2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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竹林一氏:じゃあ、どんな軸に変えるかという話です。簡単な一例でお話しさせていただきますけれども、僕らは自動改札機を作ってきました。これは新しい軸ですね。1967年、高度成長期で駅員さんがパチパチ切符を切っていたけれども、それはしんどいやんという話ですよね。
駅員さんに代わって切符を切ろうかというのが自動改札機。駅員さんの代わりに切符を切るというロボットです。みなさんは、ロボットというと手と足、目があると思いますけど、人に代わってということでは、これもロボットじゃないですか。
このロボットをどんどん入れていく。2000年には日本中にほとんど自動改札機が入りました。鉄道会社さんと一緒に1枚のカードで乗れるようにしようかということで、2000年の10月にパスネットのプロダクトリーダーをさせていただきました プロジェクト数はなんと600件、開発から納入まで1年で420万ステップのプログラムを組んだんです。プレッシャーで死にそうでした。
この後、ICカードになっていって、今はSuica、ICOCA、PASMO、PiTaPaなどで日本中の電車に乗れるようになりましたね。ところが、今までの軸で駅員さんの代わりに、ロボットが効率化して楽になってきました。もう全部自動改札機が入ってくるので、駅員さんの負荷は変わってくるんですね。
その時に、僕はまた新しいカンパニーの社長に呼ばれて「世の中、なんか変わってくるぞ。新しい軸を作ってくれ」と言われるんですね。これ、難しいでしょ?
パスネットのプロジェクトもすごいプロジェクトマネジメントだったんですけど、もっと難しいプロジェクトマネジメントがこれです。
「なんか変わるから。なんか変えろ」というやつですね。これからのみなさんのプロジェクトでこんなふうになってきますよね。コストをちょっと下げろというプロジェクトよりも、「世の中なんか変わるから、なんか変えろ」というやつですね。
これは新規事業であったり、既存構造のビジネスモデルやお客さんと関係性を変えるというやつです。要は軸を変えるということです。その時に、いろんな新しいサービスや、「こんなんがええ」とアイデアを役員に持ってくるんですけど、ことごとく却下になるんですね。
「そんな一品もんのアイデア持ってこいと言うてへん」と。「根幹が何が変わるんねん」と。僕の上司は「幹」と呼んでいましたけど、木の幹。幹があって枝があって葉っぱがあるんですね。「お前の持ってくるのは葉っぱばっかりや」と言われて、死ぬほど考えるんですね。幹ってなんやろ? 要は軸ですね。
6ヶ月考え続けるんですけれども。みなさんもそうですけど、今までの駅というのは鉄道への入り口だったんですよね。それはそうですね。今、どこからどこまで通勤するのに、最寄り駅から会社があるところまで通勤しますで、そのために駅を通過して自動改札機で切符通してちゃんとお金払いましたよという。
でも、ある朝、新宿駅を歩いていたら、数百万人の人が新宿の駅の中から新宿という街へ出ていくんですね。そこでわかったのが、駅ってひょっとしたら街への入り口ちゃうかという話です。「駅が街への入り口だったらどんなことできんの?」という話ですね。
駅に入る時に誰かというのもわかっているし、性別もわかっているから、駅を出たら駅の街自体の情報を配信して、そこに広告とか載せたらおもしろいんちゃうかという提案をして、朝、新宿駅の自動改札機を通ったら、この人は新宿の街へ入ってきはったなということで、クーポン配信する仕組みとかね。
今まで、自動改札機は駅員さんの代わりをしていたのを、その上のレイヤーとなる新しいメディアを想像して、そこにビジネスを乗せる仕組みを提案していったんですね。20年くらい前にこういうOne to Oneマーケティングを仕掛けたんですけれども、このビジネス自体はまだ早すぎたなということで。5年くらいやりましたけど、いろんなハレーションとか起こってうまくいかなかったんですけど、今はこんな仕組みがありますよね。
駅が街の入り口であれば、駅がものすごく安全、安心な場所で、駅を通過したら子どもたちがお母さんに「もう学校に行ったね」「今から帰ってくるね」「塾行ったね」というのがお母さんに配信されるというサービスですね。こんなものを仕掛けました。
これが大ヒットして、大阪ではJR西日本さん以外の公民鉄、すべてこの仕組みが入っていますね。東京では小田急さん、東急さん、JRさんなどがこの仕組みに入っていって、どんどん広がっていっています。
今までは単なる効率化する仕組みがあって、その上に新しいサービスが乗ってくるんですね。ここでみなさんに1つのヒントです。「軸を定める」というのは非常に重要。今までは、駅は鉄道の入り口でいい商品を安く作っていたらよかったんです。ところが、駅を街の入り口にすると、いろんなサービスが出てくるんです。
さっきみたいに「広告を配信してみようか」とか、「でもそれは早すぎたな。今やったらまたいけるんとちゃうか」とかね。「アイデアAは遠すぎたんであかんかったな。アイデアE、安心安全で行こうかな」とかね。
こんなん新規事業で全部成功するんじゃないんです。ところが、駅は街の入り口という軸を設定すると、アイデアA、B、Cっていっぱい出てくるんですよね。アイデアA、B、C、どれが成功するかわからへんから、アイデアCだけ持ってこられても、経営者としては困るんです。「アイデアC、思いつきだけで持ってくるな」という話ですね。
ところが、これが「駅を街の入り口にしてみませんか」という話です。経営者とか社長が「それ、おもろいな。駅を街の入り口にするために、どんなおもろいサービスがあんねん。ちょっと遠いけどアイデアAやってみようか」「やって失敗したけど、ちょっと早すぎましたね。アイデアAダメやし、Eからやってみようか」「これは成功しましたね」という話ですね。
この全体像が見えると、新規事業というのは非常に早くなります。みなさん、アイデアGだけとかアイデアCだけとかを持っていっていませんかという話ですね。僕は、今でも新規事業の立ち上げをやっていますけど、何をやっているかというと、軸を明確に設定しにいっています。
僕の仕事は、軸を設定しにいくこと。その中でアイデアA、B、Cはいろんな人が考えてくれはるんですよね。これが1つのヒントになると思います。
軸を定める時に重要になってくるのが、バックキャストとフォーキャストという考え方ですね。よく未来志向とか未来を予測するとか言うんですよ。未来を予測するだけではダメなんです。未来を予測していてもお金にならないんです。一方フォーキャストという現場の課題から考える手法がありますが、改善で終わってしまうんです。新規事業も起こらへんのです。
僕がいつも言うてるのは、未来も大事やし現場の課題も大事なんですね。じゃあどうするかというところです。「軸をどの辺に定めるんですか」と言われた時に、実はフォーキャストとバックキャスト、未来から考えることと現場課題を考えること。そのちょうど中間点くらいにビジネスのヒントがあるんですよね。
みなさん、トンネル工事って知っています? トンネル工事って、実は両端から掘っているんですよ。例えば青函トンネルは、函館側からと青森側から掘っていって、ちょうど真ん中ぐらいで貫通するんですね。それと同じなんです。
そうなってくると、未来から考える人と現場から考える人がコミュニケーションをちゃんとしておかないと、いつまで経ってもトンネルが貫通しないんですね。だから、コミュニケーションが大事という話です。
「なんか音しとるけど、ちゃうとこ掘ってるで」みたいなね。「ちゃうとこ掘ってたらいつまで経ってもトンネル貫通せえへん、要は事業にならへんで」ちゅう話ですね。だから、コミュニケーションを良くして真ん中を探すことを知っておくことが大切です。これが「軸を考える」という考え方です。
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