
2025.02.19
アルペンの“店舗の現場”までデータドリブンを浸透させる試み 生成AI×kintone活用の3つのポイント
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矢内加奈子氏(以下、矢内):本日は「新規事業を生み出すうえでの組織の対話」をテーマに、埼玉大学経済経営系大学院の宇田川先生をお呼びしております。
宇田川元一氏(以下、宇田川):よろしくお願いします。
矢内:どうぞよろしくお願いいたします。
(会場拍手)
木内文昭氏(以下、木内):お願いします!
矢内:では、簡単に自己紹介からスタートできればと思っています。本日モデレーターを務めさせていただきます矢内と申します。マクアケでは広報を担当しております。どうぞよろしくお願いいたします。
続きまして、木内さんのご紹介です。
木内:マクアケの木内です。今回、宇田川先生にご登場いただきました。非常に楽しみにしております。よろしくお願いします。
矢内:宇田川先生、自己紹介をよろしくお願いします。
宇田川:埼玉大学経済経営系大学の宇田川と申します。私は経営戦略論や組織論の研究をしておりまして、今の研究テーマは企業変革とイノベーションの推進です。対話・ナラティヴ(物語)をベースに、企業変革やイノベーションの領域を研究しています。今日はどうぞよろしくお願いいたします。
矢内:宇田川先生といえば、大ヒット中の『他者と働く「わかりあえなさ」から始める組織論』ですが、今日は本の中にも多く登場する対話だったりとか、その辺のお話についてもお聞きできればと思っております。
実は、もう1名こちらの会場にいらっしゃいまして。みなさまと一緒の立場でご質問をしていただく存在として、某食品メーカーの方にいらしていただいています。社会人MBAにも通われている方で、今日はいろいろ学びたいというところで、ご参加いただいております。よろしくお願いします。
ハシヅメ(以下、ハシヅメ):よろしくお願いします。
矢内:ハシヅメさん、何か質問がありましたら、お気軽にご質問いただければと思います。よろしくお願いします。
ハシヅメ:はい。わかりました。
矢内:木内さん、宇田川先生を今回お招きした背景や目的を教えてください。
木内:そうですね。宇田川先生とは定期的にディスカッションさせていただいていますが、やはり大きな企業で新しい事業を生み出すときに「その企業のらしさに立ち返ることが大事だ」だとか「伝わるように対話していかなきゃいけない」とか、いつも貴重な学びをいただいていまして。これをぜひ多くの方と共有できればと思い、お願いしました。
これまで先生と議論させていただいたことなどもシェアして、少しでも多くの新しいことが生まれるきっかけになればということで、ご登場いただきました。
矢内:ありがとうございます。ではさっそく1つ目のテーマにまいります。「イノベーションを起こさないで大きくなった会社はない」とありますが、木内さんどうでしょう。
木内:そうですね。今日は「どうやって新しいことを生んでいくか」とか「新規事業をやっていくには何が大事か」という話を展開していくわけなんですけれども。大前提として、日本企業も世界の企業もイノベーションを起こさないで大きくなった会社はない、というスタンスに立ちたいと思います。
新しいことにチャレンジすることは、本来保守本流の動きとして大事なことなんですね。あと、今はなかなか新しいことが生まれないわけなんですけれども、そういった大企業も過去どんどん新しいイノベーションを起こしてきた会社ばかりで。
もし今起こっていないとしたら、その状態こそ、今までの傾向とは違う状態ではないかということで。本来イノベーションがどんどん起こる日本企業はたくさんあるはずなのに、と思っていまして。
そんなスタンスで今日はお話しさせていただきたいなと思っています。
矢内:ありがとうございます。宇田川先生どうですか?
宇田川:そうですね。僕は経営学者ですが、大学に入学したのが1996年で、その頃の経営学の雰囲気と今はけっこう違っているなあと思いますね。1996年はバブルも崩壊していたし、日本の企業も不良債権問題などで、元気がなかったんです。
でも、1990年代の90~91年あたりは、経営学の中でのビッグコンセプトの1つであるコア・コンピタンス論が出てきた頃だったんですね。(ゲイリー・)ハメルと(C.K.)プラハラードという人が言ったんですけれども。このコア・コンピタンス論の論文を読んでいると、出てくる企業は日本企業ばかりなんです。
「日本企業は、こんなにもイノベーティブなのに、アメリカの企業はセクショナリズムに翻弄されていて、なんでこんなにイノベーティブじゃないのか。日本企業のようなコア・コンピタンスの構築を見習いなさい」という(笑)。そういう論文だったわけですよ。
矢内:ちょっと今とはあれですね。
宇田川:真逆な感じがしますよね。やっぱり90年代後半に入ってからは研究も少しずつ風向きが変わってくるんですけど、80年代から90年代初頭は、少なくとも経営学の中心的な研究テーマの1つは、日本的経営論でした。もともと、日本の企業というのは、イノベーティブがなかったわけではないわけですね。
矢内:なるほど。
宇田川:例えばみなさん、システム開発の領域ではアジャイル開発と言いますけれども、もともとの原型はスクラム・アジャイルで、(ジェフ・)サザーランドが言ったもの。彼がベースにしているのは、竹内弘高と野中郁次郎が書いた「新たな新製品開発競争」という1986年の論文なんです。
つまり、そこでリレー型の機能をつないでいくアメリカ型の製品開発じゃなくて、機能間を行きつ戻りつしながら製品開発をしていくという、ラグビーのスクラムのような開発の仕方という部分が独特なイノベーションを生んできたんだということを、世界に発信していた。それが私のもともと経営学徒としての、最初の頃に学んだ経営、日本企業の姿だったんですね。
木内:確か、キヤノンさんとかでしたよね。
宇田川:そうそう。キヤノンのインクジェットプリンタ事業などは、まさにスクラム開発から生まれたものだと思うんですけれども。やはりそういう新規事業や新領域を次々と切り拓いていったのが、もともとの日本企業のすごさだったと思うんですね。
宇田川:ただそれが、1つの領域を新たに切り拓く。切り拓いたら、そこの市場、そこの事業というものの確立が進んでいく。切り拓くのは横の水平方向のコンピタンスの開発なんですけれど、切り拓いた後には縦方向で効率化を図っていかないといけないわけですね。そうやって領域の完成度を高めていく必要があります。
この効率化のフェーズというのは、当然、ある意味狭いところでちゃんとルーティンを確立して、高速で回していくという勝負になるので、これ自体はイノベーションとは別で、よく探索と活用という概念で整理されますが、活用のフェーズに入っている。
活用のフェーズがどんどん進んでいったので、ちゃんと収益性のある事業があるわけで、今コロナ禍でちょっと特殊な事情ですけれども、去年度はその業績自体、非常によかったわけですよ。
だけど、これって収益が上がっていればいい状態じゃなくて、上がった収益をちゃんと次の世代の主軸になる事業を育てるように投資していかなきゃいけないわけです。それで次の事業を作っていかないといけないんだけれども、次の事業を作っていくための横方向の探索型の取り組みが弱っていると。だから次のものは生み出せない。
本来の姿はそうだったのに、時間が経年劣化してしまって、組織としての課題がイノベーションの推進をブーストできないような状況になっているのが、今の状態だと私は理解しています。
木内:そうですよね。なので、当たり前なんですけど決して懐古主義という話ではなくて。新しいものを生んでいく上で、過去うまくいっていた状態を構造的に捉えたり、今の環境変化を捉えて、何が良かったのかを整理・認識する。そうしてちゃんと過去に学んだ上で、新しいことを考えることが大事かなと思います。
矢内:本当にそうですよね。闇雲に過去を否定しても、その会社ごとに何をやるのかというのがなかなか見えなくなってしまうと思います。
木内:そうですね。
宇田川:冷静な議論が必要ということだと思います。
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