きたいんですけど。

:基本的には使うべきなのは創業者1人の時からですね。

麻野:1人(笑)。

:これは別にビズリーチの創業者だから言っているわけではなくて、創業メンバー集めというのは、事業が立ち上がるか、またその後の成長確度を決める大変重要なプロセスだと思っています。ビズリーチを優秀な創業メンバー集めの一集客チャネルとして捉えると、利用しない理由がなくなります。

僕は、自分のこのセオリーを第三者にて実証したいと思っていて。RevCommの會田武史さんにビズリーチから出資をしました。出資をすることとセットで、創業直後から自分が行ってきた採用テクニックと行動パターンをすべてお伝えした上で、ビズリーチサービスを完全無料で彼に提供しました。

結果的には、彼は創業メンバーになった4名のエンジニアをビズリーチ経由で採用し、その後、20人くらいのメンバーになるまでの大半をビズリーチ経由で採用されていました。この仕組みが非常に有効でしたので、他のスタートアップ創業者を同じように支援しようと「ビズリーチ創業者ファンド」をスタートしました。

すごくうれしいことに、RevComm社は、飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長を続けており、今でも會田さんとよく話します。先日も、当時を振り返って話していたのですが、創業者として、最初の立ち上げの時期に、どれだけ強力な仲間を集められるかによって、成功の確率論は大きく変わってくるということが、2人の間のコンセンサスでした。ですので、ビズリーチは、創業者1人の時から絶対使うべきです。

麻野:おもしろい。じゃあ僕も使いますわ。

:ありがとうございます。

自分以外のリーダーが事業を伸ばすイメージを持てるか?

麻野:鉢嶺さんにお伺いしたいんですけれども、これをご覧になられている経営者の方でも、自分以外のリーダーが事業を伸ばすというイメージが持てない人もすごく多いと思うんですよ。

でも、鉢嶺さんの会社では旧オプトで海老根さんが広告を伸ばしたり、今DXを野内さんがやろうとしているとか、海老根さんとか野内さんのような人って、金澤さんなどもそうかもしれないですけど、どうやったら会社の中から出現するんですか? 採用以外のところも聞いてみたいなと思って。

鉢嶺:海老根と野内は創業メンバーなので、僕がいつかは起業すると決めていた中でアルバイトだったり就職活動だったり、自分の人生のいろんな場面で、起業するんだったらこいつとこいつみたいに目星を付けていたわけです。その声をかけた中でジョインしてくれた中の2人が、たまたま海老根と野内。そこはすごく恵まれていたところですよね。

金澤という今オプトの社長をやっている人材はどちらかと言うと生え抜きなので、現場から叩き上げで上がっていって、僕からすると本当に優秀だなぁと。マネジメントレベルは僕の何百倍も優秀だと思います。

麻野:そうですよね。僕も前職の時にオプトの代表になられた金澤さんにお会いした時に、すごいなと思って。金澤さんは生え抜きということは新卒なんですか?

鉢嶺:中途だけど、アルバイト入社みたいな感じです。

麻野:へ~。どんなステップを経て、金澤さんのような引っ張る人が出てくるんですか?

鉢嶺:わからないねぇ。なんでだろう。

麻野:あはは(笑)。

「組織はリーダーの写し鏡」

鉢嶺:わかりづらいんだよ。逆に、例えばソウルドアウトの荻原猛や今回上場したコマースワンの岡本高彰のように、僕らの会社からスピンアウトして、出て行った会社の社長をやりましたと。こういう人たちはわかりやすくて、そこで自分なりにチームを作って、資金調達も自分たちでやっていく過程でどんどん成長していってるなということが実感値としてわかるんですよ。

だけど金澤はどちらかと言うと、社長になってからのほうが成長した……まあ、そういう意味じゃ一緒なのかもしれないけど。社長というポジションに就いた人のほうが成長しています。ただ僕らも2004年に上場してから、2015年にホールディングにするまでの10年間は「どんどん新規事業を立ち上げて、どんどん会社を作りなさい、IPOを目指しなさい」という方針でやってたんですよ。

20何社作られて社長が20何人生まれたわけだけど、全部が成功したかというとほとんどがそこまでいかなかったんですよ。だから社長になれば成長するというわけでもないんだけど。逆に言うと今、「2030年に1兆円企業になるぞ」と言っているから、そこから逆算して、このレベルの経営陣を何人輩出するかを社内で決めているわけ。

そういう人たちをどうやって育成するかに取り組んでいるんだけど、やっぱり子会社でもいいから社長経験者や責任者をやった人は、確実にスキルレベルが上がっているんですよね。そういう意味では社長を経験させることは1つ大きなスキルレベルというか、マネジメントの能力を上げるうえでは重要なのかなとは思いますね。

麻野:僕は今、鉢嶺さんと南さんのお話をお伺いして、2人の共通点は「自分以外に事業の責任者をもっとうまくやれるやつが社内にいるはずだ」とか、「社内から出てくるはずだ」という、その根底のフィロソフィーが大事やなと思って。「俺よりうまくできるやつなんかおらん」というのが前提の経営者の方もいるじゃないですか。

鉢嶺:確かに多いですね。

麻野:そうすると、事業をやらせたら最初はうまくできないんですけれども、あかんところばっかり言うみたいな。それで自信をなくしていくようなこともあると思うんです。だけどお二人は自分以外に事業ができるやつがいるし、作れるし、現れるという前提があるのかなと思っていて。よく「組織はリーダーの写し鏡」と言うんですけど、鉢嶺さんのお話からはそんなことを感じましたね。

鉢嶺:ありがとうございます。

1年半で9社を買収したサイボウズの失敗談

麻野:ありがとうございます。続いて青野さんにもお伺いしてみたいと思います。

青野慶久氏(以下、青野):いや~、やばいっすね~。お二人のお話を聞いていて反省することばかりです。たぶん今、麻野さんがおっしゃったように、僕は自分よりうまく事業ができるやつがいるはずだとはあまり思っていなくて。

(一同笑)

もう正直に言いますけど、サイボウズって僕にとっては遊び場なんですよ。だから、僕が楽しいようにやらせてという感じなんですよね。

麻野:あはは(笑)。

青野:今サイボウズは1,000人弱くらいなんですけれども、もともとコンピュータエンジニア3人でスタートしたので、どちらかと言うとものづくり大好きですよね。採用なんかより物を作ってというところだったので、一緒に物を作れる人材は採用するけど、事業責任者を採用しようとはあんまり思ったことがないですね。

グループウェア事業の成長が一時鈍化してしまって、それで多角化しようということでM&Aをやりまして、1年半の間に9社買収するというね。

麻野:お~、ふっふぅ~!

青野:そうなんですよ。2ヶ月に一度は会社を買うようなことをやったんですけど、これがもう大失敗しまして。ちゃんとマネジメントできない。多角化した事業をマネジメントできないのに買っちゃったから、子会社もぜんぜんうまくいかなくて。

もっと最悪だったのは、僕自身がグループウェアオタクなので、いろんな事業に興味が持てないこと。結局、子会社にしたんだけど興味が湧かないから放置しているようなね。お互いに不幸になるようなことをやってしまったんですよ(笑)。

もう諦めて、自分にはグループウェアしかできないなと思って、9社のうち8社売却しました。社員も500人を超えていたと思いますけど、また200人くらいに減った時期がありましたね。

突破口はグループウェア事業の再定義

青野:ただ突破という意味では、そこでもう1回事業の再定義のようなことはやりましたね。もうグループウェアしかやらない。ただ、グループウェアって何なんだろうか。今まではスケジュール共有や掲示板のソフトを作ることがグループウェアだと思っていたんですけれども、チームワークを高めるソフトはすべてグループウェアだとしよう、と。

よくMBAの本に載っていますけれども、鉄道の事業を鉄道と見るか、それとも移動の事業と見るかというね。移動の事業として見たらめっちゃ広がるじゃん、という。「グループウェアはチームワークを高めるすべてのソフトを言うんだ」と言って。

それを考えると新しいプロダクトのアイデアも湧いてきて、今で言うとkintoneというものがあるんですけど。チームワークのインフラみたいなソフトを作って、これがなんとなく売れていて、今も社員が増えているという感じですよね。

事業責任者とか、そのうちどこかから出てきてくれるんじゃないの? くらいの感覚でしたね(笑)。言い換えると、事業構造がすごくシンプルなんですよ。ソフトを作って売るだけなので、ある意味、みんながそのスペシャリスト。みんなその事業には詳しいので、僕がいなくなっても、たぶんほかのメンバーでできるとは思いますね。

成長する組織の共通点

麻野:青野さんの話を聞いてお伺いしたいのが、僕は前職でコンサルタントとしていろんな組織を見てきたんですが、成功する組織の共通点は1個だけでした。いろんなパターンがあるんですけど、事業戦略と組織戦略と、最後は経営トップのキャラ。この3つが合致していると伸びることに気付いたんですよ。

今の話でも、南さんと鉢嶺さんはもちろん自分が事業をやることもお好きだったと思うんですけど、ほかの人が現れて事業をやっていくことが好きなキャラなんやろうなと。

青野さんはたぶんグループウェアが好きで、「これがやりたい!」というものがあるので、キャラに合わないものまで多角化するとやっぱりうまくいかない。そこでグループウェアを突き詰める中でどうすれば伸びるかを考えて、それに合わせて組織を作ったから、多角化せずに伸びたところがあるんでしょうね。

青野:おもしろい! めっちゃ本質的なところにいきましたね。

鉢嶺:そうだね。確かにね。

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