2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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澤円氏(以下、澤):やっぱり一番時間をかけて話したいのが、『「できない」と言うと、周りを失望させてしまわない?』というものです。
自分で「できない」「私はこれができないのです」ということを自己開示したら、よろしくないんじゃないか、という話なんだけど、これはさっき、僕が話したことにダイレクトにつながります。
できないことを「できない」と言えない状態が、組織をずっとダメにしてきたんですね。日本という国は、とくにそう。
単純に「外資系企業」と「日本企業」というように、主語をでっかくして比べるのは、僕はあまり好きじゃない。ですけど、あえてなぜかと言うと、海外の企業というのは役割がきっちり分かれていて、できるところにできる人を充てるんです。できなかったらクビにする。こういう仕組みなんですね。
だって、野球で言えば、ダルビッシュさんに「お前、明日からセンター守って4番を打て」とは言わないわけですよ。雇われ方が違うからね。ダルビッシュさんは「ピッチャーをやれ」と言われて雇われているんです。
ただし、ピッチャーで満塁ホームランを10本打たれるんだったら、クビになるわけですよ。「やれ」と言われていることができていないからね。
だけど、日本の企業って、なんとなく全体をやらせたりするんです。合っているか合ってないかは別として、組織の都合で人事異動があったりとか、とりあえずいろんなところで試してみるということをやるわけです。
そうすると当然、向いてない仕事が回ってくる可能性がそれなりにある。だけど、それも含めて組織で働くということだから、「できない」ってめちゃくちゃ言いづらいんですよね。
中北朋宏氏(以下、中北):確かに。
澤:でも、これからはそういう組織というのは、絶対にダメになる。もう立ち行かなくなる。だから、できないものは「できない」と言う。言わせてもらわないところからは、逃げる。僕はもう、この2択だと思っています。
中北:うーん。なるほど。
松元絢氏(以下、松元):もしかしたら同じような意味なのかなと思うんですけど、チャットにも「サラリーマンの癖で、自己開示の前に役割への意識が向かいます」と来ています。役職や役割が自分にあるから言えない、ということなのかなと思います。
澤:もし、その役割を期待されて、「私はその役割をやります」と言っていて、できないんだったら、自分からその仕事を離れないといけないですよね。だって、その価値を提供できないんだからね。「私は4番を打てます」と言って、毎回三振していたら、これはダメですよね。
中北:(笑)。確かに。
澤:ということなので、できないことは、できない。それをちゃんと自分でも認識しておくということですよね。できるかできないか(半々)だったら「できないんだ」と言うこと。
これはさっき言った、自分の情報ですね。自分の情報は正しく理解しておくということです。それに関して言うことは……なんて言うんだろうな。情報をちゃんと提供しているんだから、ぶっちゃけ、自己開示の中では初歩の初歩なんですよね。
ましてや、できないことを言うことは、正しい情報を提供しているのに過ぎないので、それほど恥ずかしがるものでもないかなと思いますね。
中北:本当にそうですね。僕は2つあって、1つ目が、これは社会的要因と言うか、日本は「社会人はこうあるべきだ」というのがすごく強いなと思っています。
澤:強いねえ。
中北:例えば僕は、会議でボケてめちゃくちゃ怒られたことがあるんですよ。あと、営業先でお客さんにボケて、机の下で先輩にももを殴られたりすることがよくあったんです(笑)。
「こうあらなきゃならない」「仕事ができないといけない」とか、そもそも「弱音を吐いてはいけない」というものがあると思っています。
松元:ありますよ。(スライドの質問で)『オンライン会議で真面目なメンバーに笑いを届けたい!』と書いていらっしゃる方もいますね。
中北:そうだよね。そういうのもあると思います。まずは「できない」から、しゃべっていいかな(笑)?
松元:「できない」から、つなげていただいて(笑)。
中北:ちょっと、それは……できないわ(笑)。
松元:(笑)。
中北:思いきって言ってみるということですね。そこもつなげましょう。
なんか「真面目にやらないといけない」みたいなものがあって、「そもそも間違っているんじゃないか?」と、その前提を疑うことが重要だと思っているんです。
中北:2つ目が、「できないと言うと周りを失望させる」ということに対しての問題意識なんですけど、なんだか自分への期待値が高すぎると思うんですよ。別にダメでもいいじゃないですか。かつ、「自分は本当に素晴しくあらねばならない」という感覚があると思っています。
そうじゃなくて、たぶん自分を正しく認識したところから、新しい自分が作られていくと思っています。人間は、最初は自転車すら乗れないのに、なんだか仕事になったら「仕事ができないことが恥ずかしい」と思ってしまうところがあります。
ですが、それはちょっと、考えすぎなんちゃうかなと思います。いい意味で期待していくことが重要だと思うんですけど、期待値がずれているんじゃないかなということは、すごく感じますね。
澤:チャットで「やっぱり、自分ができることというのは自己認識」と書かれていますけれども、まさにそれです。自己認識をちゃんとした上で、自分ができることや貢献できることを前面に押し出す。人生は短いですから、できないことで苦しむぐらいだったら、できることを徹底的にやって楽しんだほうが、絶対にいい。
実はこの話が、別の方からのチャットの質問にもつながってくるんです。「役割が明確に決まっている組織よりも、決まっていないコミュニティが台頭してくるのはなぜか?」という話なんですけど、世の中にはいろんな価値観が存在して、いろんな楽しみ方があってということが、みんなわかったわけですよ。インターネットの登場によって、ばれたんですね。
30年前は知る手段がものすごく限定されていました。例えば、テレビでなきゃいけないとかね。共通する話題が、ものすごく限られた選択肢の中で出てきた。だから役割を与えて、「同じ方向を向け」と言いやすかったんですよね。
澤:例えば今って、子どもたちは家でYouTubeを見るんじゃないかと思うんですけど、YouTubeで見られる動画の数って、ものすごい数があるわけですよね。そう考えると、何を見るかなんてわからない。
だけど、テレビだとチャンネルの数しかないので、翌日に会って共通の話題を見つけるというのは、そんなに難しくないんです。容易いんですよね。そこの中でクローズになる。
今はインターネットで全世界とつながれる状態になっていて、いろんな価値観があり、そしていろんな働き方があるということもばれている状態なので、優秀な人間からそっちに行くんですよ。
「自分がもっと自分らしく生きたいぜ!」と思っていて、なおかつ有能な連中は、みんなそっちにシフトしちゃうわけですよね。そうなるともう、優秀な人間を集めるためにはコミュニティ化するしかないとなるわけですよね。それだけの話です。
もっと言うと、コミュニティ化すれば、役割を必死こいて考えなくても、緩やかにいろんなかたちで全部がつながっていって、最終的に全部がうまく回る状態になるんですね。これが、コミュニティ化が進んでいくという1つの考え方になります。
中北:すごくおもしろい考え方ですね。
澤:ありがとうございます。
中北:忘れていましたが、せっかくなので笑いの観点でしゃべりますね(笑)。
澤:どんどんしゃべって。今のは真面目な話だったから(笑)。
中北:僕自身も笑いの観点でしゃべってなかったことに、今気づきました(笑)。
澤:(笑)。
松元:やっと気づいてくれました?
中北:やっと気づきました。ちゃんと笑いの観点でお伝えします。「できない」ということ自体を言うとか、今の自己開示の文化は、僕は笑いの文化に非常に近づいてきていると思っているんです。お笑い芸人の文化に近づいてきていると思っています。
こういう恐怖心がある方は、ぜひ笑いの文化を学んでいただきたいんですけれども、笑いって全部、「できないことがおいしい」んですよね。欠点が全部笑いに変わったり、強みに変わったりする文化があるんです。
それがすごくフォーカスされて、逆に優秀な人や普通な人がコンプレックスを抱えているんです。「俺は真面目でダメだ」と言っていて、「普通でダメだ」とか「優秀だからおもしろくない」と思っているんですよ。
だから、(笑いには世間一般と)まったく真逆の文化があって、その欠点がおもしろいとか、欠点がすばらしいとか……。なんて言うんですかね? (欠点があることが)人生を彩ったり、かつ、人に受け入れられて、最高に人気者になれたりするんですよ。そういう笑いの価値観というのもインプットしていただけると、非常にいいかなと思いました。
松元:マインドセットを変えていく感じですね。
澤:そうそう。
中北:そうですね。それがたぶん、コミュニティ。まさに個性なんじゃないですか。偏りがすごくフォーカスされてきて、お笑い界に似てきているんじゃないかなと、僕は勝手に想像しています。
澤:コミュニティとかで、お互いがお互いに安心できる「心理的安全性」が担保されていると、自然と笑顔になると思うんですよね。笑顔の度合いと言うか、ボルテージを上げるために笑いという要素が入ってきたりすると、軽い冗談を言ったり、ちょっとお互いにいじり合う。心理的安全性の中で行われるんだったら、これは非常に健全ですよね。
さっき「笑いというのはスパイスだ」とおっしゃっていました。そうなってくると当然、「スパイスのない料理」がどうなるかと言うと……栄養はあるけど、味気ないんですよね。
中北:(笑)。
澤:栄養しかない食べ物というのを毎日好んで食うかというと、それはしんどいよね。結局「お菓子がやめられない」のというのは、ある意味、いろんなかたちの「スパイスの塊」だからなんですよ。栄養はないんだけれども、みんな食べたくなる。それぐらい、中毒性がある。
でも、これからはその中毒性だけじゃなくて、会社などでも貢献する仕組みを見出しながら、なおかつ笑えるような心理的安全性がすごく重要になってくると思います。自分がその中心になっていけばいい。
松元:確かに、スパイスがある職場は、行くのが楽しみですよね(笑)。
澤:そうそう。
松元:あと、チャットからの質問で……。ごめんなさい。いいですか?
中北:どうぞ。
松元:チャットからの質問で「どっちから問題」みたいなのがあって、「最初に話すのは自分でいいのか?」「相手中心の話にしなくていいのか?」というお悩みの方がいます。
澤:それは、むしろ「ダメ」の理由が知りたい。「ダメ」と思う理由が、何かあるのかな?
松元:(質問者の)あべマックスさんは、どうですか? お話はできますか?
澤:声でもいいし、チャットでもいいんだけど、なんでダメだと思うの?
あべマックス氏(以下、あべマックス):あべマックスです。ありがとうございます。
澤:はーい。
中北:こんにちは。
あべマックス:ダメな理由と言うよりは、相手が自分に興味を持っていない段階で自分のことを話しても、響かないですよね? なのでその場では、まず相手のことを話題の中心にしたら、相手の興味があることなので……。いい塩梅になるんじゃないかと思っています。
澤:なるほど。
澤:そういうコンテキストね。ああ、いいですね。だとしたら、これはどちらかと言えば「会話術」だと思うんです。会話術で「質問から入る」というのがあるんですよね。
「私はあなたに興味があります」という自己紹介のためには、まずは質問なんですよ。あべマックスさんはどちらにお住まいですか?
あべマックス:神奈川に住んでいます。
澤:ああ、神奈川のどちら?
あべマックス:厚木になります。
澤:厚木っていえば、(カルロス・)ゴーンさんを見たことはあります?
あべマックス:ゴーンさん? 見たことはあります。テレビだけど……。
澤:いや、ご近所かなと思って。
松元:(笑)。
澤:厚木って、日産があるから。
あべマックス:(笑)。ああ、そうですね。
中北:(笑)。
澤:……というのは、結局ゴーンさんは触れる必要がまったくない人なんですけど、今の世の中だったら、とりあえずゴーンさんの話題を出したら、みんな頭の中に楽器のケースの絵が出てくるわけじゃないですか(注:カルロス・ゴーン氏は日本において金融商品取引法違反の容疑で逮捕・起訴された。その後、保釈中の2019年12月に日本から密出国してレバノンに逃亡したが、その際「音響機器運搬用の黒い箱」に入って出国したと報じられている)。
中北:(笑)。
澤:ネタとして出して、ちょっと彼をこき下ろすかたちになっちゃって申し訳ないけれども、最初に質問から入っているわけですよね。そういうところで、これがジャブ。
要は最初に距離感を測っていって、最後にぜんぜん違う軸をぽんと用意するというやり方なんかだと、お互いに話がしやすくなってくるんじゃないかなと思います。
あべマックス:はい。付随してなんですけど、例えば「自分の趣味は筋トレです。あなたは何ですか?」と言うのと、最初に「あなたの趣味は何ですか?」と聞くという入りとは、どっちがいいのかなというのを考えています。
筋トレに興味がなかったら話す必要もないかなと思っていて、自己開示型で言うと前者だと思うんです。みなさん、どう考えますか?
中北:「相手から聞いて、自分で答える」というパターンもあれば、「自分から言って、相手から話す」というパターンももちろんあります。ですので一概に言えないんですけれども、基本的には「趣味は何ですか?」から聞いたほうがいいかもしれないですね。筋トレ好きの人がめちゃくちゃ多いわけじゃないので(笑)。
あべマックス:そういうリスクがあるのかなと思って(笑)。
中北:「趣味は音楽です。何か、お好きなものはあるんですか?」とか、万人受けするものがあるのであれば、そうしたほうがいいかなと思いますね。
あべマックス:わかりました。僕の時間ばっかり取って、申し訳ないです。
松元:(笑)。
澤:ちょっと延長してお話を踏まえて話をしていくと、コンテキストが共有できない話を振るというのは危ないですね。
あべマックスさん、マイクオフにしていいですよ、無理してしゃべらないでいいですよ。
松元:ありがとうございました。
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